ドラァグファミリー「Strondh」の出会い
ーまず、3人の出会いについて聞かせて。
Victoria:自分とマルちゃん(ファザー、Marcel)との出会いは2014年。友人と二丁目のクラブにいたら、偶然マルちゃんを見つけて「かわいい!」と思ったの。
Marcel:あの日、遠くからVictoria(マザー)が見えて、僕も一目ぼれしたんだよね。Victoriaがトイレに行こうとした時に話しかけて、連絡先を交換した。そこから毎日のように一緒に過ごして、気付いたら8年が経過していた。
ドラァグマザーのVictoriaとファザーのMarcel。一度も喧嘩をしたことがないほど、仲がいい2人(Photo: Keisuke Tanigawa)
ーVeraと出会ったのはその後?
Victoria:2人の出会いの4年後、2018年だね。自分は「イーグル トウキョウ」という二丁目のゲイバーで働いていて、すごく酔っ払った状態でお店に来たVeraのことを覚えてる。
Vera:当時は家族のことで悩んでいて、二丁目でお酒を飲むことしかすることがなかったの。けど、マザー(Victoria)はお店に行くといつも話を聞いてくれたし、ほかのスタッフも優しくしてくれた。別の二丁目のクラブで「お掃除女装」(女装をして掃除などの業務をするスタッフ。Veraによる造語)として働いてたんだけど、イーグル トウキョウのマネージャーに誘われてマザーと同じお店で働くことになったの。
VeraはファザーのMarcelを「Daddy Marcel」、マザーのVictoriaを「Mother」と呼んでいる(Photo: Keisuke Tanigawa)
Victoria:その少し後、Veraからの連絡が途絶えた時期が1カ月間あった。その時は自殺したのかと本当に心配だった。
Vera:あの頃、毎日のようにお酒を飲んでその様子をFacebookに投稿していたんだよね。それを見たフィリピンの伯母さんが心配して「帰ってきなさい」と言ったの。それで自分はそのまま飛行機に乗って、故郷に帰ることになった。
フィリピンに帰国したらお酒やたばこは禁止されて、みんなが敵のように思えてきて……。スマホを触ることもなく自分の部屋にずっとこもってた。1カ月後、1月のある土曜日の昼に日本に入国して、夕方にはみんなのいる二丁目に戻ったの。
Victoria:当時、Veraには自信がなかったけど、踊れるしステージの経験もあるし、彼女にはいろんな才能が隠れていると思ってた。だから日本に戻ったVeraに「お掃除女装」ではなく「ドラァグクイーン」として活動することを提案してみたんだよね。
Vera:それから、「Strondhファミリーの娘」としてドラァグクイーンを始めた。