見どころ:包平『大包平』
日本最古にして最大の博物館で11万件以上を所蔵している同館。常設展では現在、古備前の刀工包平による『大包平』を見ることができる。この刀は名品という言葉でしか形容できない名品だ。真偽は不明ながら、マッカーサーが欲しがったときに自由の女神と交換ならば、と関係者が応じたという逸話も伝わっている。
その刃文と地鉄(じがね)の美しさは他に比類がない。夢中になって見ていると、全身が目になって深淵を覗き込むような気持ちになるものだ。しかし、この作品の場合はそのように身体感覚を失っている最中に、突然深みから引き戻され、自分自身が刀に奪われるようなゾクゾクするトリップ感を体験できることだろう。その感覚を覚える瞬間が、この刀を美しいと思えるポイントだ。
大ぶりでありながらほかの刀剣に比して軽い重量は作刀技術の高さをも示している。一生に一度見るべき刀があるとすれば、それがこの作品なのだ。