京都、ローカルが案内するディープな夜ガイド
Photo: Kisa Toyoshima|めぐみママ(左から2番目)/ルツボ燻製工場
Photo: Kisa Toyoshima|めぐみママ(左から2番目)/ルツボ燻製工場

京都、ローカルが案内するディープな夜ガイド

「ぎをんせくめと」のめぐみママに聞く、間違いない夜の京都の楽しみ方

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新旧のカルチャーが混じり合い、日本でも屈指の観光地として知られる京都。魅力的なコンテンツであふれるこの街では、ちょっと夜ふかしをしてでも思う存分遊び倒したい。そんな願いをかなえるべく、本記事では「ぎをんせくめと」のめぐみママに「間違いない夜の京都」を教えてもらった。

切り口は、旅の醍醐味(だいごみ)の一つでもある「インスピレーション」。作品との距離が近いギャラリーや会話が生まれる居酒屋、アート空間で眠るホテルなどをめぐみママのコメントとともに紹介する。

ハードルが高いという印象もあるが、不思議と「縁のできる街」でもある京都。紹介制のヴェニューも京都で生まれた「つながり」を伝えば、きっとその空間に足を踏み入れることができるはずだ。自分の新しい世界の扉を開くべく、夜の京都へ繰り出そう。

新進気鋭のギャラリーで感性を磨く

  • アート

まずは、夜まで駆け込めるギャラリーを巡り、感性を磨くところから始めよう。

「クリエーティブな雑居ビル」こと「ワイ ギヲン(Y gion)」の2階に入居するアートギャラリー「キャンディーバー京都」は、作品との距離の近さが印象的。例えば、有名な現代アートであってもラインなどを引くことはなく、間近で見ることができるのだそう(もちろん、作品に触れることは禁止だ)。

現在は、若手から中堅アーティストの展覧会を中心に開催。この空間に合う作品を制作したり、チョイスしたりするアーティストが多く、スペシャルな内容で楽しめるのもうれしい。開館時間は19時まで。

「若手アーティストの作品を多く展示しているのもキャンディーバーの魅力。彼らがどう変化していくのかが楽しみで、ここで出合ったアーティストの今後を追ってしまうこともよくあります」

  • アート

18時まで営業する「エムティーケー コンテンポラリー アート」は、現代美術作家であり、京都芸術大学大学院教授の鬼頭健吾がディレクションを務めるコマーシャルギャラリーだ。

ギャラリーの新たな形態を目指すべく、ギャラリー同士の垣根も超えながら、さまざまなアーティストの作品を展示しているのが特徴。船底型の天井を生かした家型の展示空間が印象的な建築デザインは、名和晃平が代表を務めるクリエーティブプラットホーム「Sandwich」が監修した。

「お店に来てくださった縁で鬼頭さんと知り合いだったこともあり、エムティーケーにはオープニングの頃からお邪魔しています。隣接するカフェでは、「mtk+プロジェクト」として若手アーティストをフィーチャーした企画展も行っているので、ぜひこちらもチェックしてみてください」

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  • アート

経年変化の美が感じられるギャラリーとインテリアの店「コキュウ キョウト」は、1940年ごろに建てられた古民家を活用した一軒。きれいにリノベーションはされつつも、一部、年季の入った壁がそのまま残されており、建物自体の「呼吸」が感じられるような空間も魅力の一つだ。

「人や物が年を重ねることの美しさを肯定したい」との思いから、1階では古物の展示販売、2階ではヘッドスパの施術を施している。ハンドドリップで入れた「深呼吸がしたくなる」ブレンドコーヒーも営業終了の19時まで提供しているので、夜の京都に繰り出す前に一息つくのもいい。

「ストーリーを持った作品やアイテムにいつも刺激をもらっています。ヘッドスパの施術も受けたことがあるのですが、頭がひとまわり小さくなった感覚にびっくり。ギャラリーやショップと併せて、こちらもぜひ体験してほしいです」

会話の生まれる店をハシゴする

「街へと繰り出す前にまずは腹ごしらえ」という人は、ほかとは一線を画す立ち食いそばの店「すば」を訪れよう。麺は2階の製麺所で打ったものを使用。スープのだしも柔らかく、飲み干せる一杯を提供している。

もともとは誰かの住居だったという場所をリノベーションした店内は、マテリアルな素材感が生きたスタイリッシュさが魅力。信楽で作られたテーブルも最高にクールだが、くぼみがある真ん中だと丼を真っすぐ置くことができないので、テーブルの端を確保するのがこの店の鉄則だ。

「通し営業なので、利用しやすい一軒として愛用しています。私は季節限定メニューを注文することが多く、いつもテーブルに置かれた一味唐辛子やハリッサで『味変』もしながら楽しんでいます。木曜日限定のカレーそばも必見です」

とにかくおいしいワインとご飯を味わいたいという人は「クマノワインハウス」へ。ワインはボトルで約1000種類、グラスで1日10種類ほどを用意する自然派ワインの店で、平日であっても予約なしでは入れない人気店だ(運が良ければふらっと入れる場合もある)。

定評のあるフード料理はどれを選んでも間違いないが『パテ ド カンパーニュ』は外せない一品。濃厚な肉のうま味にスパイスがピリッときいた、奥深い味わいである。

「クマノワインハウスは、東京の友達からも『行きたい』とリクエストの多い一軒です。ロームシアターからも近いので、公演を楽しんだ後に立ち寄ることも多いですね。お料理は本当に何を食べてもおいしいのですが、『ニンジンと河内晩柑のサラダ』『アンディーブと青カビチーズのサラダ』『オムレツ』は、よく注文する鉄板メニューです」

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夕暮れから地元ののんべえたちでわいわいにぎわうのは、立ち飲みスタイルの「ルツボ(RUTUBO)燻製工場」。店内の薫製器で調理した『RUTUBOの自家製燻製』をはじめ、旬の食材を使った料理なども用意している。

初めて訪れるとにぎやかな雰囲気に尻込みしてしまうかもしれないが、勇気を持って一歩踏み出してほしい。店主をはじめ、客も皆フレンドリーなので、きっとすぐに溶け込めるはずだ。

「どの薫製も最高ですが、やはりその時期にしか味わえない旬の食材を使ったものは見逃せません。季節限定メニューは、壁に貼られた黄色い紙に書かれているので、ぜひチェックしてみてください。飲み物は、ガリがたっぷり入ったチューハイ(通称「ガリチュウ」)を合わせることが多いですね。最後は『とうめし』で締めるのが最高です」

旅先の最先端を味わいたい人にとって、2022年5月末にオープンしたイタリアン酒場「ハシヤとナカセ」は外せない。かつて同じイタリア料理店で働いていた端谷隼と中世宏樹が「独立したら一緒に店をやろう」という話を9年越しにかなえた一軒だ。

「居酒屋のような店にしたい」との思いから、固定メニューは最小限にし、ほとんどの料理をその日入荷した食材を見て決定。素揚げしたピザ生地にカラスミを挟んだ「一口からすみピザ」(1個500円)は、イタリアンと和食を組み合わせたメニューで、出合えたらぜひ味わってほしい一品だ。

「お二人がかつて働いていたイタリアンにはよく行っていたのですが、新しい店舗はこの取材で初めてきました。民家をリノベーションした空間もとてもすてきですね。またゆっくりお邪魔したいです」

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コース料理で食事をしたい人には、餃子とナチュールワインを心ゆくまで楽しめる「兎屋」がおすすめだ。「焼き餃子」「水餃子」「揚げ餃子」といった種類別の餃子はもちろん、シュウマイや酢豚など、主役的な料理が次から次へと運ばれてくる。

同店は紹介制の一軒であるが、今回は「タイムアウト東京の記事を見た」と予約時に伝えることで店の利用が可能。また、普段は開放されていない2階の席も利用できるという、タイムアウト東京読者向けの特典も提供してくれた。ぜひこの機会に「兎屋」という空間を堪能してほしい。

「大好きなワインと餃子を最高のマリアージュで楽しめる幸せな一軒です。毎回、料理にぴったりなワインを提供してくれるのはもちろん、ナチュールワイン特有のかわいいジャケットも楽しみにしています。アート作品も飾られた2階は、靴を脱いでくつろげる空間なので、おいしいワインとお料理をぜひゆっくりと楽しんでください」

「ちょっと変わった飲食店に行きたい」。そんな変化球を求める人は「夷川餃子なかじま 団栗店」を訪れるといいだろう。ここは完全予約制の貸し切り銭湯「ぎょうざ湯」が併設された餃子店。銭湯にはサウナも付いており、飲食スペースでは「サウナ上がりにうまい餃子」を提供している。

焼き餃子は、良い意味でジューシーさがなく、スナック感覚で食べられる軽さ。プライベートサウナで整った後に、餃子とビールで乾杯という最高の流れを体験してほしい。

「私は食事がてらサクッと立ち寄ることが多いのですが、サウナ人気もあってか、ここを目当てにやってくる友人も多い人気の一軒です。餃子は酢コショウで味わってみたり、そこにラー油やカラシを加えてみたり、メニュー表にあるおすすめの割合(醤油1、酢4、黒酢1)でたれを作ったりなど、いろいろな味わいで楽しんでいます」

夢の中でも刺激をもらう

  • トラベル

ホテルは​​、アートコレクターのような暮らしが体験できる「ノードホテル」を押さえておこう。

キルティングのベッドカバーや部屋ごとに趣の異なるトライポッドチェアなどは海外の職人たちによるハンドメイドで、このホテルのためにデザインされたのだそう。どこを切り取っても絵になることに納得だ。作品は各部屋にも飾られており、バリー・マッギー、井田幸昌、五木田智央など、第一線で活動するコンテンポラリーアートの作家の作品と眠りにつくことができる。

ここでは朝食を予約しておくのも忘れずに。朝食が味わえるのは宿泊者限定で、京都生まれの濃厚な卵「濃紅(のうこう)」のオムレツなどが盛られた、大満足のプレートが楽しめる。

「最近は少しずつ収集もしているのですが、昔から新しい感性を与えてくれるアート鑑賞が大好きでした。アートコレクターのような暮らしが体験できるホテル……。アート好きにとってはこの上ない空間ですよね。夢の中までぜひすてきな時間を過ごしてください」

扉の先へ……

今回「間違いない夜の京都」を教えてくれためぐみママが働くのは、スナックの「ぎをんせくめと」。紹介制のため、住所などの詳細は非公開でハードルは少し高いが、冒頭でも伝えたように不思議と「縁のできる」のが京都だ。

本ガイドに沿って夜の京都を思い切り楽しめば、どこかで入店の切符を手に入れられるかもしれない。心ゆくまで遊んで、ぜひこの扉の先にまでたどり着いてほしい。

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