復旧作業員をはじめさまざまな人が利用
ーシャワールームを貸し出そうと思った経緯を教えてください。
きっかけは、被災した兄弟家族の「落ちついてシャワーを浴びたい」といった何気ない会話からでした。無料で受け入れている温浴施設はあって、今は羽咋市内でも2カ所の温浴施設が対応しています。
ただ、発災直後は市内全域が断水していましたから、金沢方面まで行かないと入浴できなかったんです。毎日往復1、2時間かけてお風呂に行くのは、やっぱり負担が大きいです。
羽咋市も最大震度5強の地震に見舞われましたが、幸いくくのちステイは大きな被害は受けず、1月10日ごろに羽咋市の断水が復旧し始め、問題なくシャワーを使えるようになりました。しかし、隣町はまだ断水エリアでした。羽咋市の町はどこも人口が少なく、顔が見える規模のエリアです。そんなご近所さんでも、シャワーを他人の家に借りに行くというのはやっぱり抵抗があるだろうと、無料シャワールーム貸し出しをスタートしました。
利用者は近隣の町の方だけでなく、ほかのエリアからもいらっしゃいました。印象的だったのは、夜間工事の作業員の方です。自治体が無料の回数券を発行しているんですが、疲れてチケットを取りに行くタイミングがないということで、利用されていました。羽咋市の商工会青年部の方々や、2月下旬には能登町からも来られました。
ー言われるまで想像できませんでしたが、復旧作業などに従事する人は、入浴のためだけに何時間も時間を取れないですよね。性的マイノリティーの方の利用はありましたか。
くくのちステイのシャワールームは、更衣室も含めて、個室のシャワールームになっています。案内文にレインボーフラッグの絵文字を入れたのは、そういった誰かに裸を見られる心配がなく入れる場が、体を見られることを気にする人にとって必要だと思ったからです。
ただ、利用者の性別の確認は特にしていないので、利用者の中に当事者がいたかは分かりません。私自身が特に気にしないのもありますが、それ自体がアウティングにつながりかねないとも思うんです。羽咋市は人口約2万人で、神子原町に限れば226人と、東京とは比べ物にならないくらい少ないです。