Keisuke Tanigawa
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トキワ荘マンガミュージアムでしかできない5のこと

1950年代ににタイムスリップ、漫画家たちの生活をのぞいてみよう

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手塚治虫をはじめ、日本を代表する漫画家たちが青春時代を過ごした2階建ての木造アパート、トキワ荘。1952年12月に棟上げされたトキワ荘は、老朽化のため1982年12月に取り壊されてしまったが、2020年7月7日(火)、その再現施設である豊島区立トキワ荘マンガミュージアムが南長崎花咲公園内に誕生する。

トキワ荘の看板。形状や書体は時代によって変化しているため、同施設では漫画家たちが暮らした当時の残された写真を参考に形状は四角柱に、書体は2種類用いて再現している

同ミュージアムでは、アパートの大きさから外観、共同炊事場、トイレ、そして何人かの漫画家の部屋までを、当時実際に住んでいた漫画家の先生に話を聞きながらできるだけ忠実に再現。足を踏み入れれば、そこはまさに昭和20〜30年代の漫画家たちが生活を送っていたあの伝説のアパートだ。ここでは、見どころ満載のトキワ荘マンガミュージアムでしか体験できない五つのことを紹介する

新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として、当面の間は予約制での入館になるとのこと。入館予約のシステムや注意事項は公式サイトに記されているので、予約をする際は併せてチェックしておこう。

1. 階段の音でタイムスリップする。

レトロな玄関から靴を脱いで入館すると、まずは2階から順に見ていく導線になっている(2020年7月7日現在)。施設に足を踏み入れたこの瞬間、かなり気分が高まっていることとは思うが、この階段を何気なく上ってしまうことはないように。階段を上るごとにする「みしっ、みしっ」というきしみ音にも注目してほしいのだ。

もちろん、これはこの建物に何か欠陥があるというわけではない。当時の雰囲気を再現するために、あえてこの音が出るような設計にしているのだ。かなり細かい部分だが、この音があることによって、我々は意識せずともどこか懐かしさを感じることができ、一気に当時のトキワ荘へとタイムスリップすることができる。

2. 漫画家たちの生活を垣間見る。

その再現度の高さは、2階で見ることのできるトイレや共同炊事場、彼らが生活を送った部屋も同様だ。

水野英子や山内ジョージといった漫画家の部屋は、実際に先生たちに監修してもらいながら再現しており、当時トキワ荘で使っていて今でも日常で使用している家具などは、実際に見せてもらいながら忠実に再現したのだそう。誰かが原稿を落としそうになったら互いに助け合っていたなんて話も聞いたが、彼らのにぎやかな笑い声が今にも聞こえてきそうだ。

共同炊事場(photo: Keisuke Tanigawa)

調理台の上に置いてあるラーメンのどんぶりは、トキワ荘の住人がよく行ったという中華料理店、松葉のもの。当時使われていたどんぶりが三つ残っており、その一つを分けてもらって展示している(photo: Keisuke Tanigawa)

また、石ノ森章太郎のアシスタントとして、石ノ森の仕事部屋に住んでいた山内ジョージの部屋には、入り口に映画のフィルムが山積みに。これらは石ノ森のものだが、自室がいっぱいでおくことができなかったため、この部屋に置いていたのだそうだ。各部屋には解説もついているので、このように部屋のディスプレイを見ながら、当時のエピソードを知ることができるのも面白い。

山内ジョージの部屋。入居当初は一人でアシスタントをしていたが、その後、長田吉夫が加わっため机が二つある(photo: Keisuke Tanigawa)

ある部屋にあった栄養補給飲料。こういった遊び心も随所に散りばめられているので隅々まで要チェックだ(photo: Keisuke Tanigawa)

そのほか、1956年(昭和31年)の物価がまとめられたパネルなどが飾られている部屋も。いろいろな角度から当時の漫画家たちの生活を垣間見てみよう。

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3. ペン入れを体験してみる。

2階には、体験型のコンテンツを提供する部屋も設置。16号室では漫画家になりきって写真を撮ることが、17号室ではプロが使う道具でワークシートを元にマンガ家体験をすることができる。

ペン入れ体験用の漫画の下書きは、このコンテンツ用にオリジナルで作成。少女漫画版と少年漫画版の2種類が用意されている。また、写真は作業中の様子を感じ取れる机の前に座り、ベレー帽やはんてんを身に着けて撮影することが可能だ。


※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在17号室でのペン入れ体験は休止中。状況が落ち着き次第、再開される。
※同じく、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、16号室でのベレー帽やはんてんの貸し出しは休止中。こちらも状況が落ち着き次第、再開される。机の前に座っての撮影自体は可能。

4. 企画展は毎回チェックする。

1階に降りたら、まずは企画展をチェックしよう。企画展示室では、定期的に内容を変えながら漫画に関連した展示を行っている。

現在は、豊島区立トキワ荘マンガミュージアムの誕生に力を貸してくれた鈴木伸一、水野英子、よこたとくお、山内ジョージの作品を展示。なかには、漫画を描く際に使用していた水野の卓上ライトや、ガムテープで補修しながら大切に使われていた山内の作業机なども展示されている。

また、トキワ荘とゆかりの深い雑誌『漫画少年』がずらりと並んでいたり(今、この数の『漫画少年』がそろうのはかなり貴重)、ミュージアムの開館に当たり、現役で活躍している漫画家たちから届いたお祝いメッセージの書かれた色紙が約100枚展示されている光景も圧巻だ。

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5. 手塚治虫の天井板は見逃さない。

最後は、『マンガラウンジ』でより知識を深めて帰ろう。ここでは、鈴木伸一、水野英子、よこたとくお、山内ジョージのインタビュー映像を観ることができたり、トキワ荘の天井をより忠実に再現するまでの工程が展示されていたり、そしてかなりの数のトキワ荘関連資料や、ゆかりのある先生たちがトキワ荘で暮らしていた時代(昭和30年ごろ)に描いた漫画本が集められていたりと、どこを切り取っても貴重な資料で埋め尽くされている。

なかでも特に注目なのが、解体されたトキワ荘の天井板に、その天井板があった部屋で手塚治虫が描いたという『リボンの騎士』のサファイア姫と、ベレー帽姿の自分自身を描いたこの世に一枚しかない貴重な天井板だ。

これは、トキワ荘が解体されると聞き、天井板をもらいに行く手塚治虫に同行した警視庁五方面記者クラブの記者らが手塚に描いてもらったもので、その天井板が今回ミュージアムに寄贈されたのだそう。この天井板には、焼き魚の煙や煮炊きの湯気、そしてこの部屋で漫画を描いていたという手塚の当時の生活が染み込んでいる。そんな背景も感じながらじっくりと眺めてみてほしい。

ミュージアムを出た後は……

マンガミュージアムを出た後は、商店街(南長崎通り沿い)を散策しよう。まずは、トキワ荘で暮らしていた漫画家たちのように、素朴な町中華が味わえる松葉で腹ごしらえを。その後は、トキワ荘にゆかりのある漫画家の作品を約5000冊そろえるトキワ荘マンガステーションで、漫画の世界にどっぷりと浸かるのがおすすめだ。

ここにある漫画は誰でも自由に手にとって読むことができる(photo: Keisuke Tanigawa)

手土産がほしければ、マンガステーション近くにあるトキワ荘通りお休み処へ。『トキワ荘スリッパ』や『トキワ荘ボーロ』、寺田ヒロオが発明したチューダー(焼酎のサイダー割り)から発想を得た『チューダーあめ(あめにはアルコールは入っていないので子どもも楽しめる)』など、土産にぴったりな商品を販売している。

『トキワ荘スリッパ』(photo: Keisuke Tanigawa)

また、トキワ荘通りお休み処の2階には寺田ヒロオの部屋も再現されているので、こちらも見逃さないように。すぐそばには畳のスペースもあり、ゆったりとくつろぎながら漫画などを読むこともできる(現在はコロナウイルスの影響で畳スペースでの休憩は不可。展示自体を見ることは可能)。

トキワ荘周辺を歩くなら……

  • Things to do

豊島区は文化、芸術の一大発信地である。乙女ロードや中池袋公園近辺にはアニメや漫画、ゲームの店が続々と集結しており、西口公園は野外劇場グローバルリングが誕生。2020年には南長崎に漫画の聖地、トキワ荘が蘇った。ここでは、そんな注目都市を池袋、雑司が谷、目白、大塚、巣鴨、駒込そしてトキワ荘周辺である南長崎とまんべんなくカバーし、その中でも特に魅力的なスポットを紹介。

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