チームラボボーダレス
Photo: Kisa Toyoshima
Photo: Kisa Toyoshima

チームラボでしか実感できない3のこと

「世界は連続している」を身体的に感じられる巨大アートミュージアム

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「麻布台ヒルズ」に2024年2月に移転オープンした「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」は、世界の著名人が日本を訪れたら足を運ぶスポットである。一体なぜそこまで世界の人々の引きつけるのか。

タイムアウト東京ではこの疑問の答えを得るため、知られざる魅力に迫り、ディープに楽しむための記事を過去に作成。館内に訪れた人から産まれる蝶(チョウ)や、作品を横断して飛び回る烏(カラス)を追うことで見えてくる異なる視点を紹介した。

今回はその第2弾。インタラクティブな要素にフォーカスする。70を超える作品全てがインタラクティブなのだが、その中でも同アートコレクティブが掲げるテーマに即して、3つほど紹介してみよう。InstagramやTikTokで「映える」だけではない、非常に緻密で斬新なコンセプトを知ることで、さらにチームラボの作品が楽しめるだろう。

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1. 「世界の連続性」を実感する。

なぜ全作品がインタラクティブなのか。それは同館における重要なテーマの表現そのものだからだ。

アートというフォーマットにおいての旧来の問題点は、鑑賞する人とされる物が明確に存在し、分断されてしまうことだった。しかし、チームラボの作品は常に動き、触れられるようにすることで、鑑賞を動的な体験へと変化させている。

この背景には「世界は常に連続している」という普遍的な事実をアートに持ち込む意図がある。例えば渦や波といった水の運動のように、世界は何かが何かの影響を受け、常に変化し続けている。

『人々のための岩に憑依する滝』という作品は、まさに水の流れが、この空間に入ってくる人によって影響を受ける。

人の歩みの後ろに水の軌跡が出現し、歩き出すと水の流れが長くなっていき、渦を巻く。鑑賞者が複数なら渦も複数になるが、干渉し合いながら時に統合する。その有り様は自然の川や渦と同じだろう。この鑑賞体験を通じて、私たち自身が常に世界に干渉していることを否応なく実感できるのだ。

2. 人間の認知を超える。

同館が麻布台ヒルズへリニューアルした際の新作であり、最も人気のある作品の一つである『光の球体結晶、ぷるんぷるんの光、環境が生む光 - ワンストローク』は、一筆書きの光の軌跡の美しさを浴びるように体感する作品である。

人が球体の近くで立ち止まると、最も近い球体が強く輝き、光はその球体から最も近い球体、また次の最も近い球体へと伝播し連続していく。光はそれぞれの球体を一度だけ通り、全ての球体を通る1本の光の軌跡になり、やがて同時期に他者が生んだ光と交わる。この輝く球体に囲まれた美しさはまさにファンタジックであり、非日常の結晶のような作品である。

Photo: Kisa Toyoshima

だが、同作のすごい点は、球体の中にバブルのようなゼリー状の泡が見えることにある。

球体の中に、泡のような要素は存在しない。あるのは物質的な光、光が結晶化したかのような球体状の強い光と、それができかけてはすぐさま壊れていく弱い光や、周辺の環境によって生み出された無数の光だけだ。

この光のゼリーは、体験者自身の認識世界にだけ出現する。存在条件も泡のように儚(はかな)いのが、またニクい。なぜこのように見えるのかは、まだ明らかになっていないという。

主観とは、存在・認識とは何なのかを問い直す貴重な機会になるだろう。

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3. 鑑賞者が作品を産む。

『境界のない群蝶』は前回の記事でも触れたが、「バタフライハウス」と呼ばれる空間に人々が入って立ち止まることで、おのおのの体からサナギが現れ、蝶になって飛び立ち、群蝶(ぐんちょう)となるという作品だ。

鑑賞者自身が作品創造に携わることができるのは、本作のみならずいくつもの作品に含まれている。その背景には「共創」というコンセプトが存在する。

現代人は個人主義に特化し、デジタルの世界でのつながりが一層強くなっている。しかし人間の創造的産物は、体を動かしながら他者とともに作り上げることで進化していった。

この空間は、人がいなければ何も存在しない。何人かの観客が立ち止まることで初めて、美しい群れとなり、蝶たちはディスプレーの枠も部屋も超えて「ボーダレス」に館内を舞う。それがミュージアム全体に彩りを与えるのだ。

「バタフライハウス」を知らないと、この神秘的な作品を素通りしてしまう人も少なくないという。しばし足を止め、新たな作品の目覚めに参加してみよう。

東京でアートを巡るなら……

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