今がベストな時期だと思う
ー私が『WORLDWIDE』を初めて聴いたのは、2005年ごろのJ-WAVEでの放送(BBCの放送を日本向けに編集したもの)でした。その後、2016年にインターネット・ラジオ局のWORLDWIDE FMが立ち上がりました。その間だけでも、インターネットの普及などによって音楽を取り巻く環境は大きく変化しましたね。
そうだね。実は、DJとして音楽を人々に伝える活動をする上で、私にとっては今がベストな時期だと思っているよ。今の私は、いろいろなプラットフォームを使って、さまざまな手段で音楽を伝えることができている。こうした状況は、音楽をキュレーションするということにおいて、人々の理解がより深まることにつながっていると思う。
音楽業界全体を見ても、新世代の優れたプロデューサーやミュージシャンがたくさん出てきている。イギリスは、経済的・政治的には良くない状況にあるけれど、クリエーティビティに関してはとても良い状態にあると思う。
ーそれは、苦しい時代にあるからこそ、というふうに言えるのでしょうか。
確かにそうだね。私が今までに経験した最高のイベントを振り返ると、緊張感のある現場が多かったように思う。例えば、セルビアやレバノンなど、戦争の最中または終わったばかりの場所で行われたパーティーは、どれも私にとって忘れがたい、素晴らしいものだった。明日が保証されていない彼らにとっては、1日がとても貴重で、時間を大事にして生きているんだ。そういう人々が集うパーティーは、やはり最高だよ。
イギリスも今、未来が見えない状況にある。そんななか、若者からはとても良いアイデアがたくさん生まれている。彼らは、新しい世代である自分たちにしかできないクリエーティビティを発揮したい、というエネルギーに満ちている。だから、古き良き世代の考え方へのリスペクトはあまりないのだけれど、それでいいと思う。特にジャズに関しては、古い世代が若い人たちを抑えつけていたところがあるので、それに対して新しくて改革的な運動が起こっているのはすばらしいことだと思うよ。