Photo: 樫部孝史、写真提供:NPO法人ダンスアーカイヴ構想
KAZUO OHNO(1995)
監督:ダニエル・シュミット
舞台:晴海埠頭、お台場
スイス出身の世界的映画監督、ダニエル・シュミットによって撮られた、舞踏家、大野一雄のドキュメンタリー。愛知芸術文化センターは、1990年代初頭からほぼ年に1作品のペースで「身体」を題材としたオリジナル映像作品を制作しており、今作はその1本。坂東玉三郎を追ったドキュメンタリー『書かれた顔』(1995)と並行して撮られた経緯がある。
言うまでもなく大野は世界的な人物であり、さまざまな映像作家がその舞踏をキャメラに収めてきたが、この15分の短編映画はその中でも群を抜いた美しさだ。台場の海を背景に、晴海埠頭のとある場所で撮影されたという映像は、虚空と対峙(たいじ)するかのような大野の舞踏と、ほとんど奇跡的な拮抗(きっこう)を見せる。当時建設途中のフジテレビ新社屋やレインボーブリッジを走行する車、鳥の羽ばたきや、キャメラと背景の間に存在する濃密な空気までが、巨匠レナート・ベルタの撮影によって捉えられる。
照明が施された夜の埠頭へとカットがつながり、フランツ・リストの『詩的で宗教的な調べ』のピアノの音色が、レクオーナ・キューバン・ボーイズの『アマポーラ』に移りゆく編集は、鳥肌ものの美しさだ。
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