海南鶏飯は、鶏スープで炊き上げた米と茹で蒸し鶏に、好みでダークソイ、ジンジャー、チリの3種のソースを合わせて食べる、シンガポールの名物料理だ。「ハイナンジーファン(Hainan Jee Fan)」あるいは「ハイナンチーファン(Hainan Chi Fan)」と読み、「海南チキンライス」や「シンガポールチキンライス」などとも表記される。シンプルながら奥深いその味は、鶏の旨味を最大限に味わうために、余剰な要素をすべて削ぎ落としたかのよう。中国の海南島出身の華僑が東南アジアへと移民した際に広めたとされ、タイでは「カオマンガイ」の名で定着したが、中華、マレー、インド、アラブの食文化がダイナミックに混ざり合うシンガポールにおいては、ある者は素朴な旨味を、ある店は洗練を追求し、今や庶民の屋台から国賓のもてなしの場まであまねく登場する国民的料理となっている。
日本では、2000年に国内初の専門店が誕生して15年が経ち、本場の味を提供する店が増えてきた。「チキンライスといえば、ケチャップとグリンピース」がスタンダードだった時代は、もはや過去のもの。喉越し爽やかな『タイガービール』や、フレッシュなライムジュースとともに、東南アジア随一の国際都市で愛されるソウルフードを味わってみてはいかがだろう。