残した部分にこそ意義がある
―今回、リニューアルオープンすることになった経緯を教えてください。
高原:弊社は2000年以降、新文芸坐の経営を担ってきたのですが、これまで大きな改修は実施していません。そして、ついに改修するにも数カ月の期間が必要な空調の不具合が発生してしまいました。これまで大きな投資もなかったことから、日本の映画産業を見守ってきた新文芸坐の20~30年先を見据えて空調以外の設備も改修することに決まり、今回しばらく休館することになりました。
―設備が一新されましたが、特に注目してほしいポイントは?
花俟:今回、独自の音響システムを導入したのですが、とにかく音響面がとんでもないことになっています。スピーカーの調整を行っていた際、低音が強力で、スクリーンが揺れてしまってちゃんと上映ができない、という事態が起きました。サウンド面においては、これまでにない体感になったのではないでしょうか。
また、あえて残した部分にこそ意義があると考えています。国内名画座では初めて4Kレーザープロジェクターを導入したのですが、一方で映画誕生以来の規格である35mmフィルムでの映写も健在です。最新鋭の設備による映像だけではなく、従来通りのレトロな映像という両極端な映像を楽しめる映画館になりました。
高原:ロビーのレイアウトにも注目してほしいですね。以前は入ってすぐに受付があり、少し入りにくい感じがあったのですが、遊びに来やすいようにロビーの配置を変更しています。ロビー内には(イラストレーターの)和田誠さんの絵が展示されており、小規模ではありますがミュージアムのような雰囲気になりました。
ほかにも、映画関連のアイテムやさまざまなクリエーターのサインを飾っており、映画観賞が目的ではなくても楽しんでもらえる空間になったと思います。