Tokyo meets the World Greece
Photo: Kisa ToyoshimaAmbassador of Greece to Japan Constantin Cakioussis
Photo: Kisa Toyoshima

駐日ギリシャ大使に聞く、東京のおすすめギリシャ料理レストラン

麻布十番や浅草橋の名店紹介から、SDGsへの解決策まで

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コーディネート:Hiroko Ohiwa

東京2020オリンピック・パラリンピックの夏は終盤に差しかかり、世界的なスポーツの祭典が東京に与えた影響を考え始めている人も多いはず。そんな時、オリンピック発祥の国の大使ほど意見を交わすのに適した人はいない。

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている「Tokyo meets the world」シリーズ。今回はギリシャのコンスタンティン・カキュシス大使に話を聞いた。ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、日本との関係、コロナ禍でのオリンピック・パラリンピック開催の意義、東京でのストレス解消法、さらにはおすすめのギリシャレストランなどについて語ってくれた。

きっとニューノーマルな日常に戻った後でも、より持続可能な未来を築きながら、街を楽しむためのインスピレーションや新しいアイデアを得ることができるだろう。

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日本のお辞儀は花が閉じたり開いたりしているよう

ー東京に駐在してから、日本に対する印象はどのように変わりましたか。

私の日本との出合いは、8歳の頃に読んだ本がきっかけで、その3年後に柔道を始めた時です。それ以来、日本とのつながりはずっと続いています。ですから、初めて日本を訪れた時も、「知っている場所に来た」と感じたほどです。

しかし、予想していなかった多くの良い発見がありました。特に、礼儀を重んじる雰囲気には驚かされました。日本には美しい寺院や高度な技術などがありますが、それらはほかの国にもあります。

日本を特別な場所にしているのは人々であり、その礼儀正しさと柔軟さなのです。日本で初めてお辞儀をしている人を見た時、花が閉じたり開いたりしているようだと思いました。また、日本の日常的な特徴として、一つ一つの動作にこだわりを持っていることにも驚かされます。

日本に来る前、私は中国に6年間滞在していました。この地域を訪れた時は、新しい惑星を発見したような気分でした。それは、主に漢字文化のため、異なる考え方を持っている点です。

私にとっては新たな発見であり、後に大好きなものへと変わりました。日本ではさらに興味深いことに、漢字と一緒に(仮名やローマ字などの)表音文字が使われていて、それが人々の思考の組み立て方に影響を与えています。これは私にとって非常に興味深いことです。

東京はどこに行っても癒やされる

ー東京での生活はどうですか。

街があまりにも整然としているので、ストレスがたまります(笑)。生活が予測可能なのは良いことですが、地中海の人間としては、たまにはハッピーサプライズもほしいですね。

東京は、そうした人々のおかげでとても住みやすい街になっていると思います。見知らぬ人でも、ほかのことを放って助けに来てくれますし、解決するまで力を尽くしてくれるのです。日本は、地震、洪水、津波などの災害に関しては世界最悪の場所の一つかもしれませんが、住むことにおいては世界で最も美しい場所の一つでもあるのです。

ー都内でお気に入りの場所はありますか。

どこに行っても、癒やされますね。5平方メートルの庭に足を踏み入れれば、その場に身を置いて、それだけで心を落ち着かせることができます。

外に出て、誰かにお辞儀をすると、相手もお辞儀を返してくれる、そんな単純なことです。特定の場所というよりは、人々が互いに親切にしている様子を見るのが好きなんですよ。彼らは自分自身もストレスや問題を抱えていて、その日の予定もあるはずなのですが、交流している相手にはそれらを感じさせません。

広尾の有栖川公園で、釣り人が同じ魚を何度も釣っているのを見ると、心が洗われるような気がします。時間が進んでいることが全く気にならなくなる瞬間ですね。

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ギリシャ料理 タベルナ ミリュウは本場の雰囲気

ー東京でおすすめのギリシャレストランはありますか。

個人的な意見ですが、本場のギリシャの雰囲気に最も近いのは、麻布十番のタベルナ ミリュウ(taverna milieu)でしょうか。あのレストランは、かつて在ギリシャ日本大使の料理人だった日本人シェフが経営していて、ギリシャ料理をほぼ完璧に再現しています。

ミリュウが私の第一候補ですが、ほかにもありますよ。銀座のアポロ、浅草橋のギリシャ家庭料理フィリ、横浜のスパルタオリンピア。この2つは明らかにギリシャ料理ですね(笑)。

日本とギリシャを比較すると、料理に対するアプローチが違います。私の亡き祖母は、「近所の人があなたの食べているものを匂いで分からなければ、あなたの料理はダメだ」と言っていました。ギリシャでは感覚に直接訴えかけなければなりません。匂いや味がしっかりしていて、すぐに飛び込んでくるものなのです。

しかし、日本ではそうはいきません。日本の料理は食感や存在感を重視していて、ちょっと地味だし、味を自分から求めていかないと、味が出てこない時もあります。質感を理解し、盛り付けや色を楽しみながら、味を探さなければいけません。それはラーメンのようなソウルフードでも、高価で手の込んだ料理でも同じですね。

今年のオリンピック開催は日本の精神を体現

ー今夏の一大イベントといえば東京2020オリンピック・パラリンピックですよね。オリンピックを生んだ国の大使として、コロナ禍での大会開催をどう考えていますか。

オリンピックの精神は競技面だけではなく、スポーツを通じて人々を結びつけることにあります。競争を制限して、フェアプレーなどの価値を促進するものです。

私は、今年、この瞬間に立ち会えたこと、日本が何をしているかを見られたことを誇りに思います。(今年のオリンピック開催は)あらゆる困難に立ち向かうという日本の精神を体現しているのではないでしょうか。今大会は状況を考慮すると、長い歴史の中でも最も重要な大会の一つになる可能性があり、日本はそれを実現するために必要なことを何でも行う準備ができているのです。

大会の中止を呼びかけるのは簡単なことですが、それは日本のやり方ではありませんし、私はオリンピック・パラリンピックが成功に終わることを期待しています。

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持続可能性の課題に対する解決策

ー最後に、日本ではSDGsが注目されるなど、持続可能な開発への関心が高まっています。サステナビリティに取り組むとき、気をつけるべきことはありますか。

一般論ですが、世界の裕福な国々は、そうでない人々のニーズを満たすための手段を提供し、彼らを救済するべきです。これは非常に難しいことでしょう。なぜなら、助けられる側にとって納得のいく方法で行わなければならないからです。

このことは、それぞれの国の能力には関係ありません。日本のように経済規模が大きい国であっても、ギリシャのように小さな国であっても同じです。その国の人々の考え方や進め方に合わせることができれば、持続可能性の課題は解決に一歩近づくでしょう。

コンスタンティン・カキュシス(Constantin Cakioussis)

駐日ギリシャ大使

高橋政司(たかはし・まさし)

ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント

1989年、外務省入省。外交官として、パプアニューギニア、ドイツ連邦共和国などの日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2005年、アジア大洋州局にて経済連携や安全保障関連の二国間業務に従事。 2009年、領事局にて定住外国人との協働政策や訪日観光客を含むインバウンド政策を担当し、訪日ビザの要件緩和、医療ツーリズムなど外国人観光客誘致に関する制度設計に携わる。 2012年、自治体国際課協会(CLAIR)に出向し、多文化共生部長、JET事業部長を歴任。2014年以降、ユネスコ(国連教育科学文化機関)業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」などさまざまな遺産の登録に携わる。

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