青山の閑静な住宅街にひっそりとたたずむ、アールデコ様式の邸宅レストラン。もともとは、資産家の千葉直五郎が、長男・常五郎への結婚祝いとして1934年に建てた洋館である。鉄筋コンクリート造りの2階建てで、地下にはプールもあった。総工事費は33万円。当時の大卒初任給が約50円だったことから、いかに桁外れの額かが分かる。2018年に渋谷区の有形文化財に登録された。
さまざまな事情により常五郎はこの邸宅を手放すことになり、1981年に会員制レストランとして生まれ変わり、2021年にはフレンチレストラン「メゾン・ド・ミュゼ」が開業。伝統を踏まえつつも、新たな感性を取り入れたメニューをランチとディナーで提供している。
今でもアーチ状の車寄せや優美ならせん階段など、大正建築のレトロモダンな意匠を随所で感じることができる。中でも、アールデコの巨匠・エルテの作品所有数は世界一を誇る。かつてプールがあった場所はワインセラーとして使われ、希少なビンテージワインを貯蔵。2階の個室や屋根裏部屋はメンバーズクラブ会員専用のラウンジとなっている。