ナップディ
オーナーのDiCoprio(右)(Photo: Keisuke Tanigawa)オーナーのDiCoprio(右)
オーナーのDiCoprio(右)(Photo: Keisuke Tanigawa)

田町にナポリを徹底再現したピッツァフリッタの店「NAPD」が登場

日本在住のイタリア人も「母国の味」と絶賛

寄稿:: Nana Yasuda
広告

タイムアウト東京 > Things to do > International Tokyo >田町にナポリを徹底再現したピッツァフリッタの店「NAPD」が登場

東京タワーを間近に臨む港区三田。JR田町駅から徒歩5分、連日、日本在住のイタリア人などが母国の味を求めて来店する店がある。2023年12月にオープンした、ナポリ名物ピッツァフリッタの店「ナップディ(NAPD)」だ。ピッツァフリッタとは、ピザ生地に具材を包んで揚げた「揚げピッツア」である。ナポリのローカルフードとして知られており、南イタリアでは気軽に食べられている。

ナポリのシンボルカラーでもあるブルーが目を引く店内には、多くのイタリア人や訪日外国人が集まっており、まるで本当にナポリにいるかのようなインターナショナルな雰囲気だ。

同店をオープンさせたオーナーシェフの熊倉光は、「DiCoprio」という名前で2020年からYouTubeチャンネル「ナポスタ NAPOLI STYLE」を運営している。

東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」の特別編。今回は、幼い頃からイタリアに魅了されていたDiCoprioがなぜ、東京でナポリを代表するソウルフード「ピッツァフリッタ」 で勝負しようと思ったのかを聞いた。

関連記事
ノスタルジックでカラフルなスイーツビュッフェが新宿で開催

きっかけは世界的なスーパースター、マラドーナ

子ども時代にサッカーをしていたDiCoprioは、ナポリに所属していたマラドーナの大ファンだったという。その影響からか、「いつかイタリア・ナポリへ行ってみたい」と強い憧れを抱く。

その夢は高校卒業してすぐに実現することになる。半年間という短い期間ではあったが、ナポリに留学。そこでイタリア語を習得し、さらにナポリという街に刺激を受け、とりこになっていった。帰国後は広告関係の仕事に就き、結婚。コロナ禍に思い切って家族と石垣島に移住したDiCoprio。そこで、海外サッカーを応援するYouTubeの配信を始めた。

「YouTubeで配信すると、すぐにナポリのメディアに取り上げられました。そのおかげでバズり、ナポリで人気サイトとなったんです。コロナ禍が落ち着いたタイミングでナポリへ行くと、街でファンの方に囲まれる存在に自分がなっていてびっくり。そこから大好きなナポリのことを日本に広めたいと思うようになり、ナポリのソウルフード、ピッツァフリッタのお店を石垣島で始めることにしました」

石垣島から東京・三田へ拠を移し、勝負を決めた

しかし、石垣島では思うような経営ができず、悩んだ末、2023年の12月に東京で勝負することを決断した。

「東京で開業しようと決めた時から、イタリアと強いつながりのある場所で開業しようと考えていました。そこで、イタリア大使館と在日イタリア商工会議所がある三田にしたのです」

その見立ては大当たり。DiCoprio目当てのファンが連日詰めかけ、徐々にイタリア出身者にも認知されてきたという。

広告

短期間で本場の味に近づけた理由

しかし、開業への道のりは容易ではなかった。そもそもピッツァフリッタは屋台で売られているような手軽な食べ物なので、ナポリにも専門店は少ない。DiCoprioはピッツァフリッタを扱う店に通い、レシピを教えてもらったり、宿泊先のホテルでピザ生地を作って本場のピザ職人に試食をしてもらったりして、「自分の味」を確立していく。

ナポリの食文化について尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。

「ナポリの人はほぼ毎日、地元であるナポリ料理を食べています。自分たちの街を愛し、誇りを持っているからでしょう。また、ナポリの職人はレシピを隠さないので、その店の作り方や素材、そして水分量や発酵時間まで徹底的に教えてくれます。そのおかげで、ナップディのピッツァフリッタは本場の『いいとこ取り』で完成しました」

まだまだ日本では知名度が低いピッツァフリッタだが、ナップディでは間違いなく本場の味が楽しめる。なぜなら、小麦、塩、イーストから作る生地も、DiCoprioのこだわりが詰まっているからだ。試行錯誤をしている部分はあるものの、できるだけイタリアやナポリの食材にこだわり、本物を目指しているという。

広告

ピッツァフリッタを初めて食した日本人の感想はどうだろうか。DiCoprioいわく、まずこんがり揚がったきつね色の円盤型のビジュアルを見て歓声を上げるという。そして、一口食べてその「軽さ」と、カリカリ、もっちりな「食感」に驚き、笑顔になるようだ。ボリュームたっぷりなので、誰もが食べきれるか心配するようだが、ほとんどの客がペロリと食べてしまうという。

「ドリンクは、イタリア人はビールかスプリッツというカクテル、お酒を飲まない人はコーラなどと一緒に食べていますね。喉越しのいい炭酸系はよく合いますが、日本人はワインと合わせる方が多い印象です。ワインは赤と白、そしてグラスワインからボトルまで用意しているので、好みの合わせ方でお楽しみください」

ピッツァフリッタ以外にも魅力的なメニュー

ピッツァフリッタ以外にも、ピザやパスタがあるほか、ナポリの伝統的なパスタコロッケ「フリッタティーナ」、ドルチェの「ナポリドーナツ」も評判だ。食後は、濃いめに淹れたナポリ流エスプレッソ「CAFFÉ NAPOLETANO」で締めれば大満足だろう。

広告

ナポリを完全再現した店内

店内は「少しマニアック過ぎる」とDiCoprioが言うほど、現地を徹底的に再現している。店に入ってすぐに掲げられた旗は、イタリアの国旗ではなく、シチリア王国とナポリ王国が統合された頃の両シチリア王国時代の旗。装飾品はナポリで購入し、店内の至る所に展示されている看板はナポリの職人による手描きだ。

メニュー表にもユーロと円が併記されているので、海外旅行をしているかのような気分になる。また、ローマ出身の明るい料理人・イヴァン(Ivan)が、気配りの行き届いた接客でもてなしてくれる。

「思い切って店の扉を開けてほしい」

連日、多くのイタリア出身者が足を運ぶ同店。イタリア人に対しては喜んでもらっている手応えを感じているが、「日本人にもっとピッツァフリッタの存在を知ってもらいたい」とDiCoprioは言う。

「先日、女性一人のお客さまが同時間に3組来店されたんです。それぞれ離れたところで黙々と食べていたのですが、どうしても気になったのでそれぞれに話しかけてみました。すると、3組のお客さまが自然と意気投合され、途中から同じテーブルを囲んで女子会に。帰り際には3人で次の予約も入れてくれるということがありました。ただ単にナポリ料理を食べる場所というだけではなく、来店してくれた全ての方が笑顔になってほしいと思っています」

DiCoprioは、料理だけではなく、客への配慮も決して忘れない。来店してくれた客には必ず話しかけ、料理の感想を聞いたり、雑談を楽しんだりしているという。ナポリ人のように気さくで陽気なDiCoprioとの会話も、同店の名物になる日はそう遠くはないだろう。

  • 田町

ナポリで有名な人気YouTuber、「DiCoprio」がオーナーシェフを務めるナポリ名物「ピッツァフリッタ」の店。ピッツァフリッタとは、ピザ生地に具材を包んで揚げた「揚げピッツア」だ。ナポリのローカルフードとして知られており、南イタリアでは、気軽に食べられている。

ナポリのシンボルカラーでもあるブルーが目を引く店内には、多くのイタリア人、訪日外国人が集まっており、まるで本当にナポリに来たかのようなインターナショナルな雰囲気である。

ピッツァフリッタは、「マリナーラ」(S968円、L1,518円、以下全て税込み)、「ディアボラ」(S1,298円、L1,848円)、「ナポレターナ」(S1,408円、L1,958円)の3種を用意。ピザやパスタがあるほか、ナポリの伝統的なパスタコロッケ「フリッタティーナ」や、ドルチェの「ナポリドーナツ」も評判だ。食後は、濃い目に淹れたナポリ流エスプレッソ、「CAFFÉ NAPOLETANO」で食後を締めれば大満足だろう。

素材、そして水分量や発酵時間まで現地の職人に教わり、小麦、塩、イーストからできる生地などできるだけイタリア、ナポリの食材にこだわり、本場の「いいとこ取り」をしたというピッツァフリッタをぜひ一度、味わってみてほしい。

もっと東京で活躍する外国人のストーリーを知りたいなら……

昨今、ナチュラルワインはすっかりブームとなり、気軽に手に取りやすいものだと言える。しかし、無農薬・無化学肥料の有機栽培されたブドウを使い、酸化防止剤をできる限り減らした(または無添加の)ワインは、10年前では一部のマニア受けする知る人ぞ知るワインだった。

そんな2014年からフランスのナチュラルワインにこだわり、青山の隠れ家のような一角でワインバーを始めた2人がいる。「アペロ ワインバー 青山(apéro. wine bar AOYAMA)」を営む、フランス人夫婦のギヨーム・デュペリエと、クロエ・ブネだ。

自ら母国を飛び回り、生産者の顔が見えるワインと日本のオーガニック食材を使った料理を提供する彼らの店は、たちまち人気店となった。

  • カフェ・喫茶店

2022年12月、台湾で買いつけた置物や飾りを配し、香の匂いや台湾の音楽などで幻想的な空間に仕上げた自家焙煎(ばいせん)コーヒーショップ「アジュラ(ajura 、翹璹欏)」が新宿御苑近くにオープンした。店を手がけているのは、高田馬場で人気のコーヒーショップを営む台湾出身のリウェイ(李維軒、29歳)と、妻で日本人のハルコ(29歳)の2人だ。

リウェイは、ラテアート技術を競うバリスタの選手権大会で多数の受賞歴を持ち、2022年には世界大会「フリーポアー・ラテアート・グランプリ2022」で優勝を果たした。妻のハルコも、2022年に台湾で開かれたラテアートの大会で準優勝に輝いている。

広告

吉祥寺駅北口から徒歩5分。2022年4月28日にオープンしたウクライナの家庭料理店、「バブーシャレイ(Babusya REY)」がある。利用客の投稿したSNSが話題となり、1日100人以上の客が狭い階段に列を作る。

8席ほどの小さなバーを間借りして土・日曜・祝日の昼間のみ営業。「ボルシチ」やマッシュルームとジャガイモを包んだウクライナ風餃子「ヴァレーキニ」、キーウ発祥のウクライナ風チキンカツレツなどを提供している。

プロボクサーとして活躍する小笠原裕典(以下、小笠原)とウクライナ出身の妻、ビクトリヤ、その姉のエウゲニア、夫のアントンの4人で切り盛りする。エウゲニア夫妻はウクライナから3月末、ビクトリヤを頼って息子と両親と避難してきたばかり。狭いカウンターの中では日本語、英語、ロシア語が飛び交う。

東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」。第6回は、「バブーシャレイ」の小笠原夫妻に、同店の魅力とオープンに込められた思いを語ってもらった。

  • Things to do

東京で活躍する外国人にインタビューをし、実際に東京で暮らす中で、何を思い、人や街とどんな風に関係しているのかを聞いていくシリーズ『インターナショナル トーキョー』。第3回は、有限会社セルチェの取締役、トルコ出身のメテ・レシャット・キュプチュに話を聞いた。

メテは、仕事で日本に来た際に出会った妻と結婚するために来日して18年。トルコのおいしい食品を輸入して日本人に食べてほしいという思いから、トルコ産オリーブオイルの輸入販売をスタートした。2019年には品川区荏原町商店街縁日通りに、トルコ食品店のターキッシュ フード アンド ワインマーケット ドアル (Turkish Food&Wine Market Dogal)、2021年には数軒隣にカフェ&バーを開店。テレビなどにも多く出演している、街の名物オーナーだ。

東京で店を開くことについての苦労話を聞くと、「日本人はみんな優しいから大変なことはない」と笑い飛ばす。実際に話を聞くと、筆者なら苦労と捉えるエピソードもあったが、持ち前の明るさと、店前を人が通るたびに気軽に声をかけるような人懐こさで、人々をたちまち味方にしてしまうのだ。

近い将来、荏原町をトルコの店でいっぱいにする「荏原町トルコ村計画」を構想中だ。一体どんな計画なのか尋ねると、目を輝かせて語ってくれた。

おすすめ
    関連情報
    関連情報
    広告