Ambassador of India to Japan,Sanjay Kumar Verma
Photo: Kisa ToyoshimaAmbassador of India to Japan, Sanjay Kumar Verma
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駐日インド大使に聞く、SDGsへの取り組みとインド料理の奥深さ

サンジェイ・クマール・ヴァルマが語る、急成長する再生可能エネルギー

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コーディネート:Hiroko Ohiwa

駐日大使へのインタビューシリーズ「Tokyo meets the world」第3回は、インド。2019年1月から大使に就任したサンジェイ・クマール・ヴァルマに、国際情勢から東京での生活まで幅広く話を聞いた。大使は、両国間のビジネスや技術などの交流を深めるため尽力しながら、博物館巡りや皇居の庭園を散策する時間も大切にしている。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談では、新型コロナウイルス感染症への対応からSDGsに対するインドのアプローチなど、重要な問題を語った。また、東京で一番のインド料理店を選ぶことができない理由や、インド人が日本のカレーをどう思っているかなどについても自身の考えを伝えてくれた。

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Tokyo meets the world

日本は、最初から好感の持てる国でした

ー日本に対する現在の印象と、就任する前と後の変化について教えてください。

日本への赴任は今回が初めてで、それ以前に訪れたことはありませんでした。私は最初から日本に好感を持っていましたが、今では当時よりもさらに好印象を持っています。探検する価値があり、自然と調和した生活をしている。また、過去を理解し、認める国でもあります。今般の国際情勢では簡単なことではありませんが、日本には「自国のやり方に問題がある」と国民に判断された場合、それを修正する力があるのです。

日本の人々は非常に友好的で、システムも非常に整然としています。時には整然とし過ぎていることもありますが(笑)。一方で、世界はさまざまな破壊的なテクノロジーにさらされており、それらが迅速なイノベーションを促しています。このことに関しては、日本は少し不活発な状態にあると感じています。私たちの関係の将来のためにも、こうした破壊的な力を特定し、理解して、二国間や地域で前向きな動きをしていきたいと思っています。

インドは石炭火力発電より18%低いコストで太陽エネルギーを生産

ーインド太平洋地域におけるインドの主な貢献と、インドと日本が協力関係を深めるための方法を教えてください。

インドは、工学、医学、科学、技術、エネルギーなどの分野で、非常に効率のいい人的資本を持っていることを世界に発信してきました。そして、その人材を世界中に送り出し、他国や社会に貢献しています。
インドでは、英語は母国語に近い言語です。多言語国家であるインドでは、英語はコミュニケーションのための共通言語となっています。そういった事情から、インド人教師は、地域のあらゆる場所において、英語で教育を提供することができるのです。

また、インドはスタートアップや他の介入を通じて、主に技術的な「デジタル・ディスラプション」(デジタルテクノロジーを活用することにより既存のビジネスモデルを破壊すること)の能力を示してきましたが、これはぜひ他国にも伝えていきたいと思っています。日本は科学技術に関して非常に優れた能力を持っているので、両者の強みを組み合わせることは世界の発展にもつながるでしょう。

再生可能エネルギーの例もあります。現在インドでは、石炭火力発電所よりも18%低いコストで太陽エネルギーを生産することができています。多くの国では、太陽光発電によって電力コストを下げることは困難ですが、私たちはそれを実現してきました。国際協力をさらに向上させるための、専門知識と能力があるからです。

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再生可能エネルギーの分野で日印は協力できる

ー日本では、SDGsが注目されるなど、持続可能な開発への関心が高まっています。インドはサステナビリティに対してどのようビジョンを持っているのでしょうか。また、日本がそこから学べることは何でしょうか。

SDGsの17項目は全ての国に共通するものですが、それに対する反応はさまざまです。貧困や飢餓、医療提供といった分野に関しては、インドの状況は日本とは大きく異なります。

しかし、再生可能エネルギーのような目標に関しては、日本とインドの「生態系」は類似しています。先ほど太陽光発電の話をしましたが、現在、インド国内における発電量の38%が再生可能エネルギーで賄われています。太陽光発電の導入量はインドが世界第3位、風力発電では世界第4位です。インドにはこれらの分野での能力とキャパシティーがありますし、膨大な専門知識を持つ日本とそれらを共有できます。SDGsの中には、再生可能エネルギーの価格を下げることが含まれていますが、日印両国はコストを下げるために協力することができるでしょう。

また、イノベーション、紛争解決、気候変動などの分野でも協力できます。過去5年間を振り返ると、インドは農業生産性を向上させ、森林面積を増やすことができた数少ない国の一つです。自国の人々の生活環境を改善するためにインドで実施していることは、ほかの社会のSDGs達成にも貢献することになるでしょう。

ー東京オリンピックは、いよいよ開幕まで2カ月を切りました。仮にオリンピックが開催された場合、東京にはどのような影響があり、何が変わると思われますか。

東京の生活は新型コロナウイルス感染症によって変わってしまいましたが、その状況が好転しない限り、生活スタイルの変化はすぐには起こらないと思っています。それは、オリンピックとは関係がありません。新型コロナウイルス感染症がなくなってしまうか、できるだけ多くの人にワクチンを接種する方法を見つけるか、どちらかだと思います。ウイルスは今後も変異し続け、将来、どのような動きをするか科学者も予測できませんので、ワクチン接種が唯一の方法です。

インドについての知識を得たいならインド人協会を訪ねてみるといいでしょう

ー大使館は皇居のすぐ近くにありますね。東京で時間がある時によく行く場所はありますか。

大使館周辺は、桜の季節には都内で最も美しい場所の一つなので、その時期はほかの場所には行きません。それ以外の時期、少し安らぎがほしいときには浅草寺に行きます。とても心が落ち着くのです。天気の良い日には、皇居の庭園を歩くのも好きですね。ほかにも、国立博物館や明治神宮もお気に入りの場所です。

ー東京でインドやその文化を知るにはどうしたらいいでしょうか。

インドについての情報を得るためのデジタルリソースは無数にあります。しかし、実際に経験するという意味では、東京に40以上あるインド人協会との交流を通じて、多くのことを学べると思います。

その多くは、インドの特定の州の出身者によって結成された地域別のものですが、中にはテーマ別のものもあります。ある協会は(インドの詩人 、思想家、作曲家である)ラビンドラナート・タゴールに焦点を当て、別の協会は(インドのヒンドゥー教の出家者、ヨーガ指導者、社会活動家の)ヴィヴェーカーナンダにフォーカスしています。また、さまざまな体験をゲストと共有するスピリチュアルな組織や、業界団体などを訪ねてみるのもいいかもしれません。これらは全て異なる経験を与えてくれるでしょう。

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「インド料理を出す店」と「インド料理店」の違い

ー食文化に関しては、東京にはもちろんインド料理を提供するお店がたくさんあります。東京のお気に入りのレストランをいくつか教えていただけますか。

都内にはインド料理を提供するレストランが多いですが、私はそれらを「インド料理店」と呼ぶべきか、とても慎重に判断しています。インド人が経営しているのか、シェフがインド人なのか、メニューがインド料理なのか、インド料理店をどう定義するかが問題です。

「インド料理を出す店」という言い方で見るなら、東京と横浜だけで約2200店、日本全国で5000店近くのレストランがあるので、その中からいくつかを選ぶのは至難の業ですね。「Indian Restaurant Association Japan」という、日本にあるインド料理店の協会があります。会員になるには一定の条件をクリアする必要があるので、そうしたものを参考にしてみてください。

「インド料理」という均質なものがあるわけではないので、この言葉自体、誤解を招く恐れがあります。北インドと南インドの料理が違うのはもちろんですが、同じ州でも、同じ食材を使ったさまざまな種類の料理があります。インド料理全体を網羅できるレストランは世界中に存在しません。

ビリヤニを例に挙げてみましょう。インドには140種類ものビリヤニを作ることができるビリヤニの専門家もいます。同じ料理でも、カテゴリーだけは同じなのです。インド料理店の良し悪しは、客が求める料理の種類によって決まるのだと思います。

ー最後に、日本のカレーライスについてはどう思われますか。

インドのカレーとは全く違いますね。同じカレーというカテゴリーですが、日本のカレーはイギリスとフランスの調理スタイルをミックスしたものだと理解しています。ゼラチンが少し入っていますが、インドのカレーは基本、水かココナッツがベースになっています。

とはいえ、CoCo壱番屋のカレーはインドでも販売されていて、とても人気がありますよ。インドの「ココイチ」は常に満席状態です。とてもおいしいので、私もよく日本のカレーを食べています。インドの人々は、いろいろな種類のカレーを食べてみたいと思っているので、違うことは決して悪いことではないのです。

サンジェイ・クマール・ヴァルマ(Sanjay Kumar Verma)

駐日インド大使

1965年7月28日生まれ。パトナ大学卒業後、インド工科大学デリー校物理学修士課程に進学。1988年のインド外交局(Indian Foreign Service)の役員に採用。在香港インド総領事館、中国、ベトナム、トルコのインド大使館に勤務後、在ミラノインド総領事、駐スーダン共和国インド大使を歴任。スーダンでの彼の在職後、ニューデリーの外務省にてグローバルエステイトマネージメント局長を務める。その後、ニューデリー本省で次官補(アドミニストレーション担当)兼サイバー外交局長に配属。2019年1月、駐日インド大使に着任。

情報技術、人工知能、サイバー外交、対話型技術を使用した人中心のサービスの提供、中小企業や投資家の指導と促進などに深い情熱を持っている。

高橋政司(たかはし・まさし)

ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント

1989年、外務省入省。外交官として、パプアニューギニア、ドイツ連邦共和国などの日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2005年、アジア大洋州局にて経済連携や安全保障関連の二国間業務に従事。 2009年、領事局にて定住外国人との協働政策や訪日観光客を含むインバウンド政策を担当し、訪日ビザの要件緩和、医療ツーリズムなど外国人観光客誘致に関する制度設計に携わる。 2012年、自治体国際課協会(CLAIR)に出向し、多文化共生部長、JET事業部長を歴任。2014年以降、ユネスコ(国連教育科学文化機関)業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」などさまざまな遺産の登録に携わる。

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