緊急地震速報で空襲警報のアラーム音を思い出す
ー福井県にいたウクライナ避難民の方々は、どういう経緯で避難することになったのでしょうか。
地震が起きた際、渋谷ひまわりはFacebookやInstagramなどのSNSで、被害に遭われた方々に「何か困っていることはないか」と呼びかけました。全心連はスクールカウンセラーなどが所属する業界団体です。私たちは東日本大震災など被災者の心のケアを行ってきた経験から、自然災害によりトラウマが悪化することが分かっていたためです。
子どもの精神面を心配された2家族から相談が寄せられ、余震の心配のないほかのエリアに短期間ですが避難していただきました。余震が続く被災地に身を置き続けることは非常に強い心理的負荷がかかってしまうと、心のケアの専門家として感じました。本国では今も戦争状態が続く彼らには、特有の困難が降りかかります。戦争から逃れてきた彼らにとって地震は、日本人が想像するよりも深刻な影響を与えるからです。
まず、彼らにとって地震は未知の災害です。日本で生まれ育っていれば「震度3くらいかな?」など、揺れだけでなんとなく地震の規模感も想像できます。机の下に潜るなどの身を守る術も、自然に取れますよね。それができるのって、子どもの頃から学校で避難訓練をずっとしてきているからなんです。
ー避難訓練がいきている、とはあまり実感したことはありませんが、単に地震に慣れているだけではないんですか?
避難されたご家族のお母さんが、地震発生時にパニックになってしまったらしく、足を剥離(はくり)骨折されたんですね。いきなり地震に遭遇すると、冷静でいることは難しいです。地震そのものへの慣れもありますが、もしもの時こそ、あらかじめどんな行動が安全か、分かっていないと動くことなんてとてもできません。
ただ慣れていない、避難訓練ができていないというだけでなく、深刻なのは、パニック時の記憶を本人が全く覚えていないという点です。