インタビュー:SHOKO

2020年からは拠点をイギリスに移すSHOKOの世界観とは……

Mari Hiratsuka
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タイムアウト東京 > 音楽 > インタビュー:SHOKO

テキスト:須賀華呼

どこかノスタルジックで、サイケデリックな匂い漂うフォークミュージックを奏でる、シンガーソングライターのSHOKO。 国内外で数々のライブを重ね、2018年からは「トライバル オリエンタルドリームサイケバンド」KUUNATICのメンバーとしても活躍中だ。

ギターだけでなくベースも弾きこなし、ドラマーでもあったという彼女は学生時代からガレージパンクやデュームロック、サイケデリックなどの音楽と携わりながら、その世界観をさまざまな手法で表現してきた。ソロ活動では、包容力のあるボーカルやメロウなグルーヴの残響など、聴き手の心に深く刻まれる美しいアシッドフォークサウンドを各地で披露している。彼女が持つ圧倒的な存在感と音楽性はKUUNATICにも受け継がれ、今年夏に決行されたヨーロッパツアーは、各地で大きな反響を呼んだ。

音楽制作やライブ活動に打ち込む一方で、昼間はアルバイトを掛け持つなど休みのない生活を続ける彼女のエネルギーは、一体どこから生まれてくるのだろうか。2020年からは拠点をイギリスに移すSHOKOに、学生時代のエピソードやヨーロッパツアーでの出来事、ミステリアスなガールズバンド、KUUNATICでの活動について話を聞いた。 

車の中でバロック音楽がずっと流れているような環境だった

ーSHOKOさんは現在ソロとして、そしてKUUNATICとしても幅広く活動されていますね。活動内容を教えてください。

ソロ活動では、アシッドフォークのシンガーソングライターとして活動してます。KUUNATICではベースとヴォーカルで参加させてもらってます。

ー音楽に興味を持ったのはいつ頃でしょうか?

もう10年くらいかな? 家でポロポロ弾き始めたのが中学3年生くらいの時で。おばさんが置いてったアコースティックギターがあって、それを手にしたのがきっかけです。あと、3歳からピアノを習っていて。親の教育方針で習っていたのとスパルタだったのがきつくて、小学校高学年の時にやめました。

ーどんな音楽を聴いて育ちましたか?

小さい時は、車の中でバロック音楽がずっと流れているような環境だったんです。それも親が聴いていたものなんだけど。あとはクラシックやヨーロッパの古い宗教音楽みたいな音楽も、半ば強制的に聴かされていました(笑)。

その反骨精神でロックを聞くようになって。クラシック音楽ばかり聴いている環境も嫌だったし、親と同じ音楽家になるのが嫌で、美大に行く道を選んだのもそれがきっかけですね。でも気がついたら、クラシックとは全く違うジャンルだけど音楽をやり始めていて。 美大の頃はクラウトロックやサイケデリックロックを聴いていました。その前はJoy Divisionとかイギリスのニューウェーブを中心に聴いていました。

ー学生時代からバンド活動をしていたのでしょうか。

中学生と高校生の頃はちゃんとしたライブハウスで演奏したことがなかったけど、軽音部とかのみんなの活動を見て、彼らよりいい音楽作ってる自信はあったのに外に出せず、フラストレーションを感じたりしていました。バンドを組んだのは大学に入ってからです。「松田性子」っていうバンド名で(笑)。 

松田性子は初心者のドラマーの子が、15センチのピンヒールを履いてドラムを叩く、みたいなガールズポストパンクバンドでした。

その後にTOLCHOCKというバンドを組んで。同じ大学に通っていた、Minami DeutschTAKU(ギター)に大学のキャンパスで「じゃんけんで勝ったら俺のバンドでドラムをやれ」って声をかけられたことがきっかけ(笑)。じゃんけんに勝っちゃって、 ドラマーとしてやることになりました。

ーTOLCHOCKも台湾でのツアーを行うなど精力的な活動をしていましたよね。私自身も何度かライブを見させてもらってファンだったので、解散してしまった時は残念でした。

そうですね。二人ともまだ若かったというか幼かったというか。プライドが高すぎたことが原因で解散してしまいました。お互い曲を作ってくるんだけど、言い合いみたいになったりして(笑)。彼の書いた曲を私がドラムアレンジをする、みたいな形でやってたんです。Sky Lantern RecordsというレーベルからカセットテープでEPをリリースしたりもしました。

ーTOLCHOCKを経て、SHOKOとして音楽を作り出すまでの音の変化について教えてください。

TOLCHOCKに参加する前はオルタナティブとかを中心にいろんな音楽を聴いていてノイズ系の人たちとライブをしたり、ノイズ枠で紹介されたりもして。そのころに日本で暮らす海外のアーティストさんの知り合いが増えて、いろんなつながりができましたね。

TOKCHOCK時代は、バンドメンバーだったTAKUの影響からサイケデリックしか聴かない時期もあったりしました(笑)。

ソロのSHOKOとしては、アシッドフォークだねって周りから言われたりしたこともあり、このジャンルに行き着いた感じ(笑)。TAKUの出すドューム感とか浮遊感がうつったのかもしれないです。演奏している間にどこかに飛んでいくような感覚TOLCHOCKにはあって。それが好きだったから、今の自分の音楽にもその要素が反映されているんじゃないかな。

ーライブも都内のほか、オーストラリアやヨーロッパでも行っていますね。

そうですね。SHOKO名義で一人で行ったメルボルンのツアーは友達にブッキングを手伝ってもらいながら、メルボルンでは12回もライブをやらせてもらいました。 

ーSHOKOのイベントには外国人の若いお客さんがとても多い印象です。 

なぜか分かんないけど、みんな集まって来るんですよね(笑)。多分、Tokyo Gig Guideとか調べて来るんでしょうね。このウェブサイトはみんな見てるっぽくて。私自身は自分のプロモーションが苦手なんですけど、この前はInstagramで知ったっていうオーストラリア人がライブに来てくれました。あとはやっぱり口コミですかね。 

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怪奇現象を体験した

ーKUUNATICとしてのSHOKOはベースで参加されていますね。どういったきっかけでKUUNATICに参加したのでしょうか。

KUUNATICのFUMIちゃんとは彼女がイギリスに住んでる頃に知り合いました。その後にFUMIちゃんが日本でKUUNATICとして動き始めてて、そこにYobKissとConcierto de la Familiaで音楽をやっていたYUKOさんが加わったんです。フィンランドやベネズエラ出身の女の子もいたのだけどみんな途中で脱退してしまって。最初は私がサポートという形で加わりました。

ちょっと奇妙な雰囲気があるのは、メンバーのYUKOさんはもともとドラマーじゃないし、FUMIちゃんもキーボード初心者で演奏スタイルがぎこちない感じになってて。私が入ったとき、私をドラムにしてYUKOさんをベースにしてみたらあまりにもまとまっちゃってるってことで、その構成はなしになって(笑)。 その結果、今の構成でやっていますね。

ー今年は春から夏にかけて、KUUNATICでのヨーロッパツアーもありましたね。ちょっと意外だったのですが、ヘビーメタルフェス『Muskelrock』に出演したきっかけは?

ヨーロッパのいろんなフェスにダメ元で連絡したら、スウェーデンのフェス『Muskelrock』のブッカーから即出演依頼が来て。しかも猛アタックで。このギグをきっかけにヨーロッパツアーを展開することになったんです。

ちょっとスピリチュアルな話になっちゃうんですけど、FUMIちゃんが前に霊能力者から、「あなたの前世はイギリス人とスウェーデン人です」と言われたことがあって(笑)。FUMIちゃんはこのフェスの前日に悪夢にうなされて、そういう怪奇現象も体験もしているんですよ。FUMIちゃんの呪いが私たちをスウェーデンに呼んだのかもしれません(笑)。

あと、ロンドンで参加した『RAWPOWER』というサイケフェスも結構大きなイベントでした。ヨーロッパツアーは1カ月半くらいだったので、ほんと人間忘れるというか凄かったですね(笑)。

ーKUUNATICの音の特徴として、ハードロックっぽい要素も持ちながらなんとも呪術的というか、カルトっぽい雰囲気とポップな音の融合がとてもユニークだと思います。

KUUNATICの「KUU」はフィンランド語で「月」という意味で。「LUNATIC」とかけている感じなんです。あと、メンバーのFUMIちゃんは以前、神楽を習っていて。その横笛は今もKUUNATICでも吹いてますよ。だから彼女が作る音階って結構不思議なもので、この世のものじゃないっていうかちょっと変わってるんですよね。スピリチュアルな部分とかはその辺から出てるのかと。

バンドのコンセプトというか物語として、KUUNATICは「KUURANDIA」という架空の国から来たという設定なんですよ。私たちは「KUU人」で、選ばれしものを私たちの世界にいざなうための、雨乞いのような音楽を歌っている感じです。

ーなるほど、それを聞いてしっくりきました。曲は英語で歌われているようですが、どういった内容なのでしょうか。

神様が主人公というか神の目線で曲が書かれていて、曲の内容もKUURANDIAで起こっている物語を歌っているんです。神様が怒って噴火させてはちゃめちゃになってみんなが逃げ惑うという天変地異のようなエピソードとかだったり。日本舞踊からとった音や民謡から得たアイデアなんかもあります。

ー衣装やメイクもとてもユニークです。海外の反応はどうでしょう? 

巫女(みこ)っぽいのをテーマにしてるんですが、今の衣装は高円寺に住んでいた友達が作ってくれたものです。私たちが表現したい雰囲気を良く理解してくれて。メインの3着は彼女が作ってくれたものです。

衣装やメイクが目を引くっていうのもそうだけど、何しろ変な音を出してる、っていうのはあるかもしれないですね(笑)。私たちもそこで他のバンドとの差別化を測っていたりはします。

あと、イギリスで出演したラジオで、「君たちはそんなに日本という国を支持しているのか」って聞かれたんです。別に政治的な傾向でこういう衣装にしているわけではないのに。

たまに日本の伝統音楽を取り扱うことで変な捉え方をされたりもするんですよね。その時に、「自分たちの体の内側から出てくる音やエネルギーを感じた通りナチュラルに表現している」と言ったらびっくりされました。 

SHOKO: Worldwide FM Session

ーナショナリスト的なアプローチやジャポニズムを売りにしていると思われたんでしょうか?

そうみたいですね。あと、そういう感覚的に何かを表現するっていうことはある意味日本人特有なのかな、と逆に思いました。

ー1ヵ月半という長期間のツアーで大変だったことはありますか。

ヨーロッパをツアーした時に、同じ有色人同士、という言い方はよくないかもしれないんですが、差別を受ける側であるはずの人たちに冷たくされたり、彼らの間でさらなる差別があるんだと知った時はショックでしたね。

ー移民社会となっていくヨーロッパで逆にホワイトスプリマシーが増え、様々な場所で「第二のヘイト」を呼んでいるように感じます。

明確な差別を感じたのは、バスでの移動時のことだったんですけど、荷物を預けるために並んでいたんですが、ほかのお客さんの荷物はちゃんとしまってあげていたのに私たちの時だけ、「自分たちでやって」って冷たくあしらわれたり。機材もあるし重い荷物だからマゴマゴしちゃって、運転手が「お前ら早くしろ」って、怒鳴ってきたりで散々でした。その時は他にアジア人の乗客はいなくて。みんなきっと余裕がないのかなあって思ったり。日本でもそうですが、余裕がないことで誰かに優しくできないんじゃないかなと。

ー来年3月からはイギリスでの活動がメインとなるそうですが、今後もKUUNATICをやりながらSHOKOのソロとして活動を続けていく予定ですか?

そうですね。もともと自分が表現したいことはSHOKOがメインなので、ソロ活動に焦点を当てていきたいとは思っていますね。KUUNATICのメンバーもそれは理解してくれているし。

あと、来年の始めにSHOKO名義でHot Buttered RecordからLPを出せることになったので、聴いてもらいたいですね。

ーいろんな社会問題を抱えるヨーロッパで、アーティストとして活動していく意気込みなどあれば教えてください。

ずっとイギリスに行きたかったことと、いろんな人がいる場所で戦ってみたかったということもありました。でも最近は戦う必要もないのかなって思ったりもしています。

何より、こんな社会だからこそ、私の作る音楽を聞いている間だけはその痛みを忘れてほしいな、って思いますね。別世界に連れていってあげたいな。というか、どこか違うところに散歩でもどうですか?みたいなね(笑)。

SHOKO

日本とイギリスをベースに活躍するアシッドフォークシンガーソングライター。 デュームサイケデリックデュオ、TOLCHOCKでドラマーを務めた後、現在はソロをメインに活動中。

ブルースやオルタナティブ、オリエンタルな要素を持った歌声を特徴とし、各地で人々で魅了している。 毎年国内外で数々のパフォーマンスをこなし、2019年ロンドンの『Worldwide radio』に出演。 過去には『Redbull Music Share』や『Redbull Music Festival 2017』などにも出演した。

2020年初頭には、Hot Buttered Recordsからアルバムをリリース予定。サポートメンバーとして、女性3人から成る「トライバル オリエンタルドリーム サイケバンド」KUUNATICのベース、ボーカルも務める。

ライター プロフィール

須賀華呼(すが・はなこ)

東京のさまざまなアンダーグラウンドなヴェニューでイベントをオーガナイズし、現在はバルセロナに在住。DJ活動をメインに、翻訳家、フリーライターとして、カルチャー記事を発信中。

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