オンラインで物理的距離が縮まった
「クリエーターの仕事が世界に循環するプラットフォームを作りたい」という想いを胸にロフトワークを設立したのは2000年。現在では世界中の2万5000人のクリエーターとつながり、社員も150人規模になりました。
とはいえ、社長が頂点にいるピラミッド型の企業とは違い、あくまでも「クリエーティブワークをする個人の集合体」であり、私も経営者というよりは、自治がしっかりしている団体の管理人のような感じです。今回のコロナショックにおいても、私が上から指示を出すのではなく、チームごとにいろいろなことを決めて実行しています。
例えば、あるチームリーダーは「自宅でも10時からきちんと働き始める」ためのインセンティブとして、毎朝30分、オンラインでのチーム会議を開くようになりました。すぐにほかのチームも続き、どのチームも効果があるので、コロナ収束後も続けようかという話になっています。また、命名などの細かいルールも新たに設定して、過去2年間分をリネームするなど、忙しくて見ないフリをしていた細かい部分に着手することができました。
5月19日、26日は2週にわたって『デザイン経営2020─Withコロナ/Afterコロナを創造的に生き抜くには』というオンラインカンファレンスを行ったのですが、申し込みが2700人を超えたのは驚きでした。もともと3月開催予定がコロナの影響で延期となり、オンラインでの開催に踏み切ったので恐る恐るだったのですが、当日は登壇者への質問や感想もチャットですぐに集まり、リアルなカンファレンスをネットで同時配信するのとは違う、オンラインならではのメリットに気付かされました。
また世界中のクリエーターから「未来を変えるマスクデザイン」のアイデアを募集した『Mask Design Challenge 2020』が大成功を収めました。台湾人のスタッフが始め、世界中でニュースとして取り上げられて、3週間で229のアイデアが集まったのです。「グローバル」と言うのは簡単、行うのは難しかったのが、オンラインが一般化した途端に物理的な距離が縮まり、世界中の誰もが参加、協力するようになったのは実に興味深い現象だと思います。