スウェーデンの男子向け性教育本が伝えるセックスで一番大切なこ
Photo: みっつん
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スウェーデンの男子向け性教育本が伝えるセックスで一番大切なこと

子育て中のゲイパパが翻訳、「正直に、恥ずかしがらずに」伝えて

Hisato Hayashi
テキスト:: Mitsui Yoshida
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タイムアウト東京 > LGBTQ+ > スウェーデンの男子向け性教育本が伝えるセックスで一番大切なこと

北欧スウェーデンから世界16カ国語に翻訳され、10年以上多くの人々に親しまれている性教育の本『RESPECT 男の子が知っておきたいセックスのすべて』。本書の日本語版が2021年12月10日に発売された。翻訳者は、スウェーデン人の夫と同性結婚し、ブログ『ふたりぱぱ』で代理母出産から男児を授かった経緯や海外のLGBTQ+の情報を翻訳、発信するみっつんだ。

現在、夫の故郷のスウェーデンで子育て中の彼に、翻訳に込めた思いや欧州と日本の性教育の違いについて話を聞いた。

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28歳で触れた性教育が人生の転機に

ー性教育の本というと、素人目ながら専門書的な内容に思えます。翻訳が決まった時の心境を教えてください。

「ぜひやらせてほしい」と快諾しました。若い人たちに向けて、性に関することを丁寧に正直に伝える機会が大切だと感じていましたから。

そう考えるようになったきっかけは、日本で役者をしていた2008年、ドイツの性教育をテーマにした舞台です。僕自身、その芝居のおかげで性教育の大切さを学べましたし、役者として仕事仲間にゲイだと初めてカミングアウトしました。

演出家は日本で活動するドイツ人で、稽古中は何度も「正直に、恥ずかしがらないで」と指導されました。当時はまだ夫と知り合う前で、英語も話せず、性教育も日本で受けたものしか知らず、役者同士で性について話し合いながら芝居を作り込んでいきました。

その脚本は1970年代のドイツで作られたものですが、同性愛についても描かれていました。台本には「同性を好きになる人もいる」と分かるシーンもあり、当時28歳で自分のセクシュアリティーをずっと隠して生きていた僕は、そんな舞台に立つのに秘密を隠しているのが「なんか嫌だな」と思って。役者仲間や演出家に自分がゲイであることを伝えました。

ー舞台で性教育に触れたことで、みっつんさん自身は人生の幅を広げられたんですね。

これまでのセックスに関する考え方も変わりました。そして、日本の性教育が不十分であることに気付かされた舞台でもありました。当時もまだ性教育がタブー視されていた頃です。僕はその時、海外の教育と比較しながら、本来であればしっかりと教えなければならないということを感じました。

そういった経験があったので、本書の翻訳作業では、あの時の舞台で学んだ「正直に、恥ずかしがらずに」を大切にしました。日本語の表現に合わせて、オブラートに包むような言葉使いは絶対したくなかったんです。

ー確かに、女性器を「ヴァギナ」などの学術用語ではなく、俗語の「マンコ」という表記だったのは印象的でした。

マンコ」の話は編集者とも話し合って、使うことにしました。ほかの性教育本なんかも参考にしましたが、いろんな表現のうちの一つといった感じの扱いの本が多い印象でした。この言葉をしっかりと使っているのは本書の特色だと思います。

元々は女性器を表す体の名前でしかないのに、人を卑下するために使われていたり、隠語として扱われていますよね。それはスウェーデンでも一緒なんです(スウェーデン語版では「Fitta」(フィッタ)、英語版では「Pussy」と訳されている)。

著者は「これは体のパーツの一部でしかないから、この言葉を使うよ」と宣言して本書内で使っています。あえて堂々と使っていくことで、持っている言葉の性格を変える意図もあったんじゃないかなと思います。

だから、そのまま訳さないといけないと思ったんです。「日本ではこういうふうな言い方だ」と、ぼかすような翻訳では、本当の意味で著者の意図を伝えられなかったでしょう。

性教育は「寝た子を起こすな」ではない

ー性教育というと、妊娠など生殖のイメージが強かったのですが、本書では「LGBTQ+の恋愛」や「楽しむためのセックス」への言及があったのも印象的でした。

世の中には、同性愛や多様なセクシュアリティーがあります。著者は性教育においてそのことに触れないわけにはいかないと書いていて、本当にその通りだと思います。

一方で、セクシュアリティーとは別の体の反応について、例えば肛門性交に関して、「(その行為によって)気持ち良くなるからといってゲイだというわけではない」「体の仕組みで起こり得ることだから知っておいてよいのではないか」と主張されていて、とても納得できる話でした。

セックスの話題って、「寝た子を起こすな」みたいに言われることがありますよね。学校では生殖の仕組みくらいしか学んでいないのに、なぜか「性教育=セックス」といった刷り込みがあって、子どもに対して性教育全般を触れさせないようにしている風潮があります。

特に男の子はポルノやアダルトビデオから「自力で情報を知っていくだろう」といった漠然とした思い込みがあります。その結果、間違った情報を得た男性や、性暴力に繋がったケースもあるでしょう。性の知識を得ることは、そういったケースを防ぐことに繋がります。

ただセックスのやり方を学ぶだけではなくて、自分たちが気持ちいい時間、楽しい時間を過ごすためには「リスペクトを基本とした性的同意」が大事だということが、この本の一番のテーマなんです。

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自分も相手も気持ち良くなるために大切な性的同意

ー本のタイトルも『リスペクト(RESPECT)』ですね。

本書は、前半で体や愛について、後半で性的指向やセックスについて記しています。そして、その真ん中に当たる第4章は「リスペクト」という章題で、相手がどんなジェンダーやセクシュアリティーであろうが、敬意を持って同意を取ることの重要さについて言及しています。気持ち良いセックスをするには、まず性的同意が不可欠である、と。

ー自分や相手の体を学んだ上で、相手へのリスペクトを学ぶ本なんですね。

まず自分を大切にする方法を知らないと、相手を大切にできないですからね。やはり『リスペクト』がこの本の核となる部分なので、邦題ではこの言葉をそのまま使いたいと思いました。

また、本のサブタイトルには「男の子」と入っていますが、女性や女性の体を持った人、女性の立場にいる人、ジェンダーにかかわらず、多くの方に読んでほしいです。

ーみっつんさんたちは現在、男の子の子育て中ですが、性教育を意識することはありますか?

今、息子は5歳で、翻訳した本の内容に彼が触れるのはまだ先のことだと思いますが、僕らの関係をはじめ、受精卵を着床し妊娠する代理母出産によって息子を授かったことは、すでに少しずつ伝えています。幼稚園ではすでに、4歳の時点で妊娠・出産について学んだようです。

幼稚園から始まる北欧の性教育

ースウェーデンでは、幼稚園から性教育やセクシュアリティーについて学ぶ機会があるんですね。

「男の子と女の子がいて、そこに当てはまらない人がいる」「男の人と女の人が一緒になって、パパとママになることも、パパ同士のことも、ママ同士のこともある」という感じで教わるようです。教育は早ければ早いほどいいというわけではなく、子どもの個人差もありますからね。

息子の代理母は、妊娠中の体の変化や様子を記録したアルバムを作ってくれていたんです。そこで自分が受精卵だった頃の写真も見ているので、生殖についてはイメージしやすかったのかもしれません。

代理母のことをママだとは思っていなかったのですが、「うちはパパが2人だ」ということをちょっと疑問に思ったのか、息子が僕らに「自分はどこから産まれてきたのか」と聞いたことがありました。

その質問について僕たちは、「うちはパパが2人だけど、2人とも子どもが産めない体だから、代理母さんに手伝ってもらって君は産まれてきたんだよ」と伝えたんです。4歳2、3カ月頃のことでしたが「あ、そうなんだ」とあっさり納得していました。それ以降自分を産んでくれたのは代理母だという認識はあるようですね。

ー教える大人が、まず「正直に、恥ずかしがらず」にいることが大切なのが分かりました。

正直に伝えた方が、子どもは理解しやすいと思います。大人が恥ずかしがったり隠してしまったら、子どもはもっとこんがらがるのではないでしょうか。本当のことを言っていないとすぐに察しますから。

僕たちカップルはいわゆる多数派とは違うかもしれないけど、「僕らの家族の形」を息子が納得するまで、何度でも丁寧に伝えることが教育だと考えています。このことを多くの人に伝えて行きたいですね。

もっと学びたいなら……

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2021年現在、フランスやアメリカ、イギリス、ドイツ、台湾をはじめ、世界の数々の国で同性婚が法制化されているなか、日本では3月17日に札幌地方裁判所が「同性婚を認めないのは違憲」という歴史的な判断を下し、大きな注目を集めた。

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言わずと知れたゲイタウン新宿二丁目。その深奥にある、とりわけディープな一角「新千鳥街」の中でブックカフェ「オカマルト」は営業している。店主の小倉東(おぐら・とう)は、ドラァグクイーン「マーガレット」の名でも知られる、日本のアンダーグラウンドなゲイシーンにおける最重要人物の一人だ。

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エルモたちが教育現場で伝える多様性
エルモたちが教育現場で伝える多様性

子どもの頃、誰もが親しんだであろう、テレビ番組『セサミストリート(Sesame Street)』。アメリカで1969年から教育番組として放映され、日本では1971年から2007年まで放送されていた。

ビッグバードやエルモ、クッキーモンスター、アビーなど、個性豊かなマペットたちは、キャラクターとして今も人気が高く、放送を見ていない世代にも愛されている。

かわいらしい作風の反面、その誕生の背景には、アメリカの人種差別や男女格差、貧困といった問題に対して向き合っていける力が子どもたちに養われるように、という意図があった。今も「世界中の全ての子どもたちが、かしこく、たくましく、やさしく育つことを支援する」という目的に基づいたプログラムを提供し、世界150カ国以上で、その国やコミュニティーの文化に合ったコンテンツを制作している。

日本では、セサミストリートジャパンが小学生向けの教育プログラム『セサミストリートカリキュラム』を開発し公立小学校や自治体に提供を行うなど、その理念に沿って独自に展開。本記事では、教育現場において直接子どもたちと向き合ってきた近年の活動や、多様な社会的背景を反映させている登場キャラクターたちについて、NPO法人セサミワークショップ 日本代表の長岡学(ながおか・まなぶ)に話を聞いた。

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「コンドームソムリエ」という斬新な肩書きを目にしたことがあるだろうか。Twitterのフォロワー数2万人近く、コンドームを通して性教育に関する情報発信を行う彼女は、中学校で働く現役の保健室の先生でもある。

活動を始めて1年になる現在、おすすめのコンドーム情報からコンドームソムリエを名乗る理由、コンドームを「着けない」派へ伝えたいことなど、その思いを聞いてみた。

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  • Things to do

6月がプライド月間(Pride Month)と称されるようになった発端を、聞いたことはあるだろうか。1969628日、ニューヨークのゲイバー『ストーンウォール・イン』(Stonewall Inn)で度々起きていた警察の踏み込みに対し、同性愛者やトランスジェンダーの人々が立ち向かい、5日間に及ぶ暴動に発展した。

今回は苦境の中で立ち上がった先人たちに敬意を表し、そしてプライド月間を祝し、クィアを入り口に「学び」を得られる場所をクィアスポットとして、いくつか紹介する。黒人差別をはじめ、あらゆる差別と暴力の歴史について、ともに学ぶ機会となることを願って。

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