インタビュー:ピーター・バラカン

ライブの魔法とラジオの魔法。バラカン流キュレーションの真髄

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インタビュー:三木邦洋

1980年代から日本のラジオDJ、ブロードキャスターとして古今東西の素晴らしい音楽を紹介してきたピーター・バラカン。日本の音楽文化を格段に豊かにした功労者のひとりであり、多くの音楽ファンから絶対的な信頼を集める彼が監修する音楽フェスティバル『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』が、今回、2年目の開催を迎える。出演者の多くが日本ではほとんど無名ながら、いずれも驚くべき才能を持つミュージシャンであり、同イベントへの出演をきっかけに日本でブレイクしたアーティストもいる。本インタビューでは、出演アーティストの魅力を掘り下げるとともに、ピーター・バラカンの音楽の伝道師=キュレーターとしての真髄を聞いた。

今回はとにかく彼の名前を知ってもらいたい

ー昨年に続いて2度目の開催となる『Peter Barakan's Live Magic!』ですが、昨年初開催してみて手応えはいかがでしたか。

ピーター・バラカン(以下、PB):手応えはすごくありました。(出演者は)日本であまり知られていないアーティストばかりだから心配だったけれど、蓋を開けてみれば土曜日は売り切れましたし、日曜日もいい感じに埋まっていました。ラジオってはたして何人聴いているかわからないから、みんな来るかな、楽しんでもらえるかなというところがあったんですけど、みんなすごくノリノリで聴いてくれた。なので気を良くして、じゃあぜひ来年もやろう!と言っていたんです。

ー出演者は、バラカンさんの番組リスナーには馴染みがあるかもしれませんが、やはりマニアックと言われてしまうメンツですよね。番組リスナー以外にも届いてほしいという思いはありますか。

PB:あります。番組を聴いていない人で会場に足を運んだ人は少ないとは思います。なかなか宣伝できる場が少ないんですね。日本のラジオはあまり洋楽をかけませんから。Inter FMもずいぶんJ-Popが増えました。僕はもう編成にはまったく関わっていないですから。なかなか難しい。

ーいわゆる洋楽離れは実感されるところですか。

PB:触れないから知らない、知らないから買わない、聴かないという、これは当然のなりゆきです。あっちこっちで耳に入っていればね、聴くようになるでしょう。朝のラジオ(20149月に終了した『バラカン・モーニング』)って通勤前に自然と聴いてもらえたんだけど、今は日曜日の2時間だから、なかなか聴く環境がないみたい。だからイベントの宣伝もがんばってます(笑)。Live Magic!』のサポーターズナイトのアーカイブも公開されているので良かったらぜひ見てみてください。

ー出演アーティストをいくつかピックアップしてお話をお聞きしたいんですが、まずはオーストラリアのグルムル(GURRUMUL)。今回初めて知ったんですが素晴らしい歌声ですね。

PB:本当に、心が穏やかになるというか洗われるというか。

ー彼はオーストラリアの先住民なんですか。

PB:そう先住民。彼が話している言語は、おそらく数百人しか話していない言葉で。ほとんど誰もわからないんです。彼のバンドのベースをしているマイケル・ホーネン(Micheal Hohnen)が彼の友達であり代弁者であり通訳でもあるんですが、インタビューなんかも彼が答えている。言葉が通じないだけでなく、すごくシャイなんです。白人とほとんど関わらないような奥地で育ってますから。 

彼は生まれつき盲目なんです。さらに左利きなんですが、右利きのギターを弦を張り替えずそのまま弾いているんですね。目が見えないから、多分初めてギターを手に取ったときからその姿勢で、独学で弾き方を編み出したんでしょう。アルバート・キングなんかもそうですね。

ーどんな活動をしてきた人なんでしょうか。

彼は昔にヨス・インディ(Yothu Yindi)というオーストラリアのバンドにいて、これは国際的にアルバムが出たりしていました。彼の2008年のソロアルバム(邦題『神秘なる大地』)はオーストラリアのレコード産業協会賞のインディー部門で最優秀アルバム賞を受賞して、オーストラリア国内ではかなり話題になっていて、2012年の『エリザベス女王即位60周年記念コンサート』で、女王の前で歌っているんですね。アメリカでは今年にアルバムが出て、オバマ大統領の前でも歌う機会もあったようです。ちょっと意外でしたがクインシー・ジョーンズが絶賛したりもしていて、彼の声は聴けば誰もが反応するでしょう。

私は聴いた途端に、この音楽は東北の被災地の人たちにぜひ聴かせたいと思った。彼の歌だったら、洋楽、邦楽ということを関係なく聴けると思う。メロディーもポリネシア風で少しハワイアンみたいでね。全国で流せば彼は日本でもスターになれるんじゃないかな。「癒し」というと陳腐だけど、彼の声にこそ本当の癒し効果があると思う。あの声にはα波が充満している(笑)。今回はとにかく彼の名前を知ってもらいたい。

ー昨年も思ったのですが、『Live Magic!』のラインナップは日本では無名というだけで、分かりにくいものという意味でのマニアックとは違いますよね。

PB:人が知らないっていうだけのことなんです。なぜ知らないかといったら、誰も聴かせてくれないから。今、普通の音楽好きでもCDを年に10枚買えばいいところだと思う。ほかにどういう(音楽との)出会いの場所があるかといえば、昔だったらラジオがあったし、テレビや雑誌もありますけど、今だったらインターネットでしょう。でもインターネットはなんでもあるけれど、自分から率先していかないと分からないでしょ。ストリーミングだったらプレイリストがあるから、誰か自分の気に入った人をフォローすればいいというやり方がある。そうして、なにかの推薦があって初めて(未知の音楽を)知るというのは、当然のことです。知らないからマニアックなだけ。

今年も、去年来て良かった人は今年も絶対楽しいですからぜひ来てください、ということは言いたい。ちょっと話題になっている出演者では、キューバのダイメ・アロセナ(Dayme Arocena)。彼女はジャイルズ・ピーターソン(Gilles Peterson)が発掘した人で、それから注目されています。強烈な歌手です。

ーダイメの声を初めて聴いた時はどんな印象でしたか。

PB:びっくりしましたよ。彼女まだ23歳ですが、ジャズのセンスもあるし、アフロキューバンな感覚がすごくある。クラシックの素養もあるからすごく丁寧に歌う。スキャットするときはものすごい存在感。ただ者じゃないです。

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きっかけを与える人がいないと触れられないものは多い

ー彼女のようにトラディショナルな要素が大きい音楽に、若いリスナーが反応しているのはなぜなんでしょう。

PB:ひとつにはジャイルズ・ピーターソンジャイルズという紹介者がいるからだと思いますね。ダンスミュージックで育った世代には、彼の信頼度はものすごく厚いから。とはいえ彼はEDMなんかはかけないでしょ。もともとジャズ寄りの人だから。彼が全面的に「この人はすごい」言えば、納得する人がいる。彼が紹介しなければ、ダイメが同じようなウケ方をしたかといえば、それはないでしょう。きっかけはなんでもいいんです。聴いて、お!こりゃいいねとなれば、勝負はできてるんです。

ーなるほど。キュレーターとしてのジャイルスの功績が大きいのと、あと、感性の鋭い人たちのなかでも「新しさ」を追いかける傾向が以前よりずいぶん減っているんじゃないかなと思うんですが。

PB:そうね。イメージ的なものもあるかもしれません。例えば今年、ディアンジェロの『ブラック・メサイア』が出ましたよね。ディアンジェロはすごく今風なイメージを持っているんだけれど、やっていることはプリンスとかスライ(アンド・ザ・ファミリーストーン)とかジェイムズ・ブラウンとかの影響をもろに受けている。今回のアルバムは録音をヴィンテージ機材でやっていて、同期させているものもないから、音的にすごく70年代なんです。で、先日彼のコンサートに行ったけれど、20代の若者たちがいっぱいで。 

ー僕も観ていました。お客さんは若いし、みんなものすごく興奮して観てました。

PB:それでいいんですよ。彼らは70年代のサウンドを聴こうと思ってなくて、ディアンジェロを通してそういうサウンドが良いということに気付けば、素敵なことだと思う。だから、古いものも、きっかけを与える人がどこかにいなくては、触れられないものっていうのは多いです。

ーレコード会社やメディアは、どうしても常に新しいものを、という姿勢になってしまいます。

PB:最新情報に取り憑かれていますよね。新しいもので回転させていかなくてはいけないのは分かりますが、いまは名盤のカタログがたくさんありますから、もうちょっと売り方を工夫しても良さそうなものです。

ーそうした切り口や光の当て方で良い音楽を紹介してくれる存在というのは、日本だとまさにバラカンさんがその筆頭だと思います。僕の友人の話で恐縮なんですが、新しめのロックが好きだった人が、いきなり「ライ・クーダー持ってる?」って聞いてきたことがあったんですね。すごく意外だったんですけど、朝通勤しながら『バラカン・モーニング』で聴いて好きになったと言っていて、そういうことが起きるのか!と。

PB:ラジオはね、そういう魔法を持っているんですよ。聴いて気持ちいいな、と思ったあとにその紹介者が一言二言、言えば良いんです。あんまり深いこと言わなくても、引っかかったならそのまま良いね、となる。

後編:「愛し方」を伝える 

日本のメロディーは必ずしも歌謡曲のサウンドにならなくてもいいんだ

ーなるほど。Jonathan Scales Fourchestraはどういった経緯で呼んだのですか。

PB:僕、デレク・トラックス(Derek Trucks)が大好きなんですけど、デレクのコンサート会場でいつも会うトム・ノグチという人がいるんですけど、彼がよくジャムバンドのYouTubeのリンクを送ってくれるんですよ。

ある時、彼に教えてもらった動画を観ていたら、すごく演奏が良いんだけど映像に写っていないところでスティールドラムの音がしていて、このプレイはいいなあと。ノグチさんにあのスティールドラムは誰?と聞いたら、それがジョナサン・スケイルズだったんです。それでCDを買って、映像も観て、こりゃあいいねえ!と。それで、呼びました。

ーリズムは少しニューヨークのモダンなジャズドラムの感じもありますが、でも、彼らは南部の……。

PB:ノースカロライナです。ジョナサンが今住んでいるアシュヴィルというところは学生街で小さい街ですが、感性のある人たちが集まっている場所で。案外都会疲れした人がノースカロライナに移住したりして、人気みたいですよ。

ージャムバンドに括られているとはいえ似ているものが見当たらないというか。

PB:そう。ジャンルがないんです。僕、そういう音楽好きなんです。あと、スティールドラムの音色も大好きですし。

ースティールドラムの使い方がトロピカルな感じじゃないのもまた面白いです。

PB:彼が作る曲は複雑というか。彼はもともと、バンジョー奏者のベラ・フレック(Bela Fleck)が大好きで、ベラという人はバンジョーでジャズもクラシックもなんでもやってしまうすごく自由な人。彼のザ・フレックトーンズ(ヴィクター・ウッテンがベースを務めている)というバンドも、これもまたジャンルにまったく当てはまらない音楽で、ジョナサンはこのザ・フレックトーンズからかなりの影響を受けているから、ああいった音楽性になっているんだと思います。

ー今回も、濱口祐自さんやTin Panなど日本のアーティストも多く出演しますが。

PB:濱口祐自さんは去年出演して大ブレイクしましたね。僕が彼を知ったのは久保田麻琴さん(Tin Panのスペシャルゲストとして小坂忠とともに出演予定)経由なんですが……久保田さんもまた何歳になっても感性の豊かな人でね。良い音楽っていうのはあの人のDNAの中にあるっていうか。常にいろいろな所で良い音楽を見つけている。よく「面白いのあったよ」ってYouTubeのリンクが貼ってあるだけのメールが来ますが(笑)。

濱口さんのことも2013年の暮れに教えてもらって、それから仲良しになって。今日もこのあと『Live Magic!』のサポーターズナイトの応援のためだけに、わざわざ和歌山から来てくれるんですよ。ほんっとうにね、良い人なんですよ。 

ーギターもお話も素晴らしく魅力的ですよね。バラカンさんはもともと、日本の音楽に興味があって日本にやってきたわけではないと思いますが、バラカンさんが惹かれた日本の音楽というとどんなものがありましたか。

PB:日本にやってきたばかりの頃は、洋楽の感覚がある音楽のほうが馴染みやすかったというのがあったけれど、大滝詠一の『LET'S ONDO AGAIN』は(洋楽の)パロディというだけじゃなく日本の音楽として素晴らしい、傑作だと思いました。レイ・チャールズの『What'd I Say』を音頭でやるなんて(『呆阿津怒哀声音頭』)天才の発想ですよ!大滝さん、ああいったことをもっともっと本気でやってほしかったな。

あとは、70年代に喜納昌吉のアルバムが出たときもぶっとびましたね。沖縄の音楽というものにも初めて出会ったし、『ハイサイおじさん』はロックが好きだった身としてもすっと入っていけた。松村和子の『帰ってこいよ』も好きでしたね。あれを聴いたときに、日本のメロディーは必ずしも歌謡曲のサウンドにならなくてもいいんだと、もっと自由な発想でやれば面白いものができるじゃないかと思った。

ーそのへんのお話をお聞きしたいのですが、今回、OKI DUB AINU BANDMAREWREWといったアーティストも出ます。彼らなんかはまさにアイヌという土着の音楽を大切にしている人たちですが、そうした伝統音楽や民謡のような音楽に、日本人はもっと積極的になるべきだと考えますか。

PB:僕はそう思いますし、外から日本に来た多くの人もそう思うでしょう。けれど逆に、日本人でイギリスのトラッドフォークが好きな人が結構いますけど、僕にとってはあまり面白くない。自分の国の一番土着的な音楽だからなのか。アイルランドのトラッドフォークなんかは好きなんですけど、あれは日本で沖縄の音楽を聴くようなもので、エキゾチックなんですね。近すぎるとつまらなく聴こえるものなのかな、と。だから、日本人も民謡などに対して古くさくてクサいと思ってしまうのかもしれません。

ーアメリカにおけるカントリーも、伝統的なものが継承されているとは言いがたい形になっていますね。J-POPにおける「レゲエ」にも近いものがあります。

PB:今アメリカでカントリーと呼ばれているものは南部なまりのポップ、またはロックですよ。ナッシュヴィルで作られているから、という程度のものじゃないかな。カントリーのラジオ局でかかっているからというのも大きいし、本当のカントリーミュージックとはなんの関係もない。

ー民謡も、たとえばクラブミュージック的なアプローチをしたものなんかはすごく良いものがあったりして、そういった方向はあると思うんですけど。

PB:そういうのはアリだと思いますよ。例えばダブでやるとかね。フランスのフィリップ・コーエン=ソラル(Philippe Cohen Solal)というDJが作ったゴタン・プロジェクト(Gotan Project)というのがありますけど、これは、パリ在住の亡命してきたアルゼンチンのミュージシャンを集めて、彼がDJとして普段出しているエレクトロニックなビートを絡ませてやろうとしたプロジェクト。はじめはしっくり来なくて悩んでいたそうですが、ある日ダブ処理をやってみて「これだ!」となって仕上げたんですね。そうしたらこれがヨーロッパ中で大ヒットしてね。タンゴと、ビートと、ダブの傑作です。僕は普段クラブミュージックは聴かないけれどこれは素晴らしいです。

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鉄則があるとすれば、聴いてくれる相手の過小評価をしないこと

ー今年の『Live Magic!』のサイト上にも掲載されていますが、去年のバラカンさんの来日40周年を記念して色々なアーティストがコメントを寄せていたなかで、チボ・マットの本田ゆかさんのコメントが印象に残っているんですが。

PB:はい、ありましたね。本田さんはなんと言ってくれていたかな……。

ー老子の「お腹がすいている人に魚を一匹あげたらその人はその一日食べるものができる。その人に魚の釣り方を教えてあげたらその人は一生食べることができる」という故事を引用していて、本田さんは「バラカンさんにはその日の飢えを満たすお魚(音楽)をもらった上に、一生心を満たして行く方法『音楽の愛し方』を教えてもらった」と。

PB:嬉しいな、それは嬉しい。

ーこれはまさにそうだと思います。なかなか「愛し方」のほうを教えてくれる人、教えられる人は少ないです。

PB:教えられるものじゃないですよ。自分が愛することが、放送の端々から伝わるということだと思うんですよ。僕も愛し方を伝えようなんて思ってないですから。音楽に対する情熱がそのまま伝わっているだけ。評論家は理屈で人を説得する方法論だと思うんですけど、僕は文章が得意じゃないですから、やっぱり放送に向いている。放送ではシンプルなこと言っていても別にいいわけじゃないですか。よく言っていることですが、「ジャーナリズムは技術だとしたらラジオは情熱だ」と。ラジオは情熱を持って曲を紹介すればそれが伝わる。だから愛し方を教えてもらったという人がいるのなら、そういうことじゃないかな。この上なく嬉しいです。

ー愛し方を知ることは今、重要なことだと思います。これは先ほどの「インターネットでは自分から率先していかないとわからない」ということに繋がると思うんですけど、結局愛し方を知っていないと積極的で継続的な接し方が生まれない。

PB:好きだから好奇心が湧いてくる、好奇心が湧いてきたらいろいろと検索してみる。芋づる式に、無意識のうちに面白いものに辿り着く。僕はずっとそうやってきましたから、好奇心があるかないか。その好奇心を刺激できるかどうかが、僕のような仕事に携わっているものの役目かな。音楽配信サービスも、名のある人でも友達でもいいから、なんらかのかたちでキュレイションしてくれる人がいたほうが、色々なものに触れる可能性が増えると思う。

ーラジオDJはまさにそのお手本になりますね。 

PB:そう。でも日本では残念ながらDJは勘違いされていて、日本のラジオDJはアナウンサーだったりパーソナリティー。実際に曲を選んで聴かせているDJはほとんどいないです。それはラジオ局がそれを求めていないから、という恐ろしい現実なんです(笑)。

例えばジャイルズ・ピーターソンはクラブもラジオもオールマイティーなんです。日本でも彼のようにどちらもできる人がいればすごく強い。僕は残念ながら、クラブのほうは苦手なので。まあ、年も年ですし(笑)。

初めてジャイルズと出会ったのは、J-WAVEの番組での対談だったんですよ。彼は僕の放送は当然聴いたことがないから、スタッフがその週のプレイリストを見せたんですよ。そうしたら開口一番、「君の選曲は結構メインストリームだね」と言われたんです。彼にしてみればそうなんですよ。でも日本の放送界では決してメインストリームではない。やっぱり物事は相対的なんだなあと思いました。

ーバラカンさんは、なにかを伝えるということに対して、マナーのようなものをご自身に設けていますか。

PB:マナーというかね、聴いてくれる相手の過小評価をしないこと。時々マニアックなものもあるかもしれないけど、「どうせこんなもの知らないだろうから」ということで紹介しない、ということはしない。一定の知的好奇心というかね、人にはそれがあるからどんな音楽でも紹介の仕方次第で分かってくれるだろうと。鉄則があるとすればそれが僕の鉄則。それはおおむね成功していると思う。

ーなるほど。レコード、CD、データといったメディアの変遷とともに音楽の聴かれ方も変化してきましたが、バラカンさんは現状と今後をどのように見ていらっしゃいますか。 

PB:今また、アナログレコードの人気が再び高まっているでしょう。あれは物珍しさも多少あると思うんですけど、実際にレコード盤って大事にして扱ってあげないと音が悪くなる。そういうものを少し使い慣れると、音楽の聴き方まで丁寧になると思うんですよ。

CDが出てきたときにリモコンも一緒に出てきて、この曲はいいやってなったら簡単に飛ばせるようになった。その時点から音楽の聴き方が決定的に変わったと思う。それから(データになって)形がなくなっていって、どんどん消費的で使い捨て感覚の聴き方になっていったのはこれも当然のなりゆきですよね。だから逆に今、アナログレコードで音楽を聴くのはとても意義のあることだと思う。

まあ、これからの流れは、こればっかりは分かれば僕大金持ちになれちゃうけど(笑)。配信やYouTubeで聴いて、これはそばに置きたいと思ったら買えば良いし、全部ストリーミングでいつでも好きなものを聴くというのももちろんありだと思う。だから、音楽を大事にする、ということが残れば僕は良いと思う。

『バラカン・ビート』(Inter FMのラジオ番組)では『名盤片面』というコーナーがあるんですけど、アルバムの片面を全部続けて聴くというのはとても良いなと。ゆったりとした気持ちになるし、音楽がもっと深くにじみ出る。たまにこういう機会があっても良いんじゃないかなと思いますね。あと、レコードのシングル盤の音の良さなんか、感激しますよ。

ー僕はレコードを手に取ったのは最近なのですが、同じ曲でもLP12インチの音の違いには驚きました。

PB:ね(笑)。音量を下げないといけないくらい、太い音がするでしょう。

ー本日はありがとうございました。『Peter Barakan's Live Magic!』とても楽しみです。

PB:絶対楽しいですから、皆さんぜひいらしてください。ヘッドライナーを呼んでそれで人を集める代りに、フェスティヴァル自体をヘッドライナーの存在に育てて行きたいと思っています。毎年恒例のお祭りとして定着させたいですね。音楽がもちろん第一ですが、販売するTシャツやら飲食やら、すべての面でほかとはちょっと違うフェスティヴァルと感じていただければ嬉しいです。

『Peter Barakan's Live Magic!』の詳しい情報はこちら

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