ゲルノット・ワーグナー
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アメリカの気候科学者に聞く、ポストコロナと環境問題

新型コロナウイルス感染症が提起してくれた課題

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タイムアウト東京 >ポストコロナ、新しい日常。> インタビュー:ゲルノット・ワーグナー

テキスト:マーカス・ウェブ
翻訳:トノタイプ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビューシリーズを行っている。

第15弾はロンドンのタイムアウト編集部からニューヨーク在住の気候科学者ゲルノット・ワーグナーにインタビューを申し込んだ。ニューヨーク大学准教授として活動する気鋭の研究者が、新型コロナウイルス感染症による危機が地球に与える影響について語ってくれた

コロナ禍で全てが変わっていく

新型コロナウイルス感染症と環境を見てみると、信じられないことに、あらゆる事が急速に変化しているのが分かります。我々は全てを封鎖しました。一時は25億人が閉じ込められ、今でも多くの人が出てこられない状況が続いています。

その結果、ニューヨークの大気汚染や二酸化炭素(CO2)排出量が減少しました。経済学者や環境保護主義者の立場からすると素晴らしい時期です。しかし、これまでで最も被害がひどい国の震源地にいる、一人のニューヨーカーとしては、恐怖を感じています。

ロックダウンと大気汚染

皮肉なことに、一酸化二窒素や二酸化硫黄のような物質の排出量が大幅に減少しているため、実際には非常に多くの人々の寿命が延びている可能性があります。その結果、新型コロナウイルス感染症が流行している方が、人々は長生きするわけです。

スタンフォード大学地球システム科学科助教授のマーシャル・バークは、武漢において同地域の大気汚染が減少したことで、最大7万7000人の命が救われた可能性が高いと計算しています。これまで中国全土で新型コロナウイルス感染症により死に至った、5000人という数字よりもはるかに少ないのです。もちろん、新型コロナウイルス感染症については完全に否定されるものであって、良いことだと言っているのではありません。これは、武漢における大気汚染の問題がいかに大きいかということを示しているのです。

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新型コロナウイルス感染症と気候変動

ただ、二酸化炭素排出量の話は大気汚染とは大きく異なるものです。気候変動の主な原因である二酸化炭素排出量も、最大20%は減少していて、これは大幅な減少ですが、十分ではありません。私たちの目標はゼロエミッションですが、巨大な経済活動が封鎖しても排出量は20%しか削減できないのです。

大気汚染と違って二酸化炭素はフローではなく、ストック型の汚染物質。蓄積されていくことが問題なのです。ちょうどいいたとえとして浴槽が挙げられるでしょう。流れ込む水が問題なのではなく、すでにそこにある水が問題なのです。二酸化炭素で言えば、すでに大気中にあるものが、世界の平均気温と連動していることになります。ですから、大気中の「二酸化炭素の浴槽」の悪化を止めるためには、流入量をゼロにする必要があるのです。ロックダウンはその流入をわずかに減少させましたが、気候変動を止めるほどではありません。大気中の二酸化炭素濃度は今年も上昇するでしょうし、気温は何十年にわたり、海面も何世紀にわたり上昇し続けるでしょう。

経済と環境双方への投資を

今回の危機は、単なる封鎖だけでは二酸化炭素排出量を十分なスピードで削減できないことを示しています。私たちにはさらなる努力が必要です。私たちは再生可能エネルギーに投資する必要があり、それは新型コロナウイルス感染症に苦しんできた経済にとっても良いことでしょう。

私たちは地球を脱炭素化するため、クリーンで、無駄がなく、効率的な環境技術に多くの金を使わなくてはなりません。そうすることによって、より多くの雇用を生み出し、より多くの経済成長につながるのです。経済と排出の問題を二者択一する必要はないのです。

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問題は残された時間

ありとあらゆるものが対象となる、巨大でシステマティックな新型コロナウイルス感染症と同じく、気候変動も問題の多くは、非常に広範囲に拡大しています。問題は時間です。出現から数週間で我々を襲った新型コロナウイルス感染症に対して、私たちは比較的早く反応しました。

しかし、新型コロナウイルス感染症は数日、数週間の感覚ですが、気候については数十年、数世紀の感覚になってしまっており、私たちはそれに対する反応がとても遅いのです。人々は今、新型コロナウイルス感染症で死に至っていますが、気候変動による死は数十年後、数百年後に起こるでしょう。

フランスのような国が1週間前に封鎖していれば、最大で50%の死は避けられたという報告もあります。新型コロナウイルス感染症の場合は、数日で違いが現れます。気候については、結果が出るのは遅いかもしれませんが、より大きな意味を持ちます。

だからこそ、行動する必要性はさらに大きくなるわけです。2019年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、地球を救うためには12年以内に思い切った行動を取る必要があると警告しました。今、私たちにある時間は10年ほどです。今回の危機は最悪の事態が起こり得ることを、 私たちに示しているのです。必要なことをするのは、今なのです。

ゲルノット・ワーグナー

ニューヨーク大学環境学の臨床准教授、同大学ワーグナー公共政策大学院の臨床教授を務め、環境経済と環境政策で教えている。気候変動に関する2冊の本、『Climate Shock』(邦訳『気候変動クライシス』)と『But Will The Planet Notice?』を出版。気候変動問題に特化したメディア『ブルームバーグ・グリーン』で、コラム『Risky Climate』も執筆している。

  • Things to do

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。ここではアーカイブを紹介していく。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第1弾では、ビジネス、テクノロジー、クリエイティブに精通し、プロダクト、サービスからブランド構築まで幅広く手がけるTakram代表の田川欣哉に話を聞いた。

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  • トラベル

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第2弾では、世界最大の旅行プラットフォーム、トリップアドバイザーの日本法人代表取締役を務める牧野友衛に話を聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第3弾では、雑誌『自遊人』の編集、米や生鮮食品、加工品などの食品販売、里山十帖(新潟県南魚沼市)や箱根本箱(神奈川県箱根町)などの宿泊施設を経営&運営する自遊人の代表取締役 、岩佐十良に話を聞いた。 ※現在クラウドファンディングも実施中、公式サイトから確認してほしい。  

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  • トラベル

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第4弾では、岐阜県飛騨古川にて、里山や民家など地域資源を活用したツーリズムを推進する、美ら地球(ちゅらぼし)代表取締役の山田拓に話を聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第5弾では新宿、歌舞伎町の元売れっ子ホストで現在はホストクラブ、バー、美容室など16店舗を運営するSmappa! Group会長の手塚マキに話を聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第6弾では、ウェブデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティーデザイン、空間デザインなど年間300件以上のプロジェクトを手がけるロフトワーク代表取締役の林千晶に話を聞いた。

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音楽界の先駆者であり、ユネスコの親善大使でもあるジャン・ミシェル・ジャールが、4月に行われた第1回『レジリアート(ResiliArt)』に参加した。ユネスコが主催する『レジリアート 』は、新型コロナウイルス感染症が世界的流行している現在の、そしてポストコロナ時代のクリエーティブ産業について、主要な文化人が語り合うバーチャル討論会だ。 シリーズ第7弾では、ORIGINAL Inc. 執行役員でシニアコンサルタントを務める高橋政司が、ジャン・ミシェルに新型コロナウイルス感染症の大流行がアーティストにもたらした課題、この危機でクリエーティブ産業がどう良くなる可能性があるのか、などについて聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第8弾では、Toshiko Mori Architectのファウンダーで、ニューヨーク在住の森俊子にコロナ危機が起きて以来の生活を形づくるデザインの役割について話を聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第9弾では、イギリスでホテルを経営しているデボラ・クラークに、新型コロナウイルス感染症がホスピタリティー業界にもたらした影響とホテル経営者たちが進むべき道について聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第10弾では、現在WIRED CAFEを筆頭に国内外で約80店舗を展開、カフェ文化を日本に浸透させた立役者であるカフェ・カンパニー代表取締役社長の楠本修二郎に話を聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第11弾では、イギリス帝国戦争博物館の館長で、国立博物館長評議会の会長を務めた経験も持つダイアン・リースに、世界中の博物館が新型コロナウイルス感染症の流行にどう対応すればいいかについて聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビューシリーズを行っている。 第12弾は、風営法改正やナイトタイムエコノミー推進におけるルールメイクを主導してきた弁護士の齋藤貴弘だ。国内外の音楽シーンやカルチャーに精通する齋藤に、日本のナイトタイムエコノミーや文化産業が直面する現状、そして、そこから見える日本の新しい文化産業の可能性を聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画を連載している。 今後、私たちの社会、環境、生活はどのように変わっていくのか。その舞台装置となる都市や空間は、どのようにアップデートされていくのか。シリーズ第13弾では、廃棄物処理事業者として都市のごみ問題と向き合ってきた日本サニテイション専務取締役の植田健に、コロナ危機下の東京におけるごみ問題にどのような変化が起き、ポストコロナ時代のごみ処理にとっての課題は何か、話を聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画を連載している。 緊急事態宣言下、外出自粛要請が出された東京都心は、ゴーストタウンのように静まり返った。そこで改めて浮き彫りとなったのが、過密都市東京の抱える課題だ。あらゆるものが密に集まる都市のリスクとは何か。人々が快適に暮らし、働き、楽しむ理想的な街の姿とはどのようなものなのか。シリーズ第14弾では、都市空間の在り方を問い直し、さまざまな実験的アプローチで新たな空間価値を提案し続けるライゾマティクス・アーキテクチャー主宰 、齋藤精一に話を聞いた。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビューシリーズを行っている。 第15弾はロンドンのタイムアウト編集部からニューヨーク在住の気候科学者ゲルノット・ワーグナーにインタビューを申し込んだ。ニューヨーク大学准教授として活動する気鋭の研究者が、新型コロナウイルス感染症による危機が地球に与える影響について語ってくれた。

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