東京豆花工房
Photo : Kisa Toyoshima
Photo : Kisa Toyoshima

東京、ガチ豆花専門店5選

食いしん坊台灣人のコメント付き

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豆花(ドウファ)は台湾の定番スイーツ。豆乳に凝固剤を加えて固めたもので、ほの甘いシロップとトッピングを添えて賞味するシンプルな伝統食である。主に15時以降の気軽なおやつというポジションで、夜の締めの一杯なんていうのもイケる。店も屋台から大型店まで無数にある。

製法は豆腐に相通じるが、スイーツの方へ舵を振り切っているのが興味深い。ヘルシーかつ素朴な味わいは初めてなのにどことなく懐かしく、和菓子に通じる穏やかなおいしさがある。近年台湾ブームの波に乗って注目され、台湾の有名店も上陸、コンビニに登場したこともあるし、日本で定着しつつあると言っていいのではなかろうか。

製法がシンプルだから手軽に作れそうだが、こだわりだすと豆腐同様に深い沼にハマる。豆乳の木目の細かさ、凝固剤の種類、固めるタイミング、シロップとトッピングの味付けなど、そういったこだわりがおいしさに直結するのだ。また温と冷、両方のタイプがあり、それだけでも風合いが違ってくる。

冷えた豆花がことさらおいしく感じるの今の時期。「豆花」の文字を店名に掲げ、都内で現地そのままの味を追求する、ガチな豆花作りにこだわる個人経営の名店5軒をセレクトしてみた。

すでに名を成している有名店も少なくないので紹介に加え、東京在住の食いしん坊台灣人に試食してもらった。日本と台湾のスタンスの違いをふまえつつ、食べて回った現地人目線のジャッジはいかに?

山海豆花
Photo : Keisuke Tanigawa王韋利

今回の食いしん坊台灣人・王韋利

台北出身2009年来日、不動産業の傍ら中国語教師を勤める。持ち前の食いしん坊スピリットで台湾屋台や家庭料理の美味を伝えるべく奮闘。職業柄、都内各地の土地柄に広く精通、食にも詳しい。

  • 大久保

現地で人気、日台ハイブリッドの名作豆花の穴場店

2023年、新宿から新大久保駅の駅ビル3階にあるフードホール「K,D,C,,,」に移転、使い勝手が向上した。

店主YoShi優喜は日本人。サーフィンを愛し、台湾台東の波に魅入られて移住、その後縁あって台北で仲間と豆花作りを手がけることになる。

日本の寄せ豆腐の要素を加えた繊細な食感のオリジナル豆花は現地で好評を持って受け入られ、台北を中心に7軒の店を展開するに至っている。東京の山海豆花では、台湾でしか手に入らない食材以外は日本で揃え、現地に負けぬ日本バージョンを提供している。この店がまだあまり知られていないのは奇跡と言いたい。

招牌(=看板商品)のひとつ「招牌絹豆花」は、絹豆花の名に羞じぬツルツルなめらかな口触り。シロップは濃い目で4種の黒蜜ミックス。麦粉糖で煮たカリカリ落花生&湯で落花生の具が絶妙で、それにタロイモ、桃膠(桃の木の脂)、大粒の粉圓(特製タピオカ)等の現地度の高いトッピングが追い打ちをかける。

*王的寸評*

移転前から通っている数少ないお気に入りの一軒。見た目は普通だけど中身は凝ってますよ。トッピングも芋団子とか新たに追加してチャレンジャー精神もあります。豆花は柔らかくて味は濃いめ。トッピングを入れすぎるとくどくなると思うので綿蜜軟花生 (やわらかなゆでピーナツ)だけのシンプルな花生豆花が私一番のお気に入り。立地も最高です!

おすすめメニュー:「招牌絹豆花」(920円、以下全て税込み)

  • 溝口

至上の豆花愛で、台南・老舗店の美味を再現

店主の見吉勇治は元半導体関連の会社員。単身出張で台湾に渡り、一年の大半を工場で送る日々を送ってきた。そんな時に疲れきった心を癒やしてくれたのが、豆花の心に染みる優しい味わいだった。

以後豆花の沼にハマりこみ、仕事の合間に各地を食べ歩き始める。やがて台南で出会ったのが国立台南大学近辺にある鹽田豆花という一軒。見吉はそのおいしさに惚れ込み店主に師事。試行錯誤の末、現地そのままの豆花を完成させ、二子玉川の隣の二子新地で店を開いた。

豆花は自家製豆乳による、滑らかで適度にぷるんとした口当たりが絶妙。器にすくい入れる厚さまで計算し、トッピングはタピオカや芋団子、落花生など伝統的な構成。シロップは黒糖ベースのあっさり目。全体的にきりっとした男前の美味さで、適度に食べ応えがある。

台湾豆花巡りは今も続けていて、現時点でほぼ200カ所(更新中)。豆花を愛するガチ度が違う。現地で豆花を食べ歩きたいなら、格好の相談窓口にもなってくれる。毎年6月には台湾の魅力をアピールする「黒猫台湾まつり」も定期開催、街のイベントに育ちつつある。

*王的寸評*

まず盛り付けがすごくいい、器と相まって美味しく見えます。シロップは天然な甘さで体に沁みる好きな味。あっという間に完食しました。ただ全体的に味が薄めなのでトッピングはもっと甘くしてもいい気がしましたね。小豆は花マル付けたいぐらいおいしかった。地味な場所にあるけど、行く価値があります。

おすすめメニュー:「伝統豆花」(750円)

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  • 台湾料理
  • 浅草橋

正真正銘の家庭料理、台湾南部の田舎の味と雰囲気を満喫

台湾南部の屏東出身の台湾人ファミリーが営む、現地のローカルな雰囲気もガチで味わえる台湾カフェ。メニューは多彩で魯肉飯など軽食類も充実。店名通り「我が家の味」を提供していて、レシピは昔から実家で作っている家庭料理が基本だ。家庭料理といっても店主山岡香葉の父親が料理好きで自宅にプロ仕様のキッチンを設け、こだわりの食材で料理していた家柄だからレベルが違う。

豆花も早朝、自家製のしぼりたての豆乳を作るところからスタート。少し固めの素朴な味わいが魅力である。トッピングは手作り黒糖タピオカなど定番ものが約8種類。染み出す油分がすぐ悪くなってしまうからと、ピーナツはあえて用意していない。無理し過ぎずのんびり美味を目指すあたりが、家庭料理ならではのこだわりでもある。

*王的寸評*  

豆花は豆の香りがすごくします。トッピングの処理も一つ一つ丁寧、しかもちょうどいい柔さでシロップに溶けず、お互いの味を邪魔しあわずしかも繊細。好みで言うとシロップはやや甘めかな。食後にちょっと食べるスイーツではなくて、まさに3時のおやつ。普通サイズでしっかり食べたくなります。店の雰囲気と店主の人柄もいい。もはや台湾にいる感じでした。

おすすめメニュー:「総合豆花(トッピング全種)」(750円)

  • 台湾料理
  • 浅草

ガチ味を全国へ広げる豆花道場

台湾では永和豆漿大王とか高雄牛乳大王とか「大王」を気軽に名乗る店が目につく。そういった現地ノリを踏襲したのもので、台湾通なら、店名の趣向からしてニヤリと笑みがこぼれる。

主人の志田晃久は母親が台湾人。小学校時代に台北の下町、萬華で夏休みを過ごした時よく食べた豆花の味が忘れられず、2016年4月に専門店をオープン。独学で試行錯誤を重ねて完成した豆花は、昔ながらの製法にこだわって食用の石膏を用い、コクと独特の柔らかさを生み出す。

ほの甘いきび砂糖シロップの代わりに、台湾の豆乳に当たる豆漿(トウジャン)をかける「豆漿豆花」なんてメニューも用意されている。

トッピングは十数種類の具を用意。自家製のもっちりしたさつまいも&さといも団子、はとむぎ、緑豆、白玉団子など、渋い名脇役ぞろいである。店のイチオシは、湯がいたピーナツ。柔らかい歯ごたえとほんのりした自然の甘味が豆花と実にマッチする。パイナップル豆花などのオリジナルも楽しいところ。

店を営む一方で豆花作り教室も開催。現在、ここでしっかり学んだ豆花を提供する店は、全国に広がっている。入って左手の台に並ぶ全国の関連店のショップカードがその証。それだけで一見の価値ありだ。

*王的寸評*

豆花本体は一番好みで、香りが程よく、良い意味で味がさっぱり薄めです。トッピングは花生の茹で具合が花マル!ざっくり入っている感じもいいですね。シロップに溶けて「味変」するあんこは、ちょっと不慣れな味でした。ボリュームたっぷりですね。

おすすめメニュー:「豆花(プレーン)」(150g/450円、大300g/550円)

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  • 淡路町

さりげない風格漂う都内の本格豆花の草分け

浅草豆花大王と並ぶ、都内の豆花店の草分け。2015年12月老舗街、神田須田町の路地裏に都内初の台湾伝統豆花専門店としてオープン。店主の田辺与志久は台湾人の女性との結婚を機に、日本と台湾の懸け橋になる仕事をしたいと開業した。

台北や台南に足を運んでは名店を食べ歩き、研究を重ねた。豆花は信頼する豆腐店から届く搾りたての豆乳を使い、毎朝4時に起きて仕込む。

バランスの取れた、いい意味でクセのない豆花は誰の口にも合いやすいはず。自家製トッピングは緑豆など伝統豆花お馴染みの顔ぶれが8種類ほど。トッピングありの豆花「東京豆花」を頼めば何種類選んでも料金同一なのもうれしい(別途有料トッピングあり)。

大通りの裏手で自然に場所に馴染んでいるロケーションの妙、台北あたりにある文青カフェ風の店構えなど、土産物風店とは一線を画す、今の台湾のフレバーをいち早く日本に持ち込んだ功績も大きい。

*台湾人王的寸評*

私の総合得点一位!不動にして王道です。テイクアウトで食べてもおいしさは変わらず。トッピングが一つ一つ丁寧で、シロップも甘すぎず丁度いいです。向かいの薮そばに行く時は、食後に必ず寄ってます(笑)。

おすすめメニュー:「東京豆花」(800円)

王の台湾人的総評

日本の豆花は、価格的にも毎日食べるおやつではなくて、特別な時に食べるごちそうのポジションですよね。

今回の5軒は豆花の味もしっかりしているし、トッピングも豪華で力が入っている。おいしいからそれでいいのだけど、台湾人的に欲を言えば、力みすぎていない豆花も食べてみたいです。

トッピングに関しては3種類以内に納めたほうが豆花の味わいとバランス取れていると思います。何はともあれ、なかなか行く機会のない店も回れたし、楽しかったです。ごちそうさまでした。

専門店で味わう東京めぐりがしたいなら……

  • カフェ・喫茶店

日本で古くから愛される、抹茶。以前は日本茶専門店でしか味わえなかったが、最近では街中のカフェで気軽に楽しめるようになった。都内には抹茶専門店も登場し、抹茶を使用したスイーツやドリンクのバラエティーが一気に増えたとともに、驚くほど高いクオリティーの商品も生まれている。

今回は都内で味わえる数多の抹茶メニューの中から、特におすすめの商品を厳選して紹介する。

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今、「クラフト」の波がアイスクリームにも押し寄せている。自然由来の材料を使い、製法にもこだわったスイーツは、丁寧に少量ずつ作られているのが特徴的だ。そして、その店独自のフレーバーを提供する店も多い。

ここではわざわざ足を運びたい、東京のクラフトアイスクリームショップを厳選して紹介する。

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