より強くドラマティックな音楽劇に
――『チョコレートドーナツ』は、2012年に公開され、数多くの映画祭で観客賞を受賞した映画ですが、今回が世界初舞台化なのですね。
宮本:もともと大好きな映画でした。今回、映画を作ったトラヴィス・ファイン監督とPARCO劇場さんとの間で企画が持ち上がり、5年前に京都で監督と会い、「君がやってくれるんだね!」と言われて。僕のブロードウェイでの演出を知ってくれていたのかもしれません。
谷原:僕は日本で映画が公開される際、MCをしていた情報番組で紹介させていただくため試写で見たんです。そのとき、人としてどう生きるかという根源的なところを問うている、良い映画だと感じたのを覚えています。
――稽古が始まって2週間強とのことですが、今はどのような段階ですか?
宮本:台本上も動き
谷原:こんなに進みが早い稽古は、僕は初めてです。装置の移動が結構あるのですが、暗転して転換するという形ではなく、芝居しながら転換し、しかも音楽も出てきて……1シーン1カットみたいな構造。それを、まずはある程度作り、そこからじっくり細部を詰めていくという作業がとても面白いですね。
――音楽劇仕立てになるというのも気になります。
谷原:映画はつらいことがつらく演出されている悲しい作品ですが、今回の舞台ではショーアップされた部分の密度が濃く分量も増え、舞台だからこそできる新しいものになっていると思います。
宮本:映画以上にいろいろなことを強調して作っています。ポールの上司であるウィルソンを映画以上に金持ちにして貧富の差を表現していますし、ショーも、カリフォルニアの場末のショーパブなので贅沢なものではないけれど、バカバカしくも華やかに、と。ただ、リップシンクのシ
谷原:大変なんですよ。僕は芝居だけだからまだいいのですが、東山さんは、踊り続けた後に芝居が始まって、またすぐに踊る、といった感じなので。
――演技していても、相手の表情の下半分が見えないというのはやりづらいですよね。
宮本:そうなんです。今回は現場に子どもたちもいて、感染には特に気をつけなければなりませんから、ぎりぎりまで着けたままでの稽古になるでしょう。でも、そうやって目で相手に伝えようとしながら稽古をすることは、マスクを外した時にも強さとなって表れるかもしれません。