1. アカルイミライ(2003年)
監督:黒沢清
『第56回 カンヌ国際映画祭』(2003年)コンペティション部門に正式出品された、若き青年たちの今を描く黒沢清の作品。
デジタル画面がもたらす粒子のざらつきや、一向に晴れわたることのない空と川とのコントラストが際立つなか、東京の河川で増殖したアカクラゲの大群たちは、守(浅野忠信)が自死の前に遺した「行け」の合図を信じて海を目指す。
同潤会青山アパート(現在の表参道ヒルズ)の舗道をチェ・ゲバラのTシャツを着た少年たちがあてもなくさまよい歩くラストシーンは忘れがたいが、雄二(オダギリジョー)が夢で見た「明るい未来」が彼らに訪れたのか、その答えは17年後の今も分からないところではある。
しかし雄二いわく、いつかクラゲたちはこの東京に戻って来る。だからクラゲたちの帰還を信じて、いつになれどもその未来を待っていたい。こんな時代だからこそ、本作を数年ぶりに見直して強くそう思った。