黒澤作品はビートルズのようなもの
―『4Kで甦る 黒澤明』の狙いは?
花俟:「こけら落しは黒澤作品しかない」と考えていました。というのも、弊社は2000年から新文芸坐の経営を担っているのですが、そのオープン記念として上映した作品が35mmフィルムでの『七人の侍』でした。今回は新文芸坐の歴史と進化を見せるために、『七人の侍』を4Kで上映することを決めました。
そういった歴史もありますが、私は「黒澤作品は映画の教科書みたいな作品」と考えているので、どうしてもリニューアルオープンでは黒澤作品にしたかったのです。
―なぜ黒澤作品にこだわったのですか?
花俟:人間の内面や言葉を重視した作品では、どうしてもその国の文化や宗教、習慣に影響してしまい、評価が分かれやすくなります。しかし、黒澤作品はとにかくルックがとても秀逸です。ビジュアルの構図や撮影技術など、ルックにフォーカスしており、世界中の誰が観ても黒澤作品はインパクトがあるでしょう。
―ある意味、誰でも楽しめる作品?
花俟:そう思います。黒澤作品は音楽でいうとビートルズです。誰でも入りやすい。そこからパンクロックやサイケ、テクノなどに枝分かれしてもいい。前回(前編)、名画座文化を残すための変化についてお話しましたが、そのためにはいかにライト層に興味を持ってもらえるかが重要です。
ですので、「まずは黒澤作品を通して、ほかの映画にも興味を持ってほしい」という思いを込めて選びました。ビートルズは無難な選択ではあるものの、何回でも聴けますよね。黒澤作品も何回観ても素晴らしい。ぜひその圧倒的なルックを堪能してほしいです。
高原:4Kバージョンの映画は数多くありますが、4Kで観られる映画館は少ない。旧作であればなおさらです。黒澤作品と聞くとハードルの高さを感じますが、リマスターされた素材とが一新された設備により映像が鮮明になり、セリフが聞き取りやすくなりました。とても楽しみやすい環境ですので、黒澤作品の面白さを新文芸坐で満喫してほしいです。