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国際男性デーに考える「男性である」ということは?

SEX:私の場合 #14 職業・世代の異なる9人にアンケート

Hisato Hayashi
寄稿:: Honoka Yamasaki
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タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > #14 国際男性デーに考える「男性である」ということは?

11月19日は、1999年、トリニダード・トバコにある西インド諸島大学の歴史講師、ジェローム・ティールックシン博士により設立された「国際男性デー」。「国際女性デー」と比べるとまだ馴染みがない言葉かもしれないが、男性が直面するさまざまな社会問題に焦点を当て、意識を広げる機会となっている。 

家父長制をはじめとするさまざまな社会システムでは、性別で区別された「特権」が存在する。また、職場や家庭、パートナーとの関わり方など、生きる上でのさまざまな場面で「男らしさ」の概念は無意識的に染み付いている。つまり、男性について考えることは、社会について考えることだ。

今回は、国際男性デーに合わせて「男性とは」についてアンケートを実施。20〜40代の9人の回答を掲載する。

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「一人ひとりの性質に目を向けられるように」

中橋悠祐(37歳)/さまざまなカルチャーをミックスする場所作りをする人

ーあなたの活動内容は? 

銭湯の経営を経て、現在はさまざまなカルチャーをミックスする場所作りをしています。

ーあなたにとって男性であるということは?

男性であるということを意識的に考えたことはないです。ただ、幼少期に漫画などから影響を受けてステレオタイプな強い男というものに憧れていたことはあります。 

ー社会で男性であるということは?

男性であるというだけで物事がスムーズに運ぶことがあると思います。銭湯の経営をしていた時にも、女性スタッフにだけ横柄な態度をとるお客さんがいたこともありました。

ー反対に、男性だからこそ得られる特権はありますか?

女性に比べて性犯罪に遭うリスクが少なく、行動の制限が少ない。

ーあなたのロールモデルは? 

両津勘吉

ー幼少期に触れてきたコンテンツは?

音楽、映画、漫画、ゲーム

ー社会で性別という概念がどのように変わっていくべきだと思いますか? 

生物学的な性別はあくまで生物学的なものであって、社会における性別は複雑で簡単に括れるようなものではない、という認識になっていくといいと思います。漠然と男性女性の2つで分けるのではなく、一人ひとりの性質に目を向けられるようになれば多様性への理解も深まっていくのではないでしょうか。

「ステレオタイプとの葛藤」

ふく(26歳)/製品開発エンジニア

ーあなたにとって男性であるということは?

ステレオタイプとの葛藤。

ー社会で男性であるということは?

力強さを求められる。

ー性別が自身の活動に影響を及ぼすことは?

ゲイであり、恋愛の話を他人にするのは気が引ける。 

ー男性ならではの障壁はありますか?

弱さは許されない。レールから外れた男性は、女性以上に軽蔑される。 

ー反対に、男性だからこそ得られる特権はありますか?

仕事の機会は男性の方が恵まれていると思う。 

ー幼少期に触れてきたコンテンツは?

「仮面ライダー」「ニコニコ動画」

ー社会で性別という概念がどのように変わっていくべきだと思いますか?

男ならこうすべき、女ならこうすべきという価値観は壊していくべきだと思う。求められる姿からズレた側の立場はつらい。

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「下駄を履いている感じ」

手塚マキ(46歳)/会社経営

ーあなたにとって男性であるということは?

肉体的なこと。

ー社会で男性であるということは?

下駄(げた)を履いている感じ。

ー性別が自身の活動に影響を及ぼすことは?

ジェンダーギャップが著しい資本主義社会でビジネスをするということは、それを受け入れてビジネスを作らなければいけない。それはある意味、現状を助長することにもなっている自覚は当然あり、その矛盾は常に自戒として心に持っているようにしている。

ー男性ならではの障壁はありますか?

ない。

ー反対に、男性だからこそ得られる特権はありますか?

特権ばかり。 

ーあなたのロールモデルは?

上野千鶴子

「さまざまな色の男性がいるということ」

のあ くん。(21歳)/ギャル

ー活動内容は?

モデル、インフルエンサー、メークアップアーティスト、スタイリスト、空間デザイナー、ドラァグクイーン。さまざまなことをやっているので、肩書の活動内容はギャル(笑)。

ーあなたにとって男性であるということは?

一つの枠に収まった男性ではなく、さまざまな色の男性がいるということ。そして、それを世の中に発信すること。

ー社会で男性であるということは?

僕の嫌いな「男らしく」いることかな。

ーあなたのロールモデルは?

自分自身! つまりいない! 

ー幼少期に触れてきたコンテンツは?

世間で女の子が好むとされているさまざまなもの。

ー社会で性別という概念がどのように変わっていくべきだと思いますか?

「性別」とかそういう言葉がなくなって、「この人はこの人」「あの人はあの人」「自分は自分!」という考えが浸透してほしい。「十人十色、みんな違ってみんないい」という考えが広がれば、幸せになると思います。

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「弱みを見せられない存在」

mm(39歳)/会社員、DJ、オーガナイザー、演劇脚本家

ーあなたにとって男性であるということは?

性別であり権利であり義務であり基本ステータス。

ー社会で男性であるということは?

力が強い。弱みを見せられない存在。

ー性別が自身の活動に影響を及ぼすことは?

7割優遇(女性と比べて)、3割重圧

ー男性ならではの障壁はありますか?

弱音を吐けない。自己責任の要求。

ー反対に、男性だからこそ得られる特権はありますか?

男性向けサービスの多さ。 

ーあなたのロールモデルは?

伊藤計劃、松尾スズキ

ー社会で性別という概念がどのように変わっていくべきだと思いますか?

どうしようもない特性を意識しつつフェアであるようお互い意識していく。

「ジェンダー・ギャップ指数125位の国で」

川上幸之介(44歳)/教員、キュレーター、作家

ーあなたにとって男性であるということは?

私の家庭では、幼少期から男らしさを求められてきたので、「男性であるということは?」といった言葉を聞くと、反射的に強く、たくましくといったマッチョなイメージが連想されます。ちょっとつらいです。 

ー社会で男性であるということは?

あらゆる社会を見れば明らかなように、男性は特権的な環境にあると思います。これまでにない、あるいは、まだ名付けられていない欲望やアイデンティティー、コミュニティーがあるということが分かるにつれて、ただただ性とは、社会的に構築された幻想だということが分かってきました。

ー性別が自身の活動に影響を及ぼすことは?

教育現場であれば、生徒が私に接する時に性別的な面で対応を変えることがあると思います。それは時にネガティブであり、時に良い面もあると思うのですが、具体的な事例は今思いつきません。現代アートの世界では、そもそも西洋白人男性中心主義史観で描かれてきており、その特権性を批判的に検討してきた歴史があります。それによっていまだ問題はありますが、ジェンダー、人種といった問題と向き合い、変革を促してきました。その中にいるので、キュレーションをする際はそこを意識的に考えるようにしています。

ー男性ならではの障壁はありますか?

特権はありますが、障壁は感じません。アカデミックな世界では、過去の男性特権を是正しようという動きがあり、それを障壁と捉える保守的な人もいますが、どんどん進めていくべきだと思います。

ー反対に、男性だからこそ得られる特権はありますか?

特権だらけだと思います。社会制度、給与体系など、挙げたらキリがないです。例えば、コロナ禍での非正規雇用労働者の女性は男性の2倍以上になり、女性の自殺者数は8割も増えました。また、毎年公表されるジェンダー・ギャップ指数を見れば明らかなように、日本は世界で146カ国中125位(2023年)で、女性の給与は男性の約7割です。

ー幼少期に触れてきたコンテンツは?

本です。

ー社会で性別という概念がどのように変わっていくべきだと思いますか?

友人の河口和也(クィア・スタディーズ、社会学理論、広島修道大学)さんの言葉にもあるように、「人の数だけ多様で常に変化することもあり得る性の在り方を『異性愛』『両性愛』『性愛』といったラベルで語り尽くすことはできない」と私も思います。いまだにこの社会にはびこるのは、男女二元論という規範です。この概念が融解して、全ての制度もいち早くそれに伴って変化していくことを願っています。

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「性別を意識しなくて済むこと」

小西(27歳)/主夫

ーあなたにとって男性であるということは?

性別を意識しなくて済むこと。鏡をみるのが楽しいこと。 

ー社会で男性であるということは?

異性愛者としての扱いを受けること。 

ー性別が自身の活動に影響を及ぼすことは?

学校教育を終えた今、男性中心企業で働かない限り、ほとんど影響がない気がします。女性に警戒されない振る舞いは求められますかね。 

ー男性ならではの障壁はありますか?

一方的に稼ぎ手役割を期待する発言を受ける時。私はトランスジェンダーの男性であり、自分的には手術代を工面していた頃の方が経済的に苦しく、一通り手術が済んでからは金銭的に解放された気分でした。

しかし世間的には低収入の貧困男性にすぎないので、個人の喜びとはまったく別に、「男なら/モテたいなら稼げ」と言われて意味が分からないと感じました。

ー反対に、男性だからこそ得られる特権はありますか?

夜道を歩けること、郵便配達を受ける際の警戒が少ないこと、女性差別を元にした犯罪に自分自身の危機感が少ないこと、すっぴんでも誰も文句を言わないことなど、女性差別を受けにくいこと。あとは単純に肉体は好きです。

ーあなたのロールモデルは?

肯定的な男性のロールモデルは思い浮かびません。なりたくない男性像はたくさん浮かびます。 

ー幼少期に触れてきたコンテンツは?

「仮面ライダー」「ムシキング」「To LOVEる」(漫画)

ー社会で性別という概念がどのように変わっていくべきだと思いますか?

社会的には性差別のない世界になり、らしさの強要もなくなると良いです。いずれにせよ個人的には、男性からの評価が高そうなものを好み続けると思いますが。

「マジョリティー側の人間であることを常に意識」

中村佳太(42歳)/コーヒー焙煎(ばいせん)家、エッセイスト

ーあなたの活動内容は?

フェミニスト、アライ(*)として活動しています。雑誌にエッセーを寄稿したり、ニュースレターを配信したり。執筆活動のほか、地方議会にパートナーシップ制度の導入を求める陳情を提出するなどのアクションもしています。

* 味方を表す言葉。LGBTQ+の活動に寄与し、支援する人のこと

ーあなたにとって男性であるということは?

シスヘテロ男性を自認していますが、以前はそのことを特に意識していませんでした(意識せずに済んでいた)。フェミニズムやジェンダーについて学んでからは「マジョリティーとして構造的差別の解消に責任を負うこと」として認識しています。

ー社会で男性であるということは?

「特権を持つこと」「ジェンダーを理由に差別を受けずに済むこと」※あくまで「シス男性」について。トランス男性の場合は、異なる意味を持つと思います。

ー性別が自身の活動に影響を及ぼすことは?

「自身がマジョリティー(特権)側の人間である」ことは、常に意識して活動しています。例えば「男だって大変だよね」と男性に寄り添うスタイルを取らないことや、「ジェンダー平等によって男性も生きやすい社会になる」など、男性にとってのメリットを並べることもしないようにしています。たとえそれが事実だとしても、それは男性が言うべきことではないと考えるからです。

ー男性ならではの障壁はありますか?

特にありません。いわゆる「男らしさの呪縛」(金を稼げ、弱音をはくな、競争に勝てなど)も幸いほとんど言われたことはなく、言われても気にせずに生きてこられました。

ー反対に、男性だからこそ得られる特権はありますか?

人生のあらゆる面で特権だらけです。何か選択をする時、何か行動を起こす時、「男性であること」を理由にそれが妨げられることがなかったのは、全て特権だったと思います。今このアンケートに答える機会をもらっていることも、そうした特権により獲得してきたスキルやポジションがあるからこそなので、特権の効力の一つですよね。

ー幼少期に触れてきたコンテンツは?

幼少期はハリウッド全盛期で、テレビで多くのハリウッド映画を見て育ちました。アーノルド・シュワルツェネッガーやハリソン・フォードなどの映画からは、ジェンダーステレオタイプを学んでしまっていたのかもしれません。

ー社会で性別という概念がどのように変わっていくべきだと思いますか?

「“性別という概念”は社会が一様に決めることではなく、一人一人が望むように捉えたらいい」と思える社会になってほしいです。

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「性別のラベリングによって規定されるような柔な個ではない」

小寺創太(27歳)/いる派

ーあなたにとって男性であるということは? 

そもそもなぜ私の性自認が「男性」だと理解されているのかはまず疑問ですが、性別のラベリングによって規定されるような柔(やわ)な個ではないので、気にしないです。

ー社会で男性であるということは?

社会は今まさに、このように、男か女かそれ以外か、何かしらの分類を求めてくるので、それは私の外面に貼り付ける「分かりやすい」製品情報として、社会? が求めるとするのなら、そこに提出するまでに過ぎない、事務的なものなので、気にしません。

ー性別が自身の活動に影響を及ぼすことは?

どんな性別・属性・環境にいたとしても、影響を受けないことはまず有り得ず、つまり私の性と活動及び作品は密接に関係するからこそ、逆説的には無関係です。以前はインセル(*)的なものに関心を示し、作品を作ったことがありますが、今は過去ほどの関心はないです。 

*インターネット上で生まれた言葉の一つで、望まない禁欲者、非自発的な独身者といった意味

ー男性ならではの障壁はありますか?

障壁は性別単体によって引き起こされるものではなく、さまざまな因果、業が重なり合って生まれるものだと思います。「ならでは」は思いつきませんが、障壁がある人間、身体こそ美しいと感じる私のある種ヒロイックな精神/性癖は、社会一般が認める男性性と重なるところもあるかもしれませんね。

ー反対に、男性だからこそ得られる特権はありますか?

男性で即座に得られる特権は無いでしょう。悪くいえばライフハック的に、社会の求める男性性を無意識に無自覚に演じられる男性が利益を上げることはあるでしょう。 

ー社会で性別という概念がどのように変わっていくべきだと思いますか?

資本主義に包摂されているだけの流行に乗った隙間産業的な「性」のコンテンツ化は飽きました。フレーバーとして「性」を添加した安直な代物ではなく、カルマとして「性」に囚われた人間が批評性を持ち創った作品を目にしたい。

Contributor

Honoka Yamasaki

レズビアン当事者の視点からライターとしてジェンダーやLGBTQ+に関する発信をする傍ら、新宿二丁目を中心に行われるクィアイベントでダンサーとして活動。

自身の連載には、タイムアウト東京「SEX:私の場合」、manmam「二丁目の性態図鑑」、IRIS「トランスジェンダーとして生きてきた軌跡」があり、新宿二丁目やクィアコミュニティーにいる人たちを取材している。

また、レズビアンをはじめとしたセクマイ女性に向けた共感型SNS「PIAMY」の広報に携わり、レズビアンコミュニティーに向けた活動を行っている。

https://www.instagram.com/honoka_yamasaki/

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クィアが存在するのはプライドウィークの2週間だけではない。少数派とされているLGBTQ+は、職場の同僚や友達、家族の中にも多くいる。本記事では、「いない」のではなく「いないこととされている」クィアたちの本音を「QUEER VOICE」 として発表。全国の当事者を対象にアンケートを実施し、17歳から57歳までと幅広い年齢層の41人からの回答を受けた。

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  • LGBT

私の「さが」とあなたの「さが」はまったく違う。枠としてではなく個人としてフォーカスすることで、その人のリアルが見えてくる——。「性」についてさまざまな人に聞くインタビューシリーズ。

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