コロナ禍が浮き彫りにしたナイトタイムの価値と魅力
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本のナイトライフ産業は深刻な状況に置かれています。2016年の風営法改正を経て、観光庁はナイトタイムエコノミーをインバウンド観光施策の重要な柱の一つと位置付け、さまざまな振興施策を打ち出していました。
オリンピックに向けた大規模都市計画には、ナイトクラブの夜間活用といったプランが組み込まれたほか、宿泊を誘引し、飲食などの消費につながる夜間観光は、観光消費拡大の起爆剤として地方創生の切り札とさえいわれるようになっていました。
しかしながら、コロナ禍で状況は一変。ライブハウスやナイトクラブを含む「夜の街」は、感染の温床になる3密(密閉・密集・密接)の典型であると連日のように名指しで報道され、観光も人の移動により感染を拡大する危険なものとして大きく規制されました。官民一体となって大きな盛り上がりを見せていたナイトタイムエコノミーや観光関連産業は、感染を広めるリスク産業といわれるようになり、産業自体の存亡に関わる壊滅的な打撃を受けている状況です。
このように約束された右肩上がりの未来は一瞬で消え去り、さまざまな前提が失われました。しかしながら、夜の街が生み出してきた文化までもが失われたわけではありません。むしろ、その価値や魅力は以前にも増して高まっているように思います。
例えば、音楽シーンについて言えば、これまでライブハウスやクラブといったヴェニューを中心に夜の街を盛り上げてきましたが、コロナ禍によってライブハウスの営業が困難な状況でも、音楽は別の表現場所を求め続け、止まることなく、むしろより活発に音楽表現がなされるようになりました。
ライブエンターテインメントは2月下旬から営業自粛せざるを得ない状況に置かれていますが、他方でオンラインにシフトし、新たな表現手法を広げています。
営業停止中の箱を使って、無観客のライブやDJセットをオンライン上で配信するケースも爆発的に増加しました。人と会うこともできず自宅で待機しなければならなかった時間に、これまで以上に多くの音楽を聴き、感動を得て、救われた人も多いのではないでしょうか。