メゾン・ド・ミュゼ
Photo: Keisuke Tanigawa
Photo: Keisuke Tanigawa

東京、文化財レストラン5選

丸の内、表参道、根津、銀座、若松河田の名建築で優雅なひと時を

寄稿:: Nahoko Matsumoto
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長い歴史の中で育まれ、今日まで守り伝えられてきた文化財。とりわけ東京には、明治から昭和初期に建てられ、当時の面影を残す建造物が点在する。中には建物の中で食事や酒を楽しめる文化財もある。

ここでは東京都選定歴史的建造物に選定されたスパニッシュレストランや、登録有形文化財建造物となった日本最古のビヤホールなど5軒を紹介。美しく時を重ねた空間を五感で堪能してみては。

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東京、文化財カフェ5選

  • スペイン料理
  • 新宿
  • 価格 3/4

「小笠原伯爵邸」は、小倉藩主であった小笠原家30代当主・小笠原長幹伯爵の本邸を修繕し、往時の雰囲気をそのまま残すスパニッシュレストラン。建物の創建は1927年。設計は、大正から昭和初期にかけて数多くの和洋折衷様式の建築を手がけた「曽禰中條建築事務所」。日本では希少な完成度の高いスパニッシュ様式の邸宅で、噴水付きの中庭やクリーム色の外壁、鉄製の飾り格子などを特徴としている。2004年、東京都選定歴史的建造物に選定された。

シガールームは、ビクトリア王朝で流行したイスラム風デザインを採用。大理石のモザイクタイルの床や漆喰彫刻の壁面など、芸術の粋を結集している。

華麗な空間で供されるのは色彩豊かなモダン・スパニッシュ。スペインならではの食材と日本各地から取り寄せた和素材を融合させた、独創性あふれる料理が楽しめる。スペシャリテのイベリコ豚は柔らかくジューシーで、その風味に驚くゲストも多いという。日本では珍しい希少部位も用意する。

ランチ・ディナーともにコースのみの提供。いずれのコースにも魚介や肉のだしで仕立てた米料理を入れるのも特徴だ。

  • 青山

青山の閑静な住宅街にひっそりとたたずむ、アールデコ様式の邸宅レストラン。もともとは、資産家の千葉直五郎が、長男・常五郎への結婚祝いとして1934年に建てた洋館である。鉄筋コンクリート造りの2階建てで、地下にはプールもあった。総工事費は33万円。当時の大卒初任給が約50円だったことから、いかに桁外れの額かが分かる。2018年に渋谷区の有形文化財に登録された。

さまざまな事情により常五郎はこの邸宅を手放すことになり、1981年に会員制レストランとして生まれ変わり、2021年にはフレンチレストラン「メゾン・ド・ミュゼ」が開業。伝統を踏まえつつも、新たな感性を取り入れたメニューをランチとディナーで提供している。

今でもアーチ状の車寄せや優美ならせん階段など、大正建築のレトロモダンな意匠を随所で感じることができる。中でも、アールデコの巨匠・エルテの作品所有数は世界一を誇る。かつてプールがあった場所はワインセラーとして使われ、希少なビンテージワインを貯蔵。2階の個室や屋根裏部屋はメンバーズクラブ会員専用のラウンジとなっている。

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  • 根津
  • 価格 2/4

1970年、上野で創業し、1978年に根津に移転した串揚げ専門店。1917年竣工の、総けやき造り木造3階建ての日本家屋は根津エリアのランドマークとなっている。もともとは下駄の爪皮を扱う商店が所有する建物だったが、1970年代には運送会社の手に渡り、独身寮として使用されていた。

初代が散歩中、貫禄あるたたずまいにひと目惚れし、住居兼店舗として買い取ったのが根津本店の始まり。その後、隣接する2つの町屋を入手し、それぞれをつなぎ現在の姿に。1999年には国の登録有形文化財となった。

見どころは店内に建つ明治時代の土蔵だ。梁をめぐらせた吹き抜けは密室ながら開放感が格別。2階と3階の座敷は下町風情を色濃く感じることができる。ミシミシと音を立てる急な階段に懐かしさを覚える人も少なくないだろう。

串揚げは肉、魚介、野菜など常時30種類以上を用意。きめ細かなパン粉をまとわせて揚げた串は驚くほど軽い口当たり。メニューは季節に応じて変わり、「ポロネギとパンチェッタ」や「三つ葉の鱚巻き」といった独創性あふれるメニューも楽しい。

  • 銀座

サッポロビールの前身である「大日本麦酒」の本社ビルとして1934年に完成した「銀座ライオンビル」。ほぼ同時に1階にオープンした「銀座ビヤホール」は、当時としては贅(ぜい)をつくした造りであることから、建築家から絶大な称賛を集めた。

戦時中、多くのビヤホールは空襲により焼失したり取り壊されたりしたが、同店は奇跡的に戦火を免れた。1945年には連合国最高司令官総司令 (GHQ)に接収され、軍専用のビヤホールとなった。1952年に接収が解かれ、一般客の利用が可能に。現存する日本最古のビアホールとしても名高い。

内装のコンセプトは「豊穣(ほうじょう)と収穫」。豊かな実りが感じられる大麦やブドウをモチーフとした装飾が所々に施されている。まるで教会のような重厚な風格は圧巻だ。2022年2月、国の登録有形文化財建造物に登録された。

「琥珀ヱビス プレミアムアンバー」「白穂乃香(しろほのか)」「エーデルピルス」などのサッポロビールの豊富なラインアップの生ビールが楽しめる。歴史が詰まった空間で上質なビールをたしなみながら、激動の時代に思いをはせたい。

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  • Things to do
  • 丸の内

「センチュリーコート丸の内」は、「明治生命館」の地下階にある複合飲食施設だ。明治生命館は、日本初の生命保険会社として1881年に創業した明治生命の新社屋として1934年に建設された。設計は歌舞伎座や日本銀行小樽支店などを手がけた東京美術学校(現、東京芸術大学)教授の岡田信一郎だ。

外観、内観ともに古代ギリシア・ローマを源とする古典主義様式でまとめられ、とりわけパルテノン神殿を思わせる巨大な列柱は優美そのもの。

1997年には国の重要文化財に指定された。昭和に建てられた建造物としては初めてのことだ。2005年にリニューアル工事が完了し、2008年には地下階にあったバーやレストランなどの社交場が、クラブレストラン「センチュリーコート丸の内」として新たによみがえった。創建当時の大理石の柱が残り、モダンクラシックなたたずまいが人気を呼んでいる。

フレンチ、和食、バー、パーティールームなど一般向け施設のほか会員専用施設も備えている。ランチ、ディナー、パーティーをはじめ多様に活用できるのも魅力だ。過去を今に伝える趣ある空間で、粋なひと時を過ごすのも悪くないだろう。

もっと歴史的な空間で過ごしたいなら……

  • カフェ・喫茶店

午後のブレイクタイムを素朴な空間で楽しみたい。居心地の良い空間でほっと一息をつきたい、という人は古民家カフェに立ち寄ってみよう。使われなくなった銭湯をリノベーションしたユニークなスペースや、古い建物をおしゃれによみがえらせたカフェなど、東京にはレトロでノスタルジックなスポットが点在している。

ここでは、築100年近い建物から東京都の有形文化財に指定された場所まで、ほぼ昔のままの姿で残された情緒あふれる古民家カフェを紹介しよう。熱いコーヒーとともに歴史に思いをはせれば、タイムスリップしたような気持ちになるはずだ。

  • カフェ・喫茶店

歴史ある日本文化の魅力を現代に伝える有形文化財。都内には国が指定する重要文化財や市区町村が指定する登録有形文化財の中で、喫茶が楽しめる場所がいくつかある。

それらは文化財という共通点を持ちながらも、江戸文化を伝承する建物もあれば、世界的な建築家が設計したもの、フランス発祥の建築様式など、それぞれに個性豊かだ。名建築の中に佇むカフェでぜひ特別な時間を過ごしてほしい。

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  • ホテル

後世に伝えるために、法律によって保護されている文化財。国や地方自治体が登録する有形文化財は建造物だけでも2万5000件を超える。じつは、この中には泊まれる文化財もある。

ここでは、東京都の文化財に指定されている宿やホテル、横浜市認定歴史的建造物となったホテルなどを紹介しよう。情緒あふれる名建築の中にゆったりと身を置き、悠久の時を感じてみてほしい。

 

  • ミュージアム

純喫茶や近代建築、インベーダーゲームの筐体(きょうたい)や駄菓子、昭和に流行したキッチュなアパレルやおもちゃなど「レトロ」なものが今人気だ。そこには、古き良きものを埋もれさせまいとする歴史への敬意のようなものが感じられる。ここでは、そんな長い時の洗礼を受けたからこそ、人々を引きつける歴史的な価値を持ったミュージアムを紹介する。

明治や昭和初期に建てられた名建築から、昭和の人々の暮らしに思いをはせることができる庶民的な民家や、弾痕が残る戦災建造物まで「レトロ好き」なら心ときめくこと間違いなしだ。

 

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