ル・コルビュジエ
Photo: Keisuke Tanigawa
Photo: Keisuke Tanigawa

東京、2月から3月に行くべきアート展

個性豊かな注目の展覧会を紹介

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東京の人気ギャラリーや美術館で開催するアート展を紹介。2月から3月にかけては、アオイヤマダをはじめ、第一線で活躍するトップクリエーターから成る写真展や、「三菱一号館美術館」のビアズリー展、「サントリー美術館」のエミール・ガレ展など、注目の展示が盛りだくさん。リストを片手にさまざまなアートと出合おう。

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  • アート
  • 渋谷

パルコミュージアムトーキョー(PARCO MUSEUM TOKYO)」で、新時代のパフォーマー・アオイヤマダをはじめ、第一線で活躍するトップクリエーター6人から成る「海老坐禅(えびざぜん)」初の作品集の『EBIZAZEN』刊行と展覧会が開かれる。

「東京2020オリンピック」閉会式のソロパフォーマンスをはじめ、Netflixのドラマ『First Love初恋』や映画『PERFECT DAYS』に俳優として出演するなど、国内外から注目を集めるダンサー・俳優のアオイヤマダ。海老坐談は、アオイヤマダをミューズとし、視覚ディレクターでグラフィックアーティストの河野未彩、フォトグラファーの磯部昭子、ヘア&メイクアップアーティストの冨沢ノボルらをメンバーとする、クリエーティブコレクティブだ。

作品集は、東京・熱海・松本など多様なロケーションとユニークなテーマで撮影された150点以上の写真作品と、メンバーによる座談会の様子を収録した。固定観念にとらわれない制作により、斬新で新鮮な、海老坐禅にしか表せない作品を生み出している。

会場では、作品群がさまざまな手法で展示されるほか、オリジナルグッズやメンバーの私物、撮影で使用したプロップスなどを販売するマーケットなどが展開。また、2025年2月8日(土)には、海老坐禅の撮影風景を生で見られるライブシューティングイベントを会場内で開催する。

さらに、作品集を先行販売し、会場で作品集を買うと展覧会入場料が無料になる特典もある。彼らの刺激的で唯一無二の世界観を堪能してほしい。

  • アート
  • 六本木

「サントリー美術館」で、エミール・ガレ(Émile Gallé、1846~1904年)の没後120年を記念する展覧会が開催。ガラス、陶器、家具、そしてガレ自筆文書などの資料類の計110点を通じて、ガレの地位を築いたパリとの関係に焦点を当て、彼の創造性の展開を顧みる。

ガレはフランス北東部ロレーヌ地方の古都ナンシーで、父が営む高級ガラス・陶磁器の製造卸販売業を引き継ぎ、ガラス、陶器、家具において独自の世界観を築く。ガレ社の製品はパリの富裕層に販売され、輝かしい成功を収めた。

1878年、1889年、1900年にはパリ万国博覧会で新作を発表。しかし、その成功によってもたらされた社会的ジレンマや重圧は想像を絶するものだったといい、1904年にガレは白血病によってこの世を去る。

本展では、フランス「パリ装飾美術館」から万博出品作をはじめとした優品が多数出品されるほか、近年収蔵されたパリでガレの代理店を営んだデグペルス家伝来の資料を初公開。青年期から最晩年に至るまでの、ガレの豊かな芸術世界を楽しんでほしい。

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  • アート
  • 立川

立川の「プレイミュージアム(PLAY! MUSEUM)」で、雑誌『anan』や『BRUTUS』のアートディレクションのほか、絵本『ぐるんぱのようちえん』の絵で知られる堀内誠一(1932~1987年)の展覧会を開催。3つのセクションで構成された本展では、新時代を切り開いた雑誌作りをひもとく。夢いっぱいの絵の世界を楽しみ、未来への指針を見つけ出す。

「FASHION」展では、堀内が創刊から49号までを手がけた『anan』にフォーカスする。1947年の戦後の混乱の中、堀内は14歳で伊勢丹百貨店の宣伝課に就職。プライスカード作りや看板など、さまざまなデザインの仕事を経験し、やがて広告制作会社で雑誌のアートディレクションを手がけるようになる。そして、1970年に日本初となる大判の女性誌『anan』のアートディレクターに抜擢(ばってき)された。

「FANTASY」展では、心に漂う世界を描く「ファンタジーのおもしろさ」を大切にしていた堀内の絵本の中へ。26歳から絵本作家としても活動を始めた堀内は、後に「絵本作家の道こそ運命が決めた本命」と語り、70冊を超える絵本を残した。楕円(だえん)の展示室には、高さ3メートルもの大きな絵本が並び、空想する面白さや心を解き放つ喜びが体感できるだろう。

「FUTURE」展では、堀内を敬愛する100人が好きな作品を推挙し、受け取ったもの、未来へ伝えたい言葉とともに展示する。

そのほか、大きな「ぐるんぱ」に会える「祝祭広場」や、絵本の世界観を楽しむメニューを提供するブックカフェなどが展開。大人から子どもまで堀内ワールドを楽しんでほしい。

  • アート
  • 渋谷

「渋谷ストリーム ホール」で、日本最大級のストリートアート展「ストリートアートの進化と革命」展が開催。ストリートアートシーンに革命を起こしたバンクシー(Banksy)を中心に、初期に活躍したアーティストから、コマーシャルギャラリーへ進出したキース・へリング(Keith Haring)、ジャン=ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)など、50100作品という国内最大規模の作品群とともにストリートアートの進化の軌跡を追う。

多彩なスタイルや技法を駆使し、今世界から注目を集める日本人ストリートアーティストでは、 AITO KITAZAKICHOB-ONEJIKKENRATRoamcouchSUIKO5人が出展する。

また、東京藝術大学学長であり現代美術家の日比野克彦が「脳はダマせても⇄身体はダマせない#01」を展示。 VRゴーグルを装着した日比野がリアルなギャラリー空間にライブペインティングをしながら、観客はモニターでも仮想空間に描かれた作品を楽しめる。

なお、本展は作品鑑賞だけでなく、その変遷や未来のストリートアートシーンを想像する楽しさも体感できる。そこだけの世界観を存分に堪能してほしい。

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  • アート
  • 日本橋

日本橋高島屋 S.C.」で、北欧の暮らしにおける明かりとの付き合い方や、北欧で生まれた名作照明とそのデザイナーたちを紹介する展覧会が開催。北欧の住まいで使われている明かりや建築と調和している明かり、そして、北欧からどのようにして質の高い照明器具が生まれたのかを捉える。

「近代照明の父」と呼ばれるポール・ヘニングセン(Poul Henningsen、1894~1967年)が、3枚シェードの「PHランプ」を創案してから約100年。本展では、「ルイスポールセン」「レ・クリント」「アルテック」をはじめ、この100年の間に北欧で誕生した80点以上の名作照明器具が一堂に集結する。

また、ルイスポールセンが1925年のパリ万博に出品した「パリランプ」が、デンマークから海を渡って特別に公開。1926年に完成した当時のPHランプも楽しめる。

暮らしに溶け込む心地よい明かりに出合ってほしい。

  • アート
  • 用賀

「世田谷美術館」で、「世田谷美術館コレクション選 緑の惑星 セタビの森の植物たち」が開催。コレクションから古今東西、さまざまな手法で植物を表現した作品約130点を展示する。



見どころは、およそ半数が収蔵後初公開となる多種多様な出品作品。アンリ・ルソー(Henri Rousseau)や北大路魯山人などの定番コレクションに加え、油彩、びょうぶ、掛軸、版画、彫刻、工芸、写真、スケッチと、ジャンルも多彩な作品を通して、植物の表現の多様さをじっくり味わえる。



また、アートの普及活動に力を入れてきた美術館ならではの、圧巻の子どもたちの作品も必見。区内の小学校とのコラボによる子どもたちの制作した1200点以上の植物作品は、生命エネルギーにあふれ、きっと元気をもたらすだろう。

さらに、毎週土曜日には、本展出品作品である光のアーティスト、ジェームズ・タレル(James Turrellの体験型作品『テレフォン・ブース』の中に1人ずつ入り、移り変わる光を浴びることができる。その他にも、思い思いの葉っぱを描く参加コーナー「みんなでつくるセタビの森」や、植物の持つ生命エネルギーをイメージし、パフォーマンスを作るワークショップなど、多様なイベントが盛りだくさんだ。

誰にとっても身近なテーマである植物は、子どもから大人まで楽しめるだろう。

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  • アート
  • 用賀

「世田谷美術館」のイギリス美術は、1980年代から90年代半ばに収蔵され、当時国際的に活躍していた作家たちが80年代に制作した作品が多くを占めている。本展では、過去の展覧会の記録写真も紹介しながら、80年代を中心とするイギリス美術のコレクションを振り返る。

コレクションには、美術教育を受けず独自の表現で創作に励んだ素朴派のイギリスの画家であるアルフレッド・ウォリス(Alfred Wallis、1855〜1942年)や、首相を務めたサー・ウィンストン・S.チャーチル(Sir Winston S.Churchill、1874〜1965年)ら独学の人々による作品が収蔵されている。

また、デイヴィッド・ナッシュ(David Nash)やリチャード・ロング(Richard Long)といった、イギリスの現代美術作家による作品も含む。敷地内の庭では、バリー・フラナガン(Barry Flanagan、1941〜2009年)などの屋外彫刻も鑑賞できる。

本展を通して、さまざまなジャンルのイギリス美術を堪能してほしい。

  • アート
  • 渋谷

「東急プラザ渋谷」の3階で、葛飾北斎の浮世絵を全身で感じる新感覚イマーシブエンターテイメント「HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO」が開催。北斎が生きた江戸の浮世にタイムスリップしたような、「映像×サウンド×触覚」の圧倒的な没入体験が待っている。

本展は、誰もが一度は見たことがある北斎の作品を、超高精細イメージデータを使用し、臨場感のある高精細な映像をリアルに再現。さらに、床が水たまりや砂浜に変わったかのように感じさせる触覚提示技術などの演出により、北斎が見た景色や歩いた感覚を味わえる。

会期中は、日本のクラフトマンシップを持つブランドとのコラボレーショングッズも発売する。北斎の世界へ全身でダイブしよう。

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  • アート
  • 原宿

幕末から明治にかけての浮世絵師である豊原国周(1835~1900年)の過去最大級の回顧展が「太田記念美術館」で開催。これまで紹介される機会の少なかった知られざる巨匠・国周の、初期から晩年までの作品群約210点を展示する。

大迫力の役者絵や繊細で優美な美人画はもちろん、初期に手がけた武者絵から、風景画、最晩年の子ども絵まで、ジャンルと時代に偏りなく選定された作品を通して、国周作品の魅力に迫る。

注目は、代表作である『具足屋版役者大首絵』シリーズ12点と、初公開の肉筆美人画『遊女とほととぎす』(前期、個人蔵)。また、大酒飲みや破産宣告、117回の引っ越しなど、信じがたいようなエピソードに満ちている人物像も併せて紹介する。

国周の世界をじっくりと堪能してほしい。

  • アート
  • 神奈川

「川崎市岡本太郎美術館」で、今年で28回目を迎える「岡本太郎現代芸術賞展」が開かれる。

岡本太郎(1911〜1996年)が逝去した直後に創設された岡本太郎現代芸術賞太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」を問う。芸術の新しい可能性を探る、太郎がよく使用した言葉である「ベラボーな」作品が並ぶだろう。

会期中は、入選作品の中からお気に入り作品に投票もできる。投票結果は公式ウェブサイトで発表予定だ。また、入選作家に手紙が書けるコーナーや、作家によるリレートークも行う。

見逃さないでほしい。

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  • アート
  • 千葉

1990年から、34年にわたり活動を続けてきた「DIC川村記念美術館」。2025年4月からの休館を前に、約180点の作品群が勢揃いするコレクション展示を行う。

同館が設立当初から大切にしてきた作品・建築・自然の調和というコンセプトに基づき、庭園と館内全ての展示室を用いて、作品を展観。庭園の野外彫刻を含め、所蔵作品の流れを漏れなく紹介する過去最多のコレクション展示だ。

また、作品のサイズや周りに醸し出す雰囲気までも考慮した11の展示室や、外の光や景色を適切に採り入れた空間設計など、作品と鑑賞者のために凝らされた建築の工夫にも注目してほしい。

美術館の敷地内に入り、林間の小道を抜け、池を眺めながら、静寂が広がるエントランスホールへと導かれる同館では、館内にいながらも随所に外の自然を感じることができるだろう。

自身の眼と心で、美術館を体感し尽くしてほしい。

  • アート
  • 銀座

「ギャラリー小柳」で、マーク・マンダース(Mark Manders)による個展「Silent Studio」が開催。ギャラリーの空間を半透明の薄いビニールで囲ってアーティストのスタジオに一変させ、新作を含む9点を公開する。  

マンダースは、彫刻や家具、日用品や建築部材などを「想像上の」部屋に、緻密に練られた配置図に基づいて配するインスタレーションを制作してきた。展示空間の中央には、『Bonewhite Clay Head with Two Ropes』(2018〜2024年)を設置。作業台の上に置かれた乾燥してひび割れたかのような彫刻は、ロープで留められ、今にも崩れそうな緊張感を与える。

これらの作品がスタジオに設えられることで、作業の途中であるかのような印象をもたらし、静かなスタジオに作家がそれまでいたかのような、あるいは長い間放置されたかのように感じさせるだろう。はかなさが漂う彫刻は、ブロンズなどで強固に作られており、まさに一つの瞬間が凍結したかのようだ。

作品が醸し出す、詩的な空間をじっくりと味わってほしい。

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  • アート
  • 丸の内

「三菱一号館美術館」で、25歳で他界したイギリスの画家、オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley、1872~1898年)の大回顧展が開催。直筆約50点を含め、挿絵やポスター、装飾など、約220点の初期から晩年までの作品を網羅し、19世紀末の欧米を騒然とさせたビアズリーの歩みをたどる。

ビアズリーは、精緻な線描や大胆な白と黒の色面から成る、極めて洗練された作品を描き続けた。オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)著『サロメ』の挿絵で成功するが、1895年のワイルドに対する同性愛裁判の余波により仕事を失う。テオフィル・ゴーティエ(Théophile Gautier)著『モーパン嬢』の挿絵などで新境地を見せるが、持病の結核が悪化し、世を去る。

本展では、世界有数のビアズリーコレクションを有するロンドンの「ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館」による全面協力の下、150点が一挙来日。彗星(すいせい)のごとく現れ、一躍注目を集めた異才の生きざま含めて、全てを公開する。

なお、2025年218日(火)~314日(金)の平日に利用可能の、「平日限定チケット」が1,900(以下全て税込み)で販売される。また、ファン必須の、会期中何度でも利用できる「ビアズリー偏愛パス」が5,000円で販売予定だ。詳細は公式ウェブサイトを確認してほしい。

早過ぎる転落から最晩年の進化まで、凝縮された画業を見尽くしては。

  • アート
  • 白金台

「東京都庭園美術館」で、「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」が開催。幾何学的抽象、イラストレーション、写真、タイポグラフィの4つのカテゴリーに出品作品を分け、ポスター約125点を中心に、冊子や雑誌などの多彩な作品を展示する。

見どころは、戦後西ドイツのグラフィックデザインを総覧できる充実さを誇る「A5コレクション デュッセルドルフ」から選ばれた珠玉の作品群。同コレクションは、主に戦後西ドイツのグラフィックデザインから成り、1000点以上のポスターやその他の資料類によって構成。日本では初公開となる。

中には、手書きのタイポグラフィを使用した作品など、カテゴリーを横断したものとして見ることのできる作品もあり、デザイナーたちによる斬新なアイデアや実験的な試みが楽しめる。ハンス・ヒルマン(Hans Hillmann)やオトル・アイヒャー(Otl Aicher)といった、西ドイツで活動したデザイナーたちによるクリエーションの魅力を発見してほしい。

また、戦後に生み出された西ドイツのグラフィックには、戦禍による傷跡の残る中、新たな時代を切り開くべく発信し続けたデザイナーたちのエネルギーと情熱も見て取れる。

会期中は、2025年3月30日(日)にクラシック音楽から現代音楽までドイツ音楽の世界へいざなうコンサートをはじめ、4月20日(日)に講演会「映画から見る戦後ドイツのポスターグラフィック」のほか、ワークショップなども開かれる。

デザイン教育を基盤としたモダニズムを継承しながらも、戦後の新しい時代の表現を追求した西ドイツにおけるグラフィックデザインの世界を堪能してほしい。

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  • アート
  • みなとみらい

202528日(土)に全館オープンを迎える「横浜美術館」で、「横浜」をキーワードにさまざまな人々を迎え入れたいという想いを込めた「おかえり、ヨコハマ」展が開催される。

見どころは、「多様性」という観点の下、これまであまり注目されてこなかった開港以前の横浜に暮らした人々、女性、子ども、さまざまなルーツを持つ人々などに改めてスポットライトを当てた、横浜にまつわる作品群。ローカルの歴史を深掘りすることで、おなじみの作品や横浜の歴史に新たな視点をもたらす。

また、ポール・セザンヌPaul Cézanne)、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)ルネ・マグリット (René Magritte)や奈良美智など、近代美術の名作から現代美術の作品まで、同館コレクションが勢揃い。さらに、子どものために作品を選び、見やすいよう工夫して展示する「子どもの目でみるコーナー」が設けられ、親子で会話しながら鑑賞できる。

新しく生まれ変わった同館の作品空間を楽しんでほしい。

  • アート
  • 目白

1975年、学習院大学内に開館した「学習院大学史料館」は、 2025年3月に「霞会館記念学習院ミュージアム」としてリニューアルオープンを迎える。これを記念し、特別展「学習院コレクション 華族文化 美の玉手箱―芸術と伝統文化のパトロネージュ」が開かれる。

日本の芸術と伝統文化は、天皇家をはじめとする多くの「パトロン」により、独自の文化や芸術が育まれ、現在まで受け継がれてきた。彼らは伝統儀礼を重んじつつ、歌や文学、書画といった優れた芸術作品の誕生と保護に大いに貢献した。芸術家への支援を指す「パトロネージュ」なしには、芸術の発展は語れないだろう。 

同館には、天皇家、皇族、華族の学校であった学習院ゆかりの史・資料、美術作品など約25万点が収蔵されている。本展ではそのコレクションの中から、芸術と伝統文化の「パトロネージュ」をテーマに、絵画、工芸品、古文書、文学資料などの約100点を展覧する。

新たな展示空間で名品を堪能してほしい。

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  • アート
  • 神谷町

「麻布台ヒルズギャラリー」で、ニューヨークを拠点にグローバルな活躍を見せるアーティスト、松山智一の東京で初となる大規模個展が開催。20年以上にわたりニューヨークで活動し、いまや世界が注目する次世代のアーティストの一人となった松山の大規模作品15点を含む、近年の作品群約40点が展示される。

ブルックリン在住の松山は、絵画を中心に、彫刻やインスタレーションを制作。アジアとヨーロッパ、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素を有機的に結びつけて再構築し、異文化間での自身の経験や情報化の中で移ろう現代社会の姿を反映した作品を発表している。

絵画から放たれるまばゆいばかりの色彩は、松山作品の最大の特徴の一つだ。世界を彩る多様な文化、伝統、宗教、そして歴史的なものや現代的なもの、さらにはハイカルチャーから日常品といった要素が、無数の色で描かれている。

迫力ある色彩と壮大なスケールの絵画や巨大な立体などを通して、そこだけに広がる松山の作品世界に浸ってほしい。

  • アート
  • 京橋

「アーティゾン美術館」で、画家・硲伊之助(はざま・いのすけ、1895~1977年)の東京で初となる回顧展が開催。油彩画、版画、磁器など約60点の作品と資料をはじめ、硲と関わりのある同館の西洋絵画コレクション約15点を展示し、初期から晩年までの多様な側面を紹介する。

硲は17歳で画壇にデビューし、二科賞を二度受賞するなどで活躍。1921年の渡欧でアンリ・マティス(Henri Matisse)と出会い、教えを受ける。また、制作活動の傍ら、ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)、ポール・セザンヌ(Paul Cézanne)、ヴィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)などの画集編集や翻訳に携わるなど、西洋美術の紹介にも力を尽くした。1951年、師・マティスの日本初の展覧会実現においては、作家との交渉に携わる。

さらに、同館の収蔵作品であるマティスの『コリウール』やアンリ・ルソー(Henri Rousseau)の『イヴリー河岸』は、硲が自身の研究のために収集したものだ。

本展を通して、硲のさまざまな多才な姿を垣間見てほしい。

なお、同展チケットの料金で、同時開催の展覧会「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」を全て鑑賞できる。予約枠に空きがあれば美術館窓口でもチケットが購入可能だ。

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  • アート
  • 京橋

「アーティゾン美術館」で、20世紀前半を代表するアーティストカップル、ゾフィー・トイバー=アルプ(Sophie Taeuber-Arp、18891943年)とジャン・アルプ(Hans Arp、18861966年)を紹介する展示が開催。個々の作品を紹介するとともに、2人がそれぞれの制作に及ぼした影響やデュオでの協働制作の試みに注目し、カップルというパートナーシップの上にどれほどの創作の可能性を見いだせるかを再考する。

幾何学的抽象と色彩理論の研究を基盤に、テキスタイル、家具デザイン、建築設計、絵画など多方面で創作に取り組んだゾフィー。ジャンは、シュルレアリスムと抽象の間を行き来しながら、主にコラージュやレリーフ、彫刻の領域で創作を行った。

2人はそれぞれ前衛芸術の前線で活動しながら、コラボレーションによる作品も残している。ゾフィーが逝去して以降も、その残された作品はジャンの創作を刺激し続けるなど、彼らの創作は絶えず密接な関係にあった。この関係は、カップルにおける創作の可能性をはじめ、この時代の女性アーティストの立場や、芸術ジャンルのヒエラルキーに関する考え方など、20世紀の美術を考察する上で普遍的なテーマを映し出している。 

ゾフィーの作品45点、ジャンの作品40点のほか、コラボレーション作品14点の計99点を出品する本展。貴重な機会を見逃さないでほしい。

なお、同展チケットの料金で、同時開催の展覧会「硲伊之助展」「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」を全て鑑賞できる。予約枠に空きがあれば美術館窓口でもチケットが購入可能だ。

  • アート
  • 目白台

「永青文庫」で、「細川家の日本陶磁―河井寬次郎と茶道具コレクション―」が開催。陶芸家・河井寬次郎(18901966年)の作品30点余りによって作風の変遷をたどるほか、日本の茶道具、熊本を代表する焼き物の「八代焼」に注目する。

熊本藩主であった細川家には、日本の陶磁作品が数多く伝えられている。特に、茶の湯を愛好した細川家の茶道具には、「唐物」をはじめとする外国の茶道具も、日本で焼かれた「和物」も残されていることから、その比較を通じて日本陶磁の広がりを垣間見られる。

今回、寬次郎の作品や八代焼は、約20年ぶりに大公開。大正から昭和にかけて活躍した寬次郎は、初期に中国の古陶磁を模範とした作品で注目され、後に「民藝運動」の中心人物となり、作風が大きく変化した。熊本藩の御用窯であった八代焼は、素地と異なる色の陶土を埋め込む象嵌(ぞうがん)技法が特徴だ。

早春は日本陶磁コレクションの多彩な魅力に触れてほしい。

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  • アート
  • 丸の内

「静嘉堂@丸の内」で、美人画と並ぶ浮世絵の二大ジャンル・役者絵に注目する展示が開催。近世初期風俗画の優品『歌舞伎図屏風』を皮切りに、初期浮世絵から錦絵時代、明治錦絵まで、同館コレクションのみで役者絵の歴史を網羅する。

見どころは、浮世絵界の重鎮・歌川国貞による超絶細密画で歌舞伎の神髄を描く『芝居町 新吉原 風俗鑑』の一挙公開だ。また、国貞の弟子で「明治の写楽」と称せられた豊原国周の、今刷ったように美しい錦絵帖を初公開する。

歌舞伎を描いた、秘蔵の浮世絵が並ぶ本展を満喫してほしい。

  • アート
  • 六本木

六本木の「森アーツセンターギャラリー」で、「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が開催。米国最大規模の質の高い古代エジプト美術コレクションから、えりすぐりの名品群が集結する。

彫刻、棺、宝飾品、土器、パピルス、そして人間のミイラ2体やネコのミイラなど約150点の遺物を通じて、高度な文化を創出した人々の営みを解明する。当時の住居環境や仕事事情、出産や子育てなどにも着目し、身近な謎を掘り起こす。

また、美しい副葬品や神々の姿を表したレリーフなどの葬送儀礼に関する作品を紹介し、古代エジプト人の死生観に迫る。さらに、いま注目を集める気鋭のエジプト考古学者・河江肖剰(かわえ・ゆきのり)による最新研究を元に、巨大ピラミッドの建築方法や建てられた当初の姿も解き明かしていく。

知への好奇心を呼び覚ます空間、謎に満ちた古代エジプトの世界を探求しよう。なお、前売券は2025年1月24日(金)23時59分まで販売する。

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  • アート
  • 丸の内

「東京ステーションギャラリー」で、「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」が開催。布と紙で美しく親しみやすい作品を作り続けた宮脇綾子(1905〜1995年)を、一人の優れた造形作家として捉え、宮脇の芸術に新たな光を当てる。

「アプリケ」「コラージュ」「手芸」などに分類されてきた宮脇の作品は、いずれの枠にも収まりきらない豊かな世界を作り上げている。野菜や魚など、主婦として毎日目にしていたものをモチーフにし、それらを徹底的に観察。時には割って断面をさらし、分解して構造を確かめた。

生み出された作品は、造形的に優れているだけでなく、高いデザイン性と繊細な色彩感覚に支えられ、命の輝きを見事に表現している。

約150点の作品と資料が集結する本展。写実性を持ちながら、自由で大胆な宮脇の作品世界を楽しんでほしい。

  • アート
  • 竹橋

「東京国立近代美術館」で、19世紀後半のスウェーデンに生まれた抽象絵画の先駆者、ヒルマ・アフ・クリント(Hilma af Klint、18621944年)のアジア初となる大回顧展が開催。全て日本初公開・初来日となる作品約140点を通して、画業の全貌を明らかにする。

20世紀初頭、抽象絵画を創案した画家として、近年再評価が高まったアフ・クリント。肖像画や風景画を手がける職業画家として、キャリアをスタートさせた。一方で神秘主義思想に傾倒した彼女は、交霊術の体験などを通して、自然描写に根ざしたアカデミックな絵画とは全く異なる抽象表現を生み出す。

本展の見どころは、異例の巨大なサイズで描かれた圧巻の『10の最大物』(1907年)。幼年期・青年期・成人期・老年期という人生の4つの段階を描いた10点組みの大作で、高さは3メートルを超える。多様な抽象的形象、画面からあふれ出るようなパステルカラーの色彩、そして圧倒的なスケールは、観る者を一瞬で引き込み、異空間を漂うかのような体験に誘うだろう。

また、アフ・クリントが残したスケッチやノートなどの資料、同時代の神秘主義思想・自然科学・社会思想・女性運動といった多様な創作の源も紹介する。

作品を通して、アフ・クリントの無限の想像力を体感してほしい。

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  • アート
  • 上野

「東京都美術館」で、20世紀を代表する巨匠、ジョアン・ミロ(Joan Miró、1893〜1983年)の大回顧展が開催。初期から晩年までの各時代を彩る絵画や陶芸、彫刻により、90歳まで新しい表現へ挑戦し続けたミロの芸術を包括的に紹介する。

太陽や星、月など自然の中にある形を象徴的な記号に変えて描いた、詩情あふれる独特な画風が特徴のミロ。作品には、潜在意識や子どものような精神、そして故郷への愛着が反映され、明るく楽しげな画面が多くの人を引きつける。それだけではなく、周囲の政治的・社会的状況への強い感受性と反骨精神が創作の原動力にもなっており、ミロは特定の運動に属することのない純粋で普遍的な芸術を追求し続けた。

ミロの代表作に挙げられるのが、戦火を逃れながら、夜や音楽、星を着想源にして全23点が描かれた『星座』シリーズだ。現在、シリーズの各作品は世界中にちらばっており、本展ではそのうちの3点をまとめて観られる貴重な機会となる。

ミロの大規模な個展が日本で開催されるのは、画家が存命中の1966年に開催されて以来。世界中から集結する傑作の数々を通して、ミロの芸術の神髄を体感してほしい。

  • アート
  • 広尾

「山種美術館」で、長寿や子宝、富や繁栄など、人々の願いが込められた美術に焦点を当てた特別展「HAPPYな日本美術 ―伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ―」が開催。古墳時代から近代・現代まで、幅広いテーマの「HAPPY感」にあふれた日本美術を展示する。

会場では、七福神と唐子の生き生きとした表情が楽しい狩野常信の『七福神図』や、富士山の堂々たる姿を描いた横山大観の『心神』など、吉祥画題の優品が並ぶ。

また、狩猟の成功を象徴するような『埴輪(猪を抱える猟師)』(個人蔵)、極楽浄土に住むという鳥『迦陵頻伽像』(個人蔵)など、貴重なはにわや迦陵頻伽(かりょうびんが)も登場。伊藤若冲による素朴で愛らしい風情の『伏見人形図』や、カエルの表情がユーモラスな柴田是真の『墨林筆哥』など、思わず笑みがこぼれる作品にも注目だ。

おめでたい作品が大集合の本展を見れば、心がハッピーになるだろう。

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  • アート
  • 上野

東京国立博物館」の平成館で、「旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」が開催。開創1150年を迎える2026年に先立ち、優れた寺宝の数々を一挙に紹介する。

京都西北に位置する嵯峨(さが)は、古くから風光明媚(めいび)な王朝貴族遊覧の地として愛されてきた。平安時代初期、嵯峨天皇(786842年)はこの地に離宮・嵯峨院を造営し、空海(774~835年)の勧めで、平安時代後期の仏像の最高傑作の一つである明円作「五大明王像」を安置。その後、876年に寺に改められ、大覚寺が開創された。

中でも、寺内の中央に位置する宸殿のふすま絵・障子絵などの障壁画は、安土桃山~江戸時代を代表する画家・狩野山楽(15591635年)の代表作として重要文化財に指定されている。

本展では、これらのうち120面を超える障壁画のほか、信仰の歴史を物語る歴代天皇の優美な書や、五大明王像を含む密教美術の名品も公開する。

  • アート
  • 駒場東大前

「日本民藝館」で、「仏教美学 柳宗悦が見届けたもの」が開催する。

1949年、主著作『美の法門』を上梓(じょうし)し、仏教美学の基礎をしるした同館創設者の柳宗悦(1889~1961年)。仏教美学のさらなる探求と強固な構築を目指した柳は、逝去するまで、途中病に伏せてからもその樹立を願い、とどまることはなかった。

本展では、仏教美学に関わる原稿や書籍などの資料展示をはじめ、柳が1955年に行った「東洋思想講座 第五回」の音源を基に制作した映像も初上映。そして、柳が直観で見届けた具体的な作物の提示などとともに、悲願とした「仏教美学」を顕彰する。

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  • アート
  • 神谷町

「大倉集古館」で、武士の姿が描かれた作品群を特集。戦の様子を描く合戦図や武人肖像画、武力や権力を象徴するモチーフなどを描いた絵画、武士の魂でもある甲冑(かっちゅう)や刀剣を展示する。

重要文化財の前田青邨による『洞窟の頼朝』をはじめ、『平家物語』や『太平記』を舞台にした絵画は、描かれた時代ごとの武士に対する思想を反映している。

また、武力と権力の象徴とされるタカをクローズアップした作品も取り上げる。「鷹図」が武士の表象としてどのように描かれ、荘厳され、利用されたかを探っていく。

本展を通して、時代ごとの表現や、さまざまな武威の表現を堪能してほしい。

  • アート
  • 六本木

六本木「泉屋博古館東京」で、「花器のある風景」展が開催。さまざまな年代の花器と花器が描かれた絵画を紹介する。



見どころは、日本画家の椿椿山(つばき・ちんざん)や梅原龍三郎などによる、華やかでおめでたい絵画群だ。また、室町時代の茶人、松本珠報(まつもと・しゅほう)が所持したとされる『砂張舟形釣花入 銘松本船』や、江戸時代の茶人、小堀遠州ゆかりの『古銅象耳花入 銘キネナリ』など、住友コレクションの茶の湯の名品花入も集結する。

さらに、華道家・大郷理明(おおごう・りめい)から寄贈された新規収蔵品94点の花器を一挙公開。また、江戸時代の発展を経て日本独自の美を確立していった近代の花器も並ぶ。

デザイン性に富む花器の世界をのぞいてほしい。

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  • アート
  • 半蔵門

「半蔵門ミュージアム」で、「平山郁夫《想一想》と昭和期の日本画家たち」展を開催。平山郁夫の名作『想一想』などを展示するほか、明治以降に生まれ、主に昭和の時代に活躍した日本画家たちを取り上げる。

平山の《想一想》は仏伝シリーズの一つで、釈尊がブッダガヤの菩提樹(ぼだいじゅ)の下で悟りを開いた瞑想(めいそう)場面を幻想的に表現している。今回は、同じくブッダガヤで悟りを開いた場面を表した、ガンダーラ仏伝浮彫『降魔成道』とともに鑑賞できる。

さらに、太陽を描いた横山大観と児玉希望、動植物を丁寧に表現した川合玉堂や堂本印象、人物を描写した鏑木清方と伊東深水の作品と、さらに小倉遊亀による静物画や、加藤東一の風景画も展示。近代日本画のみずみずしさや画家それぞれの個性を堪能してほしい。

  • アート
  • 初台

「東京オペラシティ アートギャラリー」で、近年国内外で注目を浴びる今津景の大規模個展が開催。拠点にするインドネシアと日本という2つの土地での経験と思考に基づく絵画、新作インスタレーション、骨格標本や土器などの巨大な彫刻を展示する。

今津は、メディアから採取した画像を加工・構成し、その下図を元にキャンバスに油彩で描く手法で作品を制作する。インドネシアに移住してからは、その土地で経験したさまざまな事柄、都市開発や環境問題に関するイメージが画面に配置されている。同時に、インドネシアの歴史や神話、生態系など複数の時間軸を重ね合わせ、より普遍性を持つ作品へと発展させている。

環境問題、神話、歴史、政治といった要素が同一平面上に並置される絵画は、膨大なイメージや情報が彼女の身体を通過することで生み出されるダイナミックな表現だ。唯一無二の今津の作品世界を堪能してほしい。

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  • アート
  • 汐留

「パナソニック汐留美術館」で、「ル・コルビュジエ―諸芸術の綜合 1930-1965」がル・コルビュジエ財団の協力のもと開催。ル・コルビュジエ(Le Corbusier、1887〜1965年)の、40代以降の絵画芸術にスポットを当てる日本初の展覧会だ。 


近代建築の巨匠として知られているコルビュジエは、視覚芸術の他分野においても革新をもたらした。本展は1930年代以降に彼が手がけた絵画、彫刻、素描、タペストリーを展示。併せて後期の建築作品も紹介することで、はるかに伝統的な枠組みを超えたコルビュジエの円熟期の芸術観を明らかにする。

洗練された空間の会場構成は、気鋭の建築コレクティブであるウルトラスタジオによるもの。コルビュジエの内装に着目して、「インテリア」「コーディネート」「トランジション」をキーワードに、居住空間の中に置かれた諸芸術の総合をイメージした。

また、ゲストキュレーターのドイツ人美術史家、ロバート・ヴォイチュツケ(Robert Woitschützke)による講演会が、2025年1月12日(日)に行われる。これまでにない新鮮な視点のキュレーションから、コルビュジエの創造の源泉に迫る。見逃さないように。

  • アート
  • 葉山

「神奈川県立近代美術館 葉山」で、インドネシアと日本を往復しながら活動するアーティスト・栗林隆の大規模個展が開催。葉山の自然の中で、普段展覧会では使わない空間を活用し、新作インスタレーションを発表する。また、未発表のドローイングや映像作品を通して、これまでの30年近くに及ぶ栗林の思考をたどる。

ドイツで5年ごとに開催される現代アートの国際美術展「ドクメンタ15」(2022年)や、「六本木アートナイト2023」のメインプログラム・アーティストに選ばれた栗林。活動開始から一貫して「境界」をテーマに、多様なメディアを用いて身体的体験を観客に促す作品を国内外で発表してきた。

作品は、自然と人間の関わりに対する深い関心から生まれる。薬草による蒸気で満たされた原子炉の形を模した構造物の中で過ごす『元気炉』シリーズ(2020年)などは、体験者の認識を揺るがすような刺激に満ちている。

今最も注目されているアーティストが、屋外のさまざまな空間で展開するかつてない機会。ぜひ、足を運んでほしい。

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  • アート
  • 清澄

「東京都現代美術館」で、坂本龍一(1952〜2023年)の大型インスタレーション作品を包括的に紹介する、最大規模の個展「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」が開催。先駆的・実験的な創作活動の軌跡をたどる。

50年以上にわたり多彩な表現活動をしてきた坂本は、1990年代からマルチメディアを駆使したライブパフォーマンスを展開させた。2000年代以降は、高谷史郎やアピチャッポン・ウィーラセタクン(Apichatpong Weerasethakul)などさまざまなアーティストと協働し、音を展示空間に立体的に設置する試みを積極的に実践してきた。

本展では、生前坂本が同館のために遺した展覧会構想を軸に、音と時間をテーマとする未発表の新作とこれまでの代表作から成る没入型・体感型サウンドインスタレーション作品10点余りを、美術館屋内外の空間にダイナミックに展開する。

坂本の「音を視る、時を聴く」ことは、鑑賞者の目と耳を開きながら、心を揺さぶり、従来の音楽鑑賞や美術鑑賞とは異なる体験を生み出すだろう。なお、2025年2月1日(土)・ 2日(日)は、中学・高校生、専門学校生、大学生の入場が無料だ。

  • アート
  • 箱根

「ポーラ美術館」で、「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」が開催。ウジェーヌ・ドラクロワ(Eugène Delacroix) 、クロード・モネ(Claude Monet)、アンリ・マティス(Henri Matisse)、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)、草間彌生、杉本博司、ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)など、印象派から現代美術まで、近現代美術における「色彩」の変遷をダイナミックに紹介する。

自然や都市、美術館などで目にする現実の色より、画面を通して経験する「仮想の色」に慣れつつある現代社会。しかし、時代を表してきた美術家たちは、日々研究を重ね、独自の表現方法を創り、人生をかけて色彩を生み出してきた。

チューブに入った油絵の具を巧みに扱い、さまざまな色彩によって視覚世界を再構築した19世紀の印象派や新印象派、20世紀のフォーヴィスムの絵画や抽象絵画。そして、色彩の影響力によって観る者の身体感覚を揺さぶる現代アート。日々の暮らしに彩りをもたらし、物質と精神をともに豊かにしてきた「本当の色」を身近に感じてほしい。

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  • アート
  • 府中

「府中市美術館」で、現代の日本において、風景画の可能性を広げている一人である小西真奈の個展が開催。美術館での初の大規模個展となる本展では、2000年代の代表作を精選し、近作と新作を含めた絵画約100点たっぷりと展示する。

アメリカ東海岸の美術大学で学んだ小西は、2006年に若手作家の登竜門である「VOCA賞」を受賞。雄大な景観を大画面に収め、隈までしっかりと描きこんだ理知的な絵画は、広く人気を得た。感情を抑えた描写は写真にも似てどこか懐かしさを感じさせ、穏やかに人々の記憶に語りかける。 


コロナ禍での小西は、公園や温室、小川の風景を描いた。対象との距離は縮まり、筆運びは即興的でおおらかになり、色は感覚的に選ばれる。鑑賞者の緊張を解くような、軽やかさと優しさが魅力だ。


どこででもあり、どこででもない場所を描いた小西の風景画をじっくりと堪能してほしい。

  • アート
  • 原宿

「ワタリウム美術館」で、東京の美術館で初となる雨宮庸介による個展が開催。同館を舞台に制作された最新VR作品を中心とし、25年前の最初期の作品を含め、代表作を一堂に体験できる。

最新作映像を体験できるVR作品では、VRのヘッドマウントディスプレイ(HMD)をかぶって体験する。雨宮は、通常「ここではないどこか」へ行くためのHMDをあえて、「どこかではないここ」に再注目させるためのデバイスとして定義し直す。予定されている場面は、雨宮が話す・語りかける、窓ガラスに図説やイメージを絵の具で描く、歌や楽器やダンス的要素、エキストラ出演シーンなどだ。

また、毎週土曜日の17〜18時には、雨宮による「人生最終作のための公開練習」が行われる。雨宮のVR作品の総決算である本展を見逃さないでほしい。

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  • アート
  • 埼玉

埼玉県東松山市の「原爆の図丸木美術館」で、ロンドンを拠点に活動する現代美術家、川久保ジョイの個展が開催。新作を含む作品群が、展示室と屋外の空間に公開される。

2014年ごろから、原子力発電所と原子力技術の利用に関する考察を巡る作品を発表している川久保。福島第一原子力発電所の事故以来、彼は当地へ赴き、土の中にネガフィルムを埋めて、一定の時間を置いた後に掘り返すという実験を行ってきた。展示室に設置された10枚のポラロイドは、芸術的実践を通じて福島の大地に関与し続けたコミットメントの記録でもある。

また、青森県の六ケ所村を中心に撮影された新作映像は、環境問題の文脈で提起された「Slow Violence(緩慢な暴力)」という概念から着想を得た。本作は、確実に進行しているが、認知されにくく対処もできない暴力というアイデアを巡りながら、本展の軸を形成している。

副題の一部である「45憶年の庭」とは、地球の年齢であり、そこから連想される人知を超えた時間軸が、本展を読み解く一つのキーワードだ。作品群と多層的に響き合うタイトルに込められた、川久保の哲学を深く感じることができるだろう。

  • アート
  • 代々木

文化学園服飾博物館」で、「あつまれ! どうぶつの模様」展が開催。世界各地の衣服に表される動物の模様を集めてそれらの持つ意味を探り、人間と動物の本来あるべき関係を改めて問う。

鳥や獣などの動物をモチーフとした模様を衣服に取り入れることは、さまざまな地域で見られる。模様からは、それぞれの民族がどのような動物を目にし、どのように暮らしを営んでいるのかが垣間見えるだろう。

また、空を飛ぶ鳥や牙を持つ勇猛な獣など、人にはない優れた能力が備わる動物に畏敬の念や神秘性を感じ、願いを託して模様に盛り込むこともある。さらに、人間の願望や創造力が現実を超越した空想の動物を作り出し、縁起の良い存在として衣服に表すこともある。

本展を通して、衣服に広がる動物の世界をのぞき込んでほしい。

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  • アート
  • 所沢

光のアーティスト、クロード・モネ(Claude Monet、18401926年)の見た世界に没入する体感型デジタルアート劇場「モネ イマーシブ・ジャーニー 僕が見た光」が、「角川武蔵野ミュージアム」で開催。モネや印象派と関わるさまざまな作品が床や壁面360度に映し出されることで、アートと物語を全身で浴び、体感できるイマーシブ作品を上映する。

映像展示では、モネが人生で訪れた場所をなぞりながら、見た景色、家族や友人、最後の住処であるジヴェルニーでの生活などを音楽とともに追体験できる。また、映像展示以外にも、印象派展の変遷や、制作のテーマ、手がけた「連作」の手法、そして影響を受けたジャポニスムに至るまでを解説する学びのエリアも登場する。

さらに、ジヴェルニーの「睡蓮の池」をしたスペースに太鼓橋を再現したフォトスポットも用意されている。

印象派が生まれた19世紀のフランスで、モネはどのように生き何を描きたかったのか、画家の網膜にはどんな光が投影されていたのか。光の世界に包まれながらモネの気持ちを感じてほしい。

  • アート
  • 芦花公園

「世田谷文学館」で、時代を超えて愛され続ける寺山修司(1935~1983年)の展示が開催。生誕90年に当たり、これまで収蔵してきた関連コレクションを一堂に展示する。

30歳を前後する新婚間もない寺山は、自宅向かいのマンションに家出した少年少女を劇団員として受け入れ、共同生活を始めた。会場では、その演劇実験室「天井棧敷」の誕生を約100点の関連資料を通じて紹介する。また、筋金入りの手紙魔と称される寺山の20代前半期の自筆書簡を展示し、その人物像に迫る。

現在も、戯曲の再演や映画上映などを通じて、若い世代を含めたファンが増え続けている寺山。唯一無二の寺山ワールドを堪能してほしい。

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  • Things to do
  • 上野

世界中で親しまれるキャラクター「ハローキティ」。サンリオのアイコンとして活躍し続けるハローキティの生誕50周年を記念した大規模展覧会が、「東京国立博物館」の「表慶館」で開催される。

本展では「キティとわたし」の50年をテーマに掲げている。ハローキティが半世紀も愛される存在になった理由は、「ファンひとりひとりとの関係性」が大きく関わっているようだ。このようなオリジナルな視点から、ハローキティだけが持つユニークな魅力を探っていく。

さまざなカテゴリーに分かれたコーナーはもちろん、史上最多数のグッズが展示される。アーティストとのコラボレーション作品や映像コンテンツなども見逃せない。

ハローキティと私たちの歩みをひもといてみては。

  • アート
  • 六本木

「森美術館」で、「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」展が開催。ゲームエンジン、人工知能(AI)、仮想現実(VR)、さらには人間の創造性を超え得る生成AIなどのテクノロジーを採用した現代アートを紹介する。

本展では、現代アートにとどまらず、デザイン、ゲーム、AI研究などの領域で高く評価されるアーティストとクリエーター12組による作品が集結。生物学、地質学、哲学、音楽、ダンス、プログラミングなどの領域とのコラボレーションを通して制作した作品群を通して、最新のテクノロジーと現代アートの関係性を体験できる。

また、平面作品や立体作品、インスタレーションなどのリアルに実在する作品も多く展示されることで、デジタル空間と現実空間を往来する。さらに、参加型のインタラクティブな作品や、鑑賞者同士で実際にプレイすることができる「インディー・ゲーム・コーナー」も登場予定だ。

現実と仮想空間が重なり合う空間で、人類とテクノロジーの関係を考えてみては。

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  • アート
  • 銀座

再開発計画のため、20252月をもって一時休館する日本演劇界の殿堂「帝国劇場」。この劇場への観客の思いを未来につなぐ展覧会が、大正時代から劇場と縁のある「銀座三越」で開かれる。

1966年に開場した帝国劇場は、演劇、ミュージカル、歌舞伎と、350を超える演目を上演し、多くの舞台人やファンに愛されてきた。本展では、劇場の歴史を振り返るパネルや映像展示のほか、実際に使用されていた看板や座席を使ったフォトスポット、オリジナルグッズを販売する。

チケット料金、展示内容、グッズ販売などの詳細は、1月下旬以降に発表される予定だ。心待ちにしてほしい。

  • アート
  • 上野

「東京藝術大学大学美術館」で、「相国寺展金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史」が開催。室町から現代に至るまで相国寺文化圏が生み出してきた美の歴史を、名品にまつわる物語とともにひもとく。 

相国寺は、京都の御所の北側にその大寺の姿を誇り、金閣寺、銀閣寺の通称で名高い鹿苑寺、慈照寺を擁する臨済宗相国寺派の大本山だ。創建から640年余りの歴史を持つ相国寺は、時代を通じ、如拙(じょせつ)、周文、雪舟、狩野探幽、伊藤若冲、原在中、円山応挙などの芸術家を育て、名作の誕生を導いてきた。

本展では、国宝・重要文化財40点以上を含む相国寺派の名品の数々が登場。また、若冲が鹿苑寺の大書院に描いた障壁画を中心に、相国寺派に伝わる若冲の作品群も見逃せない。さらに、天目茶碗(ちゃわん)の名品など、近年収蔵の華やかなコレクションも並ぶ。 

相国寺の美の世界をのぞいてほしい。

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もっとアート散歩をするなら……

  • アート
  • 公共のアート

無数の美術館やギャラリーが存在し、常に多様な展覧会が開かれている東京。海外の芸術愛好家にとってもアジアトップクラスの目的地だ。しかし、貴重な展示会や美術館は料金がかさんでしまうのも事実。

そんなときは、東京の街を散策してみよう。著名な芸術家による傑作が、野外の至る所で鑑賞できる。特におすすめのスポットを紹介していく。

  • トラベル

東京には魅力的なアート展示や、パブリックアートなどがある。しかし建物が密集しているため、大規模なアート施設を新たに造ることは困難だろう。希少な絵画やサイトスペシフィックなインスタレーションを観たいのであれば、千葉、神奈川、埼玉といった近隣の県へ日帰りで出かけるのもいいかもしれない。

自然の中でリラックスしてアートに触れることができる休日に訪れたいアートスポットを紹介する。

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ここではタイムアウトワールドワイドによる、ピカソやミロ、村上隆などの作品を楽しめる世界の「アートレストラン」を紹介。美術館に行く代わりに、レストランを予約してみるというのもいいかもしれない。

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