原点は、地域密着型の活動
ーセサミストリートジャパンは、ここ数年、日本の教育現場に関わる活動をされていますが、その意図を教えていただけますか。
昔は、子どもたちが等しく質の高い教育プログラムを受けられる場として、テレビという媒体を使っていました。しかし現代の日本では、ほとんどの子どもたちは保育園や幼稚園に入り、テレビとの向き合い方も変わっています。
セサミストリートでは、学校では教えてくれないこと、例えば「夢を描き、実現する」ことや「多様性」などを学ぶ機会を提供しています。その教育プログラムを伝えるために、セサミストリートの原点である地域密着型の姿に戻り、教育現場に直接入ることにしました。
ー教育現場に入るという活動は、日本独自のものなのでしょうか。
アメリカ以外の国のほとんどは、地域密着型で活動しています。ただ、コミュニティーセンターやイベントなどでの活動が多く、学校の教育プログラムにしっかりと組み込まれるような活動をしているのは日本が初めてです。
日本では2016年からメットライフ財団の協力を受けて『セサミストリートカリキュラム』を作成しました。これは、小学校の道徳などの授業で使える6年分、72時間のカリキュラムで、「キャリアとお金」「価値や多様性の理解」「インクルージョンの実現」など、現代の社会的課題と向き合う内容になっています。これほど幅広い内容で教えているのは日本だけです。
ー『セサミストリートカリキュラム』は2018年から、埼玉県戸田市の公立小学校で導入されています。今夏には、カリキュラムの指導者を養成する『セサミストリートティーチャートレーニング』という講座も実施され、全国展開への地盤を着々と築いていますね。
我々は非営利団体で人数も少なく、リソースに限りがあります。今後、地域密着型でプログラムを展開していくためには、地元で指導してくれる人が必要です。
2020年から教育関係者とのパネルディスカッションを含むサミットを全国各地で開催する『Education Summit Tour』をスタートします。地方のサミットでは、地元の有識者や著名人による基調講演、子どもたちを招いたワークショップ、そして、ティーチャートレーニングをセットで行う予定です。