The world’s 20 best cities for culture right now
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世界の文化的な都市ベスト20

ムンバイからメルボルンまで、アートと文化が楽しめる都市ランキング

Grace Beard
寄稿:: Time Out editors
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タイムアウト東京 > トラベル >世界の文化的な都市ベスト20

アートとカルチャーが最も盛んな都市を調べるため、タイムアウトでは世界中の2万1000人以上の都市生活者に「あなたの住む都市のカルチャーシーンをどう評価しますか?」という質問を投げかけた。

選定にあたり、その都市で最高の文化施設や体験にまつわるクイズのほか、質や文化を手頃な料金で楽しめるかなどの面を採点。総合得点の低い都市を除外し、各国の最高得点を獲得した都市のみに絞った。

ここでいう「手頃さ」とは相対的なものである。ある都市の人々にとっては安いと思われるものでも、別の都市ではそうではないかもしれない。しかし、地元の人々が美術館の入場料を割安であると感じ、無料の野外フェスティバルが開催されているのであれば、その都市では芸術や文化が比較的安く楽しめるのは間違いない。

最終的には総合得点の低い都市を除外し、各国で最高得点を獲得した都市のみを残すことで、リストを絞り込んでいった。最終リストには、4つの「スポットライト都市」が加えられている。調査は行われなかったが、タイムアウトの事情通の編集者や地元の専門家が、2023年にスポットライトを浴びるにふさわしい文化都市として推薦した都市である。

ここでは、アートと文化が楽しめる2023年度都市ランキングを紹介しよう。

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1. メキシコシティ(メキシコ)

このランキングで1位に輝いたのは、カリスマ的魅力を持つメキシコのコスモポリタン都市、メキシコシティ(略称「CDMX」)だ。カルチャーシーンの質と手頃さの両方において、地元の人々から格段に高い評価を集めた。

建築物、劇場、「死者の日」のストリートパレードなど全ての要素が高評価を得たが、最も高く支持されたのが博物館や美術館。CDMXではアステカの工芸品や民芸品からシュールレアリスムの絵画まで、あらゆるものが見られ、それらの多くが目を見張るような建物の中で展示されているのも魅力だ。メキシコの居住者が多くの施設を常時、もしくは日曜日に無料で利用できるのは、さらに素晴らしい。

「私を最も魅了するのは、アートシーンの多様性と活気です。私のお気に入りの場所の一つは、サン・ミゲル・チャプルテペックにある「Kurimanzutto」。ここは現代アートとアヴァンギャルドアートの舞台となっています。さらに、世界中の音楽や演劇、ダンスをミックスして紹介する有名なイベント「Festival del Centro」も好きです。CDMXは常にクリエーティビティの境界を再定義していて、それがこの都市を活気づけているのです」(タイムアウトメキシコシティ編集者のマウリシオ・ナバ

2. プラハ(チェコ)

印象的なチェコゴシック様式の塔、ブルタバ川にかかるアーチ橋、10以上の城など、美しい建築物が集まるプラハは、まさに「屋外博物館」のようだ。「この街都市の文化の何が好きか」という質問に対して、地元の人々は「歩き回って楽しめること」という答え回答した地元の人々が最も多かったのも不思議ではない。

しかしこの街都市の「百本の尖塔の街都」という愛称は、見た目だけを表現しているのではない。プラハは舞台芸術の中心地でもあり、地元の人はこの街都市のオペラの伝統やクラシックコンサート、国立劇場のような施設を絶賛している。調査対象となった全都市の中で、またプラハは物価の安さで「文化の手頃さ」の項目でも最も高いスコア点を獲得した。まあ、歩き回るのにお金はほとんどかからない、ということもあるだろう。

「プラハでは季節に関係なく、いつも何かが行われています。春にクラシック音楽愛好家が楽しみにしているのが「Prague Spring International Music Festival」。夏には絵のように美しいレトナー公園でサーカスと演劇のフェスティバル「Letní Letná」が開催され、「Metronome Festival」には世界中から音楽家が来訪。「国立劇場」でのバレエやオペラ、「MeetFactory」でのコンテンポラリーアートは、どの季節でも楽しめます」(プラハ市民・在住作家ライターのヤレン・ファディログラリ

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3. ケープタウン(南アフリカ)

古い決まり文句の「人種のるつぼ」で片付けるつもりはない。しかしケープタウンの多文化主義は、この都市の芸術や文化を羨ましいほど豊かなものにしているといえる。

毎年開催されるにぎやかなストリートパレード「Kaapse Klopse」から、巨大施設の「Baxter Theatre」や「Artscape」でのキャバレーやコメディまで、南アフリカの無秩序に広がり続ける沿岸都市、ケープタウンでは、至る所に文化を求める人たちに提供できる何かがある。

「活気」と「多様性」は、今回の我々の調査に対し、ケープタウンのカルチャーシーンを表現するために地元の人が最もよく使った2つの言葉だ。この都市は、享受できる文化の質で最上位にランクされた。「文化の手頃さ」に関しては、より優れた都市がほかにもあったが、全体の中ではかなり良い結果を残したことは注目に値するといえる。

「ほとんどの訪問者がケープタウンの自然の美しさに感動すると同時に、この都市の文化的な活力に魅了されるはずです。もともと劇場は活気づいていますが、いま最も注目すべきなのは視覚芸術でしょう。特に「The Zeitz Museum of Contemporary Art Africa」はアートだけでなく建築においても必見。ワインの産地にある「Norval Foundation」も外せません」

「市内には素晴らしいストリートアートのシーンもあります。ソルトリバーの郊外のガイド付ツアーに参加したり、3月初旬に行われる「Festival of Public Art」の期間中に来たりするのもいいでしょう。本当に没入感のある体験を求めるなら、2024年は4月29日から5月5日まで開催される「AfrikaBurn」もおすすめ。これは南アフリカ版「バーニングマン」(アメリカ、ネバダ州の砂漠で行われる野外イベント)といえるイベントです」(ケープタウン在住ライターのリチャード・ホームズ

4. ブエノスアイレス(アルゼンチン)

タンゴ誕生の地、視覚芸術や文学、パフォーマンスなどあらゆる分野の中心地でもあるブエノスアイレス。この都市の「血管」に文化が流れていることを、住人たちは誇りに思っている。

この都市の劇場シーンは熱く、オペラの殿堂である「Teatro Colón」は地元のお気に入りヴェニューのトップに選ばれている。調査では深夜のタンゴ、図書館、そしてストリートアートで埋め尽くされたサン・テルモの近隣地域が度々言及された。また、ブエノスアイレスは調査対象になった全ての都市の中で2番目に手頃に文化が楽しめることも分かった。

「ブエノスアイレスのナイトアウトでは今、タンゴのショーから地域で最高のトラップやヒップホップのライブまでを、楽しむことができます。多才なミュージシャンであるLoutaは、まさにこの都市の古いものと新しいものの架け橋を象徴しているアーティスト。彼は先駆的な劇団「Fuerza Bruta」を手掛けるディキ・ジェームズの息子です。Loutaは見事な視覚効果と演劇技術を取り入れ、地元の音楽シーンにおいて独自のフォロワーを集めています」(ブエノスアイレス在住ライターのペドロ・カマッチョ)

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5. アテネ(ギリシャ)

アテネは古くから芸術の世界的中心地であり続けてきた。たぶん永遠にそうなのかもしれない。最近では、古代遺跡と同じくらい、アナーキーなアンダーグラウンドカルチャーでも知られている。アテネのカルチャーシーンを探索するということは、不朽の「クリエーティブシティ」における新旧の両面を知るということを意味する。

アテネでは文化は屋外で楽しむのが一番のようだ。地元の人々は、この都市の夏のフェスティバルや野外映画上映を賞賛した。「ベナキ美術館」や「スタブロス・ニアルコス財団文化センター」などと並び、地元の人々がお気に入りの文化施設として挙げたのはアクロポリスと「アクロポリス博物館」。このことはアテネがいかに強く歴史と結びついているかを証明している。

「ここ数年、古い建物を近代的な文化施設に改築するケースが多く見られます。その好例が、アテネの中心部にある「キプセリ公設市場」でしょう。この古い市場は現在、クリエーティブな拠点となっていて、フェスティバルやDJセット、ワークショップ(コミックスケッチ、ガーデニング、かぎ針編み、木工、創作、演劇など)が一年中催されています。同様の取り組みは「Public Tobacco Factory」「Bageion Hotel」やかつての「国立オペラ座」(現在の正式名称は「Olympia Municipal Musical Theater Maria Callas」)などでも行われています」(アテネ在住ライターのデメトリオス・イオアヌー

6. エディンバラ(スコットランド)

スコットランドの首都エディンバラには、毎年8月になると「世界中のステージ」が集結する。世界最大の芸術祭が開催され、この街都市のほぼ全ての道、パブ、劇場が芸術に占拠されるのだ。今回の調査ではその「Edinburgh Festival Fringe」が支持を集めたが、地元の人々は、「スコットランド国立博物館」や「スコットランド国立美術館」(4つの建物美術館で構成される美術館群)など、この街都市にある世界一流の博物館や美術館も賞賛している。エディンバラの文化における最大の資産として評価されたのは、圧倒的に「種類の豊富さ」だった。この街都市では、書籍からジャズパフォーミングアーツに関するものまで、1つだけでなく数多くの、大規模きな夏のフェスティバルがたくさん開催されるのだから、それも当然だろう。

「エディンバラのカルチャーシーンは、ここ数年、何度も打撃を受けています。まず、「National Galleries of Scotland」アートギャラリーの「Modern Two」が一時的に閉鎖され、そして映画館の「Filmhouse」が経営不振に陥って破産申請をして閉鎖されました。しかし、地元の人たち々が自分たちの手で問題を解決として対処してきたことを知りって、私は安心しました」

「手弁当によるあらゆる種類のプロジェクトが行われていて、そのことがアテネの文化を活気づけています。私がよく利用するのは、草の根のラジオ局「EH-FM」と、穴場のライブハウス「Sneaky Pete's」。どちらもこの街都市から発信される最高のニュー新しいミュージック音楽を発掘できる場所となっています。使われなくなったスペースを臨時のアートギャラリーやスポークンワード・シアター朗読劇場に変える「Hidden Door Festival 」は、この街都市のカルチャーイベントの注目株と言えるでしょう」(タイムアウト・のイギリス特集編集者のキアラ・ウィルキンソン

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7. ウィーン(オーストリア)

モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトといった名だたる音楽家が本拠地としたウィーン。この都市のカルチャーシーンは相当なものであることは間違いなく、誰の目から見ても別格だ。調査では、ウィーンのカルチャーシーンの質は第3位で、地元の人々はオペラ、アート、「Donauinselfest 」(世界最大、そして無料の野外音楽祭)を絶賛。また、ピカソ、シャガール、モネ、キルヒナー、そしてもちろんクリムトを含む美術界の巨匠の傑作で埋め尽くされた「アルベルティーナ」と「アルベルティーナ・モダン」をこの都市の最高の文化施設として挙げている。

「文化はウィーンそのものであり、ウィーンに住む人々はとても大切にしてきました。クラシック音楽の都として知られるこの都市では、入場無料のヨーロッパ最大の音楽祭「Donauinselfest」など、現代的な文化イベントも開催されています。夏の夜、市庁舎前で開催される映画祭でビール片手に音楽や映画を鑑賞するのもいいし、冬の寒い夜には「Porgy & Bess」でジャズを楽しむのもおすすめです」(ウィーン育ちのライターのナタリー・マーチャント

8. マドリード(スペイン)

スペインの首都マドリードは、ヨーロッパ有数の芸術の都でもある。まず、巨大なネオクラシック様式の建物にスペインとヨーロッパ美術の膨大で壮大なコレクションを所蔵している「プラド美術館」へ。この美術館は、我々の調査で名前を挙げた人が圧倒的に多かった。次に「ティッセン=ボルネミッサ美術館」や20世紀美術の殿堂「ソフィア王妃芸術センター」を訪れれば、この都市の芸術の「ゴールデントライアングル」を体験したことになる。

演劇が好きであれば、地元の人から2番目に評価された「Teatro Real」も注目するといいだろう。オペラや舞台芸術の分野で、ヨーロッパで最も尊敬を集めるヴェニューの一つだ。

「マドリードの文化はかつてないほど生き生きしています。パンデミックによる劇場の閉鎖やそれに伴う収容人数の制限は過去のものです。今、劇場は再び満席となり、巨大文化・レクリエーション施設の「マドリード・リオ」の隣には「Cines Embajadores」が新オープン。2023年夏に開かれた「Primavera Sound」のような新しいフェスティバルもスタートしています。また今年は、ヨーロッパで最も重要な美術館プロジェクトである「王室コレクションギャラリー」も開催されました」(タイムアウトマドリッド編集者のマルタ・バック

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9. フィレンツェ(イタリア)

スポットライトシティ

小さいながらも力強いフィレンツェは、世界的な文化シーンで他の大都市と対等に張り合っている。この都市では「ウフィツィ美術館」に所狭しと並ぶボッティチェッリやカラヴァッジオの作品、ブルネレスキの広大で荘厳なドゥオーモ(「サンタ マリア デル フィオーレ大聖堂」)、メディチ家礼拝堂の地下に新たに発見されたミケランジェロによる晩年の未公開スケッチを展示している「秘密の部屋」など、貴重なルネサンス期の「宝物」が見られる。

それだけでなく、フィレンツェはコンテンポラリーアートシーンにも力を入れており、2023年10月から24年2月まで「ストロッツィ宮」でアニッシュ・カプーア展を開催している。メンズのプレタポルテの最先端ファッションを披露する、「Pitti Uomo」は2年に1回の開催だ。日々のフィレンツェ文化の楽しみ方としては、ビンテージマーケットを散策し、ネグローニ発祥の地でアペリティーボ(食前酒)を堪能してもいいだろう。(フィレンツェ在住ライターのフィービー・ハント

10. メルボルン(オーストラリア)

グラフィティに覆われた路地裏から芸術の中心地であるフェデレーション・スクエアまで、メルボルンには文化が息づいている。また、クリエーターやアーティストの活発なコミュニティーがあり、とても楽しい都市であることは容易に想像がつく。地元の人々は、そうしたこの土地の活気や多様性、コミュニティー感覚を称賛。例えば、「Moomba」のような毎年恒例のイベントや、オーストラリアで最も訪問者数が多く、最も長く運営されている美術館「ビクトリア国立美術館」(略称は「NGV」)のような文化施設を高く評価している。

「メルボルンのダイナミックなアートシーンには、「魅力的な選択肢が多すぎて何を選んだらよいのか悩む」という以上の良さがあります。この都市は言わずと知れたオーストラリアの文化の中心地なのですから・・・。確かに、大ヒットした展覧会やミュージカルの初演はたくさんあります。しかし私はそれ以上に、革新的でエキサイティングなコンセプトが生み出されていくことに、いつも驚かされます。アイデアとテクノロジーを組み合わせた新しいフェスティバルである「Now or Never」と、都市全体で開催された音楽とアート祭典である「Rising」は、2023年に私を驚かせた2つのイベントでした。そして、メルボルンという都市の特徴を考えると、こうしたイベントは増えていくことでしょう」(タイムアウトメルボルン編集者のリア・グリン

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11. パリ(フランス)

パリに言及せずして文化は語れない。この都市のカフェやビストロは長い間、作家や芸術家、知識人の憩いの場であった。もちろん、パリには世界で最大で、最も多くの人が訪れる美術館として知られる「ルーブル美術館」がある。しかし、地元の人々の評価はどうだろうか。パリジャンたちはこの美術館をパリで一番の文化施設として高く評価しているが、演劇シーンやファッションセンス、そして「ポンピドゥー・センター」と「パレ・ド・トーキョー」という2つのアートの殿堂にも賛辞を贈っている。

「パリのカルチャーシーンは多様性が際立っています。「ルーブル美術館」や「オルセー美術館」で不朽の名作を鑑賞するのも、マレ地区のギャラリーを散策して新たな才能を発見するのも、同じくらい楽しいものです。そして、最先端のインディーズミュージックシーンにどっぷり浸かりたいなら、行き先は一つしかありません。 「La Station」です。ここは、元石炭輸送のための駅で、現在はアンダーグラウンドの一流アーティストを迎えています」(タイムアウトパリのライターのレミ・モルヴァン

12. モントリオール(カナダ)

モントリオールは、世界のフェスティバルの中心地といっても過言ではないほど「文化カレンダー」が充実している。特に、冬の光の祭典「Montréal en Lumière」や世界最大のジャズフェスティバルとして知られる夏の「モントリオール国際ジャズフェスティバル」が有名だ。

芸術の拠点「カルティエデスペクタクル」の中心にある広場「Place des Festivals」には、年間を通してフェスティバルで利用される専用のスペースもある。我々の調査で、地元の人たちがモントリオールで一番の文化施設に選んだ、パフォーミングアーツ専門の「Place des Artes」も、この「カルティエデスペクタクル」の中にある。モントリオールについて一つ確かなことは、この都市はショーの楽しみ方を知っているということだろう。

「もしあなたが、たまに火曜日の夜になると外出してくてうずうずしてしまう人なら、モントリオールを気に入るでしょう。文字通り、この都市ではいつも何かが行われています。スポーツバー「Champs」でのクィアラインダンス、「Sala Rossa」でのCRABEのような素晴らしい地元のポストパンクバンドによるライブ、ドーム型の「Satosphere」での人生を変えるような全身没入型のEDM(Electronic Dance Music)アートナイト・・・。あなたの夢見たことが、ここで見つかるはずです」(モントリオール在住ライターのイザ・トゥシニャン)

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13. マラケッシュ(モロッコ)

スポットライトシティ

マラケシュでは芸術は特別で高尚なものではなく、生活という繊維に編み込まれた明るい糸だといえる。この地からインスピレーションを得たのがイヴ・サンローランだ。彼の素晴らしいデザインは現在、彼の名を冠した美術館で見ることができる。この都市は今でも、LRNCEのような現代のデザイナーたちの創造力を刺激し続けている。LRNCEは技巧を尽くしたモロッコの邸宅「Rosemary」をオープンしたばかりだ。

この都市を訪れたなら「Medersa Ben Youssef」で華麗に展示されているマラケシュの匠たちの卓越した技を見たり、王室御用達ホテル「Royal Mansour」の中庭でお茶を楽しむのもいいだろう。最高のコンテンポラリーアートなら「Galerie Siniya 28」と「MACAAL」は必見。2024年2月に開催される「1-54アートフェア」の予約も忘れないように。(モロッコ在住ライターのポーラ・ハーディ

14. サンパウロ(ブラジル)

想像の通り、ブラジルの巨大都市サンパウロには目もくらむような文化的ビッグネームが軒を連ねている。パウリスタ通りを歩けば、その意味がわかるだろう。銀行と高層ビルの間には、巨大な書店「Livraria Cultura」やラテンアメリカ最大の美術館「サンパウロ美術館」(「MASP」として広く知られる)などがある。地元の人々は、MASPをサンパウロで最高の場所と評価する一方で、サンパウロの劇場、独立系映画館、郊外に向かって広がっている公園群(その多くがインディペンデンシア公園のように、サンパウロの主要な美術館を敷地内に有する)も高く評価している。

「「ヘプブリカ広場」周辺ほど、文化的なホットスポットが集中しているエリアはないでしょう。サンパウロのダウンタウンにいくつものステージが設置される、24時間無料のフェスティバル「Virada Cultural」の開催時には、なおさらそう感じます。しかし、普段の日でも選択肢は豊富。プリツカー賞を受賞した建築家のパウロ・メンデス・ダ・ローシャが改装したビルの13のフロアを占める文化センター「Sesc 24 de Maio」は、私のお気に入りの場所の一つ。小規模なオルタナティブスペースとしては、2022年に「ヘプブリカ広場」の真向かいの元駐車場にオープンした独立系映画館「Cortina Cineclube」がおすすめです。(サンパウロ在住ライターのパトリシア・フィゲイレド)

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15. ニューヨーク(アメリカ)

ブロードウェイ、オフ・ブロードウェイ、「ニューヨーク近代美術館」(通称は「MoMA」)、「メトロポリタン美術館(同「The Met」)」……などなど。と、アートと演劇に関してはニューヨークはどこの都市にも負けないと、地元の人々もはそう思っているようだ。

今回の調査では、「美術館」と「ブロードウェイ」への言及が多く、「リンカーン センター」「セントラルパーク」「ブルックリン美術館」が続いた。ニューヨーカーはまた、この街都市のカルチャーシーンの開放性、多様性、種類の豊富さを賞賛。眠らない街都市、ニューヨークには、本当に誰もが楽しめるものがあるということだろう。

「ニューヨークは常にあらゆる面でカルチャーの源泉であり、シーンを牽引する多様でニッチなイベントに満ちています。今年だけでも、私は「Q.E.D. Astoria 」で開催された猫好きのためのバラエティショー「Catbaret」に参加したり、新たに認可された娯楽用嗜好向け大麻薬局ショップ「Union Square Travel Agency」でコメディアンのエイミー・セダリスと一夜のナイトショーを楽しんだりと……。しましたし、セックスフリーの禁止のセクシャルなパーティーや、ライアンという名前の人だけの集まり、孤独な人だけを対象にしたのコメディショーについてもリポートしました。

2023年11月には「Upright Citizens Brigade」が再演され、コメディ劇団「セカンドシティ」の新しい拠点もオープンします。比較的最近に登場したヴェニューとしては、ハドソンヤードの舞台芸術センターである「ザ・シェッド」もエキサイティングな施設です。今は、スティーブン・ソンドハイムが生前最後に手掛けたミュージカル「Here We Are」を上演。オープンして数年の間、私はここでこれまでに見たことのないような実験的で没入感のあるショーを見てきました」(タイムアウトニューヨーク編集者のシェイ・ウィーバー

16. 東京(日本)

東京で「文化」を特定するのは難しい。この24時間都市では、ハイテクデジタルアートから歴史ある神社、大相撲、桜祭り、最先端のファッション、驚異の建築物、歌舞伎や能などの伝統芸能まで、ありとあらゆるものが含まれるからだ。東京で最高の文化施設はどこかという質問に対して地元の人々は、ミニシアターから「森美術館」、ジャズクラブ「ブルーノート」まで、あらゆる場所を挙げたが、同じ答えは2つとなかった。

「東京が誇るのは、常に古いものと新しいものが融合する都市であることです。それが顕著に表れているのが、特にカルチャーシーンでしょう。歴史ある神社では伝統的なお祭りが開催される一方で、寄生虫やラブドールといったニッチな分野の尖った展示が、現代のコンテンポラリーアートシーンのビッグネームの展覧会とともに楽しめるのです。最近では、社会批評を織り交ぜた実験的なパフォーマンスアートで知られる前衛アーティスト集団であるChim↑Pom from Smappa!Groupが、新宿で印象的なプロジェクトベースの展覧会を開催したのも話題になりました。一方、東京で最も人気のあるミュージアムと言っても過言ではない「チームラボボーダレス」は、2024年1月に東京都心の新たな場所で待望の復活。これまでに見たことのない没入型インスタレーションの数々を披露することが期待されています」(タイムアウト東京編集長のリム・チー・ワウ

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17. アブダビ(アラブ首長国連邦)

スポットライトシティ

アラブ首長国連邦(UAE)の文化的、そして文字通りの首都であるアブダビには、サディヤット島を中心とした世界有数の文化スポットがある。「ルーブル・アブダビ」から「アブラハム ファミリー ハウス」まで、驚くべき展示物を収容する文化施設は、建物自体が驚異的で印象的なものが多い。

また、アブダビ最古の石造建築である「カスル・アル・ホスン」は必見。隣接する文化財団では年間を通じて無料の展覧会を開催している。アブダビにはほかの都市のような広範な歴史はないかもしれないが、アートギャラリーや博物館の数が増えていることから、この都市の歴史はこれから作られるといえる。(タイムアウトアブダビ、タイムアウトドーハ グループエディターのダイアン・アペン・サドラー)

18. ムンバイ(インド)

ムンバイには世界に誇れるものが多くある。インド最大の都市であると同時に、ボリウッドの中心であり「国立舞台芸術センター」をはじめとする巨大な施設を抱える。我々の調査では、毎年開催されアーティスト、パフォーマー、職人たちがクリエーティブなカラゴダ地区を占拠する「Kala Ghoda Arts Festival」と並び、小さいながらも注目に値する「Prithvi Theatre」にも言及が多かった。地元の人たちは、この都市のカルチャーシーンを包括的で多様性に富んでいると賞賛。実際に見てみれば、それも納得できるだろう。

「ムンバイには、「国立舞台芸術センター」(略称は「NCPA」)や「カラ・ゴダ・フェスティバル」のような時代を超越した文化プロジェクトがあり、何十年もの間、インドの芸術やダンス、音楽を称えてきました。この都市には同時に、ワルリ族やゴンド族のような先住民族に伝わるインド固有の芸術様式を奨励する「Marol Art Village」のような草の根組織もあります。古典的なものと型破りなものが見事に融合していることが、ムンバイのカルチャーシーンを真にユニークなものにしているのです」(ムンバイ在住ライターのスーマイヤ・ガヤトリ)

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19. アムステルダム(オランダ)

アムステルダムへの旅では、世界最高峰の楽しみを体験できる。日中には世界有数の美術館を巡ったり、美しい運河沿いを散策して過ごしたりするのもいいだろう。夜は、ヨーロッパ屈指のナイトライフが充実したこの都市の、隠れ家的なバーや倉庫スタイルのクラブで夜を明かすのもいい。「アムステルダム国立美術館」ではレンブラントやフェルメールなどの名画を、「アムステルダム市立美術館」ではモダンアートの選りすぐりの作品を見ることができる。

しかし、我々の調査で地元の人々から最も愛されたのは、この都市の音楽シーンだった。元教会のライブハウスである「Paradiso」は、このオランダの首都で最も素晴らしい文化施設として選出された。

「「Doe normaal」とは直訳すると「普通に振る舞う」という意味のオランダ語で、「周りに合わせて溶け込むことで目立たないようにする」というオランダ人気質を表している言葉です。しかし、アムステルダムを文化的な都市にしているのは、こうした傾向に逆らっている人たちなのです。

アングラな集団やヴェニューはアムステルダムに欠かせない血液のようなもの。コメディや多彩なDJセットが楽しめる「De Nieuwe Anita」、チェスクラブやパンクバンドのライブを開催している「Vondelbunker」、安価な食事や無料のパブリックスペースを提供する「De Sering」など、アムステルダムには目立つことを恐れない人々や集団があふれています」(アムステルダム在住ライターのカラム・ブース

20. ソウル(韓国)

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ソウルのカルチャーシーンの一番の魅力は、現在と過去のマリアージュだ。暑い夏に求められるのは、ヒップホップにひねりを加えた「Waterbomb Festival」。ジェイ・パークやジェシのようなアーティストがこれまでたくさんの観客を沸かせ、ダンスで暑さを吹き飛ばしてきたフェスだ。典型的な音楽フェスとは異なり、ここでのドレスコードは水着。観客からパフォーマーまで全員が水鉄砲で「武装」していて、全身ずぶ濡れになるのは確実であるため。ソウルの灼熱の夏にはちょうどいいイベントだといえる。

現代の音楽シーンもいいが、過去を体験できるのもいい。特に、市内にある多くの宮殿をぶらぶらと見て回るのがおすすめ。朝鮮王朝の主要な王宮である「景福宮」は、韓国の伝統衣装の一種である韓服を着て、ソウルの歴史を肌で感じられる象徴的な場所だ。(ソウル在住コントリビューターのジョセリン・タン)

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