出発前日は『東京物語』を鑑賞
ー大使に就任してから、日本に対する印象はどのように変わりましたか?
私は日本に赴任する以前は(フランス政府の代表として)26年間、欧州関係の仕事に携わっていました。当時の私の仕事は地域的に多忙なエリアだったため、それ以前にアジアに行く機会はなかったのです。
日本の文学や映画などは観たことがあり多少の知識はありましたが、私は日本に対する強い先入観や固定観念は持っておらず、日本は私にとって全く新しい発見でした。ベルギーでアニメーション制作を学んでいる私の息子から、宮崎駿、谷口ジロー、そして『攻殻機動隊』についていろいろとアドバイスをもらいましたよ。出発の前日には、気分を盛り上げるために、小津安二郎の名作映画『東京物語』を観たほどです。
就任してわずか10カ月で私の考えがどう変わったかという質問には答えられませんが、この国は常に、アイデンティティーを失わないように最善を尽くしながら進歩しようとする気持ちを持っている、といった印象でしょうか。ある意味では、小津安二郎のビジョンが今も鮮明に残っているのかもしれませんね。