公演が始まっている舞台にどう「乗る」のか
ー本番を間近に控えた今、どのような稽古をされているのでしょうか。
すでに幕は開き、公演が行われていますので、僕は本番が終わった後、もしくはその前に美術、照明、衣装など本番と同じ状態で、舞台上で稽古しています。別のキャストが本番をやっていて臨戦態勢ですから、無意識のうちにその熱を感じ、刺激を受けていますね。
ーそのように公演中の劇場で準備をするというのは、劇団四季では経験されたことですよね?
そうですね。劇団四季では日常茶飯事でしたから「こういう感覚だったな」と思い出します。稽古では私のためにゆっくり動かしてくれる部分もありますが、エスカレーターに乗るのと同じで、すでに動いているものとスピードを同じにして乗る方が、リハーサルがスムーズに進むということを、身体が覚えているんです。
そのためには、公演の熱やせりふの速度、客席の雰囲気などを観察しておくのが一番の近道。楽屋にいてもモニターが映し出してくれるので、一緒になってしゃべってみるなどしてイメージトレーニングをしています。
一緒に稽古を始めた共演者たちですが、実際に板を踏むとさまざまな経験が加わるので、マラソンではるか前方を走っている人を追いかけているような感覚です。
ー海外から演出家をはじめとするスタッフが来た時には、まずハリー役の3キャストが揃って稽古したのですか?
最初はそういうやり方でしたね。僕らハリーは3キャスト、ほかは2キャストもいて、いろいろな組み合わせになるよう、読み合わせから立ち稽古まではイーブンにやっていました。初日の3カ月前から読み合わせがあり、2カ月ぐらい前には稽古場に装置を立て込んでその中で動いて。そこから徐々に先発のキャストたちが慣れるための稽古にスライドしていき、1カ月前にはもう舞台稽古でしたね。
それ以後は、後から出発するキャストのための時間は少なくなりましたが、稽古には一緒に出ていました。こちらとしては、どうしたら今出ている人たちと違う個性を出せるかな?などと考えているうちに、あっという間に自分の出番が近づいてきたという感じです。
先発キャストたちは公演が始まってからも日々変わっていっているので、自分がやりたいアイデアをいきなりポンとぶつけるのも違う。エスカレーターの話と一緒で、まずは彼らのペースに乗って、タイミングを見ながら自分らしさを出していく感じになるのかなと想像しています。