松山智一展 FIRST LAST
Photo: Kisa Toyoshima | 展示風景
Photo: Kisa Toyoshima

東京、4月から5月に行くべきアート展

個性豊かな注目の展覧会を紹介

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東京の人気ギャラリーや美術館で開催するアート展を紹介。4月から5月にかけては、「東京都現代美術館」での、日本を代表する造形作家・岡﨑乾二郎の展覧会や、18世紀から現代までのファッションが勢揃いする「LOVEファッション─私を着がえるとき」など、注目の展示が盛りだくさんだ。リストを片手にさまざまなアートと出合おう。

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  • アート
  • 初台

ファッションとの関わりに見られるさまざまな「LOVE」の形について考える展示「LOVEファッション─私を着がえるとき」が、「東京オペラシティ アートギャラリー」で開催。18世紀から現代までの衣装コレクションを中心に、人間の根源的な欲望を照射するアート作品とともに展示する。

装いには内なる欲望が潜み、憧れや熱狂、葛藤や矛盾を伴って表れることがある。お気に入りの服を着たい、あの人のようになりたい、ありのままでいたい……。ファッションは、着る人のさまざまな情熱や願望=「LOVE」を受け止める存在と言ってもいい。

本展では、「アレキサンダー・マックイーン」「ジュンヤ ワタナベ」「コムデギャルソン」「ヨウジヤマモト」「シャネル」「ディオール」「メゾン マルジェラ」「ジルサンダー」「ゴルチエ パリ バイ サカイ」「ノワール ケイ ニノミヤ」「トモコイズミ」などといった、えりすぐりの衣服が大集合する。

また、AKI INOMATA、ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)、シルヴィ・フルーリー(Sylvie Fleury)、原田裕規、松川朋奈ほか、現代美術家による作品も並ぶ。

万華鏡のようにカラフルな世界が広がるファッションの世界へ没入しよう。

  • アート
  • 清澄

「東京都現代美術館」で、日本を代表する造形作家・岡﨑乾二郎の集大成となる展覧会が開かれる。近年国際的な評価も高まる岡﨑の新作を中心とし、過去の代表作を網羅しつつ、その仕事の全貌を展望する。

絵画、彫刻のみならず、建築や環境文化圏計画、絵本、ロボット開発などの幅広い表現領域でも革新的な仕事を手がけた岡﨑。さらには文化全般にわたる批評家としても活躍してきた。

2021年以降は、社会的な情勢と個人的経験の2つの変化の中で、思考を位置づける時空の枠組みについて、大きな転回を迎えたという。会場では、それ以降の旺盛な活動期に入った新作・近作約100点を発表する。

それぞれの分野での革新性ゆえに、その全貌の把握が困難であった岡﨑の仕事を、その根底に一貫する造形という主題から総覧する本展。心待ちにしたい。

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  • アート
  • 原宿

「ワタリウム美術館」で、現在もポーランドを拠点に活動を続け、今年90歳を迎える鴨治晃次による日本初の個展が開催。1960年代から今日までに制作された絵画、立体作品、デッサン、インスタレーションといった作品群が展示される。


1935年に東京で生まれた鴨治は、戦後のポーランド芸術の主流を築いた、1960〜1970年代を代表する前衛芸術家の一人だ。鴨治の芸術的成果は、ポーランドの美術史とその文化遺産に永久に刻まれており、作品はポーランドの主要美術館で鑑賞できる。

鴨治の芸術のルーツは、西洋とポーランドの戦後美術である現代美術の伝統と日本の伝統の双方にある。また、1959年にポーランドへ向かう2カ月半の航海で感じた空間、空気、水の感覚や、友人の自死という悲劇的な出来事といった、私的な体験を想起させる要素も見られる。

自らのルーツである日本、現代美術への深い造詣、そして芸術的自己認識といったさまざまな文化の交差点で制作活動をしてきた鴨治。貴重な機会を見逃さないでほしい。

  • アート
  • 八王子

「八王子市夢美術館」で、「イメージの魔術師 エロール・ル・カイン展」が開催。「イメージの魔術師」と称されるエロール・ル・カイン(Errol Le Cain19411989年)の絵本のストーリーをたどりながら、原画やスケッチ、資料などで、ル・カインの魔術の秘密をひも解く。

シンガポールで生まれ、アジアで幼少期を過ごしたル・カインは、15歳で単身イギリスに渡る。ロンドンのリチャード・ウィリアムズ・スタジオに入社し、亡くなるまで同社でアニメーション映画製作に携わった。

1968年に、絵本『アーサー王の剣』を出版。その後、47歳で世を去るまで、40冊余りの絵本を世に送り出した。東洋美術、西洋美術、映画、アニメーションなどのさまざまな様式が融合された幻想的なル・カインの絵には、豊かな色彩があふれている。

細密な描写による装飾性と多様なタッチ、繊細でありながら大胆な構図の面白さなど、魅力に満ちた作品世界を堪能してほしい。

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  • アート
  • 恵比寿

「東京都写真美術館」で、報道写真家として世界各地の戦場を駆け巡り、臨場感あふれる作品を数多く残したロバート・キャパ(Robert Capa、1913〜1954年)の展示が開催。戦争に焦点を当てた作品約140点を厳選して紹介する。

20世紀が生んだ偉大な写真家の一人、キャパ。スペイン内戦での『崩れ落ちる兵⼠』や、ノルマンディー上陸作戦に同⾏して撮影した『D デー』など、歴史に残る傑作を生み出した。1947年には、国際写真家集団「マグナム・フォト」を結成。その後、第⼀次インドシナ戦争の取材に向かい、撮影中に地雷に触れて40年の⽣涯を閉じた。

目に見える確かな記録として報道された命がけの写真の多くは、時空を超え、後世にも訴えかける強いメッセージとなっている。「人間を取りまく状況を少しでも良いものにしよう」と願ったキャパの写真証言を、今改めて見直してほしい。

  • アート
  • 汐留

「パナソニック汐留美術館」で、近代美術の巨匠、オディロン・ルドン(Odilon Redon、1840〜1916年)の最初期から最晩年までの画業を紹介する展示が開催。国内外の名品を含む約110点の作品により、伝統と革新のはざまで、ルドンが独自の表現を築き上げていく姿を追う。

フランスのボルドーに生まれたルドンは、絵画と版画の基礎を学んだ後、神秘的とも奇怪ともいえる幻想的なイメージを、木炭画と石版画で表現。1890年代以降は、パステルや油彩へと次第に画材を持ち替え、花や神話、宗教、人物などを主題とする色彩豊かな作品を制作した。

ルドンが生きた19世紀後半と20世紀初頭は、科学の発展による技術革新が社会構造の多大な変化をもたらし、またアカデミックな芸術に対して、印象派などの新しい芸術潮流が次々と生まれた時代。ルドンは、それに並走するかのように、新しい画題に取り組み、表現媒体を変えていった。 


見どころは、東京で初公開となる、晩年の主要な画題の一つの『窓』。また、ルドン流の進化論といわれる石版画集『起源』の9点は、揃って展示される。

光と影が創り出す輝きを宿した、ルドンの芸術世界へ入り込もう。

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  • アート
  • 早稲田

「草間彌生美術館」で、草間彌生の芸術の根源ともいえる「病」に着目する「宇宙からの音響」が開催。初期から現在に至るまでの多様な作品群と関連資料を展示する。

幼い頃から幻覚や幻聴に悩まされてきた草間。精神疾患は、創作活動に多大な影響を及ぼした。1950年代、草間は自らの妄想に駆り立てられるように、膨大な数のドローイングを描き、作家として躍進する。

渡米後は、水玉や網目などの無限に反復するパターンで全ての存在を覆い尽くし、自らもその世界へと埋没していく「自己消滅」の儀式ともいうべき作品群に取り組む。

1970年代後半から80年代にかけては、精神科病院の病室で小作品を数多く制作。その後、複数の画面にわたる絵画や巨大なバルーンなど、作品は拡大していった。

草間の言う「自己消滅」とは、もはやアーティスト個人の内面の問題ではなく、荘厳な「宇宙からの音響」のさなかに身を置くような感覚へと鑑賞者を誘うだろう。宇宙の果てまでも増幅していく、豊かな創造力の所産を体感してほしい。

  • アート
  • 三鷹

 「三鷹市美術ギャラリー」で、「三鷹天命反転中!!──荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ」が開かれる。

三鷹市にある、ひときわ目を引くカラフルな建物三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller』。鮮やかな14色の円柱形や立方体で構成されたこの建築物は、ニューヨークを拠点に活動した荒川修作+マドリン・ギンズが企画、デザインした。

今年で20年目を迎えるこの集合住宅は、現在では三鷹のランドマークの一つとして定着し、住居やオフィスとして利用されている。

本展では、本作に至るまでの、荒川ギンズの活動の軌跡を振り返るとともに、いかにしてこの住宅が誕生したのかをひも解く。2人が挑んだ数々のプロジェクトは、彼らが没した後も新たな世界への視点を示してくれるだろう。

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  • アート
  • 代々木

「文化学園服飾博物館」で、「どうしてなんだか似てる服」展が開催。所蔵品の中から約30カ国の服や染織品を選び、「かたちが似てる」や「もようが似てる」に分けて紹介する。

世界のさまざまな地域の衣服を見ると、地理的には離れた地域であるにもかかわらず、文化や国を超えて形や模様が似ているものがいくつか見られる。会場では、それらを互いに並べて見比べる。

似ていることに何か共通点や理由があるのか、互いの地域の影響があるのかなど、人々が衣服に込めた意味や思いを探ってほしい。

  • アート
  • 神楽坂

「エイトエイコ(eitoeiko)」で、さまざまな手法や場所で活躍する7人の作家によるグループ展「桜を見る会」が開催。岡本光博、重野克明、林葵衣、宮川ひかる、村田奈生子、山本雄教、渡辺おさむが参加する。

内閣総理大臣の主催によって1952年から2019年まで「新宿御苑」で開かれていた「桜を見る会」。公職選挙法違反、政治資金規正法違反、公文書管理法違反などが疑われ、中止となった2020年から、エイトエイコでは同名の展覧会が開始された。今年は5度目の開催となる。

数多くの作家が参加している本展では、「文化の観桜会」を目指し、「桜」という樹木の春先に開花する花弁の個体、集合体についての色彩や形態、あるいは桜にまつわる物語や言葉など、多様な角度からアプローチした作品が多数発表されてきた。

会場では、「桜」または「桜を見る会」が想起される絵画や立体作品などを展示する。ぜひ立ち寄ってほしい。

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  • アート
  • 上野

「東京国立博物館」で、「イマーシブシアター 新ジャポニズム ~縄文から浮世絵 そしてアニメへ~」が開催。同館が所蔵する国宝などの貴重な文化財から、今世界で人気の名作アニメまで、高さ7メートルのモニターで日本の至宝への没入体験ができる。

スケールが圧巻の「イマーシブシアター」では、超高精細映像により、土器や土偶、はにわ、絵巻、浮世絵などを、普段決して見ることができない角度やサイズで堪能できる。

また、手治虫や高畑勲、細田守などの、日本を代表する名作アニメも登場。日本の風土の中で受け継がれてきた独自の美意識が、日本のアニメにも共通していることを感じるだろう。

壮大な映像制作を手がけたのは、建築・都市・観光・文化など多様な分野の専門知識と経験を持ったメンバーで構成するクリエーティブ集団「Panoramatiks」と、「いいものを、つくる」というシンプルな思想の元に集う 「CEKAI」だ。

また、音楽は、さまざまなメディアでの音楽制作を手がける蓮沼執太が担当した。日本文化のタイムトラベルを大迫力の映像で楽しんでほしい。

  • アート
  • 上野

「東京国立博物館」で、「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が開催。江戸時代の傑出した出版業者である蔦屋重三郎(1750〜1797年)の全体像約250作品を紹介しながら、天明・寛政期(1781〜1801年)を中心に江戸の多彩な文化を紹介する。

多彩な出版活動を通し、人々が楽しむものを追い求め続けた重三郎は、喜多川歌麿、東洲斎写楽などの名だたる浮世絵師を世に出したことで知られる。また、黄表紙や洒落本(しゃれぼん)といった文芸のジャンルでも流行を取り入れ、 数々のベストセラー作品を生み出した。敏腕プロデューサーであり、非凡なマーケターともいえる彼は、まさに時代の風雲児であったのだ。

本展では、浮世絵黄金期と呼ばれる18世紀末の浮世絵界を代表する名品が一堂に集合。また、重三郎を主人公とした2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」とも連携し、江戸の街にタイムトリップしたような空間を再現する。

本展を通して、重三郎が創出した価値観や芸術性を感じ取ってほしい。

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  • アート
  • 用賀

「世田谷美術館」で、驚異的な創造力を発揮し続ける横尾忠則による展示「横尾忠則 連画の河」が開催。150号を中心とする新作油彩画約60点に、関連作品やスケッチなども加え、88歳の横尾の現在を紹介する。

横尾は、郷里の川辺で同級生たちと撮った記念写真のイメージを起点に、2023年春から、「連歌」ならぬ「連画」制作を始めた。

水は横尾にとって重要なモチーフの一つ。多様なイメージが現れては消え、誰も見たことがないのになぜか懐かしくもある光景の下、生も死も等しく飲み込み、「連画の河」が流れる。

視力、聴力、腕力に脚力と、体のさまざまな能力が衰える中でも、横尾の反復は現在も淡々と続いている。その日その時の肉体からしか生まれてこない色、筆触、形が、大きな画面に躍り、流れ、変化する。

王道を行く「絵画」ならではの快感を、全身で味わってほしい。

  • アート
  • 豊洲

豊洲の「クレヴィアベース東京(CREVIA BASE Tokyo)」で、「ラムセス大王展 ファラオたちの黄金」が開催。エジプト史上「最も偉大な王」と称されるラムセス大王と、その時代にまつわるエジプトの至宝180点を公開する。

本展は、過去最⼤級の古代エジプト展であり、エジプト政府公認の展覧会。3000年以上前の古代エジプトの遺物や芸術品を、最⾼の状態で管理と保存しているエジプト考古最⾼評議会の特別⽀援の下、展⽰する。

また、バーチャルリアリティー(VR)で、ラムセス2世が建てた最も壮大な遺跡「アブ・シンベル神殿」とネフェルタリ王妃の墓にスポットを当て、スリル満点の没入体験が楽しめる。なお、VR体験は、入場料とは別に料金2,500円(税込み)が必要だ。

エジプト新王国時代の芸術品が放つオーラを体感しよう。

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  • アート
  • 世田谷区

明治生まれの洋館 「旧尾崎テオドラ邸」で、漫画家・イラストレーター・絵本作家・画家の萩岩睦美による展示「萩岩睦美 ポー&リルフィ展」が開かれる。

1978年に「りぼん」でデビューした萩岩は、1980年代の『銀曜日のおとぎばなし』で人気を博した。キュートなキャラクターと心温まるストーリーは、現在も多くの人の心に息づく。



現在では、りぼん時代の当時のイラストを自らリメイクして描く再現画や、漫画絵とは異なるリアルな鳥、動物のイラストが話題。本展では、今回のために新しく描きおろした「誰も見たことがないポー&リルフィ」の公開や、再現画などの展示販売も行う。



そのほか、代表作の連載当時の一色原稿や、りぼん時代の付録、動物画の展示、制作動画など、見どころが盛りだくさんだ。オリジナルグッズやフォトスポットも設置されるので、ファンは見逃さないように。


  • アート
  • 府中

「府中市美術館」で、明治末から大正期にかけて活動した文学書の装丁作家・橋口五葉(1881〜1921年)の個展「橋口五葉のデザイン世界」が開催。日本の書斎空間を美しく彩った五葉の装丁の世界を中心に、豊かなデザイン世界を紹介する。

女性の美しさを柔らかく表現した版画で世界的に知られている五葉は、書籍の装丁やポスター、洋画や日本画とジャンルを超えて多彩に活躍した。 


五葉の仕事の出発点には、日本の近代装丁史に大きな足跡を残す夏目漱石の『吾輩ハ猫デアル』の装丁があり、その後も日本近代文学を代表する作家の装丁を次々と手がけた。


装丁に見られる職人との協業や素材へのこだわり、画面を花々や小動物のモチーフで埋め尽くす華やかな装飾性は、その後の絵画や版画の仕事にも息づく。同時代のアール・ヌーヴォーと、琳派や浮世絵などの日本の伝統が、五葉の美意識の下に融合し、唯一無二の作品世界を生み出している。

本を立体として捉え、手のひらに収まる小さな世界に美しさが凝縮された五葉の装丁。今でも美しい輝きを放つ五葉が手がけた世界に入り込もう。

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  • アート
  • 上野

「国立西洋美術館」で、「西洋絵画、どこから見るか?—ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」が開催。同館と「サンディエゴ美術館」の所蔵品計88点を組み合わせ、作品をどのように見ると楽しめるかという観点から、鑑賞のヒントを提案する。

ルネサンスから19世紀末までの600年にわたる西洋美術の歴史を紹介する本展。関連する作品がペアや小グループごとに展示され、比較して鑑賞することで、さまざまな角度から絵画が持つストーリーを深掘りする。サンディエゴ美術館から出品される49点は日本初公開だ。

見どころは、エル・グレコ(El Greco)やバルトロメ・エステバン・ムリーリョ(Bartolomé Esteban Murillo)など、スペイン美術の名品の勢ぞろい。また、スペイン独自の静物画「ボデゴン」の最高傑作と評され、その始祖とされる画家、フアン・サンチェス・コターン(Juan Sánchez Cotán)の『マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物』は、ハイライトの一つだ。

比べて見るから分かる西洋絵画の面白さは、初めての美術鑑賞にもピッタリだろう。一人一人の 「どこみる」を発見してほしい。

  • アート
  • 埼玉

「ハイパーミュージアム飯能」のオープニング企画展として、現代美術作家で世界的アーティストであるヤノベケンジによる「宇宙猫の秘密の島」が開催。立体作品・原画・特別映像に加え、施設の立地を生かした森と湖での巨大な作品など、約80点の作品群が集合する。

時代の物語を包括し、強烈なインパクトを持つキャラクターの巨大彫刻を作り続けるヤノベ。見どころは、敷地内の宮沢湖に出現する眠り猫の形をした巨大な人工島だ。また、『BIG CAT BANG』のバックストーリーや、猫の仲間たちの立体作品、絵本『トらやんの大冒険』と『ラッキードラゴンのおはなし』の全ての原画が集合する。

自然豊かな湖畔のロケーションに誘発され生まれた作品群は、鑑賞者の心の中にもイマジネーションの爆発を拡散させるだろう。

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  • アート
  • 六本木

トゥーワン トゥーワン デザインサイト(21_21 DESIGN SIGHT)」で、ラーメンを「器」からひも解く「ラーメンどんぶり展」が開催。さまざまなジャンルのデザイナーやアーティストらが、ラーメン丼とれんげをデザインする「アーティストラーメンどんぶり」に新作10点を加えた、全40点のオリジナルラーメン丼を展示する。

展覧会ディレクターは、グラフィックデザイナーの佐藤卓とライターの橋本麻里。本展は、2人が2012年から取り組んでいる岐阜県の東濃地方西部(多治見市、土岐市、瑞浪市)で作られ、日本のラーメン丼の90を占める「美濃焼」に関するプロジェクトの一つをきっかけとした。これまで、佐藤と橋本はラーメン丼を多様な視点から見ることで、美濃焼の背景や作り手たちの活動、そして日常食の器が生活にもたらす豊かさについてを伝えてきた。

今回、糸井重里、上西祐理、菊地敦己、佐藤晃一、竹中直人、田名網敬一、束芋、ヒグチユウコ、深澤直人、皆川明、横尾忠則などによる「アーティストラーメンどんぶり」を展示。また、建築家とデザイナー3組の設計による「ラーメン屋台」も登場する。

さらに、身近な製品を「デザインの視点」で解剖し、その成り立ちを徹底して検証する試みである「デザインの解剖」の手法で迫る「ラーメンと器の解剖」を展開。ラーメンの文化や歴史、器の産地である東濃地方の風土や環境、歴史についても紹介する。

日常の世界がどのような要素で成り立ち、そこにどのように人やデザインが関わっているのかを発見できる本展。その面白さを味わってほしい。

  • アート
  • 乃木坂

「国立新美術館」で、20世紀に始まった住宅を巡る革新的な試みを、衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープという、モダンハウスを特徴づける7つの観点から再考する「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」が開催。傑作14邸を中心に、20世紀の住まいの実験を多角的に検証する。

見どころは、世界的に著名な建築家たちの自邸。細部まで工夫を凝らしたこだわりの自宅からは、機能や快適さの探究はもちろん、住まうことの楽しさや喜びへの熱いまなざしも垣間見られるだろう。

また、国内はもとより、アメリカやヨーロッパ、ブラジルなどから、貴重な作品が集結。図面、模型、外観や内観の写真に加え、近代建築の巨匠であるルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe18861969年)やアルヴァ・アアルト(Alvar Aalto18981976年)などによるドローイング、名作家具、照明器具、テキスタイル、食器、雑誌やグラフィックといった、バラエティーに富んだ内容を紹介する。

そして、注目はファン・デル・ローエの未完プロジェクト「ロー・ハウス」の原寸大展示。2階の天井高8メートルの会場に設置され、このスケールでの展示実現は世界初となる。

快適性や機能性、そして芸術性の向上を目指した建築家たちの、時代を超えた普遍的な視点を通して、暮らしと住まいを見つめ直してみては。

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  • アート
  • 神谷町

「麻布台ヒルズギャラリー」で、ニューヨークを拠点にグローバルな活躍を見せるアーティスト、松山智一の東京で初となる大規模個展が開催。20年以上にわたりニューヨークで活動し、いまや世界が注目する次世代のアーティストの一人となった松山の大規模作品15点を含む、近年の作品群約40点が展示される。

ブルックリン在住の松山は、絵画を中心に、彫刻やインスタレーションを制作。アジアとヨーロッパ、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素を有機的に結びつけて再構築し、異文化間での自身の経験や情報化の中で移ろう現代社会の姿を反映した作品を発表している。

絵画から放たれるまばゆいばかりの色彩は、松山作品の最大の特徴の一つだ。世界を彩る多様な文化、伝統、宗教、そして歴史的なものや現代的なもの、さらにはハイカルチャーから日常品といった要素が、無数の色で描かれている。

迫力ある色彩と壮大なスケールの絵画や巨大な立体などを通して、そこだけに広がる松山の作品世界に浸ってほしい。

  • アート
  • 渋谷

「東急プラザ渋谷」の3階で、葛飾北斎の浮世絵を全身で感じる新感覚イマーシブエンターテイメント「HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO」が開催。北斎が生きた江戸の浮世にタイムスリップしたような、「映像×サウンド×触覚」の圧倒的な没入体験が待っている。

本展は、誰もが一度は見たことがある北斎の作品を、超高精細イメージデータを使用し、臨場感のある高精細な映像をリアルに再現。さらに、床が水たまりや砂浜に変わったかのように感じさせる触覚提示技術などの演出により、北斎が見た景色や歩いた感覚を味わえる。

会期中は、日本のクラフトマンシップを持つブランドとのコラボレーショングッズも発売する。北斎の世界へ全身でダイブしよう。

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  • 丸の内

「三菱一号館美術館」で、25歳で他界したイギリスの画家、オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley、1872~1898年)の大回顧展が開催。直筆約50点を含め、挿絵やポスター、装飾など、約220点の初期から晩年までの作品を網羅し、19世紀末の欧米を騒然とさせたビアズリーの歩みをたどる。

ビアズリーは、精緻な線描や大胆な白と黒の色面から成る、極めて洗練された作品を描き続けた。オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)著『サロメ』の挿絵で成功するが、1895年のワイルドに対する同性愛裁判の余波により仕事を失う。テオフィル・ゴーティエ(Théophile Gautier)著『モーパン嬢』の挿絵などで新境地を見せるが、持病の結核が悪化し、世を去る。

本展では、世界有数のビアズリーコレクションを有するロンドンの「ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館」による全面協力の下、150点が一挙来日。彗星(すいせい)のごとく現れ、一躍注目を集めた異才の生きざま含めて、全てを公開する。

なお、2025年218日(火)~314日(金)の平日に利用可能の、「平日限定チケット」が1,900(以下全て税込み)で販売される。また、ファン必須の、会期中何度でも利用できる「ビアズリー偏愛パス」が5,000円で販売予定だ。詳細は公式ウェブサイトを確認してほしい。

早過ぎる転落から最晩年の進化まで、凝縮された画業を見尽くしては。

  • アート
  • 白金台

「東京都庭園美術館」で、「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」が開催。幾何学的抽象、イラストレーション、写真、タイポグラフィの4つのカテゴリーに出品作品を分け、ポスター約125点を中心に、冊子や雑誌などの多彩な作品を展示する。

見どころは、戦後西ドイツのグラフィックデザインを総覧できる充実さを誇る「A5コレクション デュッセルドルフ」から選ばれた珠玉の作品群。同コレクションは、主に戦後西ドイツのグラフィックデザインから成り、1000点以上のポスターやその他の資料類によって構成。日本では初公開となる。

中には、手書きのタイポグラフィを使用した作品など、カテゴリーを横断したものとして見ることのできる作品もあり、デザイナーたちによる斬新なアイデアや実験的な試みが楽しめる。ハンス・ヒルマン(Hans Hillmann)やオトル・アイヒャー(Otl Aicher)といった、西ドイツで活動したデザイナーたちによるクリエーションの魅力を発見してほしい。

また、戦後に生み出された西ドイツのグラフィックには、戦禍による傷跡の残る中、新たな時代を切り開くべく発信し続けたデザイナーたちのエネルギーと情熱も見て取れる。

会期中は、2025年3月30日(日)にクラシック音楽から現代音楽までドイツ音楽の世界へいざなうコンサートをはじめ、4月20日(日)に講演会「映画から見る戦後ドイツのポスターグラフィック」のほか、ワークショップなども開かれる。

デザイン教育を基盤としたモダニズムを継承しながらも、戦後の新しい時代の表現を追求した西ドイツにおけるグラフィックデザインの世界を堪能してほしい。

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  • アート
  • みなとみらい

202528日(土)に全館オープンを迎える「横浜美術館」で、「横浜」をキーワードにさまざまな人々を迎え入れたいという想いを込めた「おかえり、ヨコハマ」展が開催される。

見どころは、「多様性」という観点の下、これまであまり注目されてこなかった開港以前の横浜に暮らした人々、女性、子ども、さまざまなルーツを持つ人々などに改めてスポットライトを当てた、横浜にまつわる作品群。ローカルの歴史を深掘りすることで、おなじみの作品や横浜の歴史に新たな視点をもたらす。

また、ポール・セザンヌPaul Cézanne)、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)ルネ・マグリット (René Magritte)や奈良美智など、近代美術の名作から現代美術の作品まで、同館コレクションが勢揃い。さらに、子どものために作品を選び、見やすいよう工夫して展示する「子どもの目でみるコーナー」が設けられ、親子で会話しながら鑑賞できる。

新しく生まれ変わった同館の作品空間を楽しんでほしい。

  • アート
  • 目白

1975年、学習院大学内に開館した「学習院大学史料館」は、 2025年3月に「霞会館記念学習院ミュージアム」としてリニューアルオープンを迎える。これを記念し、特別展「学習院コレクション 華族文化 美の玉手箱―芸術と伝統文化のパトロネージュ」が開かれる。

日本の芸術と伝統文化は、天皇家をはじめとする多くの「パトロン」により、独自の文化や芸術が育まれ、現在まで受け継がれてきた。彼らは伝統儀礼を重んじつつ、歌や文学、書画といった優れた芸術作品の誕生と保護に大いに貢献した。芸術家への支援を指す「パトロネージュ」なしには、芸術の発展は語れないだろう。 

同館には、天皇家、皇族、華族の学校であった学習院ゆかりの史・資料、美術作品など約25万点が収蔵されている。本展ではそのコレクションの中から、芸術と伝統文化の「パトロネージュ」をテーマに、絵画、工芸品、古文書、文学資料などの約100点を展覧する。

新たな展示空間で名品を堪能してほしい。

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  • アート
  • 京橋

「アーティゾン美術館」で、画家・硲伊之助(はざま・いのすけ、1895~1977年)の東京で初となる回顧展が開催。油彩画、版画、磁器など約60点の作品と資料をはじめ、硲と関わりのある同館の西洋絵画コレクション約15点を展示し、初期から晩年までの多様な側面を紹介する。

硲は17歳で画壇にデビューし、二科賞を二度受賞するなどで活躍。1921年の渡欧でアンリ・マティス(Henri Matisse)と出会い、教えを受ける。また、制作活動の傍ら、ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)、ポール・セザンヌ(Paul Cézanne)、ヴィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)などの画集編集や翻訳に携わるなど、西洋美術の紹介にも力を尽くした。1951年、師・マティスの日本初の展覧会実現においては、作家との交渉に携わる。

さらに、同館の収蔵作品であるマティスの『コリウール』やアンリ・ルソー(Henri Rousseau)の『イヴリー河岸』は、硲が自身の研究のために収集したものだ。

本展を通して、硲のさまざまな多才な姿を垣間見てほしい。

なお、同展チケットの料金で、同時開催の展覧会「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」を全て鑑賞できる。予約枠に空きがあれば美術館窓口でもチケットが購入可能だ。

  • アート
  • 京橋

「アーティゾン美術館」で、20世紀前半を代表するアーティストカップル、ゾフィー・トイバー=アルプ(Sophie Taeuber-Arp、18891943年)とジャン・アルプ(Hans Arp、18861966年)を紹介する展示が開催。個々の作品を紹介するとともに、2人がそれぞれの制作に及ぼした影響やデュオでの協働制作の試みに注目し、カップルというパートナーシップの上にどれほどの創作の可能性を見いだせるかを再考する。

幾何学的抽象と色彩理論の研究を基盤に、テキスタイル、家具デザイン、建築設計、絵画など多方面で創作に取り組んだゾフィー。ジャンは、シュルレアリスムと抽象の間を行き来しながら、主にコラージュやレリーフ、彫刻の領域で創作を行った。

2人はそれぞれ前衛芸術の前線で活動しながら、コラボレーションによる作品も残している。ゾフィーが逝去して以降も、その残された作品はジャンの創作を刺激し続けるなど、彼らの創作は絶えず密接な関係にあった。この関係は、カップルにおける創作の可能性をはじめ、この時代の女性アーティストの立場や、芸術ジャンルのヒエラルキーに関する考え方など、20世紀の美術を考察する上で普遍的なテーマを映し出している。 

ゾフィーの作品45点、ジャンの作品40点のほか、コラボレーション作品14点の計99点を出品する本展。貴重な機会を見逃さないでほしい。

なお、同展チケットの料金で、同時開催の展覧会「硲伊之助展」「石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト」を全て鑑賞できる。予約枠に空きがあれば美術館窓口でもチケットが購入可能だ。

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  • アート
  • 虎ノ門

虎ノ門ヒルズの「トウキョウ ノード(TOKYO NODE)」で、デザインを体感する展覧会「デザインあ展neo」が開催。デザインについてさまざまな思考・発見を楽しんでもらう展示を行う。

「デザインあ展neo」は、NHKの「Eテレ」で放送中の番組「デザインあneo」のコンセプトを、体験の場へと広げた展覧会だ。「みる(観察)」「かんがえる(考察)」「つくる・あそぶ(体験)」のステップでデザインを体感していく作品や、360度のスクリーンに囲まれて映像と音楽を身体で感じる作品などが展開する。

また、約35点の新作が公開され、番組でおなじみのコーナーも登場。さらに、会場の特徴的なギャラリー空間を生かした展示も構成される。

チケット料金や開催時間などの詳細は、2025年1月下旬から順次特設サイトで発表予定だ。見逃さないように。

  • アート
  • 立川

立川の「プレイ ミュージアム(PLAY! MUSEUM)」で、「国⽴科学博物館」と初のコラボレーションとなる、動物をテーマにした展覧会「どうぶつ展 わたしたちはだれ?どこへむかうの?〜WHO ARE WE? WHERE ARE WE GOING?」が開かれる。

国⽴科学博物館は2021年、所蔵する膨⼤な標本資料を活⽤し、哺乳類と⼈間との関係を考える巡回展「WHO ARE WE 観察と発⾒の⽣物学」を制作。展覧会が全国各地を巡回する際に展開した美しい展⽰キットは、⼤きな話題を集めた。

本展では、国⽴科学博物館の巡回展キットを使い、貴重な資料や世界屈指の動物標本コレクションを展⽰。さらに、「笑顔の森」「模様の惑星」「しっぽはすごい」といった5つのテーマで、体験型のインスタレーションを展開する。

また、⼤曽根俊輔、瀬⼾優、名和晃平、ミロコマチコら9⼈のアーティストが制作した作品群が⼀堂に介する空間「ユートピア」などの独⾃企画を加え、「私たちは誰なのか」「どこに向かうのか」を問いかける。

積み上げられた研究成果を展⽰する国⽴科学博物館と、表現を楽しむことをコンセプトにした同館の特性を掛け合わせた、これまでにない展覧会。動物の不思議に触れ、驚き、目を輝かせてほしい。

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  • アート
  • 荻窪

荻窪の書店「タイトル」で、鳥取県で43年続いた「定有堂書店」の姿をよみがえらせる展示が開催。「独立書店」と呼ばれる新たなスタイルの書店の源流ともいえる定有堂書店の、かつての息吹を伝える。

奈良敏行が始めた町の本屋「定有堂書店」。書店の棚には、奈良が1冊ずつ選書した本が、短く添えられた言葉とともに並び、そこはさながら「本の森」であった。

わざと「遅れた」雑誌や本が平積みされ、天井からは絵や短冊がぶら下がる独特な景観。また、何十年も前から「ミニコミ」を制作し、後には「読む会」と呼ばれた読書会も頻繁に行っていた。

本展では、定有堂書店のベストセラーから「タイトル」がセレクトした本を、奈良の言葉とともに展示。また、在りし日の店の姿を伝える写真や絵、実際に架けられていた額額などを並べる。

2025年4月29日(火・祝)には、トークイベント「本を売る、本を読む」も開催。会場で奈良の言葉に触れてみては。

  • アート
  • 丸の内

「東京ステーションギャラリー」で、フィンランドのモダンデザイン界で圧倒的な存在感を放つタピオ・ヴィルカラ(Tapio Wirkkala、1915〜1985年)を紹介する日本初の大規模個展が開催。プロダクト、ガラスや木による彫刻、写真など約300点が集結する本展は、プロダクトデザイナーとして、また彫刻家・造形作家としてのヴィルカラの本質に迫る。

1940年代後半から1950年代にかけ、イッタラ社のデザインコンペの優勝や「ミラノ・トリエンナーレ」の3度の入賞によって、一気に脚光を浴びたヴィルカラ。フィンランド最北の地域であるラップランドの静寂を愛し、自然に宿る生命力と躍動にインスピレーションを受けた。

その活動は、「ウルティマ・ツーレ」(「世界の果て」の意)をはじめとするガラスの名品や、陶磁器、カトラリー、家具などのプロダクト、木のオブジェ、さらにはランドスケープアートまでと広範囲にわたる。

ヴィルカラの世界に浸れる貴重な機会を見逃さないでほしい。

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  • アート
  • 竹橋

「東京国立近代美術館」で、19世紀後半のスウェーデンに生まれた抽象絵画の先駆者、ヒルマ・アフ・クリント(Hilma af Klint、18621944年)のアジア初となる大回顧展が開催。全て日本初公開・初来日となる作品約140点を通して、画業の全貌を明らかにする。

20世紀初頭、抽象絵画を創案した画家として、近年再評価が高まったアフ・クリント。肖像画や風景画を手がける職業画家として、キャリアをスタートさせた。一方で神秘主義思想に傾倒した彼女は、交霊術の体験などを通して、自然描写に根ざしたアカデミックな絵画とは全く異なる抽象表現を生み出す。

本展の見どころは、異例の巨大なサイズで描かれた圧巻の『10の最大物』(1907年)。幼年期・青年期・成人期・老年期という人生の4つの段階を描いた10点組みの大作で、高さは3メートルを超える。多様な抽象的形象、画面からあふれ出るようなパステルカラーの色彩、そして圧倒的なスケールは、観る者を一瞬で引き込み、異空間を漂うかのような体験に誘うだろう。

また、アフ・クリントが残したスケッチやノートなどの資料、同時代の神秘主義思想・自然科学・社会思想・女性運動といった多様な創作の源も紹介する。

作品を通して、アフ・クリントの無限の想像力を体感してほしい。

  • アート
  • 上野

「東京都国立博物館」で、総勢85人のアーティストたちの木版画を通じて、現代から未来に続く伝統の可能性を追求する「浮世絵現代」が開催。伝統木版画の表現に魅了されたさまざまなジャンルのアーティスト 、デザイナー、クリエーターたちが、現代の絵師となり、アダチ版画研究所の彫師・摺師(すりし)たちと協働して制作した「現代の浮世絵」が堪能できる。

日本の木版画の技術は、江戸時代に独自に発展し、浮世絵という力強く華やかな芸術を生み出した。「浮世」という言葉には「当世風の」という意味があり、浮世絵版画はまさにその時代と社会を色鮮やかに映し出すメディアであった。 

高度な木版画の技術は、途切れることなく、現代まで職人たちに受け継がれている。伝統技術は、同時代の人々の心を捉える作品を生み出し続けることで、さらに次代へと継承されていくだろう。

本展の参加作家は、水木しげる、安野モヨコ、石ノ森章太郎粟津潔、佐藤晃一、田中一光、和田誠、草間彌生、横尾忠則、田名網敬一、加藤泉、塩田千春、名和晃平、李禹煥、福田美蘭といった、名だたるアーティストやクリエーターが名を連ねる。

唯一無二の現代の浮世絵世界を、心ゆくまで楽しんでほしい。

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  • アート
  • 上野

「東京都美術館」で、20世紀を代表する巨匠、ジョアン・ミロ(Joan Miró、1893〜1983年)の大回顧展が開催。初期から晩年までの各時代を彩る絵画や陶芸、彫刻により、90歳まで新しい表現へ挑戦し続けたミロの芸術を包括的に紹介する。

太陽や星、月など自然の中にある形を象徴的な記号に変えて描いた、詩情あふれる独特な画風が特徴のミロ。作品には、潜在意識や子どものような精神、そして故郷への愛着が反映され、明るく楽しげな画面が多くの人を引きつける。それだけではなく、周囲の政治的・社会的状況への強い感受性と反骨精神が創作の原動力にもなっており、ミロは特定の運動に属することのない純粋で普遍的な芸術を追求し続けた。

ミロの代表作に挙げられるのが、戦火を逃れながら、夜や音楽、星を着想源にして全23点が描かれた『星座』シリーズだ。現在、シリーズの各作品は世界中にちらばっており、本展ではそのうちの3点をまとめて観られる貴重な機会となる。

ミロの大規模な個展が日本で開催されるのは、画家が存命中の1966年に開催されて以来。世界中から集結する傑作の数々を通して、ミロの芸術の神髄を体感してほしい。

  • アート
  • 青山

Akio Nagasawa Gallery Aoyama」で、写真家・沢渡朔の個展「AWA no HIBI」が開催される。

沢渡は、一人の女性モデルと向き合い、現実とも虚構ともとれない、その「あわい」の中で作品を制作してきた。今回は、昼下がりの午後、自宅で過ごす一人の女性をテーマにした作品を発表する。

素顔の女性が見せるしぐさや表情。実際にはフィクションでありながら、ノンフィクションの姿を借りるのは、その虚構の向こう側にある一片の現実世界の輝きを捕まえるだろう。

画面の中に漂う現実と虚構の往来に、鑑賞者は戸惑いながらも引き込まれていく。沢渡は、写真作品だけが持つこの特性を巧みに操っている。 


本展に併せて、Akio Nagasawa Publishingから同名の写真集も刊行予定だ。展示空間だけに広がる作品世界を堪能してほしい。

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  • アート
  • 銀座

「銀座メゾンエルメス フォーラム」で、グループ展「スペクトラムスペクトラム」が開催。エマニュエル・カステラン(Emmanuelle Castellan)、題府基之、川端健太郎、マリー・ローランサン(Marie Laurencin)、ヨハネス・ナーゲル(Johannes Nagel)、ヴァルター・スウェネン(Walter Swennen)、津田道子が参加する。



タイトルの「スペクトラム」とは、ドイツ語表記によるスペクトル「Spectrum」で、物理的な現象の分布や、光学や音響に用いられるスペクトルなどの範囲を表す。同時に、亡霊や幻視といった超自然的な存在など、広い射程とグラデーションを持つ言葉だ。 


本展では、スペクトラムという言葉に含有される振れ幅や共鳴を鏡のような道具として用いながら、展覧会を一つの小説のように捉える。



切り込みのあるキャンバスに人物像を描くカステランは、舞台や映画のセットのような空間を披露。セラミックを用いるナ―ゲルは、鮮明な発色や、非対称、不調和、表面の粗さや滑らかさを放つつぼで異なる次元を掘り出し、スウェネンの絵画は謎めいた暗号を投げかける。

それぞれの作品が不可避に関わり合い、映し合う中で、スペクトラムは反復し、その姿や幻影を現わしていくだろう。


  • アート
  • 原宿

ギャラリー ギークアート(Galerie GEEK/ART)」で、スペインで活動するアーティスト、テラン(TERÁN)による日本初の個展「Fantasías de Picasso(ピカソの幻想)」が開かれる。

テランは、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)マルク・シャガール(Marc Chagall)など、巨匠の作品を独自に再解釈したシリーズ『Tribute to the Geniuses』を手がけ、スペイン国内外で高く評価されてきた。

「もしもピカソが葛飾北斎の生きた江戸時代を歩いたら……?」。本展では、ピカソが架空の旅人として北斎の描いた風景や人物と出会い、時空を超えた対話を繰り広げる幻想的な世界を表現。浮世絵の優々たる線や大胆な構図を取り入れ、日本の伝統とテランのスタイルを融合させた新たな試みを展開する。

作品の中でピカソは、象徴的なモチーフと対話し、波に挑み、富士の麓で遊び、春画の官能性と戯れる。時代や文化を横断し、対話し続けるテランの芸術を体感してほしい。

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  • アート
  • 品川

現代アートギャラリー「アノマリー(ANOMALY)」で、埼玉県を拠点に活動する画家、高橋大輔の個展「Open Map」が開かれる。

デビュー当初から、鮮やかな絵の具が幾層にも重ねられた、厚塗りの抽象絵画を数多く制作してきた高橋。2016年ごろから、その作風に変化が現れた。2022年には、自身の子どもの絵や、チューブから絵の具を直接絞り出し、一筆描きのように一気に描かれた斬新な絵画シリーズを発表する。

その後も試行錯誤を重ね、これまでのキャリアにとらわれない挑戦的な試みを続けた。高橋の絵画への飽くなき探究心は、いまだ見ぬ作品に出合える期待にあふれている。

本展で初公開となる作品『Open Map』は、⻑い変遷を経てたどり着いた、作家にとってある種のマイルストーンとなる重要なシリーズだ。

なお、2025年5月10日(土)には、高橋作品の変遷を長年見守ってきた「埼玉県立近代美術館」学芸員の大浦周とのトークイベントも開催される。

  • アート
  • 上野

「東京藝術大学大学美術館」で、「相国寺展金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史」が開催。室町から現代に至るまで相国寺文化圏が生み出してきた美の歴史を、名品にまつわる物語とともにひもとく。 

相国寺は、京都の御所の北側にその大寺の姿を誇り、金閣寺、銀閣寺の通称で名高い鹿苑寺、慈照寺を擁する臨済宗相国寺派の大本山だ。創建から640年余りの歴史を持つ相国寺は、時代を通じ、如拙(じょせつ)、周文、雪舟、狩野探幽、伊藤若冲、原在中、円山応挙などの芸術家を育て、名作の誕生を導いてきた。

本展では、国宝・重要文化財40点以上を含む相国寺派の名品の数々が登場。また、若冲が鹿苑寺の大書院に描いた障壁画を中心に、相国寺派に伝わる若冲の作品群も見逃せない。さらに、天目茶碗(ちゃわん)の名品など、近年収蔵の華やかなコレクションも並ぶ。 

相国寺の美の世界をのぞいてほしい。

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  • アート
  • 箱根

「ポーラ美術館」で、「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」が開催。ウジェーヌ・ドラクロワ(Eugène Delacroix) 、クロード・モネ(Claude Monet)、アンリ・マティス(Henri Matisse)、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)、草間彌生、杉本博司、ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)など、印象派から現代美術まで、近現代美術における「色彩」の変遷をダイナミックに紹介する。

自然や都市、美術館などで目にする現実の色より、画面を通して経験する「仮想の色」に慣れつつある現代社会。しかし、時代を表してきた美術家たちは、日々研究を重ね、独自の表現方法を創り、人生をかけて色彩を生み出してきた。

チューブに入った油絵の具を巧みに扱い、さまざまな色彩によって視覚世界を再構築した19世紀の印象派や新印象派、20世紀のフォーヴィスムの絵画や抽象絵画。そして、色彩の影響力によって観る者の身体感覚を揺さぶる現代アート。日々の暮らしに彩りをもたらし、物質と精神をともに豊かにしてきた「本当の色」を身近に感じてほしい。

  • アート
  • 乃木坂

「TOTOギャラリー 間」で、建築家・篠原一男(1925〜2006年)の生誕100年を記念し、「篠原一男 空間に永遠を刻む――生誕百年 100の問い」が開催。生涯を通して自らに「問い」を投げかけ続けた篠原の建築家像を、「永遠性」をテーマに再考する。

自邸兼アトリエ「ハウス イン ヨコハマ」に「篠原アトリエ」を構え、設計と言説の発表を続けた篠原。「住宅は芸術である」と唱え、小住宅の設計に多大なエネルギーを費やした。

1960年代半ば、日本の先導的建築家の多くは都市空間の進展と直截連動した建築コンセプトの構築に邁進した中で、篠原は『白の家』『地の家』という2つの住宅を発表。現在、篠原の住宅は日本における現代住宅の一つの到達点を示すものとして、国内外で再評価の機運が高まっている。

会場では、原図や模型、真筆のスケッチ、家具などのオリジナル資料を通して、篠原の活動と人間性を浮かび上がらせる。また、未完の遺作『蓼科山地の初等幾何』のスケッチも展示予定だ。ぜひ、足を運んでほしい。

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  • アート
  • 江東区

「ギャラリーエークワッド」で、「建築家・阿部勤のいえ展 暮らしを愉しむデザイン」展が開かれる。

阿部勤は、坂倉準三建築研究所に所属していた1966年から、タイに学校を建設するプロジェクトの担当として、1970年まで日本とタイを行き来して過ごした。そこで、風通しを確保しながら自然と同化して過ごす生活様式や、屋外での過ごし方に現地で触れ、心地良さが建築の要素に重要なことに気づく。

阿部が設計した自邸は「中心のある家」と呼ばれ、完成後50年たった今でも多くの人を魅了し続ける。仕事場兼遊び場である自邸で、阿部は、木漏れ日や吹き抜ける風を感じつつ、時には料理をし、人をもてなしながら語り合う時間を生涯愛した。

本展を通して、建築家による小さな家の中に詰め込まれたデザインの思想が、豊かな暮らしとは何かを問いかけるだろう。 

  • アート
  • 六本木

「森美術館」で、「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」展が開催。ゲームエンジン、人工知能(AI)、仮想現実(VR)、さらには人間の創造性を超え得る生成AIなどのテクノロジーを採用した現代アートを紹介する。

本展では、現代アートにとどまらず、デザイン、ゲーム、AI研究などの領域で高く評価されるアーティストとクリエーター12組による作品が集結。生物学、地質学、哲学、音楽、ダンス、プログラミングなどの領域とのコラボレーションを通して制作した作品群を通して、最新のテクノロジーと現代アートの関係性を体験できる。

また、平面作品や立体作品、インスタレーションなどのリアルに実在する作品も多く展示されることで、デジタル空間と現実空間を往来する。さらに、参加型のインタラクティブな作品や、鑑賞者同士で実際にプレイすることができる「インディー・ゲーム・コーナー」も登場予定だ。

現実と仮想空間が重なり合う空間で、人類とテクノロジーの関係を考えてみては。

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  • アート
  • 清澄

「東京都現代美術館」で、世界的な文化アイコンであり、アーティスト、詩人であるパティ・スミス(Patti Smith)と、ベルリンを拠点に活動する現代音響芸術集団のサウンドウォーク・コレクティヴ(Soundwalk Collective)による最新プロジェクト「コレスポンデンス」が公開される。

本作は、世界のさまざまな場所でフィールドレコーディングされた「音の記憶」、パティが書き下ろした詩、そしてそれらを増幅させる映像が交差するオーディオビジュアルインスタレーションだ。8つの映像が織り成す複数の物語が、原発事故や森林火災、動物の大量絶滅といったテーマを探求するとともに、芸術家や革命家を参照しながら、アーティストの役割や人間の本質を問いかける。



世界各国を巡回する「コレスポンデンス」は、開催地ごとに新たな作品を制作し、サイトスペシフィックな展示を行う。これまでジョージア、コロンビア、メキシコ、アメリカなどで滞在制作を行い、その土地の歴史や文化的風景と結びついた作品を通じて、観客との間に多層的な応答関係を築いてきた。

今回、パティとサウンドウォーク・コレクティヴは、日本の協力者とともに滞在制作をし、本展で新作として発表。会期中にはアーティストトークも実施予定だ。詳細は、Instagram公式ウェブサイトで順次公開する。

国内の美術館として初となる、彼らのオーディオビジュアル作品を見逃さないように。

  • アート
  • 銀座

再開発計画のため、20252月をもって一時休館する日本演劇界の殿堂「帝国劇場」。この劇場への観客の思いを未来につなぐ展覧会が、大正時代から劇場と縁のある「銀座三越」で開かれる。

1966年に開場した帝国劇場は、演劇、ミュージカル、歌舞伎と、350を超える演目を上演し、多くの舞台人やファンに愛されてきた。本展では、劇場の歴史を振り返るパネルや映像展示のほか、実際に使用されていた看板や座席を使ったフォトスポット、オリジナルグッズを販売する。

チケット料金、展示内容、グッズ販売などの詳細は、1月下旬以降に発表される予定だ。心待ちにしてほしい。

もっとアート散歩をするなら……

  • アート
  • 公共のアート

無数の美術館やギャラリーが存在し、常に多様な展覧会が開かれている東京。海外の芸術愛好家にとってもアジアトップクラスの目的地だ。しかし、貴重な展示会や美術館は料金がかさんでしまうのも事実。

そんなときは、東京の街を散策してみよう。著名な芸術家による傑作が、野外の至る所で鑑賞できる。特におすすめのスポットを紹介していく。

  • トラベル

東京には魅力的なアート展示や、パブリックアートなどがある。しかし建物が密集しているため、大規模なアート施設を新たに造ることは困難だろう。希少な絵画やサイトスペシフィックなインスタレーションを観たいのであれば、千葉、神奈川、埼玉といった近隣の県へ日帰りで出かけるのもいいかもしれない。

自然の中でリラックスしてアートに触れることができる休日に訪れたいアートスポットを紹介する。

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ここではタイムアウトワールドワイドによる、ピカソやミロ、村上隆などの作品を楽しめる世界の「アートレストラン」を紹介。美術館に行く代わりに、レストランを予約してみるというのもいいかもしれない。

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