PELI & AYAKO
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犬専用のおしゃれなセレクトショップを立ち上げた女性カップルにインタビュー

中目黒に「PEGION(ペギオン)」をオープンしたPELIとAYAKO

Hisato Hayashi
寄稿:: Yuki Keiser
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タイムアウト東京 > LGBTQ+ > 犬専用のおしゃれなセレクトショップを立ち上げた女性カップル

インタビュー:カイザー雪

2024年4月、犬専用のおしゃれなセレクトショップ「ペギオン」が中目黒にオープンした。DJでファッションブランド「POOLDE」のデザイナーでありディレクターのPELIと、ファッションブランド「G.V.G.V.」などを展開する「K3」の元WEBセールスマネジャーAYAKOが5年前に立ち上げたブランドだ。

モード界で活躍している二人は2013年に交際を始め、2024年1月に10年目にしてパートナーシップを結んだ。ビジネスもプライベートもともにしている、おしどり「婦婦」である。

そして、二人は大の犬好きとしても知られる。「犬が側にいるだけで幸せ。強くなれる唯一無二の存在」と語る彼女たちは、「ペガサス」と元保護犬の「オリオン」を中心に生活を送っている。犬を愛してやまないがゆえにスタートした店への思いやこだわり、カップルで会社を経営することに当たって大切にしていること、同性婚などについて聞いてみた。

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日本にないなら、自分たちで作ってみない?

2013年の交際当初、PELIはトイプードルのペガサスを既に迎えていて、当時は好みのドッグブランドが日本になかったため、海外のアイテムをインターネットで探しては取り寄せていたという。そうしているうちにAYAKOが「それなら自分たちで作ってみない?」と誘ってみたところ、「楽しそう、やろうやろう!」とPELIが即答したことから自然に生まれたという。

その後、機が熟して2017年に会社を設立。最初はオンラインで販売し、PELIがデザインをする傍ら、AYAKOはペットフード・ケア用品ショップで修行し、ペット業界でのセールス経験を積んだ。そして2019年の夏からペギオンに専念し、本格的にローンチ。その後、ポップアップやイタリアのファッションブランド「N°21」とコラボレーション商品を展開するなど人気を博し、今年の春に都心に店を構えることになった。

人類の中で唯一全て話せるのがAYAKO

順風満帆とはいえ、二人はカップル。PELIはペギオン以外にDJの仕事も行っているものの、二人はプライベートも仕事もほぼ一緒で、衝突はないのだろうか?

「普通にたくさんけんかしたりしますよ(笑)。ただ、人類の中で唯一全て話せるのがAYAKO。だからこそ、小競り合いがあっても、全部言えるからうまくいくのかな」と、PELIは話す。

「良くも悪くも、お互いの得意分野や苦手分野が異なるので、お互いに持っていないことを相手が補って、半分半分で一人になっている感じ。だからこそ尊敬できている。また、ぶつかったら、とことん話して解決するようにしています。自分がいつも折れているつもりなのですが、PELIは自分が折れていると感じているらしいです」と、AYAKOは笑う。

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パートナーシップを結んでいた方が選択肢が広がる

同じファッション業界で働く二人が出会ったのも自然な流れ。「昔、新宿三丁目の居酒屋でAYAKOを一目見て、『わ!タイプの人がいる!かわいい!!』というのが第一印象(笑)。その数年後、新宿二丁目のバー『MOTEL』で再会して、同業者だと知って驚きました。普段は人の顔をあまり覚えていないんですけれど、彼女のことは鮮明に記憶に残っていましたね」(PELI)

そして、AYAKOが勤務していた会社のイベントでPELIがDJをした際に正式に知り合い、急接近したという。今年10周年記念の二人は、今年1月に結婚(パートナーシップを申請)。それまで結婚願望が特別あったわけではないが、今年店舗を構えることが決め手の一つなのだとか。

「一緒にショップとビジネスを経営しているので必要かな、と。最近は、同性のパートナーを受取人に承諾する保険会社も増えてきましたけれど、やっぱりパートナーシップを結んでいた方が優遇されたり、選択肢がより豊富になるのかな、と感じて。

あと、引っ越しをしたかったのですが、同性カップルだと部屋を借りるときに審査が少し厳しい、と周りの実体験を聞いていたのも一つですね。そんなさまざまな要素を考慮した上で決意しました」(AYAKO)

両家の絆がさらに深まった

そんな、仲むつまじい二人だが、パートナーシップ後に変わったことは?

「お互いの家族同士がより一層親密になったと感じましたね。元々全員仲は良かったのですが、これを機に以前よりみんなで食事に行くなど両家の絆が深まりました」(PELI)

現在、日本でも同性間での結婚の法制化に向けて活動している団体もあるが、「二人はそこまでこだわっていないかな」とPELIは続ける。「今後、パートナーシップ制度の権利の幅なども広がるのではないかと期待していますし、日本の考え方や方法を無理に変えようとは思っていないんです。まずはパートナーシップを結んで、自分たちのペースでやれたらいいなと思っています」

「自分たちの親も年齢的に同性婚やパートナーシップ制度についてそんなに詳しくない事もあってか、逆に盛大に祝福してくれて結婚と同様に感じています。ただ、結婚ができるようになったら、それはそれでしたいですね!」と、AYAKOはほほえむ。

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犬は生涯家族

新宿二丁目の「アイイロカフェ」(AiiRO CAFE)や「ゴールドフィンガー」(GOLD FINGER)といったクィアスポット以外は、休みの日は2匹の愛犬と家族団らんで釣りや海などへ行くのが二人の日課だ。「生涯家族」の犬中心のライフスタイルなのだが、一度だけ、犬を預けてカップル水入らずで旅行へ行ったという。

「久しぶりに二人っきりでのびのびする気満々だったんですけれど、キャンプ場に着いて、『なんで犬を置いてきたんだろう』ってなって……結局私たちが寂しくなってしまって、予定より1日早く帰ってしまいましたね(笑)」。二人の「愛犬家あるある」エピソードに共感する人は少なくないだろう。

最後に、カップルの長続きや円満のコツについて聞いてみた。「秘訣(ひけつ)じゃないかもしれませんが、常に一緒にいるので、お互いの時間を確保することですかね。また、ちょっとしたけんかの時、飼い犬のオリオンが心配そうな表情で二人の間を行ったり来たりするので、『ま、いいか』となっちゃったりします」と、PELIは笑った。

元々は人間用のファッションデザイナーだけあって、とにかくおしゃれで遊び心あふれるデザインが魅力的なペギオン。しかしスタイリッシュさ以上に、犬の着心地や商品の機能性、さらに飼い主にとっても扱いやすさを最優先しているそうだ。犬と飼い主の幸せを意識してクリエートし、セレクトしているアイテムからは、犬への愛情もにじみ出ている。そんな店へ、ぜひ足を運んでみては。

Contributor

カイザー雪

スイス・ジュネーブ大学文学部卒業後、奨学金プログラムで東京大学大学院に2年留学。現在は日本、アメリカ、スイスの3拠点で生活。通訳、執筆、語学教師(日本語、フランス語、ラテン語)の仕事をしている。

  • ショッピング
  • 中目黒

セールスのAYAKO、デザイナーのPELIという愛犬家カップルが2024年4月に中目黒にオープンした、犬専用のセレクトショップ。「犬と人とのフィーリングは常にリンクしている」という考えをもとに、アート、モード、ホームの3つのエレメントをコンセプトにしている。

おしゃれで遊び心あふれるデザインも魅力的だが、さらに犬の着心地や商品の機能性、飼い主にとっても扱いやすさを意識してクリエイトし、セレクトしているアイテムが勢ぞろいだ。

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