ごみの収集運搬は常に感染リスクと隣り合わせ
企業から出る廃棄物(事業系ごみ)を収集し、処理場に運搬する事業をメイン事業として「ごみ」と関わっています。
今回の新型コロナウイルス感染症による危機では、多くの企業が在宅勤務に切り替えるなど、人々の暮らしや働き方は大きく変化しています。一方、私たちの業界の働き方についてはさほど大きな変化はありませんでした。なぜならオフィスに出勤する人が少なくなっても、企業は活動を続けているのですから、ごみはなくならないのです。
ごみをオフィスや家庭から運び出して処理場に届ける作業は、リモートワークに置き換えることはできません(まだそうしたロボットの開発はなされていないようです)。例えばオフィスビルの場合、オフィスで日々捨てられるごみはビルの集積所に集められますが、そこはそれほど広くはないため、ビルから運び出さないとごみがあふれることになります。ごみには生ごみも含まれるので、放置するわけにはいきません。公衆衛生に甚大な影響を及ぼすからです。そのため私たち事業者は、緊急事態宣言の発令後もごみの収集や運搬を通常通り続けてきました。
一方、私たち事業者は、新型コロナウイルスに感染している人がどこにいるか、たとえオフィス内で適切な措置が取られていても知るすべがないのです。
テレビなどで知っている人もいると思いますが、ごみの中に使用済みのマスクやプラ容器、鼻汁などの体液が付着したティッシュが含まれていても、袋の破損やごみを入れた袋の口がしっかり縛られていなかったり、知らぬ間に袋が破れているということがあります。そうした場合、ごみが飛び散ることもあるので、毎日のようにごみを扱う現場は、常に感染リスクと隣り合わせといえます。
私たちの仕事である廃棄物処理は、国民生活を維持するために欠かせない基幹サービスの一つです。今回、国や地方自治体から「緊急事態宣言下でもごみの収集は続けてほしい」との要請をいただきました。感染予防のため各事業者はマスクや手袋の着用、手洗い、うがい、消毒の徹底など独自に対策しながら作業を続けてきました。
企業から廃棄物処理を請け負う業者の多くは、外出自粛や在宅勤務の影響で、廃棄物の受託量が大幅に減少しています。当社でも4月の受託量は、通常の3分の1程度まで激減しました。
廃棄物処理の料金は、廃棄物(ごみ)の量をベースにすることがあります。その場合、ごみの量が減れば売り上げも減ります。ごみを運び出すためのコストはほとんど減らないわけですから、当然、資金繰りにも影響が出るのですが、国の救済策は一般の中小企業に対する資金繰り支援制度のみで、廃棄物処理事業者に対する特別な支援策はありません。緊急事態宣言時においてもサービスとそのクオリティーの維持を求めるのであれば、それなりの保証やサポートもセットで制度化することが必要です。そのような制度化が第2波への備えとして整えられると、オフィス環境や都市環境の維持に役立つと感じています。