日本は進歩と伝統的な心を持ち合わせている
ー日本に赴任して約1年がたちましたが、この国の印象はいかがですか。
初めて日本に来たのは2003年から2004年にかけてです。当時私はアブダビ国営石油会社に勤務しており、同社でビジネス展開のために、日本で日本語を習得する人を募集していました。私はこのチャンスをものにして、やってきたのです。大分県の別府市と東京で半年ずつ過ごしました。(大使就任のために)再び日本の地に足を踏み入れた時は、故郷に戻ってきたような気分でしたよ。
UAEでは皆、日本アニメのアラビア語吹替版を観て育ち、日本の文化に浸ってきました。私たちは、自分たちと比較し、日本がいかに急速に発展を遂げたかを知っていたので、先進国のイメージを持っていたのです。最初に訪れた時には日本に華やかな光を見ましたが、今回の赴任で(UAEが日本に)いかに追いついているか、国として私たちが、どれだけ進歩しているかに気付くことができてうれしかったですね。
日本は進歩的であると同時に、伝統的なものが日本の心を保っています。それが、観光客がこの国にきっと戻ってくる理由でもあるでしょう。
ー東京でお気に入りの場所はありますか。
皇居は東京とは思えないほど、とても穏やかで静かな場所ですね。天皇陛下に信任状を奉呈しに行った時、街の雑踏から、皇居に入った瞬間に雰囲気が一変したことをよく覚えています。私は大きなリムジンに乗っていましたが、窓の外を見て自分がまだ都会の中にいることを確認しなければならないほどでした。皇居周辺はとても静かで、ランニングやサイクリングにも適しており、気に入っています。
UAE大使館は渋谷の近くにあるため、代々木公園や表参道に行って散歩やランニング、サイクリングをするのも好きですよ。たまに銀座で会議があると約9キロの距離を歩いて帰ったり、サイクリングでは朝に25キロ、夜に25キロほど走ったりする日もありますね。東京でのサイクリングはとても気持ちが良いんです。ただ、交通量が多いのが難点ですが......(笑)。
週末には、電車や車に乗って県外へ出かけることにしています。比較的近場でお気に入りの場所は、日光です。自転車に乗って中禅寺湖から温泉まで走り、また下ってくる。日光は東京よりも10〜15度ほど気温が低いことが多いので、気候の変化を楽しむことができます。
ーオリンピックが終わった今、東京や日本の将来に期待することは何ですか。
観光客が戻ってくることがとても楽しみですね。私が着任した12月以降、観光客の出入国を経験していませんが、日本が主要7カ国(G7)の中で最も新型コロナウイルスのワクチンを接種している国の一つになることで、状況が変わることを期待しています。
訪日観光客の数を見ると、2010年に1000万人でしたが、その後のプロモーション活動などにより、2019年には3000万人に増加。東京2020オリンピックまでには4000万人という予想でしたが、コロナ禍が始まってしまいました。
しかし、観光は必ず立ち直るでしょう。私の日常的な仕事の一つは、日本を訪れたい人々からの問い合わせに答えることです。「日本にはいつ行けるようになりますか?」という質問は、私の国、そして世界中にどれだけ日本のファンがいるかを物語っています。