Tokyo meets the world Malaysia
Photo: Kisa ToyoshimaAmbassador of Malaysia to Japan Dato' Kennedy Jawan
Photo: Kisa Toyoshima

駐日マレーシア大使に聞く、国際的ハラル認証のメリット

国際信頼を得たプロセスによる運用、東京のおすすめマレーシア料理店など

Ili Saarinen
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マレーシアと聞くと食欲が湧く日本人は多いはず。ナシレマッやサテ(串焼き)、チキンライスなど東南アジアの中でも多様な食文化を誇る。同国の料理を提供するレストランは、東京でもそう多くはないが、いずれも高いクオリティの本格料理が楽しめる店ばかり。

また、多民族国家であるマレーシアは温暖な気候を求める日本人に人気の移住先でもあり、歌手のGACKTが移住したことでも有名だ。

ダト・ケネディ・ジャワン大使は、美しい白の外観を誇る代官山の大使館で、両国における人材、アイデア、味の活発な交流と、約5000人の在日マレーシア人コミュニティーを担当している。彼は、以前も東京に赴任し、若手外交官として激動の1990年代を目の当たりにした。

今回の『Tokyo meets the world』では、マレーシアと日本の関係、持続可能な開発、ハラル認証を受けた飲食店の普及などについて、ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司と活発な意見交換をしてくれた。

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Tokyo meets the world

東京でおすすめのマレーシア料理店

ー2019年4月から東京に駐在していますが、大使就任以降、この街や日本に対する印象はどのように変わりましたか。

今回は2回目の東京となりますが、若手外交官として最初に赴任したのも日本です。日本に戻ってきたことは帰郷のようなもので、多くの変化に気付くことができました。私が初めて日本を訪れた時、すでに日本は高度に発展していましたが、その後の進歩は目覚ましいものがあります。

東京について言えば、私が初赴任した時期に、ちょうどお台場の埋め立てが行われていたところでしたが、今ではレインボーブリッジを渡ると素晴らしい景色が広がっていますね。社会的な変化としては、外国人と接することに抵抗のない日本人が増え、社会も外国人に対してとてもフレンドリーになりました。

ー東京でお気に入りの場所はありますか。

東京は非常に大きな都市で、2019年からの駐在期間ではその半分もカバーできていません。しかし、コロナ禍以前には、よくドライブに行きました。千葉、埼玉といった郊外や地方に出かけ、小さな道を走るのがとても楽しいのです。

ー東京でおすすめのマレーシア料理店を教えてください。

渋谷や横浜にあるマレー・アジアン・クイジーンは素晴らしい家庭料理を提供してくれますし、銀座のラサ マレーシアでも同じように家庭的な料理を味わうことができます。

ほかにも芝公園にあるペナンレストランや八丁堀のマレーカンポンなどもいいですね。マレーシアは多民族国家で、マレー系が多数を占め、中国系やインド系の人も多いのです。そのため、マレーシア料理には中国やインド料理も含まれています。それらは東京でも簡単に食べることができますよ。

国際的に認められたハラル認証プロセス

ーご紹介いただいたレストランの中には、ハラル認証を取得しているところもありますね。日本では、レストランや食品の面でハラルの選択肢を増やす努力をしていますが、マレーシアの認証システムは最も広く認知されたシステムのひとつですよね。

マレーシアの認証システムを担当しているハラル団体(マレーシア・イスラム開発庁(JAKIM))は、世界的に認められているプロセスを運営しています。同様のプログラムを持ちながら、国際的に認められていないほかの国々とは異なりますね。これにより、マレーシアはハラル市場で多くの機会を得ることができ、東京オリンピック・パラリンピックでは、マレーシアの企業が選手に対してハラル食の提供を請け負ったほどです。

誰もがハラル料理を楽しめるので、ハラル認証を受けると単純に市場が大きくなります。それは、イスラム教徒を排除するノンハラルとは対照的です。現在、八重洲のドンキホーテでは、マレーシア大使館がフードプロモーションを行っており、マレーシア産の商品を販売しています。その中にはドリアンも含まれていますが、これは好き嫌いが分かれる味ですね(笑)。

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退職者の生活費は日本よりかなり安価

ーマレーシアは、日本人の定年後の移住地として人気になっています。それはなぜだと思いますか。

一つには、マレーシアと日本の人々が互いに友好的であることが挙げられます。敵意を向けられるような場所で老後を過ごしたくはないでしょう(笑)。とはいえ、マレーシアは制度面でも非常に充実していますし、退職者の生活費は日本よりかなり安価です。外国人の移住を支援する「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム」というプログラムがありますが、これは定年退職者だけでなく、日本で仕事を続けながら家族でマレーシアに移住する人にも適用されます。

また、英語での教育が受けやすく、日本人が通いやすいインターナショナルスクールが豊富にあることもポイントです。しかし、結局はコストでしょう。「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム」プログラムが開始される前の1990年代には、週末にゴルフをするためだけにマレーシアを訪れる日本人もいました。飛行機代や宿泊費を含めても、日本でゴルフをするよりも安かったからです。

ー日本ではSDGsが注目されるなど、持続可能な開発への関心が高まっています。マレーシアは持続可能性にどのように取り組んでいますか。

SDGsは2015年に国連で採択されましたが、持続可能な開発自体はマレーシアが何十年も前から、貧困撲滅や持続可能な教育などの分野で取り組んできたことです。また、再生可能エネルギーについては、マレーシアで多く利用できることから、(電子部品メーカーの)太陽誘電をはじめとする日本企業がサラワク(ボルネオ島に位置する州)で生産を拡大していますね。

日本はアジア諸国の権利を主張するプラットフォームへ

ーマレーシアと日本の関係をどのようにお考えですか。また、この関係をさらに良くするために日本は何ができるでしょうか。

私たちはすでに素晴らしい関係を築いています。80年代のマレーシアは経済発展や人材育成などの面で日本をモデル国として見ていました。1982年に当時の首相がルックイースト政策を開始し、マレーシアの発展のために日本に人材を派遣し、日本の労働文化や倫理観を学ばせたのです。

日本がマレーシアやほかの地域の国々のために何ができるかというと、アジアで唯一のG7メンバー国であるということに尽きるでしょう。日本は、アジア諸国やほかの発展途上国の権利を主張するためのプラットフォームになれるのです。

ダト・ケネディ・ジャワン(Dato'・Kennedy・Jawan)

駐日マレーシア大使

高橋政司(たかはし・まさし)

ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント

1989年、外務省入省。外交官として、パプアニューギニア、ドイツ連邦共和国などの日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2005年、アジア大洋州局で経済連携や安全保障関連の二国間業務に従事。 2009年、領事局で定住外国人との協働政策や訪日観光客を含むインバウンド政策を担当し、訪日ビザの要件緩和、医療ツーリズムなど外国人観光客誘致に関する制度設計に携わる。 2012年、自治体国際課協会(CLAIR)に出向し、多文化共生部長、JET事業部長を歴任。2014年以降、ユネスコ(国連教育科学文化機関)業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」などさまざまな遺産の登録に携わる。

Tokyo meets the worldシリーズをもっと読む……

  • Things to do

駐日大使へのインタビューシリーズ「Tokyo meets the world」第3回は、インド。2019年1月から大使に就任したサンジェイ・クマール・ヴァルマに、国際情勢から東京での生活まで幅広く話を聞いた。大使は、両国間のビジネスや技術などの交流を深めるため尽力しながら、博物館巡りや皇居の庭園を散策する時間も大切にしている。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談では、新型コロナウイルス感染症への対応からSDGsに対するインドのアプローチなど、重要な問題を語った。また、東京で一番のインド料理店を選ぶことができない理由や、インド人が日本のカレーをどう思っているかなどについても自身の考えを伝えてくれた。

  • Things to do

今回はメキシコのプリーア大使とORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、大使が女性の地位向上を重要な課題としている理由や、東京のタコス事情、日本とメキシコをつなぐ歴史や、両国の精神的な共通点など、さまざまな話題について語ってもらった。

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  • Things to do

代官山のTSUTAYA BOOKSへ行ったことがあるなら、通りの向こう側からT-SITEの建物を見つめる2体の白いスフィンクスに気付いたかもしれない。

このスフィンクスはエジプト大使館の前に立ち、仲間のファラオ像と一緒にちょっと不釣り合いだが、長年にわたってこの街の名物になっている。それは大使館自体も同様で、そのオープンさと多くの地域活動のおかげで、東京の外交機関としては珍しいレベルで街とのつながりを持つことができている。

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている「Tokyo meets the world」シリーズ。今回はエジプトのアイマン・アリ・カーメル大使に話を聞いた。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談は、エジプト大使館の独特の存在感やエジプトと日本との長い関係、東京で食べられるエジプト料理など、幅広い話題で盛り上がった。大使はまた、エジプトの学校が日本の教育に倣って、より全体的な方向に教育を進めようとしている理由についても語ってくれた。

  • Things to do

ラテン系のリズムが好きな読者ならご存知の通り、東京は意外にも世界有数のタンゴの街だ。コロナ禍以前は、首都圏で少なくとも10以上のミロンガ(定期的に開催されるタンゴのイベント)が開催されており、その数はおそらくブエノスアイレスに匹敵する。

しかし、アルゼンチン共和国(以下、アルゼンチン)の東京への貢献は情熱的なダンスだけではない。がっつりとしたサンドイッチの「チョリパン」や肉料理の「アサード」といったおいしいアルゼンチン料理が楽しめる。さらには、同国の国民的な菓子である「アルファホーレス」や人気チョコレート『ボノボン』の日本限定品をコンビニエンスストアで買うのが好きな人も多いだろう。

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている「Tokyo meets the world」シリーズ。今回は2021年4月に就任したギジェルモ・フアン・ハント大使に話を聞いた。自国がこれだけ文化的で食生活も豊かなため、比較的スムーズに公務を開始できたのではないだろうか。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、ハント大使は東京の印象、日本でアルゼンチンの牛肉がより手に入れやすくなるかもしれない理由、そして日本とアルゼンチンがよりグリーンでサステナブルな社会に向けてどのように協力しているかについて語ってくれた。

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  • Things to do

かつては海洋帝国であり、アラブで最も古い歴史を持つ国であるオマーン・スルタン国(以下オマーン)。近年「これから観光で行くべき国」として注目を集めている。アラビア半島の南東端に位置する同国は豊かな自然、多様な食文化、そして日本も登場する魅力的な歴史を有しながらも、まだ「マス・ツーリズム」の影響を受けず、独自の魅力を色濃く残す国だ。

東京在住の駐日大使へインタビューをしていく「Tokyo meets the world」シリーズ。第4弾となる今回は、オマーンのモハメッド・アルブサイディ大使に、なぜオマーンが探検好きの旅行者を引きつけるのか、その理由を聞いてみた。また、ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談では、日本とオマーンのつながりや、お台場や山梨で休暇を楽しむ理由について語るとともに、東京で本格的なオマーン料理が食べられる店などについて教えてもらった。

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