メリー・アン・シングルトンの物語
サンフランシスコを舞台にLGBTQ+を巡る歴史が描かれていて、勉強になるなと思いながら観たNetflixオリジナルドラマ。2019年のプライド月間に合わせて製作されたというだけあって、作り手の情熱を感じる作品となっている。
内容は、20年振りにサンフランシスコに戻ったメリー・アン、かつて彼女が置き去りにした娘と元夫、メリー・アンが暮らしていたアパートの家主・アンナや、アパートの現在の住人たち、多様な人々の人生が描かれる群像劇。親子の歴史や街の歴史、再開発(ジェントリフィケーション)やそれに対する抵抗が描かれており、歴史を動かしてきたのはやはり人なのだと思わされる。
現在のプライドパレードのようなLGBTQ+の権利運動のきっかけとして、「ストーン・ウォールの暴動(蜂起)」が有名だが、それに先んじた出来事といわれる「コンプトンズ・カフェテリア」での事件がこのドラマにも登場。こうした暴動の中心にいたのは、警察による差別的な取り締まりに抵抗したトランスジェンダーの人々だったといわれている。
「また、運動の初期は白人ゲイ男性が主導権を握り、トランス排斥の動きもあったそうです。今もLGBTQ+内でのパワーバランスについては課題がありますが、少なくとも、トランスの人々の権利を軽視せず、歴史を残しておこうとする動きがあるからこのようなドラマも作られているのだろうと考えました。
現在の日本でも運動がゲイ男性中心になりがちな状況はあると感じますが、同じ社会にさまざまな人が生きていると教えてくれるこのドラマが、それについて考えるきっかけになればと思います」