ウクライナ「心のケア」交流センター渋谷ひまわり
ウクライナ「心のケア」交流センター渋谷ひまわり2022年8月:交流会の様子
ウクライナ「心のケア」交流センター渋谷ひまわり

地震が戦争のトラウマとフラッシュバックを誘発、ウクライナ避難民が直面する困難

孤立する人々のケアと被災地以外の人ができることは

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タイムアウト東京 >  Things To Do > 地震が戦争のトラウマとフラッシュバックを誘発、ウクライナ避難民が直面する困難

テキスト:吉田ミツイ

2024年1月1日に発生した能登半島地震では、石川県のみならず北陸エリアが震度5強以上の地震に見舞われた。石川県では、自治体の1次避難所だけでも約6400人が今も避難所生活を続け、多くの人が先の見えない状況にある。多くの人が巻き込まれる広域での災害の場合、支援の手が行き届かないことも少なくない。その一つが、被災したウクライナからの避難民たちだ。

一般社団法人全国心理業連合会(以下、全心連)は、福井県で被災したウクライナ避難民の家族を京都と東京に1週間程度の短期的な避難をさせた。心理カウンセラーの業界団体である全心連は、ロシアによるウクライナ侵攻後の2022年4月から「ウクライナ『心のケア』交流センター渋谷ひまわり」(以下、渋谷ひまわり)を立ち上げ、日本に避難した人々の支援を続けている。

本記事では、全心連の代表理事兼、渋谷ひまわり代表で、他エリアへの短期避難にも同行した浮世満理子に話を聞いた。そこには言葉の問題だけではなく、戦争避難民ならではの深刻な問題があった。

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緊急地震速報で空襲警報のアラーム音を思い出す

ー福井県にいたウクライナ避難民の方々は、どういう経緯で避難することになったのでしょうか。

地震が起きた際、渋谷ひまわりはFacebookやInstagramなどのSNSで、被害に遭われた方々に「何か困っていることはないか」と呼びかけました。全心連はスクールカウンセラーなどが所属する業界団体です。私たちは東日本大震災など被災者の心のケアを行ってきた経験から、自然災害によりトラウマが悪化することが分かっていたためです。 

子どもの精神面を心配された2家族から相談が寄せられ、余震の心配のないほかのエリアに短期間ですが避難していただきました。余震が続く被災地に身を置き続けることは非常に強い心理的負荷がかかってしまうと、​心のケアの専門家として感じました。本国では今も戦争状態が続く彼らには、特有の困難が降りかかります。戦争から逃れてきた彼らにとって地震は、日本人が想像するよりも深刻な影響を与えるからです。

まず、彼らにとって地震は未知の災害です。日本で生まれ育っていれば「震度3くらいかな?」など、揺れだけでなんとなく地震の規模感も想像できます。机の下に潜るなどの身を守る術も、自然に取れますよね。それができるのって、子どもの頃から学校で避難訓練をずっとしてきているからなんです。 

ー避難訓練がいきている、とはあまり実感したことはありませんが、単に地震に慣れているだけではないんですか? 

避難されたご家族のお母さんが、地震発生時にパニックになってしまったらしく、足を剥離(はくり)骨折されたんですね。いきなり地震に遭遇すると、冷静でいることは難しいです。地震そのものへの慣れもありますが、もしもの時こそ、あらかじめどんな行動が安全か、分かっていないと動くことなんてとてもできません。

ただ慣れていない、避難訓練ができていないというだけでなく、深刻なのは、パニック時の記憶を本人が全く覚えていないという点です。

「地震発生時に骨折するも記憶がない」強いトラウマとフラッシュバック

骨折だけでなく、体中があざだらけで、何度も転んだんだろうなと想像できる痛々しいものでした。どんな状況だったのか聞いたところ「全く覚えていない」という言葉が返ってきました。これは心理学的に言うと、かなり強いトラウマとフラッシュバックの状態を指し示しています。 

いくら怖い思いをしても、記憶が飛ぶほどのことってないですよね。私も阪神淡路大震災を被災したので、大きな地震の恐ろしさは実感できます。それでも、どこで転んだかも覚えていない、なぜ肩や腕にあざがあるのかも分からない心理状態……それは地震だけではなく、戦争体験と強く結びついていると感じました。

ーフラッシュバックが起こっているとき、本人はまるでトラウマ体験の瞬間にタイムスリップしたかのように生々しい記憶に襲われていると聞いたことがあります。戦火を逃れるために、せっかく日本へ来たのに……。 

そうなんです。まずは余震のないところで安心して過ごしてもらう、そのための他地域への避難でした。もう一つ、余震だけでなく、緊急地震速報のアラーム音も彼らを追い詰める要因になっています。あの音で思い出されるのは、地震ではなく真っ先にミサイル攻撃なんです。

ー緊急地震速報を聞いて、ミサイル攻撃が心配になるんですか。

日本人からは突拍子もなく思えてしまいますよね。でも彼らにとっては、地震よりもミサイル攻撃の方がずっと身近です。

ウクライナでよく聞いていた「空襲警報のアラーム音」と記憶がつながってしまうんです。以前、関東で緊急地震速報が流れた時、「日本がミサイル攻撃されるのではないか」と不安にかられて何日も眠れなくなってしまった人がいました。多くは激戦区から逃れてきた人たちです。 

日々暮らしているだけでも、ヘリコプターの飛行音や救急車のサイレンを聞くだけでフラッシュバックを起こしてしまって身動きが取れなくなるような人もいます。震災で倒壊した市街地の光景は、焼け野原となった故郷を思い起こさせてしまうでしょう。

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「情報弱者にさせない、孤立させない」被災地にいないからこそできること

今回、支援したご家族の、とても印象に残った言葉があります。

「私たちの存在なんて誰にも気づいてもらえないと感じていた」。

ウクライナ侵攻による避難民の多くは関東にいて、北陸エリアには少人数が点在するのみ。ご家族の中だけで「どうしよう、どうしよう」と孤立していたのです。被災地を離れ、ホッとしたのか「まさか東京に来て、ゆっくりお茶をする時間が持てるなんて、思いもしなかった」とこぼしていました。 

ー今後、被災された方へはどのような取り組みを考えていますか?

大きな災害が起こった時、最も気をつけなくてはならないのは、支援が手薄になりやすい外国人などのマイノリティーを「情報弱者にさせない」こと、そして「孤立させない」ことです。

ウクライナに限ったことではありませんが、支援情報が外国人にまで届いていないという問題があります。自治体のウェブサイトの避難所や給水所情報、罹災(りさい)証明証の発行の仕方などの重要な情報は、外国語対応にまで手が待っていません。外国語選択できる項目はありますが、Googleの無料の自動翻訳を使ったものです。

渋谷ひまわりでは、そういった情報をウクライナ語に翻訳して、SNS上で発信しています。それを見てようやく情報を知れるというのが現状です。翻訳した情報に対してウクライナ語で質問すると、必要な情報を教えてくれる、AI(人工知能)を使ったチャットボットの防災アプリを公開しました。 

被災地以外の人が、自治体の情報を翻訳して届けるということの必要性を感じています。そういったことは個人では難しいので、私たちのような支援活動団体の発信を調べたり、ボランティアや寄付していただくことも、十分大きな力になるはずです。

ウクライナ「心のケア」交流センター渋谷ひまわり

非営利の一般社団法人全国心理業連合会(全心連)が運営。日本の親子とウクライナの親子が気軽に交流でき、 「話を聴くプロ」が心のケアも行える場所として、2022年5月2日に東京・渋谷、2022年5月13日に大阪・梅田に開設された。

心理カウンセラーが在中し、日本に住むウクライナの人々の交流センターとして、 一般社団法人プロフェッショナル心理カウンセラー協会後援、株式会社アイディアヒューマンサポートサービス協力のもと運営している。

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2024年1月28日、若手映画人育成を目的に毎年行われる「池袋みらい映画祭」で、東日本大震災後の福島を舞台にした作品「ハルを探して」が上映。その後、「震災を受けて」と題したトークイベントが行われた。能登半島地震を受けて緊急企画されたもので、語り手はYouTubeチャンネル「KANE and KOTFE」を運営するゲイカップルのKANEとKOTFEだ。 

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2024年1月1日、能登半島で最大震度7を観測する地震が起きた。

「一人でも多くの命を救いたい」。行方不明者の捜索には、警察や消防、自衛隊など訓練を受けた救助隊が尽力しているが、中には民間のレスキュー隊員の姿もあった。2日、生存者の発見・救出に成功した「空飛ぶ捜索医療団ARROWS」の捜索救助チームリーダー、黄春源(Civic Force所属)が、救出の現場を振り返るとともに被災地や日本への思いを語った。

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「令和6年能登半島地震」に伴い、「移動スーパーとくし丸(以下、とくし丸)」が、石川県珠洲市や経済産業省と連携し、2024年1月7日から被災地で救援物資の無償配布を行っている。 野菜などが描かれた軽トラックの荷台の扉を開けると、食品や日用品がずらりと陳列されている。冷蔵庫も完備され、牛乳や豆腐のほか、寿司などの総菜も揃っていた。

とくし丸は、買い物をするのが困難な高齢者に向けて、軽トラックに約400品目を乗せて販売する移動型スーパーマーケット事業である。北海道から沖縄まで日本全国141社のスーパーと提携し、1164台が稼働している(2023年12月時点)。

今回、タイムアウト東京の取材班は、とくし丸チームとともに輪島市に向かった。道中、佐藤に話を聞いた。

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石川県によると「令和6年能登半島地震」による死者・行方不明者の数は250人以上におよび、同県だけで4万1000件以上の家屋が全壊・半壊・浸水など何らかの被害を受けているという(2024年1月25日時点)。

あの日からもうすぐ1カ月、断水が続く地域もあり被災地の状況は依然厳しく、災害関連死で亡くなる人も増えている。

そんな中、いち早く被災地へ入り、外国人や障がい者など見えにくい被災者への支援を続けているのが「難民を助ける会(以降、AAR Japan)」だ。

県内に住む外国人は約1万7000人(2021年時点)、被害の大きかった能登半島北部の6市町には約600人の技能実習生がいる。ここでは、実際に七尾市や能登町で暮らすインドネシア・ネパール・ベトナム出身の人々へ支援活動を行っているAAR Japanのプログラムコーディネーターである櫻井佑樹に、被災地で暮らす外国人の状況や彼らへの支援について聞いた。

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2024年1月1日、石川県能登半島で最大震度7を観測した地震が発生した。被災状況の全容はいまだ不明瞭だが、一つだけはっきりしていることがある。それは、現地では多くの人が今まさに危険と不安にさらされており、援助を必要としているということだ。

多くの人が今自分にできることを探しているかもしれないが、簡単にできることはいくつかある。ここでは、寄付で今すぐ支援する方法を紹介する。どこに寄付すればいいのか悩んでいる人は参考になるだろう。

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