QUEER VOICE
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「人生の全ての瞬間がクィアです」私たちの本音―QUEER VOICE後編

SEX:私の場合 #9 クィアのストーリーを声にして

Hisato Hayashi
寄稿:: Honoka Yamasaki
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タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > #9 QUEER VOICE後編

プライドウィークが始まり、東京では多くのLGBTQ+イベントが開催される。クィアたちは何を思って、普段過ごしているのだろうか。プライドウィークが終わっても、クィアの存在は共にあり続ける。

前編では、17歳から57歳までと幅広い41人のアンケート回答を掲載。後編では、クィアシーンで活躍する6人に以下10の質問を任意で回答してもらい、抜粋して紹介する。

・自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?
・自分のジェンダー/セクシュアリティーに関して、違和感を抱いたことは?
・カミングアウトはした/していない?
・クィアならではの経験をしたことは?
・クィアが安心して過ごせる場所は?
・今年の東京レインボープライドには参加する?
・東京レインボープライドについてどう思う?
・「ハッピープライド」という言葉に関して、どのように感じている?
・東京レインボープライドが始まった約10年前と比べて、今のLGBTQ+シーンはどう変化した?
・好きなクィアコンテンツを教えて

クィアのリアルな声を紹介する「QUEER VOICE」。一人一人が持つ、それぞれのストーリーを届けたい。

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「クィアならではの経験は?」「レインボープライド行く?」QUEER VOICE前編
SEX:私の場合

「東京レインボープライドのことを知り、なぜか顔が熱くなった」

HIBARI(モデル)

ー自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?

おそらく、性自認は女性、恋愛対象は女性になりやすいです。

ークィアならではの経験をしたことは?

当時の彼女といっしょにおばあちゃんの家に帰っても、恋人同士だと思われなかったこと。 生理の時、自分以上に生理を理解していて、教えてくれて助かったことです。

ー東京レインボープライドについてどう思う?

いろんな意見を耳にしますが、やはり東京レインボープライドがあることはありがたいです。まだ地元に住んでいた頃、自分のセクシュアリティーに気づけなかった時にテレビのニュースで東京レインボープライドについて知り、なぜか顔が熱くなり、涙が出そうになったのを覚えています。

おそらく、その時の気持ちは「涙が出そうになっているということは、おいらはLGBTQ+のどれかかもしれない。そして、今まで出会ったことのないさまざまなセクシュアリティーやジェンダーの人たちがこんなにもいたんだ。しかもお祭りみたいに楽しく過ごしている」という驚きとうれしさ、そして安心感のようなものを感じたからだと思います。

そして東京に来てから出会った友達と東京レインボープライドに行った時、本当にうれしかったです。今まで当たり前ではなかった光景が当たり前のようにあり、楽しくて感動しました。

東京レインボープライドというイベントに集まったたくさんの人たちが、楽しくお祭りをしているという事実を知るだけで、救われたり安心したりする人がいると思います。

「ゲイという共通点で多くの人とつながりができた」

Cerestia Grown(27歳/ドラァグクイーン)

ー自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?

ゲイ。

ーカミングアウトはした/していない?

母親と学生の頃の友人にカミングアウトしました。恋愛や結婚の話で、嘘をつき続けることが嫌になったのがきっかけでした。

ークィアならではの経験をしたことは?

ゲイという共通点で、年齢、職業、居住地に関係なく友人ができました。もし、自分がシスヘテロだったらこれほど多くの人とのつながりはできなかったはず。

ークィアが安心して過ごせる場所は?

クィアが集まる街、または自分がクィアであることを知っている人(カミングアウト済みの人)と一緒に過ごしている時。

ー東京レインボープライドについてどう思う?

同じ境遇にいる人や、その在り方を受け入れてくれる人が集まってオープンな気持ちになれるので、毎年楽しみにしています。

ー「ハッピープライド」という言葉に関して、どのように感じている?

レインボープライドでのあいさつのような言葉。

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「日本ではトランスジェンダーへの理解がまだ浅い」

Elin McCready(49歳/教授:言語学、哲学)

ー自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?

「現在どのように考えている」というのは難しく、話は長くなってしまいますが、簡単に言うと「女性」です。セクシュアリティーに関しては、相手のいわゆる「性別」よりお互いの「感覚」と「感情」の相性が大事なので、「パンセクシュアル」という名称でいいかなと思っています。

ーカミングアウトはした/していない?

しました。長いこと男性として生活していたのですが、合わない体で生きる辛さが消えなかったので、カミングアウトして女性として生活することにしました。

ー東京レインボープライドについてどう思う?

「プライド」と言うのは毎日のことだと思います。私は日々、自分の存在にプライドを持って動いています。東京レインボープライドは、「クィア」を広告として利用する大企業の資金で、一時的に自分たちの存在を強調しているようにしか見えません。そういう行為にはあまり「プライド」を感じません。

私はそういう資本主義代表のようなイベントに参加する気はあまりないので、行きません。

ー東京レインボープライドが始まった約10年前と比べて、今のLGBTQ+シーンはどう変化した?

かなり変わった。5年前ですら、東京にクィアの居場所はあまりありませんでしたが、「WAIFU」や「SLICK」などのクィアパーティーが始まって、コミュニティーに繋がりができて生きやすくなった。まだまだですが、いい意味で変わっていってほしいと思います。

ー好きなクィアコンテンツを教えて。

最近、日本語に翻訳されたShon Faye(ショーン・フェイ)の「トランスジェンダー問題」。この本には、現在のトランスジェンダーの権利と生活の状態について語られています。特にトランスジェンダーへの理解がまだ浅い日本では、広く読まれるべきだと思います。

「Ballroomのおかげで自分の居場所を見つけられた」

HIHA(25歳/ダンサー、「tokyo kiki lounge」のオーガナイザー)

ー自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?

シスジェンダーのゲイです。ゲイで良かったなって思っています。楽しいから。

ーカミングアウトはした/していない?

基本的にオープンですが、家族にはまだカミングアウトしていません。SNSを見られているのでバレてると思いますが(笑)。理由は実家が田舎で同性愛について無理解なのと、姉が2人いて男は自分1人だけなので、もしカミングアウトしたことで「あんたなんかいらん!」と勘当されるのが怖くて。

でも、いつかは話すつもり。あまりかしこまらずサラっと言えるように、うまく流れをもっていけたらなと。

ークィアならではの経験をしたことは?

「Ballroom」(クィアコミュニティーから始まったダンスシーン)というクィアカルチャーを通して、多様な価値観やバックグラウンドを尊重できるようになったこと。18歳で上京してヴォーギング(Ballroomで発展したクラブやストリートダンスのスタイル)と出合い、そのカルチャーの素晴らしさにのめり込み、21歳で本場ニューヨークに留学しました。

Ballroomというコミュニティーのおかげで、帰国する頃には自分の居場所を見つけ、Mother(「ハウス」と呼ばれるグループのリーダー)やたくさんのSister(仲間たち)もできました。そこでの経験は自分の価値観を大きく広げてくれて、今の僕を構成する大切な要素となっています。

ー東京レインボープライドについてどう思う?

純粋に楽しいです。友達とブースを回ったり普段会えない友達にも会えたりするので。ただ、ピンクウォッシュ*の問題もあるので、賛否両論あるなと思っています。

*企業や団体が、LGBTQ+コミュニティーへの支援を示す姿勢を持つかのように見せかけ、商業的に消費することを「ピンクウォッシング」という。

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「“多分”シスジェンダーかつレズビアンだと思っている私が私」

樋田早紀(31歳/弁護士)

ー自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?

おそらく、シスジェンダーのレズビアンだと思います。「おそらく」と述べたのは、「自分が女性である」という強いアイデンティティーを抱いたことはないからです。20代半ばくらいの頃は、自分がXジェンダーなのか、シスジェンダーなのか、はっきりさせたいと思っていました。「自分が何者であるか」を明らかにしたいと考えていたのです。

しかし今では、自分自身のセクシュアリティを明確に特定する必要はないと考えています。「多分シスジェンダーかつレズビアンだと思っている私」が私なのだと思うに至りました。

ーカミングアウトはした/していない?

大学生の頃から、少しずつ友人を中心にカミングアウトするようになりました。理由は、自分のセクシュアリティーを隠して生き続けることの苦しさに限界を感じたからです。当時は、自分のことを「バイセクシュアル」だと言っていました。何となく、レズビアンではなくバイセクシュアルだと言った方が、受け入れてもらいやすいのではないかと感じていたからです。

そういう意味では、当時もまだ本当の自分を隠していて、マジョリティーの中になんとか溶け込もうと必死になっていたのだと思います。 現在、基本的にはセクシュアリティーをオープンにしています。

オープンに生きることは時々、自分でも怖くなることがあります。しかし、私自身が思春期に自分のセクシュアリティーにすごく悩んだので、同じ思いを抱いている人たちに「未来に希望はあるよ。大丈夫」というメッセージを伝えたい一心で、今はオープンで居続けることを決めています。

また、10年近く会えていない大学時代の友人から、SNSを通じて「大学時代に自分のセクシュアリティーを明るく打ち明けてくれた樋田の存在が、今の自分の考え方に影響を与えているよ」とメッセージがきました。その時、とてもうれしく思うと同時に、自分の存在をもって世の中に働きかけていくことが私の使命であるようにも感じました。

ー東京レインボープライドについてどう思う?

大学生の時、初めてパレードで歩いたのですが、沿道の人から手を振ってもらえた時、涙がこぼれそうになりました。この時、初めて「ありのままの自分で生きること」に希望を感じたのです。

私個人としては、東京レインボープライド(TRP)は、セクシュアルマイノリティーの人に勇気と希望を与えるすてきなイベントだと感じています。このような活動の積み重ねによってLGBTQ+の存在が可視化されてきたという側面もあり、社会活動としての重要性もあります。

一方で、TRPを「数日間のお祭り」で終わらせないことが大切だと考えています。TRP自体が目的なのではなく、これを通じて社会を変えていくことが目的だと思います。

ブース出展者、参加者、たまたまパレードに出くわした人たち、それぞれの人がそれぞれの立場で、今後のあるべき社会の姿、そして自分の姿について想像を膨らませるきっかけになればいいなと考えています。

「社会はなぜ『誰とキスやセックスするか』を気にしているのか」

Andromeda(28歳/「IWAKAN」編集部/ドラァグパフォーマー/フォトグラファー/アーティスト)

ー自分のジェンダー/セクシュアリティーついて、現在どのように考えている?

今はラベルと言葉にこだわらないようにしています。必要な方もいると思うので自由に使っていいと思うけど、少なくとも私は自分を決まった構造の中に当てはめる必要はないと思います。ジェンダーは言葉を超える存在だからです。

ー自分のジェンダー/セクシュアリティーに関して、違和感を抱いたことは?

産まれてからずっと。社会が作った論理的ではないルールに違和感を持ち、親と喧嘩したり、学校で虐められたり、そういう経験が多かったです。

昔から「女性らしい」と言われるものが好きで、高校生になってからは私が男の子が好きだと気付きました。私は悪いことをしていないのに、なぜ社会は「誰とキスやセックスするのか」について気にしているのか分かりませんでした。今でも分からない。

ークィアならではの経験をしたことは?

私の人生の全ての瞬間はクィアです。

ー東京レインボープライドについてどう思う?

資本主義的なものになっている。だけど、資本主義の中で生きている私たちは、資本主義のゲームをやらなければ前に進まないと思います。東京レインボープライドだけだと足りないです。

Contributor

Honoka Yamasaki

レズビアン当事者の視点からライターとしてジェンダーやLGBTQ+に関する発信をする傍ら、新宿二丁目を中心に行われるクィアイベントでダンサーとして活動。

自身の連載には、タイムアウト東京「SEX:私の場合」、manmam「二丁目の性態図鑑」、IRIS「トランスジェンダーとして生きてきた軌跡」があり、新宿二丁目やクィアコミュニティーにいる人たちを取材している。

また、レズビアンをはじめとしたセクマイ女性に向けた共感型SNS「PIAMY」の広報に携わり、レズビアンコミュニティーに向けた活動を行っている。

https://www.instagram.com/honoka_yamasaki/

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We are here. We are Queer!(私たちはここにいる、私たちはクィアだ)

クィアが存在するのはプライドウィークの2週間だけではない。少数派とされているLGBTQ+は、職場の同僚や友達、家族の中にも多くいる。

本記事では、「いない」のではなく「いないこととされている」クィアたちの本音を「QUEER VOICE」 として発表。全国の当事者を対象にアンケートを実施し、17歳から57歳までと幅広い年齢層の41人からの回答を受けた。

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本記事は、LGBTQ+やクィアが日々問われる質問をシスヘテロにインタビューし、性の当事者としてともに考えていくための新企画だ。 今回、企画に参加してくれるシスヘテロ当事者は、男性29%、女性71%と女性の割合が多い結果となった。年齢・職業・性別に偏りがないよう考慮したうえで、6人の当事者に取材を実施している。

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現在、「婦婦(ふうふ)」として3人の息子を持つ、エリンとみどり。二人が結婚した後、エリンは自身の性に対する違和感から、出身国であるアメリカ合衆国でトランジション(性別移行)を行った。 しかし、日本では同性間の婚姻が認められない。そのため、二人は婚姻関係を解消するか、本来の性ではない「男性」のままでいるかの二者択一をせざるを得ない現実に直面した。

2021年、同性婚が認められない現状に対して、二人は国を相手取り裁判を起こしている。そんな二人に、日本のジェンダー観と政治について話してもらった。

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