都築響一による東京観光案内所
Photo: Mari Hiratsuka
Photo: Mari Hiratsuka

都築響一の東京観光案内所

圏外編集者と東京を歩く

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露出度高めなダンサーがロボットを操縦するレストランに、趣向を凝らしたラブホテル、眠らない新宿二丁目。東京には人間の欲望というものを追求した結果生まれた娯楽(=エンターテインメント)スポットが数多く存在する。それらは俗物的かと思えば、ときに珍妙だったり妖艶に見えたりする。そんな東京に散らばる名(迷)所を案内してくれるのは、編集者の都築響一だ。都築は、雑誌『POPEYE』、『BRUTUS』にて現代美術、建築、デザイン、都市生活などの編集を経て、東京で生活をする若者たちのリアルな部屋を撮影した『TOKYO STYLE』や、日本各地の奇妙な名所を探し歩いた『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』を刊行するなどし、既存メディアが紹介しない視点から現代社会を切り取ってきた。スカイツリーや吉祥寺、銀座を東京のA面とするなら、都築が紹介するのはB面とでも言おうか。圏外編集者に導かれ、大都市東京の深層部に潜ろう。

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都築響一の東京観光案内所 其ノ壱
都築響一の東京観光案内所 其ノ壱
現代日本を生きるキッズたちの、 ストリートレベルのパフォーマンス 最近、東京の街なかを異様な巨大オブジェが走り回っている。迷彩色のハマーが引っ張るトレーラーに、「さあ、いらっしゃい」とばかりに両腕を上げた、女のロボットが2体。それが大通りを、まったく説明のないまま、ただ走りすぎていく……。
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都築響一の東京観光案内所 其ノ弐
都築響一の東京観光案内所 其ノ弐
オールドスクール・ラブホテルに見る、現代日本のオリジナリティ 東京にやってくる外国人観光客がまずびっくりするのは、日本式の旅館がほとんど見つからないことだ。現代の日本人にとって旅館とは、温泉旅行など非日常の場でときたま出会うものであって、日常生活の中にはすでにない。現代の日本人は、ビジネス出張のときはビジネスホテルを使い、セックスのときはラブホテルを使うものだ。 
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都築響一の東京観光案内所 其ノ参
都築響一の東京観光案内所 其ノ参
蒼白な顔面、ただれた傷跡、ほどけた包帯とボロボロの衣服、力なく前に伸ばした腕と、引きずるように歩く脚……ほら、ゾンビのお通りだ。 ゾンビの起源を辿っていくとカリブ海のヴードゥー教に行き着くようだが、しかし現代的な「ゾンビ」は1960年代末期のイタリア生まれのアメリカ育ち――言うまでもなく、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)でゾンビを世に知らしめた「ゾンビ生みの親」、ジョージ・A・ロメロ監督の功績である。ふりかえってみれば19世紀がフランケンシュタインを生み、20世紀がドラキュラを生んだように、20世紀が生んだ最大のモンスターがゾンビだったのかもしれない。 フィリピンの刑務所で踊られる『スリラー』から、メキシコシティの毎年恒例ゾンビ・ウォークまで、いまやゾンビのいない国を探すほうが難しいが、ここ東京でも月に一度、ゾンビが大量発生しているのをご存じか。
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都築響一の東京観光案内所 其ノ四
都築響一の東京観光案内所 其ノ四

日本でいちばんたくさんあって、いちばん外国人になじみのない場所、それがスナックだ。世界の街角には、それぞれ特徴的な「なごみ場所」がある。ロンドンではそれがパブだろうし、パリではカフェ、ニューヨークではバーなのだろう。イスタンブールではチャイハネで、バンコクなら屋台かもしれない。ここ日本では、それがスナックだ。はっきりした数字は監督官庁も把握してないと思うが、いま日本には10万とも20万ともいわれる数のスナックがある。ひとつの県に2,000軒以上ある計算だ。そのうち9割9分はカラオケつきだろう。そのすべての店で、ビールや焼酎ウーロン割りのグラスが揺れるカチャカチャ音とともに、「喝采」や「つぐない」や、「銀座の恋の物語」や「津軽海峡冬景色」が今夜も歌いつがれている。

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都築響一の東京観光案内所 其ノ五
都築響一の東京観光案内所 其ノ五
2丁目でいちばん古く、いちばん敷居の低い、有形文化財『ニューサザエ』 いまや「nichome」という言葉が世界語になるほど、国内外で認知されるようになった世界屈指のゲイタウン、新宿2丁目。東西南北数ブロックのエリアに、数百のゲイバーやレズバーがひしめく不夜城である。閉店(開店ではなくて)が昼過ぎ、なんて店がざらにある、歌舞伎町と並んで日本でいちばん「眠らない街」でもある。そしてまた新宿2丁目は、ニューヨークのクリストファー・ストリート、サンフランシスコのカストロ・ストリートなど、世界に数あるゲイタウンのなかでも、きわだって安全に(健全に、ではない)遊べる街でもある。
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