多様性とか言ってるけど、現実は全然違うじゃん
—女優として活躍する傍ら、Get in touchという団体の代表としても活動されていますが、どうしてこのような活動を始めようと思ったのでしょうか。
活動自体を始めたのは25年前で、家でテレビを見ていたときに17歳の少年のドキュメントが流れてきたことがきっかけでした。彼は自分が慢性骨髄性白血病であると告白していて。VTRが終わって司会者のコメントに注目していたら「頑張ってほしいですね」と締めたんです。私は違和感を覚えました。頑張っている彼に対して「頑張ってください」と言うのは違うのではないかと。なぜ17歳の多感な時期の少年が、全国ネットで自分の病気を伝えたのだろうか。絶対何かメッセージがあったはずなのに、その番組だとそれが伝わらなかった。なので彼を探しました。そして、彼を見つけ出して話を伺うと、その年に骨髄バンクができたんですけど、その登録を募りたかったと。じゃあ骨髄バンクを知ってもらう活動をしようということでポスターを作りました。するといろんな患者さんと出会うようになって、活動の幅も広がっていきました。それでも私は、長い間団体を作る気はありませんでした。団体行動が苦手なの(笑)。でも、2011年3月11日の東日本大震災の被災地の様子を知ったときに、団体を作らなければと覚悟を決めたんです。
—それはなぜですか。
車いすの人が「ここはバリアフリーじゃないから、バリアフリーの避難所に行かれたらどうですか」って悪気なく入所を断られたり、自閉症の男の子がパニックを起こしたときに「うるさい、静かにさせろ」って怒鳴る人がいたりとか、普段から生き辛さを感じている人たちが、社会が不安に陥ったときにより追い詰められてしまうという実態を知りました。自閉症の男の子の母親は、毛布で息子さんを押さえ込んで皆に謝ったそうです。男の子は、その毛布から2、3日出てこれなくなってしまった。そのほかにも、ニュースにならないいろんなことがあって。「みんなで助け合えない現実がある」と知り、なぜだろうと考えたんです。普段から色々な人たちと生きているということを体験していないからではないかと思いました。繋がるとか、絆とか、寄り添うとか、日本は一つとか。綺麗な言葉はたくさんメディアに出て「よし頑張ろう」ってなったけど、そこで頑張れない人たちもいる。まだ希望を見い出せない人たちもいるということを伝えられないことが、すごくショックだったんですよ。多様性とか言ってるけど、現実は全然違うじゃんって。行政が変わらなければ制度も変わらないので、縦割りのNPOや企業、政治家たちに横串を通したい。企業と団体が手を繋ごう、政治家とも手を繋ごうということで、これまで関わってきた人たちに声をかけてGet in touchを立ち上げました。