1. クラージュ
    Photo: Keisuke Tanigawa古屋聖良
  2. アシッド ブリアンツァ
    Photo: Kisa Toyoshima児玉智也
  3. 寿し処 花笑み
    Photo: Keisuke Tanigawa尾崎 純

東京、注目の若手シェフの店5選

寿司・フレンチ・スパニッシュ・創作ビストロなど若き個性が集結

編集:
Genya Aoki
寄稿:
Yuu Murakami
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世界を見渡しても、東京ほどバラエティーに富んだフードジャンルのレストランが密集する街はほかにないだろう。そしてミシュランスターの数で世界最多を17年連続で達成している美食の都でもある。

ここに紹介する5人は、ジャンルの異なる料理を作る30代のシェフたち。先代の叡智を体に染み込ませながら、これまで学んできたあらゆる技法や考えを時代に寄り添った形として統合させ、食のシーンを提案している料理人たちだ。

読めばきっと次なる時代の新しいレストランの形が垣間見えるだろう。 

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  • レストラン
  • 麻布十番

2022年にオープンした「アシッド・ブリアンツァ」でシェフとして腕を振るうのは、33歳の新鋭・児玉智也だ。

北海道で料理人としてのキャリアをスタートさせ、フランスやデンマークの名だたるレストランで研さんを積み帰国した。フランス料理とノルディック料理の技法を融合させ、自身のアイデンティティーを料理に乗せて表現される料理は、見た目もユニークだが、口に運んだとたんに、季節の食材の新鮮な味わいと野山の香りが花開き、これまでにない味覚の世界に誘ってくれる。

店名の「アシッド」とは「酸」という意味だが、ニューノルディック料理の要でもある発酵の技法が児玉の料理の大きな魅力につながっている。一年に一度、春先に北海道の山に入り、松の新芽、クルマバソウ、若い松ぼっくり、藤の花、プラムの花、緑のサクランボや野草などを摘み、オイルや酢に漬け、オリジナルの発酵エッセンスを作り、それを一年通して料理に使っていく。

フランスの名店「サカナ」に入った時に、既成概念にとらわれないシェフの考えに強く感銘を受けたという。デンマークでは、森と海の香りを感じ、自然の音を聞きながら、素材調理に至るインスピレーションを大事にする感覚が今の児玉の姿勢につながっている。

Photo: Kisa Toyoshima | ガレット(紀州鴨のコンフィ、栗、卵黄ソース、発酵したブルーベリーと白味噌)

コースの中で必ず供される「ガレット」は、「紀州鴨」のコンフィとクリと卵黄のソースと発酵したブルーベリーと白味噌のソースとともにガレットで巻いて味わう。ユズの香りが鼻を抜け、どこか黄身和えのような「和」の要素も感じられる。

ここでしか味わえない「東京ノルディック」という新ジャンルを開拓しているといえるだろう。

  • レストラン
  • スペイン料理
  • 麻布十番

にぎやかな麻布十番商店街から外れた静かな住宅街にたたずむフランス料理店「クラージュ」を任されているのは、今最も注目されている女性シェフ・古屋聖良だ。2017年の「サンペレグリノ・ヤングシェフ」コンクールでの日本代表を務めた功績が讃えられ、Forbes JAPANの「30 UNDER 30」(世界を変える30歳未満)のアジア版アート部門の一人にも選ばれた。

その後オーストラリアの「ブレイ(Brae)」で研さんを積み「クラージュ」のシェフに就任。クラージュの料理は、芯のあるフレンチの技法の上に、軽やかで爽やかな料理が表現されている。一皿一皿に表現されている女性らしいたおやかさと華やかさが、食べるものを魅了する。

この才能にいち早く目をつけたのがオーナーの相澤ジーノだった。彼女の類まれな芯の強さと謙虚な姿勢に惚れ込んだという。

Photo: Keisuke Tanigawa | クラージュサンド

クラージュのスペシャリテの「クラージュサンド」は、古屋の原点を語れる一品だ。世界大会で日本代表として選ばれた時の料理は、鴨料理の完成度が評価された。ストレスの少ない環境で育った茨城県西崎ファームの「かすみ鴨」とトリュフを自家製パンで挟んだシンプルなもの。シンプルなだけに小麦の味わいと鴨の肉質がダイレクトに伝わってくる。

「料理人として伝えたいのは、生産者の思いを感じながら、誠意を込めて作られた食材を、楽しくお客さまに召し上がっていくこと」と古屋は語る。

料理人として、いかにサステイナブルで、確かな素材を仕入れ、調理するかということを気遣っているという。十分に育っていない魚は使わないなど「地球環境とともに生態系の連鎖を崩さない料理を志したい」と話す。その思想もまた料理とともにさりげなく供されているのが、クラージュの魅力なのだ。

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  • レストラン
  • 寿司
  • 池尻大橋

寿司の概念を進化させ話題となった人気寿司店「立ち喰い寿司ブラボー」が惜しまれつつ閉店した場所に、同店の職人である尾崎純が開業した寿司店が花笑み」だ

大分出身の尾崎は、地元の寿司屋で8年寿司の基礎を学んだ後、和食を幅広く学びたいと単身千葉のホテルへ。その後洋食のちゅうぼうも経験し、これまでの技術を礎に、新しい技法を寿司の仕込みにも取り入れるようになったという。

新店舗はハイチェアを置き、立ち食いから業態変更した。「この地で営業をしてみて、都心に比べるとスローライフなので、ゆっくり寿司をつまみたいという近隣のお客さまが多いことに気づきました」と尾崎は語る。

Photo: Keisuke Tanigawa

つまみ5品と寿司10貫から成る「おまかせ」(8,500円、以下全て税込み)のほか、「おまかせおつまみ」(3,800円)も用意する。

「気軽に寿司をつまんでほしい」という思いから、価格はリーズナブルだが、ネタの新鮮さと仕事へのこだわりは高級店並みである。

シャリは「つやひめ」の新米に白酢と赤酢の合わせ酢で穏やかな酸味に仕上げた。魚は、フレッシュ感を残しつつ、それぞれの特徴に合わせて熟成。漬けはしっかり味を漬けるのではなく4分の1程度にとどめ、素材の味わいを残すという。その加減は絶妙で、米との一体感から、口に運んだ途端、笑みがこぼれてしまうほどだ。丁寧な仕事であるがゆえに、口溶けと後味がいい。

「若者が何気なくこの店を知って後にいろいろな寿司を経験し、『花笑みっておいしかった』と思ってくれることが理想です」と尾崎。訪れるたび、さりげなく新しい寿司の世界を見せてくれる。それが花笑みの寿司なのだ。

  • レストラン
  • スペイン料理
  • 銀座

扉を開けると、そこはスペインの片田舎にあるレストランのようだ。シェフの平松篤人が手がけるパエリアをはじめとした15種類の米料理とスペインの郷土料理が楽しめるレストランで、本場の味を求めて足しげく通うファンも多い。

平松のスペイン料理への情熱もさることながら、料理人としてのキャリアもユニークだ。大学の経済学部に入学するも、「どうしても料理を学びたい」と中退し、渡米。米国の料理大学CIAに入学し、フレンチの技法を身につけ、アメリカでインターンとして入ったラスベガスのレストラン「スパーゴ」で、あらゆる料理を学んだ中で、「料理人ならサンセバスチャンに行くべき」というシェフの話に魅了され、サンセバスチャンヘ。そこからスペイン料理に心酔する道が開いていく。

「これまで知っていた調理技法とは異なり、素材の力強さを引きだすシンプルなスペイン料理は、何もかもが刺激的でした」と平松。修行先のバスクでは、時間が許す限り食べ歩き、料理の味を体に染み込ませたかったという。

Photo: Keisuke Tanigawa

人気メニューでもある「あさりごはん(アロス コン アルメハス)」は、シェフの平松篤人がバスクで修行中に初めて作った料理だという。濃厚な魚介の味わいに大ぶりのアサリが入っており、シンプルだが奥行きのある味に驚かされる。

この店の料理には、随所に平松のスペインでの体験と思いが反映されている。その思いこそが食べるものの心に感動を与えてくれるゆえんなのだ。

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  • レストラン
  • 茅場町

日本橋兜町の複合ショップ「バンク」1階の創作フレンチ「ビストロ イェン」で会った内田悟は、食の分野でイノベーションおよびインキュベーション事業を行うイートクリエーターで活躍している。

ポップアップイベントの企画プロデュース、オンラインショップで販売される商品の開発や、ケータリングなど、その活動は多岐にわたっている。

物心がついたときからシェフを夢見ていた内田は、代官山の「リストランテASO」で料理キャリアをスタートさせ、熟成肉の「中勢以」で牛肉を扱う技術、素材の生かし方と生産者とのつながりを学ぶ。その後「ナリサワ」でバーの新規立ち上げに参画し、世界のトップシェフとして活躍する成澤由浩の背中を見て多くを得たそう。

「シェフの働き方もいろいろあっていいと思います。僕の強みは牛肉なので、牛肉の魅力を伝えながら、畜産の現場への還元にもつなげていきたい。企業と一緒に取り組むことで、仕事のスケール感と影響力も変わります」と内田は語る。

Photo: Hosomizo Daiki

11月にビストロ イェンで開催されたイベント「河合竜彦 Course -器と料理-」では料理監修を担当。階下のセレクトショップで販売している陶芸作家・河合竜彦による鉄のような風合いの黒皿に、鴨肉のローストとカカオとフランボワーズソースを盛り付け、目も舌も楽しませる独創的なコラボレーションを行った。

2024年2月には「渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー」38階に開業する起業支援施設「manoma」に併設するプライベートレストランのシェフを務める予定だ。内田の新たな料理に期待が高まる。

もっと東京の食を探索したいなら……

  • レストラン

ミシュランスターを獲得した店舗での特別な食体験は、高価格帯であることはもちろん、人気ゆえの予約の取りにくさからしても、なかなかできることではない。「行ってみたい」という客の思いはもちろん、「もっと来てほしい」という店の思いも同様に強いものだ。

その双方の願いが形になった、ミシュラン星付きシェフのカジュアルライン店をまずは訪れみては。

  • レストラン

ミシュランの星を獲得したレストランの数は、東京が世界最多と言われるように、美食の街だ。2023年版のミシュランガイドブックにその名を刻むことができた星付きレストランは200軒。この数には、「本格的な料理を手ごろな価格で提供する」という理由でビブグルマンを与えられた店を含んでいない。

ここでは、予算を気にせずに、良質な食事を楽しめる東京のミシュラン星付きレストランやビブグルマンレストランを紹介する。

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  • レストラン

2023年11月24日、麻布台に一つの街が誕生した。施設「Green」と「Wellness」をコンセプトの2つの柱に掲げ、広大な中央広場を中心とした緑豊かなランドスケープを大都会・東京の一等地に生み出した。このコンセプトの実践は入居した多数のレストランやカフェといったフードテナントにも徹底されている。

バリ島にある「世界のベストローフードレストラン」や、開業から7カ月でミシュランスターを獲得したモダンタイ料理店などの注目の日本初上陸店舗から、日本のビーガンカフェの先駆けとなる「エイタブリッシュ」の移転店舗など、ここでは新たな食のトレンドを担う注目のフードテナントを7件紹介しよう。

麻布台ヒルズは、アート、建築、ショッピングも充実している。そちらが気になる人は関連記事からチェックしてほしい。

  • レストラン

メニューから客が選ぶのではなく、料理人が勧める季節ごとの料理を提供する「おまかせ」は、ハイエンドな料理店によく見られる趣向だ。一般に高額で特別な機会に使われると思われがちだが、必ずしもそうではない。

「おまかせ」の神髄は料理人が選んで出してくれる料理への期待にある。オープンキッチンでのほとんど演出とさえ言える調理の光景に驚嘆し、旬の食材を玩味することに尽きるのだ。それは一つの文化であって、スパニッシュのタパスであれ炭火の焼き鳥であれ、多くの店がメニューに取り入れている。

「おまかせ」という考え方は店ごとに百人百様ではあるが、重要なのは「おまかせ」というラベリングではなく、料理と料理が供される場を体験することだ。予算の都合があっても大丈夫。本記事では、1万円以下で堪能できるおまかせを紹介する。

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歴史と最先端が融合する街、銀座は、買い物天国なだけでなく美食家の集う街でもある。碁盤の目のような街の、どの通りに目当てのレストランが位置しているのか。それが分かるようになればあなたも銀座通だ。

ここでは東京一の繁華街で味わう、とろけるような和牛や一風変わったラーメン、ほっとするオムライスなど、とっておきの料理が味わえる店を紹介しよう。

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