Tokyo meets the world: Portugal
Photo: Kisa Toyoshima Ambassador of Portugal to Japan, Vítor Sereno
Photo: Kisa Toyoshima

駐日ポルトガル大使が語る、持続可能な海洋管理の重要性と500年におよぶ日葡関係

SDGsにおける海洋の重要性や大阪万博への期待、東京でおすすめのポルトガル料理店を聞いた

Ili Saarinen
翻訳:: Genya Aoki
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コロナ禍の終わりを見据え、世界中で規制が撤廃されてきた今、コロナ終息後の東京の新しい方向性を示す斬新なアイデアやインスピレーションが求められている。 タイムアウト東京は「Tokyo meets the world」シリーズを通して、東京在住の駐日大使へのインタビューを続け、都市生活に関する幅広い異なる視点を紹介。とりわけ環境に優しく、幸せで安全な未来へと導くための持続可能な取り組みについては大きく取り上げてきた。

今回の「Tokyo meets the world」では、2022年3月に就任したばかりのポルトガルのヴィットル・セレーノ大使に話を聞いた。ポルトガルは、カステラやサッカーのク リスティアーノ・ロナウドで知られる、南欧の国であり、2025年に大阪にやってくる「タイムアウトマーケット」の発祥の地でもある。環境に配慮した先進的で競争 力のある経済国家であり、日本との間にある古くからの絆を誇りに思っていることをアピールするため、南欧諸国の大使の中でも最年少の一人、セレーノ大使は精力的に活動している。

プライベートでは、愛車の「ドゥカティ」にまたがり東京の街を走るのが好きだという。そんなセレーノ大使に、日本とポルトガルの関係、海洋を守るために両国が協力できること、おすすめのポルトガル料理店などについて聞いた。

日本に来て感じた最も大切にしたい3つのこと

ー来日して約4カ月、これまでの日本の印象を教えてください。

(日本での生活は)素晴らしい経験となっています。日本とポルトガルには、16世紀までさかのぼる歴史的なつながりがあります。1543年、私たちは西洋人として初めて日本に足を踏み入れました。

私はこの歴史的つながりを踏まえて、ポルトガルが日本の人々にとって、「種子島銃」や天ぷら、サッカーポルトガル代表以上の存在であることを示したい。ポルトガルは近代的で、競争力があり、安全な国であり、良い投資パートナーなのです。ヨーロッパ、アフリカ、アメリカの間に位置する恵まれた立地条件から、日本の投資のヨーロッパにおける一大拠点となる可能性を秘めています。

ー東京での生活はいかがですか。また、お気に入りの場所はありますか。

東京での生活はとても快適で楽しいです。東京に来る前は(セネガルの)ダカールで西アフリカの7カ国を担当する大使をしていたので、その頃とはかなり異なりますね。日本が持つ独特の文化との向き合い方については、いろいろと考えているところです。

私が最も楽しいと感じることの一つは、外交的な堅苦しさ抜きで、どこの誰ともわからない一個人として、バイクに乗って出かけることですね。自由気ままに飲みに行ったり、狭い裏路地を見つけて、身の危険を感じることなく安心しておいしい食事を楽しんだりできることが気に入っています。治安の良さ、人々が親切であること、そして何より、高齢者に対する深い尊敬の念、この3つは日本の特に素晴らしい点だと思います。

お気に入りのスポットについてはまだ見つけている最中ですが、私の行きつけのレストランは、友人の西さんが経営している「ビストロチック」。おいしい日本の肉を、おいしいポルトガル産のワイン、「ヴィーニョ・ヴェルデ」と共に堪能できます。

好きな街は表参道ですね。有名ブランドから古着屋まで何でも揃っている上に、建築雑誌に載っているような美しい建物に囲まれているところが気に入っています。

ポルトガルの大使公邸がある六本木や、絶品の海の幸が食べられる築地、そして鎌倉も好きですね。ポルトガル人は「海の民」とよく言われますが、私も海の近くで育ちましたので、海が近いということに最も強く惹かれます。鎌倉へは、海を眺めたり、泳いだり、自国を思い出したりするためによく行きます。

東京でおすすめのポルトガル料理店

ー故郷の味を楽しむならどこに行きますか。

東京には「クリスチアノ」、「マル・デ・クリスチアノ」、「マヌエル」、「ピリピリ」(最近横浜に移転)など、ポルトガル料理のレストランがあることは知っています。しかし、日本でのポルトガル料理の普及や、ポルトガル人シェフの招へいなど、まだまだやるべきことがたくさんあるのが実情です。

京都でパウロ・ドゥアルテさんが経営する、カステラ(ポルトガル風に言えば「パン・デ・ロー」)などのスイーツを提供している「カステラ・ド・パウロ」など、いくつかの成功例はあります。しかし、ポルトガル食品の日本への輸出を増やし、ポルトガルと日本の料理学校間の協力を促進するといった活動は続けなければいけません。その第一歩として、私は大使として初めてポルトガルの料理学校出身のポルトガル人シェフを公邸で採用しました。 

(ワインに関して言えば)、日本でポルトガルワインを入手することはそれほど難しいことではありませんね。良い輸入業者がいくつかあり、ポルトガルの全てのワイン産地から、赤、白、ヴィーニョ・ヴェルデ、ポート、マデイラなど、あらゆる種類のワインを仕入れて取り揃えています。

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ポルトガルが万博で収めた成功

ー次の日本の国際的な一大イベントとしては2025年の「大阪・関西万博」がありますが、近い将来、日本に期待することはありますか。 

万博は、地域の経済を活性化させ、大阪を国際的に重要な都市として確固たるものにする可能性を秘めた興味深いイベントです。過去の万博から学ぶことが成功の鍵だと考えています。ポルトガルも1998年に万博を開催し、大成功を収めました。この万博は、我が国の海洋国家としての再出発のきっかけとなり、いくつかの素晴らしいインフラは今も残っています。その一つである「リスボン水族館」は、偶然にも大阪の水族館「海遊館」と同じ建築家(ピーター・シャーメイフ)が設計したものです。

2025年の万博に参加できることは大変喜ばしいことであり、すでに準備に励んでいます。私たちのパビリオンは、日本とポルトガルを結び付けている深い歴史的なつながりを忘れることなく、近代的で競争力のあるポルトガルを紹介するものとなります。

気候危機への対応には海洋が特に重要

ー日本ではSDGsが注目されるなど、持続可能な開発への関心が高まっています。この分野でのポルトガルの取り組みはどのようなものがありますか。 

リスボンで開催された「第2回国連海洋会議」が先ごろ閉幕したばかりですし、この話題は非常に注目度の高いものでしょう。ポルトガルは、気候変動対策において世界のトップ5に入る国だと言われています。再生可能エネルギーの利用率では世界第5位で、今後5年以内に全エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率を80%とすることを目標としています。こうしたことからも、私たちがサステナビリティに真剣に取り組んでいることがよくわかるはずです。 

海洋が大きな危機的な変化に直面している今、「第2回国連海洋会議」は非常に重要なイベントでした。海洋の健全性を促進するために、私たち全員が現実を見つめ、この危機に対して行動することを促したのです。 

持続可能な海洋管理のためには、環境破壊を抑えるための技術である「グリーンテクノロジー」を導入し、海洋資源の利用の仕方を刷新することが必要です。私たちは、海洋の健全性、生態系、経済、ガバナンスを損なうさまざまな脅威に対処しなければなりません。具体的には酸性化、海洋ごみと汚染、違法・無報告・無規制の漁業、生息地と生物多様性の喪失などです。 

気候変動危機への対応においては海洋が重要であり、そうした認識を確実なものにしていくため、ポルトガルと日本は共に戦っています。両国は、(「海の豊かさを守ろう」「気候変動に具体的な対策を」といった)SDGsの各目標が相互に依存していること、とりわけ気候変動対策には海洋環境が関係していることを、世界に訴え、意識を高めることに貢献しているのです。

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良い意味で「ありえない」国

世界におけるポルトガルの役割、特に日本との関係についてはどのようにお考えですか。 

我が国のある外務副大臣の表現を借りれば、ポルトガルは良い意味で「ありえない」国です。領海は広いとはいえ領土は狭く、人口はわずか1000万人ほどで、重要な天然資源もない。しかし、建国から900年が経過しようとしており、ヨーロッパ大陸の中でも最も安定した国境の一つを持つ国です。政治的にも社会的にも統一性を持っており、どのような基準であれ、開発という点では常に国連加盟国の上位3分の1に数えられています。 

私が興味深いのは、ポルトガルが軍事力の限界を平和外交に転換させることを成し遂げてきたことです。国際関係における主要な手段の一つである平和外交を実践しているのはポルトガルだけではないですが、ポルトガルの外交は独自の歴史と五大陸にまたがるポルトガル人の海外移住、ビジネス、文化、政治に支えられています。

ポルトガルは自国の意思を他国に押し付けることのできる大国ではありませんが、世界の中で非常に重要な役割を果たすようになりました。例えば、国連事務総長のアントニオ・グテーレスや前欧州委員会委員長のドゥラン・バローゾをはじめ、国際機関の要職にポルトガル人が就いていますし、これまでも就いてきました。 

日本は、ロシアによる不法なウクライナ侵攻における危機への対応で明らかになったように、外交大国としての役割を築いてきています。日本とポルトガルは共に自由な民を持ち、対話と平和の国であり、それゆえに非常に良い同盟国であり、古き良き友人なのです。

ヴィットル・セレーノ(Vitor Sereno)

駐日ポルトガル共和国大使

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東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている「Tokyo meets the world」シリーズ。今回はギリシャのコンスタンティン・カキュシス大使に話を聞いた。ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、日本との関係、コロナ禍でのオリンピック・パラリンピック開催の意義、東京でのストレス解消法、さらにはおすすめのギリシャレストランなどについて語ってくれた。

きっとニューノーマルな日常に戻った後でも、より持続可能な未来を築きながら、街を楽しむためのインスピレーションや新しいアイデアを得ることができるだろう。

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コロナ禍の終わりが見え、世界中で規制が撤廃されてきた今、コロナ終息後の東京の新しい方向性を示す斬新なアイデアやインスピレーションが求められている。

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ヨーロッパで最も環境に優しい国の一つであるラトビア共和国のダツェ・トレイヤ=マスィー大使は環境保護と男女平等を重要視しており、女性の地位向上を推進していることでも知られる。

日本のこうした分野における取り組みは国際的に評価されているとは言いがたいが、トレイヤ=マスィー大使は、2017年に就任して以来、明らかな前進を実感しているという。大使はこのほかにも、サステナビリティに関するさまざまな側面について話すとともに、初来日した90年代半ば以降の東京の変化や、東京でラトビア料理や文化を味わう方法について語ってくれた。

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東京から世界中のイノベーティブな視点を幅広く取り上げるため、東京在住の駐日大使にインタビューしていく『Tokyo meets the World』シリーズ、第2弾はベルギー王国。

ベルギーといえば、多くの日本人にはチョコレートやワッフル、ビールなどが身近だろう。しかし、この西ヨーロッパの王国が、世界的な人気キャラクター、スマーフの生まれ故郷であるとともに、世界第4位の洋上風力エネルギー生産国であり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進する先駆者でもあることも知ってほしい。

2019年に就任したロクサンヌ・ドゥ・ビルデルリング駐日大使にインタビューを依頼したところ、快く応じてくれた。ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントで、SDGs関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司と対談を実施。SDGsや環境に優しい世界経済に対するベルギーの貢献について詳細に語った。

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