意思を持つ本屋
ー昨今、よく耳にするようになった「独立系書店」とは何を指しているのでしょうか
なぜか日本の人は「系」という単語を付けたがるのですが、僕は「独立書店」と言っています。そもそも何からの独立なのかというと、永江朗さんが2000年代前半に、とある雑誌の中で一応の定義付けをしています。僕の意訳になるのですが、それは「既存の出版流通から独立している」ということ。つまり、大取次(主に日本出版販売、トーハンの2社の取次会社を指す)いずれかの口座を開き、そこから仕入れるという方法に頼らない本屋のことです。
ーいわゆる大取次と呼ばれる会社の口座を開くには、初めに何カ月分かの売り上げに相当する保証金を支払う必要があり、書店開業の大きなハードルの一つになっていた。また、何もしなくても自動的に本が入荷する「見計らい配本」「自動配本」などと呼ばれる仕組みがあり、大取次は売ってほしい数量とともに本を店舗に送付する。
しかし、それは十数年前のことで、現在は書店数が減少しているので大取次の条件も緩和してきています。なので、どちらかというと一人とか少人数といった規模で、自立している。自分の意思を持っている本屋だと僕は思っています。先ほどの話でいうと大取次からの配本に頼らず、自分の選んだ本を仕入れているという意味です。
純粋に自分がやりたくてやっているという部分で、「この本は置きたい」とか差別を助長するような「ヘイト本」が世の中では売れているとしても置かない、といった判断です。そういったインデペンデントな意思を持っているところが大事なのかなと思う。
それと同時に、本屋は商圏がそんなに広くないので、常連さんに対して「あの人が欲しいだろうな」という本を仕入れる役割は意識的に担っていると思います。
ー「インデペンデント書店」の魅力はどんなところにあると考えていますか
一つは空間づくりです。いわゆる大型書店とは違い、個人がやっている良さがあります。独立書店に行き慣れていない人は「こんなところもあるんだ」というような印象をまずもってくれると思います。また、あまり違いがないように見えてもディティールを見れば見るほど違う。深掘りができるというのが面白いところです。
次に、並んでいる本が店ごとに全然違います。いまだに、どこの本屋に行っても同じ本しかないというイメージを持っている人も多いんですが、そうではないということが独立書店に行くとよく分かります。