一笹焼売
Photo: Keisuke Tanigawa「手作り焼売ランチ」
Photo: Keisuke Tanigawa

1秒で中国に飛べると話題、御徒町に内モンゴル料理専門店「一笹焼売」がオープン

中国出身女性2人組がかなえた夢、父親譲りの羊肉シューマイが大人気

寄稿:: Asheng
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タイムアウト東京 > Things to do > International Tokyo >1秒で中国に飛べると話題、御徒町に内モンゴル料理専門店「一笹焼売」がオープン

2022年8月8日、御徒町に、スタイリッシュなシューマイ店「一笹焼売」がオープンした。白を基調にした明るい店内で、中国・内モンゴル自治区呼和浩特(フフホト)の伝統的な味わいを再現した羊肉シューマイを提供している。ほかにも羊肉麺や羊スペアリブの塩ゆで、塩気がきいたモンゴル式ミルクティーなど、内モンゴルの郷土料理が楽しめる。

実はこの店、中国出身の若い女性オーナーが2人で共同経営を行っている。東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」。第7回は、一笹焼売を経営するニキ(Niki)とキョーキョー(Kyokyo)に、日本で内モンゴルのシューマイ専門店を開いた理由を聞いた。

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日本では珍しい内モンゴル料理を食べてほしい

ニキはフフホト出身の30歳、キョーキョーは中国湖北省出身で夫が内モンゴル出身の28歳だ。キョーキョーの夫がニキと同じ内モンゴルにある大学出身だったことから2人は知り合いに。2人とも日本が大好きで、何度も観光で訪れたことがあり、住みやすい場所だと感じていたことから日本行きを決めた。

日本で働きながら中国の動画プラットフォームで旅行系動画の配信を行っていたが、仕事がひと段落ついたタイミングで、2人にとっての夢だった自分の店を開くことを決意したという。

「当初は、調理が比較的簡単な『滷味(アヒル肉などを使った漢方煮込み)』の店を考えていました。しかし、味が独特なので、中国人のお客さんが主なターゲットになってしまいます。さらに、すでに東京には多くの専門店がありました」とニキは語る。

「どうしようかと考えていたところ、東京には私の故郷・内モンゴルの料理を食べられる店が少ないことに気付き、これはチャンスだなと。さらにコロナ禍で帰国できなくなってしまった中国人にも食べてほしいと思い、この店を開くことにしました」

「中でも、シューマイなら日本人のお客さんにも受け入れられるのではないかと考えたのです」(キョーキョー)

たまたま知り合いの店が撤退して場所が空いたため、御徒町に出店することに決定。5月ごろから開店準備をスタートさせた。

父親譲りの羊肉シューマイ

内モンゴル自治区は中国内陸部に位置するモンゴル族の自治区で、モンゴル国との国境の大部分を占めている。

省都のフフホトでは、広大な草原で育った羊を使った料理が絶品で、同店の看板メニューの羊肉シューマイもその一つだ。シューマイといえば日本では飲茶のイメージがあるが、一説では内モンゴル(元時代)が発祥ともいわれている。現地(特に中国東北部)では「焼麦」や「稍麦」と表記され、日本で食べられている飲茶の「焼売」よりも皮が薄く、上部がシワシワになっているのが内モンゴル式シューマイの特徴だ。

同店のシューマイを作るに当たって大きな頼りになったのは、フフホトでシューマイ店を営んでいるニキの父親の存在である。2人は彼からレシピを学び、シューマイ作りを研究した。

「気候や材料の違いもあって、最初はレシピ通りに作っても、餡(あん)がおいしくならなかったり、皮が固くなってしまいました」(ニキ)

東京に住む同郷の友人にも味見をしてもらいながらレシピを微調整し、試行錯誤を重ねた結果、辿り着いたのが看板メニューである羊肉シューマイだ。

同店の羊肉料理はモンゴル民族のシェフが作っているが、シューマイだけはニキとキョーキョーの2人が、注文後に皮から作る力の入れよう。聞けば「提供までに少し時間がかかってしまうのですが、一番おいしい状態で食べてほしいから」とキョーキョーは胸を張る。具材は羊肉、ネギ、ショウガだけ。シンプルな具材がフフホト伝統の味だという。

「そのままでもおいしいですが、黒酢と自家製ラー油を付けて食べるともっとおいしいですよ」とニキ。

手作りの薄皮の中にたっぷり入った羊肉あんは、ショウガの香りがきいていてとてもジューシー。8個をぺろりと食べてしまった。

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絶品の羊肉料理

まずはランチタイムの「手作り焼売ランチ」(1,280円、以下全て税込み)を注文したい。シューマイ7個に、フルーツ、漬け物、モンゴル菓子、モンゴルミルクティーがセットになっている。

牛乳をスープに使ったクリーミーな「羊肉麺」や、「オリエンタルなおふくろの味」とでも言えそうな、サッパリとしていて臭みのない「羊肉とネギの炒めもの」などの羊肉料理も絶品なので、ぜひ試してみてほしい。料理は基本的に全品テイクアウト可能で、夜の時間帯のみ予約を受け付けている。

お得なランチセットは主食の羊肉料理でも提供しており、1人で訪れる人も多いとか。夜は単品注文が基本なので、複数人でいろいろなメニューを試してみるのがおすすめだ。

「一笹焼売」という店名の由来

店名である一笹焼売の由来は、伝統的なシューマイの提供スタイルで「蒸籠に入った一段の焼売」という意味。本当の店名は「一屉焼売」と書くそう。「屉」は蒸籠のように重ねられる平たい入れ物を表す漢字で、蒸籠を数える助数詞でもある。日本語では「屉」の字がないため代替字として「笹」の字を使っている。

ちなみに、読み方は「イッティシュウマイ(IT THI SHUU MAI)」だ。かわいらしいロゴとともに注目してみてほしい。

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新メニュー「焼き焼売」も開発中

オープンから間もないが、店は多くの客でにぎわっている。客に味の感想を聞くと、日本人、中国人を問わず好評で、「1秒で中国に行ったような気分です」と言う人も少なくないのだとか。2人にとっては、こうした声が異国の地である日本で内モンゴルの郷土料理を作るモチベーションにつながっているという。

日本で暮らす内モンゴル人の同胞からは、同地でよく食べられている「焼き焼売」を作ってほしいというリクエストも寄せられており、現在開発中だ。

このほか、従来はテーブルが2つ、計8席しかなく、客を待たせてしまうことが多かったが、さらに多くの人が入れるように9月初頭にカウンター席を追加した。進化し続ける本格内モンゴル料理店から、これからも目が離せない。

詳細情報はこちら

  • モンゴル料理
  • 御徒町

※2022年8月8日オープン

中国出身の若い女性オーナーが運営する内モンゴル式シューマイ店。白を基調にした明るい店内で、フフホトの伝統的な味わいを再現した羊肉シューマイを提供している。ほかにも羊肉麺や羊スペアリブの塩ゆで、塩気がきいたモンゴル式ミルクティーなど、内モンゴルの郷土料理が楽しめる。

中国・内モンゴル自治区呼和浩特(フフホト)出身のニキ(Niki)と、夫が内モンゴル出身で、自身は湖北省出身であるキョーキョー(Kyokyo)の2人で共同経営している。

もっと「International Tokyo」を読む……

都内ではここ数年、中国人をターゲットにした「ガチ中華」を提供する店が増えている。競争が激化しており、一風変わった地方の郷土料理や、中国国内の若者に人気のきらびやかな内装を再現するといった特徴がある店も増えてきた。

そんな中、1990年代から2000年代前半の中国の雰囲気を再現した、レトロな内装が目を引く中国スタイルのバーベキューを楽しめる店、九年食班が2022年1月に上野御徒町にオープンした。

ここ数年、東京を中心に中国人が現地の味をそのまま再現した中華料理を提供する店が急増している。筆者はそのような中華料理を、日本人向けにアレンジされた「町中華」に対して「ガチ中華」と呼んでいる。

花椒(ホアジャオ)や唐辛子などのスパイスをふんだんに使った本格的な四川料理、特に鍋の店は2019年から2021年の間で、知っているだけでも15店舗以上増えた。

そんなガチ中華出店ブームの流れに乗って、日本では珍しい四川料理の専門店、楽串が2021年7月に新小岩にオープンした。名物料理は「鉢鉢鶏(ボーボージー)」だ。

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吉祥寺駅北口から徒歩5分。2022年4月28日にオープンしたウクライナの家庭料理店、「バブーシャレイ(Babusya REY)」がある。利用客の投稿したSNSが話題となり、1日100人以上の客が狭い階段に列を作る。

8席ほどの小さなバーを間借りして土・日曜・祝日の昼間のみ営業。「ボルシチ」やマッシュルームとジャガイモを包んだウクライナ風餃子「ヴァレーキニ」、キーウ発祥のウクライナ風チキンカツレツなどを提供している。

プロボクサーとして活躍する小笠原裕典(以下、小笠原)とウクライナ出身の妻、ビクトリヤ、その姉のエウゲニア、夫のアントンの4人で切り盛りする。エウゲニア夫妻はウクライナから3月末、ビクトリヤを頼って息子と両親と避難してきたばかり。狭いカウンターの中では日本語、英語、ロシア語が飛び交う。

東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」。第6回は、「バブーシャレイ」の小笠原夫妻に、同店の魅力とオープンに込められた思いを語ってもらった。

  • Things to do

東京で活躍する外国人にインタビューをし、実際に東京で暮らす中で、何を思い、人や街とどんな風に関係しているのかを聞いていくシリーズ『インターナショナル トーキョー』。第3回は、有限会社セルチェの取締役、トルコ出身のメテ・レシャット・キュプチュに話を聞いた。

メテは、仕事で日本に来た際に出会った妻と結婚するために来日して18年。トルコのおいしい食品を輸入して日本人に食べてほしいという思いから、トルコ産オリーブオイルの輸入販売をスタートした。2019年には品川区荏原町商店街縁日通りに、トルコ食品店のターキッシュ フード アンド ワインマーケット ドアル (Turkish Food&Wine Market Dogal)、2021年には数軒隣にカフェ&バーを開店。テレビなどにも多く出演している、街の名物オーナーだ。

東京で店を開くことについての苦労話を聞くと、「日本人はみんな優しいから大変なことはない」と笑い飛ばす。実際に話を聞くと、筆者なら苦労と捉えるエピソードもあったが、持ち前の明るさと、店前を人が通るたびに気軽に声をかけるような人懐こさで、人々をたちまち味方にしてしまうのだ。

近い将来、荏原町をトルコの店でいっぱいにする「荏原町トルコ村計画」を構想中だ。一体どんな計画なのか尋ねると、目を輝かせて語ってくれた。

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