コロナ禍の人流遮断で変容する観光の目的
初めに「観光の未来」という題目に対して、登壇者それぞれの考えを示すキーワードをパネルに書き、意見を述べた。ファシリテーターは編集者でキュレーターの塚田有那が務め、それぞれの意見の解釈を広げ、深めてくれた。
ハコスコ代表取締役社長兼デジタルハリウッド大学大学院卓越教授である藤井直敬は、「医食住」という造語を提案。藤井は専門領域であるバーチャルで観光体験できる高精細のモデルも製作しているが、逆に「本当に質の高いものを手に入れたり体験したりするためには、その場所に行くことが必須」との結論にたどり着いたそう。
「医食住」、つまり「衣」ではなく「医」としたのも、衣料はもはやアバターなどで置き換えられるため、「湯治」に代表されるように病を観光先で治すという未来を提示した。
立命館アジア太平洋大学(APU)教授、アジア太平洋学部副学部長の久保隆行が紹介したキーワードは「観光は衰退。ツーリズムは発展」だ。観光とツーリズムそれぞれの語源に触れ、ツーリズムの語源であるラテン語の「トレナス」には「ある場所から違う場所へと移動し、また戻ってくる」という本質が隠されていると説明。また「人がリアルに交流している都市は文化水準が高く、経済力が強い」とも述べた。
作家兼画家で、現在クリエーティブマッスルを鍛える『エリー学園』を主宰する大宮エリーは、「New Me」という言葉を提示。「今後、旅先で求めるものは、新しい自分になれるかどうかではないか」というユニークな視点を展開した。
コロナ禍で、人々は自身の半生を振り返り、「本当はどう生きたいのか」を切実に考えるようになっている。「地域や地方が、誰かのNew Meと合致する場所になれば、人を呼べるチャンスになるのではないでしょうか」と述べた。