「自分ごと」として受け止め、全力で行動する
食品製造業、流通業、外食産業からなる日本の「食産業」は実に76.3兆円の市場を形成しており、それらに農林漁業や関連投資も加えた食品関連産業全体で見ると、国内生産額は約90兆円にも上ります。非常に裾野が広い産業です。そのような市場で、カフェ・カンパニーは食を通じたコミュニティーの場を国内外に創造し続けてきました。
2050年には世界の人口が約100億人に達するといわれています。「食」がこれから先どのように変化するのか、21世紀のコミュニティーの在り方はどうなるのか、考えざるを得ません。テクノロジーの進化による培養肉や代替肉であったり、昆虫食であったり、農業も相当工業化していく中で、食産業に携わる人たちの価値観や行動様式も大きく変貌していくでしょう。特に2025年までの5年間でどう走るかが、次の時代の食をけん引する鍵になるわけで、昨年はこれまでの経験をもとにさまざまな構想を準備していました。
そこに新型コロナウイルスの感染が世界中で起き、5年などという悠長なことは言っておられず、すぐにでも全速力で進まざるを得なくなりました。ほかの産業も同様だと思いますが、特に「食」は、僕ら事業者に対して地球が待ったなしで問題提起しているような気がしてなりません。
店舗としては営業時間短縮やテイクアウト事業の開発など進め、同時に僕自身は食に関する会議に参加したり、提言書を作成したり、飲食業数社の有志メンバーとともに「#おいしいデモ」というプロジェクトを始めました。これは渦中にある飲食店の痛みを少しでも和らげるアクションや、飲食店を救うために奔走する関係者にエールを送り、その努力がより生かされるためのアクションを世の中に発信して、食に関わる全ての方を応援するプロジェクトです。
5月16日にはニッポン放送で3時間半の特番も組んでもらいました。超党派の政治家や行政に携わる人々、企業経営者など、今回のコロナ禍を克服しようと努力されている多くの人々にも聴取いただいたのですが、今回のことは、飲食店のみならず農家も含めた多くの「食産業」従事者の営みが人々の生活や命に直結している「人生共同体コミュニティ」であることを実感する機会になったのではないでしょうか。コロナ関連の政策を批判したり揚げ足を取っていたりする暇はなく、誰もが「自分ごと」として受け止め、それぞれの分野で全力で行動することが求められていると思っています。