Tokyo meets the world Argentina
Photo: Kisa ToyoshimaAmbassador of Argentina to Japan Guillermo Juan Hunt
Photo: Kisa Toyoshima

駐日アルゼンチン共和国大使が語る、日亜協力が進むカーボンフリー燃料

アルゼンチン産牛肉の日本進出や再生可能エネルギー事業について

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ラテン系のリズムが好きな読者ならご存知の通り、東京は意外にも世界有数のタンゴの街だ。コロナ禍以前は、首都圏で少なくとも10以上のミロンガ(定期的に開催されるタンゴのイベント)が開催されており、その数はおそらくブエノスアイレスに匹敵する。

しかし、アルゼンチン共和国(以下、アルゼンチン)の東京への貢献は情熱的なダンスだけではない。がっつりとしたサンドイッチの「チョリパン」や肉料理の「アサード」といったおいしいアルゼンチン料理が楽しめる。さらには、同国の国民的な菓子である「アルファホーレス」や人気チョコレート『ボノボン』の日本限定品をコンビニエンスストアで買うのが好きな人も多いだろう。

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている「Tokyo meets the world」シリーズ。今回は2021年4月に就任したギジェルモ・フアン・ハント大使に話を聞いた。自国がこれだけ文化的で食生活も豊かなため、比較的スムーズに公務を開始できたのではないだろうか。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、ハント大使は東京の印象、日本でアルゼンチンの牛肉がより手に入れやすくなるかもしれない理由、そして日本とアルゼンチンがよりグリーンでサステナブルな社会に向けてどのように協力しているかについて語ってくれた。

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Tokyo meets the world

東京の建築は世界の中心地の一つ

ー訪日するまでの東京の印象を教えてください。

東京の第一印象は、世界で最も素晴らしい首都の一つということでしょう。これは親切心からではなく、客観的な意見です。東京にはあらゆるものがそろっていますが、中でも「日本らしい精神」は際立っていると思います。

私は妻と一緒に街を歩き、探索するのがとても好きです。街はそれ自体が一つの世界のようなものですからね。特に歴史的な場所や、興味深い建築物を発見するとうれしくなります。東京は、建築の見地から見ても間違いなく世界の中心地の一つだと思いますよ。

ー東京でお気に入りの場所は、もうできましたか?

六本木ヒルズエリアは、アルゼンチン人にとって特別な意味を持っています。そこには、かつて私たちの大使館があったからです。数十年にわたって政府が借りていましたが、土地を購入したのち、1989年に売却しました。その後、現在(麻布)の大使館を建て、移ったのです。そういった思い入れがあるためつい選んでしまうのですが、六本木ヒルズ以外でもすてきなエリアだと思いますよ。

日本は「行きたい場所リスト」の上位

ーオリンピック・パラリンピックが終わって、これからの東京はどう発展すると思いますか?

オリンピックは、世界中の人々の目を東京に向けさせました。コロナ禍が終われば、世界中から大勢の観光客がやってくるのは間違いないと思います。観光地としての日本は、世界的に見ても「行きたい場所リスト」の上位に入るのです。コロナ禍以前からそうであったように、観光は今後もこの国の主要な産業の一つになるでしょうね。

オリンピックで、日本という国が非常に困難な状況下で大規模イベントを開催できる能力があると証明したことも大きな後押しになると思います。

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アルゼンチン産牛肉の日本向け輸出が今後促進

ー大使に就任されて、今後どのようなことを実現したいですか?

主な目標は、日本からアルゼンチンへの投資を増やし、2国間の貿易を促進することです。すでにアルゼンチンの牛肉を日本に輸出するための技術的な手続きが完了し、最終的な承認を待つだけの状態になっています。

ー肉食系の日本人にはうれしいニュースです。投資の面ではすでに多くの日本企業がアルゼンチンに進出していますね。

はい、アルゼンチンには古くから日本人のコミュニティーが存在し、現在は約5万人の日系人が住んでいます。また、多くの重要な日本企業がビジネスを展開しており、日本からアルゼンチンへの投資はさまざまな分野で活発に行われていますね。

日本企業は、南米南部共同市場(メルコスール)や、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)などの地域経済協力協定により、アルゼンチンをラテンアメリカのほかの地域への輸出プラットフォームとして位置付けています。これにより、約20カ国に自動車やそのほかの商品を販売することができるのです。

アルゼンチンはカーボンフリー燃料の開発をリード

ー日本ではSDGsが注目されるなど、持続可能な開発への関心が高まっています。日本とアルゼンチンがこの分野で協力できる機会はありますか?

日本と協力して(カーボンフリー燃料としての)アンモニアを開発するための協定を、近々締結する予定です。アルゼンチンはすでにこの分野である程度の能力を持っていますし、日本も明確な目標を掲げています。この分野での協力には大きなチャンスがあり、(協定は)正しい方向への大きな一歩となるでしょう。

また、日本とアルゼンチンの企業は共同で水素エネルギーの開発をしています。ご存じのように、日本は水素産業においてリーダー的存在ですね。

ーアルゼンチンでは、再生可能エネルギーに対してどのように取り組んでいますか?

自然環境に関しては、地理的な条件が有利に働きます。アルゼンチンにはさまざまな気候や景観がありますが、私たちの経済発展は地理的に与えられた可能性を利用してきました。

アルゼンチンのエネルギー生産は水力と天然ガス、現在では風力発電に基づいています。パタゴニア地方は、世界でも有数の風力発電地帯なのです。この地方にあるビエントス・ロス・エルクレス(Vientos Los Hercules)という風力発電プロジェクトには、日本の企業も投資していますよ。アルゼンチンの経済発展のために、グリーンエネルギーは今後も重要な役割を果たすと私は確信しています。

ギジェルモ・フアン・ハント(Guillermo・Juan・Hunt)

駐日アルゼンチン共和国大使

高橋政司(たかはし・まさし)

ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント

1989年、外務省入省。外交官として、パプアニューギニア、ドイツ連邦共和国などの日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2005年、アジア大洋州局で経済連携や安全保障関連の二国間業務に従事。 2009年、領事局で定住外国人との協働政策や訪日観光客を含むインバウンド政策を担当し、訪日ビザの要件緩和、医療ツーリズムなど外国人観光客誘致に関する制度設計に携わる。 2012年、自治体国際課協会(CLAIR)に出向し、多文化共生部長、JET事業部長を歴任。2014年以降、ユネスコ(国連教育科学文化機関)業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」などさまざまな遺産の登録に携わる。

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