Tokyo meets the world Tunisia
Photo: Kisa ToyoshimaAmbassador of Tunisia to Japan, Mohamed Elloumi
Photo: Kisa Toyoshima

駐日チュニジア大使に聞く、東京で楽しむチュニジアフードと日本との多層的な関係

故郷の味と日本食との意外な共通点やオリンピックがもたらした喜び

Ili Saarinen
翻訳:: Genya Aoki
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コロナ禍の終わりが見え、世界中で規制が撤廃されてきた今、コロナ終息後の東京の新しい方向性を示す斬新なアイデアやインスピレーションが求められている。

タイムアウト東京はTokyo meets the worldシリーズを通して、東京在住の駐日大使へのインタビューを続け、都市生活に関する幅広い革新的な意見を紹介。とりわけ、環境に優しく、幸せで安全な未来へと導くための持続可能な取り組みについては大きく取り上げてきた。

今回は、チュニジアのモハメッド・エルーミ大使に話を聞いた。大使館の参事官として来日し、2018年夏からは駐日大使に就任。合わせて8年以上東京に滞在しているエルーミ大使は、東京と日本全体について幅広い視点を持つ。

パンチのきいたコーヒーとおいしいチュニジアの伝統菓子を振る舞いながら、彼は東京のお気に入りスポットやチュニジアの食が味わえる店を紹介。さらに日本とチュニジアの関係を幅広く伝え、『東京2020オリンピック・パラリンピック』で記憶に残った瞬間も話してくれた。

2011年、東日本大震災の数カ月後に初来日

ーこれまでの日本の印象を教えてください。

私は日本でチュニジアに奉仕できることを光栄に思っていますが、この気持ちは東京にいる全ての外交官と同じだと思います。素晴らしいこの国で外交官として働くことは、またとない貴重な機会です。

私が初めて来日したのは、2011年3月に発生した東日本大震災の数カ月後のこと。そのため、東京以外で初めて訪れた場所は福島県と岩手県の被災地、そしてチュニジアと縁の深い石巻市でした。人々が自宅から避難所に移り住み、大変な思いをしているのを肌で感じました。

その後も定期的に(少なくとも年に一度)震災の追悼式のために訪れていますが、困難に立ち向かう日本の精神が、私や世界中の人々に大きな感動を与えていることを実感しています。

私たち家族にとって日本での滞在は毎日が学びの連続であり、そうした日々に満足しています。個人的なことですが、2011年の来日時点では息子はまだ2歳だったので、日本の幼稚園に2年間通いました。そこで、日本の子どもたちは共有する価値観やマナーを守って育つことを知ったのです。日本人が日常生活できちんとしているのは、そこから始まっているのだと思います。

ー東京での生活はいかがですか。また、お気に入りの場所はありますか。

日本で多くの都市を訪れました。東京は大都市ですが、多文化的でありオープンで、私にとって特別ですね。大使館周辺を毎日散歩するようにしていて、九段下駅と市ケ谷駅の間という立地から、桜の季節には千鳥ケ淵などで素晴らしい景色が楽しめます。

また週に一度、皇居の周りをジョギングするのが日課です。このほか、上野の国立博物館などのミュージアムにも出かけますよ。浅草は、古い店や日本の骨董(こっとう)品が多くあって、古き良き文化を楽しむことができますね。週末に時間がある時は、高尾山や横浜などの近場に足を延ばしています。

日本でチュニジア料理を楽しむ方法

ーチュニジア料理はどこで味わえますか。

現在、東京には2軒のチュニジア料理店があります。東京タワー近くにあるラ・メゾン・ド・クスクスと板橋区志村坂上に位置するブラッスリージェルバです。

チュニジアのオリーブオイルやワイン、クスクスなどを扱う日進ワールドデリカテッセンなど、チュニジア産の食品を販売する店もあります。チュニジアは世界有数のオリーブオイルの生産・輸出国ですが、残念ながら日本の市場にはまだ大きく進出できていません。

私はチュニジアの沿岸部出身で、家族で魚介類をよく食べます。そのため、上野のアメヤ横丁で時々買い物をするのですが、ここは魚介類の種類が豊富でいいですね。

もう一つ気に入っているのは、高尾山にあるカジュアルなレストラン。山の上にあり、眺望が素晴らしいんです。冬は温かく、夏は冷たいうどんを提供しています。七味唐辛子をかけた熱々のうどんを食べると、ひよこ豆を使ったチュニジア風のパンかゆ、「ラブラビ」を思い出します。

チュニジアではカジュアルな冬の定番料理で、ハリッサ(唐辛子の薬味)を添えて食べるんです。家族で高尾山に行った時は、このレストランをいつも訪れます。材料は違いますが、似ているところがたくさんありますよ。

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両国のパートナーシップは共通の関心を持つあらゆる分野に

ー今のチュニジアと日本の関係をどのように見ていますか。

チュニジアは1956年3月にフランスから独立し、そのわずか3カ月後に日本との国交を樹立しました。日本が常に私たちの側に立ち、長年にわたって経済的・社会的発展を支援してくれたことに感謝しています。両国の関係は成長を続けており、経済や貿易から文化や人的交流に至るまで、共通の関心を持つあらゆる分野を網羅しています。まさに多層的なパートナーシップを築いているのではないでしょうか。

2022年8月27日(土)、28日(日)にはチュニジアで、アフリカの開発をテーマとする国際会議『第8回アフリカ開発会議(TICAD8)』が開催されます。日本の現首相が初めてチュニジア訪問を果たす予定です。私はこのイベントをとても楽しみにしており、成功のために全力を尽くしています。このサミットをもって、両国の関係はかつてないほどの勢いがつくでしょう。

私たちはチュニジアのビジネス環境をさらに促進し、チュニジアがアフリカ、アラブ地域、ヨーロッパへのゲートウェイとなり得ることを日本のビジネス界に示すために、ここ数年に渡り、一連のビジネスセミナーやウェビナーを開催してきました。地中海の中心に位置する戦略的な立地は大きな資産です。日本の大手商社がチュニジアへの進出を準備しているという話も聞いています。

人的交流では、元駐チュニジア日本大使の小野安昭氏が会長を務めている日本チュニジア友好協会があり、石巻市をはじめいくつかの都市で協会支部の設立を試みています。また、愛知県の瀬戸市とチュニジアのナブール市は、陶器の伝統を共有する姉妹都市です。『東京2020オリンピック・パラリンピック』の際にチュニジアチームのホストタウンであった石巻市、横浜市、茨城県神栖市、そして東京都江戸川区など、日本とチュニジアの自治体間の新たな協力の機会も探っているところです。

東京五輪が世界中の国にもたらした喜び

ーオリンピックといえば、世界的なパンデミックの中で開催されたことについて、どう思われましたか。

『東京2020オリンピック・パラリンピック』は、コロナ禍という困難な状況にもかかわらず、日本が大規模な国際イベントを開催できることを世界に証明し、大きな成功を収めたと思います。日本はこうしたイベントの開催によって、常に世界を魅了してきました。

日本では、パンデミックの影響や大勢の外国人が来ることへの警戒感からか、同大会が他国やその国の選手たちにどれだけの喜びを与えたのか、実感が湧かない人がいるかもしれませんね。チュニジアの水泳チームの話をしましょう。私たちのチームは、コロナ禍が始まる数週間前、2020年2月に事前キャンプで石巻市を訪問。その中には18歳のアハメド・ハフナウーイという、大きな才能を持ちながらまだ若い選手がいました。

当時、私はハフナウーイ選手のコーチに彼に何を期待するかを尋ねました。「彼はまだダイヤモンドの原石であり、目標はパリ(2024)だが、東京でも何かを達成できるかもしれない。非常に才能豊かな若いアスリート」だと語ったのです。

そして1年半後、ハフナウーイ選手は東京で400メートル自由形に出場し、金メダルを獲得して世界を驚かせたのです。その日はチュニジアにとって歴史的な日であり、私の国にもたらした喜びは想像を絶するものでした。

いずれにしても、日本はオリンピックなどの大イベントを実施する能力は群を抜いています。2025年には大阪・関西万博の開催が控えていますね。先日、博覧会協会を訪ねましたが、3年前からすでにさまざまな準備が進んでいることが分かりました。私たちも、チュニジアで開催されるTICAD8の準備をしているところなので、とても刺激を受けています。

ー日本ではSDGsが注目されるなど、持続可能な開発への関心が高まっています。この分野でのチュニジアの取り組みはどのようなものがありますか。

日本とチュニジアは、持続可能性とSDGsについて話す時、同じ考え方に立っていると思います。特に女性の活躍や人材育成といった分野では、チュニジアの経験を共有できるのではないでしょうか。

チュニジアは日本と同様、大きな天然資源を持たず、人的資源に重点を置いてきました。その点で、ほかの多くの地域諸国とは状況が異なります。こうした特異な経験をお互いに国際社会へ還元することが、SDGsのような重要な目標を達成させることにつながるのではないかと思います。

モハメッド・エルーミ(Mohamed Elloumi)

駐日チュニジア大使

もっと『Tokyo meets the world』シリーズを読む……

  • Things to do

代官山のTSUTAYA BOOKSへ行ったことがあるなら、通りの向こう側からT-SITEの建物を見つめる2体の白いスフィンクスに気付いたかもしれない。このスフィンクスはエジプト大使館の前に立ち、仲間のファラオ像と一緒にちょっと不釣り合いだが、長年にわたってこの街の名物になっている。それは大使館自体も同様で、そのオープンさと多くの地域活動のおかげで、東京の外交機関としては珍しいレベルで街とのつながりを持つことができている。

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている「Tokyo meets the world」シリーズ。今回はエジプトのアイマン・アリ・カーメル大使に話を聞いた。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談は、エジプト大使館の独特の存在感やエジプトと日本との長い関係、東京で食べられるエジプト料理など、幅広い話題で盛り上がった。大使はまた、エジプトの学校が日本の教育に倣って、より全体的な方向に教育を進めようとしている理由についても語ってくれた。

  • Things to do

多くの駐日大使は4年または5年の任期を務め、東京での生活に慣れ親しんだ頃には次の任地に向かうという状況だが、アホメド・アライタ・アリ大使は違う。2008年5月からこの地に駐在しているジブチ共和国大使は、その長い任期の間に自国への関心が飛躍的に高まったことを実感している。

2011年は、自衛隊がジブチに初の海外基地を開設した年であり、「3.11」の災害で壊滅的な被害を受けた福島県南相馬市をジブチが支援し始めた年でもある。日本とジブチの今のような友好関係はそこから発展したのだと、アライタ・アリは言う。

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている「Tokyo meets the world」シリーズ。今回は8月下旬に自身の任期を終えジブチに帰国するアライタ・アリに話を聞いた。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントで、SDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、東京での生活を振り返り、アフリカに対する固定観念を無くすための努力や日本とジブチが共に、より持続可能な社会を作るにはどうしたらよいかを語った。ほかにも、おすすめのレストランやオリンピックへの期待に触れ、「すしざんまい」の木村社長との仲まで話してくれた。

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  • Things to do

コロナ禍の終わりが見え、世界中で規制が撤廃されてきた今、コロナ終息後の東京の新しい方向性を示す、斬新なアイデアやインスピレーションが求められている。

タイムアウト東京はTokyo meets the worldシリーズを通して、東京在住の駐日大使へのインタビューを続け、都市生活に関する幅広い革新的な意見を紹介。とりわけ、環境に優しく、幸せで安全な未来へと導くための持続可能な取り組みについては大きく取り上げてきた。

今回は、2019年8月に着任したインガ・ニーハマル駐日ノルウェー大使に話を聞いた。インタビュアーはパリ出身のジャーナリストであるフローラン・ダバディだ。

ニーハマル大使は2004年から2009年にも東京の大使館で公使参事官を務めた経歴を持つ。日本通でもある大使が両国の共通点を多く紹介し、ノルウェーと日本が取り組んでいるSDGsへの施策や東京での生活、東京でノルウェー料理が楽しめる場所についても教えてくれた。

  • Things to do

世界中で規制が撤廃され、コロナ禍の終わりが見えてきた今、コロナ終息後の東京の新しい方向性を示す、斬新なアイデアやインスピレーションが求められている。

タイムアウト東京は『Tokyo meets the world』シリーズを通して、東京在住の駐日大使へのインタビューを続け、都市生活に関する幅広い革新的な意見を紹介。とりわけ、環境に優しく、幸せで安全な未来へと導くための持続可能な取り組みについては大きく取り上げてきた。

今回は、チリ共和国のリカルド・ロハス大使に話を聞いた。20216月に来日し、日本での生活はまだ始まったばかりだが、オフィスから見える東京タワーや増上寺、白馬のスキー場など、さまざまな日本の魅力をすでに感じている。

2022年には、日本とチリの外交関係樹立125周年を記念して、大使館がイベントなどを開催する予定だ。今回のインタビューでロハス大使は、そうしたイベントへの期待感を語った。

また、『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会』(以降『東京2020』)が未来に与え続ける影響について考察し、チリのその独特な地理的条件を生かした持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを説明してくれた。

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  • Things to do

ジェットコースターのようなオリンピックイヤーを東京の人々が振り返っている今、別の世界的な都市がスポットライトを浴びている。アラブ首長国連邦(UAE)で実施中の『2020年ドバイ国際博覧会』だ(2025年には大阪で再び開催予定)。

とはいえ、UAEでホットなのは万博の開催だけではない。このペルシャ湾岸の石油国は今年建国50周年を迎え、コロナ禍による渡航制限をいち早く解除し、その結果、観光客が続々と戻ってきている。また、化石燃料から再生可能エネルギーへの大規模なシフトチェンジの真っただ中にある。そして2021年4月にはタイムアウトマーケットもオープンしたのだ。

これらの話題を紹介してくれるのは、2020年のクリスマスイブに日本に到着して以来、47都道府県のうち31エリアを訪問した熱心な旅行者でもある、UAEのシハブ・アルファヒーム大使だ。東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている『Tokyo meets the world』シリーズの最新版として、同大使に、UAEの意欲的な持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み、ポストコロナの観光政策、日本との協力関係、そして、東京からの日帰り旅行のおすすめ情報、東京で最もリラックスできる場所について聞いた。

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