店内には中高生のジャージのようなユニフォームを着た店員が接客、学校の食堂を再現したようなテーブルが並び、壁には90年代の映画館やチラシ、ミュージシャンのカセットテープなどが飾られている。日本の昭和レトロな雰囲気を再現した居酒屋の中国版のような店だ。
東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ『International Tokyo』。第5回は、九年食班を経営する紀恒(き・こう)に、同店の魅力とオープンに込められた思いを語ってもらった。
都内ではここ数年、中国人をターゲットにした「ガチ中華」を提供する店が増えている。競争が激化しており、一風変わった地方の郷土料理や、中国国内の若者に人気のきらびやかな内装を再現するといった特徴がある店も増えてきた。
そんな中、1990年代から2000年代前半の中国の雰囲気を再現した、レトロな内装が目を引く中国スタイルのバーベキューを楽しめる店、九年食班が2022年1月に上野御徒町にオープンした。
店内には中高生のジャージのようなユニフォームを着た店員が接客、学校の食堂を再現したようなテーブルが並び、壁には90年代の映画館やチラシ、ミュージシャンのカセットテープなどが飾られている。日本の昭和レトロな雰囲気を再現した居酒屋の中国版のような店だ。
東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ『International Tokyo』。第5回は、九年食班を経営する紀恒(き・こう)に、同店の魅力とオープンに込められた思いを語ってもらった。
紀は1991年生まれの31歳。友人が日本語の教師をやっていたことから日本に興味を持ち、2013年に来日。エンジニアとしてIT関連事業に従事していたが、2019年に独立した。現在はスマートフォンアプリのシステム開発会社を経営する傍ら、横浜中華街で中華軽食の飲食店や漢服レンタルの店を経営するなど、マルチに活動している人物だ。
「コロナ禍で帰国できない同年代の中国人に懐かしんでもらえる店を作りたい」と、同店をオープンした。特徴的なのは、一昔前の中国の雰囲気を再現した内装だ。壁のきらびやかなネオンや装飾、香港映画のジャケット写真、中華圏のミュージシャンのカセットテープが店内の至る所に置いてある。
「1990年代に学生だった30〜40代のお客さんはとても懐かしんでくれます」と紀。本国の湖南省長沙や広東省深センでも近年、こうしたレトロな中国を再現した飲食系複合施設がオープンしており、話題を集めているという。
2010年に実質国内総生産(GDP)が日本を抜いて世界第2の経済大国になった中国だが、その時代に至るまでの1990〜2000年代前半までに学生時代を過ごした中国人にとって、当時を再現した店は、今はなき懐かしの思い出なのだ。
「日本という異国の地で働く人たちがこの店に来て、当時の青春を懐かしみながら故郷に帰った気持ちになってくれたらうれしいです」(紀)
日本で言うと、BGMに昭和歌謡が流れたり、駄菓子を販売していたりするレトロな居酒屋に行って、「エモい」と感じるのと似た感覚なのだろう。
店内の凝ったインテリアは全て中国から輸入したという徹底ぶりで、カセットテープやゲームなどは実際に使用できる。中国版InstagramのREDで店舗を検索すると「タイムスリップした」「上野に懐かしい店がある」という投稿が多数あり、日本で暮らす中国人の間でも評判は上々のようだ。
もちろん店内の装飾だけが店の売りではない。看板メニューは中国式バーベキューであるラム肉の串焼き(羊肉串)と、山東省青島名物の鉄板焼の「戳子肉」だ。串焼きは、定番のラム肉から牛肉、鶏肉、野菜類、エビやサザエなどの海鮮系まで50種類以上あり、豊富に楽しめる。
ラム肉などの串焼きは、テーブルに置かれた炭火の網の上で自ら焼く中国式のバーベキュースタイルで提供される。
戳子肉(チュオズロウ)は青島のローカルフードで、肉や海鮮をタマネギ、セロリといった野菜と、ニンニクや唐辛子などの香辛料と一緒に卵焼き器のような四角い鉄のフライパンで炒めた料理だ。こちらは炒めた状態で提供されるので、そのまま食べられる。
「戳子肉をメインで提供している店は日本では珍しいと思います。お店に来たらぜひ味わってほしいです。ビールとの相性も最高ですよ」(紀)。
常時10種類の戳子肉を提供しており、時期によって具材は変わる。おすすめは、鶏せせりの鉄板焼きとザリガニの鉄板焼きで、4月からはモツの鉄板焼きが新たに加わった。
紀によれば1月のオープン以降、店の売れ行きは好調で、50席ある店内は平日、休日ともに夜になるとほぼ満席の状態が続いているという。客層は中国人が7割、日本人が3割程度で、店のコンセプト通り30〜40代が多いそう。また、20代のリピート客も増えいているのだとか。自分が経験したことがない一昔前の中国を再現した店内に新鮮さを感じているようだ。
「日本人のお客さんも、串焼きや鉄板焼をおいしいと喜んでくれます。今後は中国人だけではなく、日本人のお客さんにも中国の懐かしい雰囲気を楽しんでほしいです」と紀。現在は2店舗目の展開を検討中だ。昭和レトロとは一風変わった「中国レトロ」を体験しに、上野に足を運んでみては。
紀恒(き・こう)
1991年生まれ。2013年に来日。福岡の語学学校で日本語を学び、2014年に早稲田大学大学院に入学するも奨学金の受給がストップしたため、1年で退学。2015年に中国に帰国。2016年、エンジニアとして再来日。2019年に独立。スマートフォンアプリのシステム開発会社、衆行株式会社を経営する傍ら、横浜中華街で軽食と漢服レンタル店の漢亭序を運営している。
「你好!几位?(いらっしゃいませ、何名様ですか?)」。店員さんの発する第一声が中国語の中華料理店がここ数年、高田馬場や新大久保などで急増している。中でも池袋はその総本山だ。
輸入食材がそろう中華物産店や、中国各地の郷土料理が楽しめるフードコートなど、まるで本国を旅行しているような気分に浸れる。町中華とはまた違う、現地で食べるような料理や雰囲気が楽しめる店を7軒紹介する。
ここ数年、東京を中心に中国人が現地の味をそのまま再現した中華料理を提供する店が急増している。筆者はそのような中華料理を、日本人向けにアレンジされた「町中華」に対して「ガチ中華」と呼んでいる。
花椒(ホアジャオ)や唐辛子などのスパイスをふんだんに使った本格的な四川料理、特に鍋の店は2019年から2021年の間で、知っているだけでも15店舗以上増えた。
そんなガチ中華出店ブームの流れに乗って、日本では珍しい四川料理の専門店、楽串が2021年7月に新小岩にオープンした。名物料理は「鉢鉢鶏(ボーボージー)」だ。
「ご飯食べた?」を意味する「呷飽没?」があいさつになってしまうほどおいしいものであふれる台湾。気軽に旅ができない今、台湾ロスに陥っている人も多いだろう。
そんな人の願いをかなえるべく、ここでは「東京の台湾」をピックアップ。本場の味が楽しめる店はもちろんのこと、現地感のある内装でプチ旅行気分に浸れる一軒や話題の新店、隠れた名店などをタイムアウト東京の台湾出身スタッフ、ヘスター・リンとともにセレクトした。台湾の豆知識も時々交えたヘスターのコメントとともに紹介するので、台湾の情報収集としてもぜひ活用してほしい。
人肌恋しいこの時期、痺(しび)れる恋よりおすすめしたいのが「痺れ系担々麺」だ。この担々麺の特徴は、四川料理などに使う花椒(ホアジャオ)や日本の山椒などの香辛料が惜しみなくたっぷりと入っていること。一口すすれば花椒や山椒がビリビリと口内を刺激し、かんきつ系の爽やかな風味がやみつきになることから、リピーターの間で人気を呼んでいる。
ここでは汁あり、汁なしと双方の担々麺を扱う店を紹介するが、いずれのメニューも花椒や山椒の粉末が麺を覆い隠してしまうほどの強者ばかり。『辛さ』や『痺れ』の幅を調整できる店も多いため、自分に合った味を試してみよう。
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