パンデミック下のボゴタは、自転車での移動を当たり前にするための取り組みを強化した。2020年3月には、ソーシャルディスタンスを保ちながら出勤や移動ができるよう、ロードコーンを使って84キロメートルの臨時の自転車レーンを増設。今後はさらに280キロメートルのレーンが追加される予定だ。
この政策により、「世界で最も渋滞している都市」として悪評を買っていたボゴタが、今後ラテンアメリカで最も自転車の利用率が高く、「サイクリスト天国」として定着していくことは間違いないだろう。
気候変動問題に関して、多くの都市が責任を負っている。大都市の発展は、人々に計り知れない利益をもたらしてきた。私たちは、都市がなければ今のような仕事やライフスタイルを手に入れることはできなかっただろう。しかし多くのものを手にした結果、大惨事が起きてしまった。
私たちがすでに失ってしまった、そして今も失い続けている「自然」がその例だ。鉄とコンクリートでできたビルは大気中に二酸化炭素を放出し、家庭や工場などから流れ出た汚水で川や海が汚されている。交通機関や工場の発展は、呼吸をするという単純な行為を難しくしてしまった。道を通りすがるキツネがどんなに悲しい表情をしているか、その様子を見たことはあるだろうか?
人類が世界に与えたダメージを元に戻すには、ロンドンや東京、ニューヨークなどの巨大都市を筆頭に、真の変化を起こさなければならない。幸いなことに、大小さまざまな都市で、地球に優しい革新的な取り組みがすでにたくさん行われている。ここでは、緑豊かな都市生活を今後何世紀にもわたって維持するために役立つ、世界中で実施されている明るいアイデアを紹介しよう。
パンデミック下のボゴタは、自転車での移動を当たり前にするための取り組みを強化した。2020年3月には、ソーシャルディスタンスを保ちながら出勤や移動ができるよう、ロードコーンを使って84キロメートルの臨時の自転車レーンを増設。今後はさらに280キロメートルのレーンが追加される予定だ。
この政策により、「世界で最も渋滞している都市」として悪評を買っていたボゴタが、今後ラテンアメリカで最も自転車の利用率が高く、「サイクリスト天国」として定着していくことは間違いないだろう。
バルセロナは上空から見ると、まるで碁盤の目のようなデザインをしていることが分かる。その独特のレイアウトを生かして進められているのが、複数のブロック(区画)を束ねて自動車の侵入を制限する「スーパーブロック(superilla)」だ。この政策により、新たにできた空間に広場や緑地を設け、歩行者や自転車が優先されるゾーンを増やすことに成功した。
車は各ブロックの外周を回ることだけが許可されており、実質的に中心部の広大な範囲を歩行者天国にし、空気の質が大幅に改善されることにも期待が集まっている。最終的にはバルセロナ市内に500のスーパーブロックを作ることを目指している。
南半球はすでに気候変動の影響を受けている。そして、その影響を女性が偏って受けているというケースも多い。南アフリカの都市、ダーバンでは、行政が地球を救うと同時に、男女間の不平等を解消するソリューションを見つけたようだ。
『Wonderbag(ワンダーバッグ)』は、熱した鍋やフライパンを入れておくと、何時間もかけてゆっくりと調理することができるという大きな布製の袋。二酸化炭素排出量の削減だけでなく、大量の水の節約、室内空気汚染の軽減など、まさに「Win-Win」を実現できるのだ。
300万。これは、ミラノが2030年までに植えようとしている木の数だ。これは市民1人につき1本の木を植える計算になり、道路や公園、高層ビルのバルコニーにさえも植樹することが計画されている。
ほかの都市で行われている多くの「緑化」計画とは異なり、ミラノ市は最適な木の種類と、それを植えるのに最も適した場所を探しているという。気温の高い地域や、既存の森林をつなぐ「緑の回廊」を作るのに最も適した場所を特定するのが、その例だ。そしてミラノはこの都市計画を通して、ほかの都市に刺激を与えたいと考えている。
パリは、2026年までに街の全体で17万本以上の木を植え、2030年までに市の50%を植樹地で覆うことを約束している。2021年には数十キロメートルに及ぶ自転車専用レーンが整備され、「光の都」の車からの離脱がまた一歩現実化した。
そして今、パリはそこからさらに一歩進んだ政策を実現しようとしている。その内容は、2022年から1~4区で自動車の使用を全面的に禁止しようというもの。この政策によりバスティーユ広場からコンコルド広場までの、市内の約7%を占めるエリアが、自動車通行禁止となる見込みだ。
2013年にエストニアの首都、タリンが公共交通機関の無料化を実現した時、気候危機問題は街の主要トピックではなかったかもしれない。政府は当初、低所得者層のモビリティを高めることを目的としていたからだ。
しかし、気候変動問題が悪化するにつれ、公共交通機関の無料化が環境面でのメリットとなると考えられるようになった。タリンは自家用車よりも交通機関を優先するという財政的に実行可能なシステムを、都市がどのように作ることができるか、その基礎を築いたのである。
スイスの都市であるバーゼルの建物には、その新旧問わず、ほぼ全ての平らな屋根の上に野草が茂る「庭園」が見られる。過去10年ほど前から、全ての住宅やオフィスなどの建物の屋根に、生物多様性に富んだ植物を植えることが義務付けられているからだ。断熱効果で電気代が安くなる上、珍しい鳥の姿も頻繁に見られるようになった。
『東京オリンピック・パラリンピック』に向けて、東京では夏の暑さ対策としてさまざまな冷房技術が試された。太陽熱を遮断する塗料や霧吹き、よりクリーンなエアコン、鉄やコンクリートではなく木でできた建物など、これらの技術の多くは「ヒートアイランド現象」を抑えることに成功。世界が温暖化し続ける中、東京で導入された対策は、世界中の都市に影響を与えるだろう。
アムステルダムは政府と草の根運動が一体となって、「ドーナツモデル」を採用している街だ。このビジョンは、「廃棄物と汚染を可能な限りの排除すること」「製品や素材を使い続けること」「自然のシステムを再生させること」の3つの要素が指針とされていて、今や都市の意思決定や政策立案に影響を与えるほどになっている。
主な目的は、地球にとって存続可能な未来を創造すること。そして同時に人類のニーズを満たすことでもある。結果、アムステルダムは再生可能エネルギーや緑地、持続可能な食糧システムの構築、消費量の削減など、数多くの野心的な目標を掲げている。このドーナツモデルは、全ての政府が目指すべきものであろう。
なぜ、3Dプリンター住宅が環境に優しいのか。簡単に言うと、世界の人口が爆発的に増えているため、多くの住宅が急速に必要になるからだ。ソフトウエアや機械を使った建築は、従来よりエネルギー消費量や資源の浪費が少なく、高いスペックの物件を建設できるため、理論上は環境負荷が大幅に軽減される。
テキサス州オースティンでは、3Dプリントされた住宅を近隣一帯に建設中だ。世界的な住宅危機に対して、より効率的で持続可能な解決策の先例となることだろう。
「コペンハーゲン」というワードは、この10年間で、サステナビリティの代名詞となった感がある。このデンマークの首都名が、同国が誇るプルセ(ホットドッグ)やハンス・クリスチャン・アンデルセンと同じように、世界で注目されているのだ。
鉄やコンクリートで建物を造ることで、大量のCO2が発生するのは紛れもない事実だ。バンクーバーでは多くの先駆的な建築家たちが、コンクリートの代わりとなる強化木材の技術を磨いてきた。これらの最新の木材建築は鉄筋コンクリートに比べ、生産に必要なエネルギーがはるかに少なく、持続可能な方法で調達できるとともに、驚くほど耐火性に優れている。
この街には注目すべき大規模なプロジェクトがいくつかあるが、最も印象的なのは40階建てのアース・タワーで、まもなく世界一高い木造高層ビルとして完成する予定だ。
ブラジルの都市クリチバでは、ハチの受粉によってなんと90%もの植物種の原状が維持されているという。都心部の公園や学校、博物館など50カ所以上に5種類のミツバチを導入することで、街の緑を保っているのだ。
さらに、ミツバチの効用を市民に知ってもらうべく、毎月、養蜂の無料トレーニングコースを街が率先して開催。わずか2年間で7000人以上の「養蜂家」の育成に成功した。
メタンガスは二酸化炭素と比較した場合、温暖化係数が約84倍(20年間で比較)もあり、その主な発生源の1つは、食品や有機廃棄物が分解されてガスを放出する埋立地である。ブエノスアイレスのCEAMSE発電所では、このメタンガスをバイオガスプラントに送り込み、大気への放出を防ぐと同時に、街のエネルギー供給源として利用している。
ドイツでも有数の大学都市として知られるフライブルクは、自然環境に配慮した都市設計の最前線に位置している。ドイツで有数の大学都市であり、ドイツ緑の党の拠点であるフライブルクは、自然環境に配慮した都市設計の最前線に位置し、エネルギーや資源を消費する建築物の在り方を変えつつある。サッカーチーム、SCフライブルクの太陽光発電スタジアムやシュヴァルツヴァルド(黒い森)のふもとにある都市ヴォーバンは、サステナブル地区として、その形態の行く先は世界から期待されている。
香港で使用される電力の約90%を消費する1500棟の超高層ビル郡。しかし、その中で最も高くそびえる環球貿易広場(ICC)は、環境への配慮が施されている。このビルのオペレーターは、ワイヤレスネットワークのセンサーを駆使し、電力を必要とする場所とそうでない場所を選り分けているのだ。
つまり、基本的にこのビルにはエネルギーの無駄がなく、事実年間1万トンの二酸化炭素排出を削減している。そして現在、市内の多くの新しい高層ビルが、この方式を採用するようになってきた。
旅行を計画するとき、まず最初に考えるのは「クールな楽しみ方を見つけること」だろう。ヘルシンキでは、観光をしながらサステナブルな選択をするためのガイドが作られている。
2035年までにカーボンニュートラルを目指すヘルシンキ。この目標を達成するために、このガイドには最も環境に配慮したバーやクラブ、文化スペースを掲載している。エッジの効いたアモス・レックス・ギャラリーや、世界初のカーボンニュートラルな音楽フェスティバル『フロー・フェスティバル』などがその例だ。
モンゴルの首都ウランバートルは、石炭に大きく依存していることで知られる。ウランバートルで毎年開催される『ノゴーンバートル・エコ・アートフェスティバル』は、地元の人々に芸術を通して環境問題を教育し、変化を促すことを目的とする芸術祭だ。
国際的なアーティストと地元のデザイナーを交えたプログラムで、ストリートアートの展示や、地元の学校への出張授業などを行うほか、多くのイベントがゴミ捨て場から公園になった山湖で開催。主催者は、二酸化炭素の排出を削減するための独自の計画を立てており、現在、街がそれを実行しているところだ。
ロンドンのイズリントン区は気候変動の非常事態を宣言し、それに対処するための革新的な計画を打ち出した。「グリーンボンド」と呼ばれる債券の発行だ。この債券を購入することで、自治体が自然再生プロジェクトやソーラーパネルの設置、電気自動車インフラの完備など、グリーンイニシアティブに資金を提供することができる。
投資家は約1.55%の利子を得ることができるが、多くの人々が現金をこの制度に自主的に寄付している。5円から出資でき、利益が出れば環境に関するさまざまなアイデアが生まれることだろう。
海へ向かう子ガメの大群を見たことがあるだろうか。その様子はとてもかわいらしいものだが、彼らにとっては危険を伴う。バイザッグの略称で知られるインドの都市、ビシャーカパトナムでは、海辺のインフラを再構築している。この地域にはまぶしい光と汚染された工場は、もうない。
その代わりにウミガメのふ化場が設置され、漁師たちは保護計画に協力することになった。ふ化した子ガメを支援することで、同時に海産物と陸産物の両方を汚染の危機から救い出すことにもなったのだ。
ルワンダはアフリカで最も人口密度の高い国の一つとして知られるが、首都のキガリは特に人口が多い。この人口急増と気候変動への対策として、アフリカで初めての持続可能なエコ地区の建設が進められている。
ガサボ地区のキニーニャの丘に誕生予定のグリーンシティ・キガリには、手頃な価格で提供される3万戸の住宅が建設中だ。開発完了時には約1万6000人の雇用創出が見込まれる予定で、この地区では、エコロジカルフットプリントを最小限に抑えることが約束されている。
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